9月18日午後1時より、九州大学(箱崎キャンパス)において引揚げに関するシンポジウムを行います。このシンポジウムは、私たちの科学研究費補助金・基盤研究(B)による企画で、昨年の札幌シンポジウムにつぐ引揚げシンポジウムの第2弾です。
本シンポジウムは、「2010年、いま戦後引揚げを問う−帝国崩壊と戦後東アジア社会」というタイトルで、3部構成からなっています。
・本シンポジウムは、5人の当事者がその体験を語ります。そもそも、4人もの引揚者の方々がこのような大きなシンポジウムで話されるのは希少なことです。同時に、引揚者の方と同時に定着した朝鮮人の方が体験を語ることもきわめて希なことです。双方の立場の違いをふまえながら語られるこれら5人の方々の貴重な体験・証言だけでも迫力のあるシンポジウムになると思います。
・しかも、本シンポジウムは、引揚げや定着という個人史とより大きな東アジアの歴史との関連を考えていきます。つまり、日本帝国の崩壊と戦後の東アジア社会の再構築という視点から日本人の引揚げ、朝鮮人の朝鮮への送還と日本定着、そして「密航」を捉え直すことを目指しています。ですから、外地から内地への日本人の「引揚げの労苦」というストリーだけにするつもりはありません。もっとも、第1部では多くの人が外地からの引揚げ体験に涙するでしょうが、同時に第2部では在日2世の金さんの語りに圧倒されるでしょう。
・昨年の札幌シンポジウムで、参加者のなかから「私たち樺太引揚者の声を聞いてください」という声が上がり、この訴えに応えた形で博多シンポジウムを企画しました。幸い、「引揚げ港・博多を考える集い」という市民団体をカウンターパートナーとして今回のシンポジウムを組織することが出来ました。第1部の報告者はこの団体のメンバーおよび推薦によっています。第2部は、金さんと私たちの研究会からなっています。このように、福岡の市民団体、と全国的なメンバーからなる研究者集団のコラボレーションが実現したのはじつに貴重なことだと思います。
・さらに、繰り返しますが、日本人の引揚者と朝鮮人の定着者が同時にシンポジウムに参加することは、きわめて貴重なことだと思います。日韓併合から100年の年にこのような企画を組めたこと自体が幸いなことだと思います。これも、「引揚げ港・博多を考える集い」という市民団体の活動の視野の広さと、金さんの勇気とにあります。シンポジウム当日は、この幸運を十分に生かしていきたい所存です。
参加無料 お問い合わせは下記まで
【シンポジウム事務局】
〒102-8554東京都千代田区紀尾井町7-1
上智大学外国語学部国際関係論 蘭研究室
Fax:03−3238-3592
E-mail:araragi@sophia.ac.jp