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巻頭言 二世三世の進路は今…
こんなところ・あんなところ・どんなところ?
 東北地方 その1−山形県−
 東京都練馬区の日本語指導
研修会
教材・資料
みなさんはどうお考えになりますか?
行政・施策
 厚生省から/文部省から/文化庁から
伝言板

巻頭言

二世三世の進路は今…

 『同声・同気』第2号でもお伝えしたように、帰国者の受け入れは〈第二次帰国ラッシュ〉とでもいうような時期をむかえています。それに伴い、二世三世の数も再び増加し、その進路についても様々な問題がでてきています。定着地付近に日本語を学ぶ機関がない二世三世の問題もあるでしょうし、学校教育を受ける必要のある子どもたち、また学校教育を受けたいと希望する子どもたちに生じている問題もあるでしょう。
 二世三世が日本の学校に入学したり編入したりするにあたっては様々な問題があることは従来から指摘されるところですが、大きな改善を見ないまま今日に至っている状況です。具体的には、義務教育年齢の子どもたちの編入学に関する問題、義務教育修了後も継続して学校教育を望む子どもたちの編入学に関する問題、の二つに大別できます。細かく見ていけば、年齢と学齢が一致しない、学齢を超過している、学習に必要な言葉の力がなかなか伸びない、補習制度等受け入れ体制が不備である、受け入れの特別措置が全国的なものではない、世帯の経済的自立が子どもの教育に優先する等々、実に多様な問題が見うけられます。
 二世三世に対する教育に関しては、本人たちはもとより親世代も大きな希望をもって日本に帰国しています。教育を受ける機会が得られないことは、両世代の将来の夢を打ち砕くことにもつながります。この問題を今まで以上に重視し、改善の措置を講ずることは、今、緊急の課題と言えるのではないでしょうか。
 私たちは各地でそれぞれの状況に即して支援体制の整備をすすめていますが、お互いの現状をすべて把握しているわけではありません。さらに、問題の性質を考えても、ひとつの策を編み出せばすべての解決が導かれるといったものでもないでしょう。したがって、ここで私たちにできることは、改めて問題を喚起し事例を明らかにし、支援者同士が情報を交換することだと考えます。そうすることによって、ひとつでもふたつでも個別の問題が解決の方向に向かい、その過程で問題となっている状況が変わっていくと期待します。みなさんからのご意見をお待ちしております。

こんなところ・あんなところ・どんなところ?

東北地方 その1−山形県−

1).中国帰国者のための学習機関

 山形県には中国帰国者自立研修センターがあります。ここは国の委託をうけて県が開設し、山形県中国帰国者奉仕会が運営にあたっています。帰国者のみなさんは、全員が山形県内各地から、遠い人で1時間ぐらいをかけて通って来ます。
 日本語研修は日曜日から木曜日までの5日間、午後1時30分から4時までで、初歩と初級の各クラスがあります。日曜日に授業が行われることに何か特別な理由があるかとお尋ねしたところ、8か月の研修期間中に就職する人もある、その人たちの便宜を考えてとの事でした。実際、日曜日の授業は平日と比べて出席者が多くなるそうです。生活相談や就職指導は随時行われており、相談内容で多いものは(1)病気に関すること、(2)子弟の学校に関することだそうです。この他に、現在研修中の帰国者と、すでに研修を終えて定着自立した帰国者との交流会なども企画・実施されています。
 また、県単事業として自立研修センターの分校も県内5か所に開設されていますが、これらの分校は週1回日曜日のみ公民館や福祉センターなどを教室にして授業が行われています。
 山形県中国帰国者自立研修センターは昭和63年7月に開設されましたが、昨年これまでの蓄積を生かして自主教材『会話で覚える日本語−楽しく学ぶために−』(カット参照)を作成しました。一定時期に一斉に研修を開始することがなかなかできにくい現状から、すこしでも効率よく学習できるように工夫されています。B5版344ページで、各課は(1)会話、(2)口頭練習、(3)文型練習、(4)重要語句の整理の4つから成っています。まだ残部があるとのことでした。
 山形県には、このセンターの他に、中国帰国者定着促進センターの山形分室があります。ここは、残留孤児及び婦人のよりいっそうの受け入れ促進をめざして平成6年8月に開所されました。中国残留孤児援護基金が運営しています。
 この山形分室は原則として4か月の間、月曜日から金曜日までの午前中2時間は日本の生活様式や習慣等の生活関連事項の基礎的・初歩的な研修を行い、午後は1時30分から4時まで日本語の研修を行っています。

★ 山形県中国帰国者自立研修センター
 〒990 山形市城南町2−6−36
 TEL 0236−45−2611

★ 中国帰国者定着促進センター山形分室

 〒990 山形市花楯1−10−8
 TEL 0236−34−9502

2).その他の県単事業

 県単事業として常時定期的に実施しているものはないとの事でしたが、県は県内各地の帰国者が関わる諸機関から要請があれば、随時通訳の派遣を行っています。

3).その他の学習の場

 山形県の農村部の人口はここ20年くらいの間に急減し、外国から多くの女性たちが花嫁さんとして来るようになりました。この方たちの日本語学習の必要性からも、県下には町の農業委員会が運営する少人数の教室から、30人、50人を対象とする教室まで、28もの日本語教室、日本語研究機関が開設されています。
 文化庁は昨年度から、地域社会における外国人の急増を踏まえて、地域の特性に応じた日本語教育推進体制の整備をすすめるために、モデル地区を選んで、その地域の日本語教育の推進体制を確立し、その成果を広く普及するというプロジェクトを開始しましたが、山形市は今年度からそのモデル地区に指定されています。
 山形県の教室の多くは、ボランティア団体、行政関連団体、教育機関などがそれぞれ中心になって運営しており、大学など教育機関が運営している教室は対象を留学生や大学入学希望者に限定しているようですが、他の多くは中国帰国者一般も受け入れてもらえるようです。
 紙面の都合で教室のリストは掲載できませんが、下記に問い合わせれば、最寄りの教室の名称や電話番号などの情報が得られます。

★(財)山形県国際交流協会
〒990 山形市七日市1−4−47
TEL 0236−24−0043

  ここには、外国人のための相談窓口があり(相談内容は制限なし)、週1回ずつ中国語、韓国語、ポルトガル語による電話相談も開設されています。
  中国語相談日は月曜日9:00〜17:00までです。

★山形ボランティア日本語協会
TEL 0236−88−4030(会長宅)

★JVC山形(日本国際ボランティアセンター山形)
事務局
〒990 山形市荒楯町1-17-40 パレス平安内
TEL 0236−34−9830

  JVC山形のいろいろな活動の中には、言葉が分からなくて病気治療が受けられない外国人のための通訳サービスなども含まれています。

★庄内国際交流協会
〒997 鶴岡市伊勢原町8ー32
   出羽庄内国際村気付け  
TEL 0235−25−3600

 なお、上記の各団体は日本語教室の運営の他、日本語指導者のための講座やセミナーも開いています。

東京都練馬区の日本語指導

 練馬区では、日本語が不十分な生徒が入学した場合、生徒の学校へ日本語講師を派遣して、4ヵ月間、1回2校時×40回、全70時間程度の取り出しによる日本語指導を行っている。その中心は「中国引揚げ」と称される生徒たちで、残留婦人の3世にあたる子女が多い。
 残留婦人子女は、一言の日本語も知らずに学校に入学してくる。小学校高学年以上の生徒にとって、ことはとりわけ重大である。彼等は永住を希望しているのであるから、日本語にとどまらず、きちんとした学力を身につけなければ、進学・就職に支障をきたし、本人の自己実現もままならないばかりか、ひいては、将来にわたって日本社会の中で「日系中国人」の社会的地位や評価にまで影響を及ぼすことが予想される。
 だが、日本語指導はわずか70時間。入学当初の生徒たちは異国での学校生活にとまどい、さまざまな異文化不適応症状を示す。家庭の方も、生活用品がそろわない、両親の仕事が決まらないなど、精神的に不安定な状態にあることが多く、子どもたちは学校に来ても、授業を受ける、日本語を勉強するという精神的準備ができていない。まず必要とされるのは適応指導であると思われるが、その対策は今のところ何もない。
 日本語の時間は、生徒の精神的ケアと文字の指導に多くの時間を割かれているのが実情である。それでも、文字の指導はその後の教科学習のために、おろそかにはできない。会話と違って自然には身につかない。それと並行し、学校生活に必要な語彙と、すぐにも使わなければならない文型とを組み合わせて、さまざまな教材を準備し、それをTPR、ロールプレイ、ゲームなどの形で、興味を持続させながら、ともかく「楽しく」勉強する。なにしろ、日本語の時間だけが「わかること」をやり、自分に合わせて勉強できる場であるから、ここで本来の自分の姿に戻り、ストレスを解消することも重要である。
 しかし、原則的に個別指導であるため、教室活動が制約される。先生と1対1では生徒も疲れるだろう。それに生徒がやる気をなくし、そっぽを向いてしまうと、とたんに授業は止まってしまう。生徒はクラスの仲間になかなか入れず、日本語の時間もひとりぼっち。最初は、共に学ぶ仲間がいることがなによりの励みになると考えられるが、現在の方式はこの要求にこたえられない。
 これ以外に、母語を使って教科学習をする時間も、日本語が理解できなかった間の教科内容を遡って補習する態勢もない。これが問題で、やがて学習する習慣をなくしていく生徒も多い。入学して1年たてばその生徒なりにできる課題も多くなるが、本人は「やらなくても注意されない」、担任は「どうせやってこない」という状況が習慣化し、「能力がない」「やる気がない」という評価を受けやすい。初めはショックを受けた通知表の「1」も、続けば慣れてしまう。
 練馬区は決して先進的な地域ではないが、もっと遅れている地域もあろう。学校教育における日本語指導は自治体任せであるが、居住地によって差があってはならないはずである。この問題は全国的なものであり、同じ問題に関わる全国の人たちが協力し合って少しでも改善の道を開きたいと願っている。
(練馬区教育委員会 日本語指導講師 小川 郁子)

研修会情報

1.異文化間教育学会 第16回大会(報告)

・6月3、4日(九州大学)
・シンポジウム・テーマ:異文化共生社会と異文化間教育−研究の現状と課題

 市民生活のあらゆる場において、異文化をもつ人々と隣り合わせて暮らすことが日常化してきた社会では、異文化をもつ人々の一方的な「適応」ではなく、「共に生きる」という段階にきていて、日本もその一つだという考え方があります。この場合の「共生」には人々が共存するというだけでなく、より積極的に交わり、知恵を出し合い、力を合わせて生きていこうという姿勢が含まれています。
 また、大会では63の自由研究および特定課題研究の発表がありました。例えば、外国人児童教育の実態調査である「異文化共生社会と外国人児童生徒の教育−新来住者の場合−」、日本語の習得と日本文化の理解との関係を探る「日本語の習得と文化理解」、中学校における異文化理解プログラム開発のプロセスを紹介した「『タイ米授業シリーズ』の共同開発と教員研修」などの実践研究がありました。なお、次回は来年の6月上旬頃東京の上智大学で開催される予定です。
問い合わせ先:異文化間教育学会
 〒812−81 福岡市東区箱崎6−19−1
 九州大学教育学部附属比較教育文化研究施設
 TEL 092−633−4254(月水金のみ)

2.第3回国際こども井戸端会議(報告)

・6月11日(神奈川県厚木市総合福祉センター5階和室)

 参加対象は各国の中学生と高校生、参加費100円で、お互いの違いに気付き、認め合うことを目的に開かれました。当日は、開発教育に携わる講師を招いて、子供たち30人がゲームをしました。子供たちは「楽しかった。また来たい。」と言っていたそうです。
☆☆編集部で入手できるのは、大きな研修会になりがちですが、このような地域に根ざしたものについても、もっと情報を交換しあえたらいいと思います。

第3回多文化間精神医学ワークショップのお知らせ

 (主催:多文化間精神医学会)
 ワークショップは専門家による学会の研究発表とは異なり、精神科医師のみでなく、広くボランティアや一般の人々に参加を求め、そこでは在外邦人、在日外国人とそれに関わる人々が抱えている心の問題について討議されます。参加者自身が討議を通じて問題を理解し、方策を考えていく場です。
 第1回は93年12月に神戸で「多文化社会とこころ」というテーマで開催され、この時には中国帰国者に関する問題も話し合われました。第2回は昨年10月横浜で「外国人労働者とこころ」というテーマで開催されました。今回は東南アジアと中国を中心とした女性の心の問題が取り上げられます。
 日時:9月9日(土) 13:00〜17:00
 場所:倉敷市芸文館
 内容:シンポジウム「多文化の中の女性とこころ」
     シンポジスト
      伊藤みどり(中国人のための命の電話活動の代表)
      鄭 暎恵(広島修道大学助教授)
      大森雅子(女性の家サーラのコーディネーター)
      荒木祥子(高砂市民病院精神科医師)
      特別講演
      井上ひさし(作家)
 参加費:2000円
 問い合わせ先:ESクリニック 江原良貴 岡田知子
〒708 岡山県津山市津山口308番地
TEL. 0868−23−3000

日本語教育研究協議会

(主催:文化庁国語科)
 参加対象者は、国語課が毎年実施している「国内の日本語教育実態調査」の協力機関・団体に限定されていますが、東京と大阪の2カ所で開催されます。分科会形式で行われ、その中に中国帰国者関係の分科会もあります。
 東京会場:8月1日(火)
      国立教育会館
 大阪会場:8月25日(金)
      大阪外国語大学

「これからの日本語教育を考える」シンポジウム

(主催:文化庁国語科)
 こちらのほうは、どなたでも参加できます。
 詳細は、10ページ(行政・施策−文化庁国語課から)をご覧ください。

教材・教育資料

児童、生徒のための教材

 教材には、日本語、異文化適応、生活関係のもの等がありますが、今回は小中学校や教育委員会、自治体、その他研究機関等で作られた日本語と学科の教材を集めてみました。入手したもののうちのいくつかと当センターのテキストをご紹介します。また、みなさんの現場でも、いろいろな教材が作成されていることと思いますが、ぜひ情報をお寄せください。特に、学科を教えるためのものが、もっとたくさん作られるようになるといいと思います。

T.媒介語を使わずに教えられるもの

★「みんなの日本語」

 井上惠子(千葉市立磯辺第一小学校教諭)
 専任教師のいない小中学校にも日本語の全く話せない子供たちが編入されてくる現状に対し、担任でも教えられるような教材を作成し、両者の意思の疎通を図ることができたらと思い、取り組まれた研究の成果です。
 この教材の特徴としては、
・媒介語を使わないで指導する、直接指導法。
・指導書、ワークシート、問題集の3部よりなり、年 齢と日本語力レベル両面を考えて6セット作成した。
  初級(小学校低学年、小学校高学年、中学用)
  中級(小学校低学年、小学校高学年、中学用)
・教材はそれぞれ50課よりなり、聞く・話す・読む・ 書くの学習が並行して進められるよう配慮し、原則 として1日1課指導をめざして作成した。
・1日の大半を過ごす学校生活についての題材を多く 取り入れた。
・年齢に合わせて学習内容、語彙、挿絵を工夫した。
・指導書の指導上の留意点に「母語の干渉」について 記し、指導の手だてとした。
 指導書、ワークシート、問題集ともとても使いやすくできています。指導書には課ごとにタイトル、目標、資料教具、教師の活動、児童の活動、指導上の留意点がそれぞれ見やすく丁寧にまとめられています。
 このテキストに関する問い合わせは、千葉市立磯辺第一小学校 井上惠子先生まで 
   TEL 043−277−4406

U.中国語訳がはいっているもの

★中国語を母語とする日本語学習者のための
   「たのしい理科」(5年生)
   「中学校理科1分野上・下」      
   「中学校理科2分野上・下」    
      藤田正春(上越教育大学)

 これは、中国語を母語とする学習者が理科の教科内容を学習する際の補助資料としてまとめられました。作成の意図は二つあり、一つは理科の学習を効率的に進めるため、もう一つは学習者の母語を保持するためです。日本の教科書を中国語に訳したもので、日本語と中国語の対訳形式になっています。しかし、もとにした教科書は、昭和52年に改訂された学習指導要領に準拠しており、現行のものに沿ったものではありません。 
 このような形式の補助教材が他の学科でもできると学習者にとっては大変有効だと思われますが、現在のところ他の学科を進める予定はないそうです。尚、この教材は個人的には配布しておらず、各地の教育委員会、研究協力校等に配布されているそうです。

V.一般外国人子女のためのものだが、解説書に中国語もはいっているもの

★「こんにちは」 

  大阪府教育センター
 これは、小学校2〜3年に相当する児童を念頭に置きながら、日本語をまったく知らない児童を指導する一般的な例を想定しています。学習は教師の指導だけでなく、周囲の日本人児童もまた有益な教え手であり、お互いに言葉を教えあうことで相互理解が図れるという、学習の双方向性を基本的な考えとして作られました。教材は、学校生活にかかわりの深い場面の単語が中心になっていますが、文型練習もでき、イラストもとても楽しく、児童が愛着のもてる教材になると思います。このテキストに関する問い合わせは、同センターまで手紙でお願いします。(〒558 大阪市住吉区苅田4-13-23)

日本語教材

前橋市立広瀬小学校
「日本語初期指導のためのひらがな・カタカナ練習」

熊谷市立玉井小学校
「日本語中国語ポルトガル語による日常会話集」
                   
目黒区立東根小学校日本語学級
「わたしのにほんご」

甲府市立新田小学校
「にほんごドリル」
  (文型T、U、発音、学校生活)

江戸川区立葛西小学校
「たのしいにほんご」
「たのしいにほんごU」
              
大阪市立昭和中学校夜間学級
「復習日本語」

世田谷区立新星中学校第二部日本語学級
「日本語会話教本」
「日本語練習問題集」
「やさしいにほんご」
「ことばのリスト」
「チャート集」          

足立区立足立第四中学校夜間学級
「にほんごれんしゅう」            

川口市教育委員会
「日本語テキスト」

足立区教育委員会 適応教室
「日本語の学習」

堺市教育委員会
「ともだちといっしょに 1」

東京都教育委員会
「たのしいがっこう」(指導書付き)
「たのしい日本語<第1集>」

奈良県教育委員会
「こんにちは にほんご」

文部省
「先生おはようございます」
 −中国帰国孤児子女のための日本語教育教材−
「にほんごをまなぼう」(指導書付き)
「日本語を学ぼう2」

東京都教育庁 指導部
「日本語 動詞の復習」

チャレンジ日本委員会(大学入試センター研究開発部小野研究室)
「これって、なに?」−子どものための絵単語帳−

財団法人 中国残留孤児援護基金
「ひらがな練習帳」
「カタカナ練習帳」
「わたしの学校」
  (「日本の生活とことば」シリーズ13,14)
「わたしのこと」
「日本語のきまり」
「中国の漢字と日本の漢字」
「身のまわりの漢字」

学科教材
埼玉県教育委員会
「にほんごでまなぶ こくごとさんすう」

東京都教育庁 指導部
「高校生のための日本語(基礎T)」
「高校生のための日本語(基礎U)」
「高校生のための英語基礎」
「高校生のための数学基礎」 各指導書付き

財団法人 中国残留孤児援護基金
「文型数学」

中国帰国者定着促進センター
「中学英語文法の参考」
「社会科の基礎」(地理)
「日本的歴史」
「日漢対訳 日本歴史」
「文型算数」
「公民」
「中国の地理・歴史」

行政・施策

平成7年度予算に関しての具体的な施策の内容について以下のような説明をもらいました。

★厚生省から

T.この間の自立指導員派遣制度の改正内容等について

 自立指導員の方々は、帰国者の言葉である中国語が理解できることからも、帰国者の世帯と最も積極的に係わり、また、帰国者世帯の自立に最も大きな影響を与え、帰国者が祖国である日本での生活を始めるうえでとても重要な役割を担っています。
 その自立指導員の派遣の内容等を定めている「自立指導員の派遣等に関する実施要領」は、この1年間に3回の改正が行われましたので、その改正内容について簡単に説明します。
@ 平成6年6月23日付 厚生省社会・援護局長通知による改正
 高齢の中国残留邦人を扶養するために同伴帰国する成年の子についても援護の対象とし、その成年の子に対する指導分を加え、帰国後1年目の派遣を年120日以内(月10日)としました。
 ただし、自立研修センター通所中の期間については、自立研修センターにおける各種指導に相当する派遣回数分を除いて、従来どおり月4日以内としております。
 なお、その場合に帰国者本人が日本語習得の必要がないなどにより成年の子のみが自立研修センターに通所する場合も想定されますが、帰国者本人が自立研修センターに通所する必要がない場合については月4日以内の取扱いとし、帰国者本人が身体上の理由などにより自立研修センターに通所したいができないといった場合については、月7日以内の取扱いとすることとしています。
A 平成6年9月30日付 厚生省社会・援護局長通知による改正
 「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律」及び「同法施行規則」の施行に伴い、派遣対象範囲の定義を明確にしました。ただし、実質的な対象範囲の変更はありません。
B 平成7年3月31目付 厚生省社会・援護局長通知による改正
 派遣対象に樺太等からの帰国者を加えました。樺太等からは、この4年間に7世帯が帰国し、5道県に定着しています。

U.なお、自立支援通訳派遺事業についても、改正されました。

@ 高齢の中国残留邦人を扶養するために同伴帰国する成年の子を援護の対象としたことに伴い、その成年の子に扶養義務のある子(帰国者本人からみた場合の孫)についても援護の対象としたことから、その子が通う学校等への派遣を認めることとしました。
A 樺太等からの帰国者を対象に加えました。
B 親族訪問を目的とした一時帰国の際の派遣を認めることとしました。
C 行政機関への派遣については、都道府県が派遣を必要と認めた場合に、限度の回数を越えて派遣できることとしました。

V.宮城、岐阜及び広島中国帰国者定着促進センターの開所について

早期に永住帰国を希望する中国残留邦人の帰国促進を図るため、中国帰国者定着促進センターを新たに下記のとおり3カ所開設することとしました。

 
宮城県
岐阜県
広島県
名称 宮城県中国帰国者定着促進センター 岐阜県中国帰国者定着促進センター 広島県中国帰国者定着促進センター
委託団体 社会福祉法人宮城県社会福祉協議会 社会福祉法人岐阜県社会福祉協議会 社会福祉法人広島県社会福祉協議会
所在地 宮城県仙台市宮城野区安養寺3丁目1−2 岐阜県不破郡垂井町府中300-1 広島県沼隈郡沼隈町大字草深1106-1
施設の概要 建物:鉄筋5階建一棟の1〜4階を改修し使用
居室数:16室(年間約40世帯)
建物:鉄筋3階建一棟の1〜3階を改修し使用
居室数:12室(年間約30世帯)
建物:鉄筋ブロック平屋建てを改修し使用
居室数:14室(年間約24世帯)
開所式 平成7年7月3日 平成7年10月予定 平成7年7月5日

(厚生省社会援護局)

★文部省から

T.外国人子女等指導協力者派遣事業

中国語ができ、中国帰国孤児子女に対する適応指導等において、教員の指導に協力する人が定期的に学校を巡回する事業について、平成7年度には、指導協力者の派遣地域を昨年の26地域から84地域に増やし、子女の教育相談や、オリエンテーションなどで先生との間の通訳業務などを行っています。下記は委嘱都道府県の一覧です。

・宮城県(仙台市)
・福島県(郡山市、棚倉町)
・栃木県(小山市)
・群馬県(前橋市)
・埼玉県(大宮市)
・千葉県(松戸市)
・東京都(荒川区、江戸川区、練馬区、目黒区、三鷹市)
・長野県(飯田市、松本市、阿智村、泰阜村、天竜村)
・大阪府(門真市、茨木市、堺市、吹田市、摂津市、大東市、高槻市、豊中市、寝屋川市、東大阪市、松原市)
・岡山県(岡山市)
・広島県(東広島市)
・香川県(高松市)
・高知県(高知市)
・福岡県(北九州市)
・熊本県(熊本市)
・鹿児島県(鹿児島市)

★文化庁国語課から

 前号でお伝えした文化庁主催のシンポジウム「これからの日本語教育を考える」の内容と応募方法について以下のとおりお知らせします。
日時:7月31日(月)13:00〜17:30
場所:国立教育会館虎ノ門ホール
    東京都千代田区霞ヶ関3−2−3
    TEL. 03−3580−1251
内容:
 1)基調講演
   テーマ 「日本語教育の新たなる展開に向けて」
   講師  水谷 修(国立国語研究所長)
 2)パネルディスカッション
   テーマ 「在日外国人と言葉」
   コーディネーター
      徳川 宗賢(学習院大学文学部教授)
   パネリスト
      アグネス・チャン
       (歌手・目白大学人文学部助教授)
     鈴木 孝夫(杏林大学外国語学部教授)
     高島 肇久(NHK解説委員長)
     田中 望(大阪大学留学生センター教授
   〔論点〕
    現在、在日外国人と言葉を巡っては、大きく分けて以下の二つの考え方がある。一つは、日本は独自の文化と言葉を持った国家であり、日本に定住する外国人は、「郷に入りては,郷に従え」のことわざのように、日本の文化や日本語を学び、日本社会に適応していくことが望ましいという考え方である。もう一つは、日本は今後「多文化多言語国家」を目指すべきであり、日本に定住する外国人が自国の文化や言語を保持したまま日本人と共生していけるような社会を形成していくことが望ましいという考え方である。パネルディスカッションにおいては、この二つの考え方を中心に討論し、認識を深めていく。
参加対象者:
  日本語教育担当者、都道府県・市町村等の国際交流・社会教育担当者をはじめ、学生、一般の方すべてを対象とする。
参加申込み:
 1)はがきに、氏名、住所、所属(ない場合は無記入)、電話番号、を記入の上、文化庁文化部国語課日本語教育係まで申し込む。
 〒100 東京都千代田区霞ヶ関3−2−2
       文化庁文化部国語課日本語教育係宛
 TEL 03−3581−4211(内2840)
 2)定員(1,300名)に達し次第締め切る。
 3)参加費は無料であるが,その他の経費(会場までの旅費等)は参加者の負担とする。
              (文化庁国語課 田島)

伝言板

☆静岡県の身元引受人、橘田氏よりお便りをいただきました。帰国者の国籍認定の手続きのため、大変ご苦労されたそうです。その際集めたいろいろな資料を、この件でお困りの方の参考にして欲しいとのことです。
(橘田 恆之さん TEL 0558-62-0404)

☆紀要第4号への投稿募集

…中国帰国者定着促進センターでは、中国帰国者問題、帰国者を対象とする教育に関わる研究論文、調査報告、実践報告などを募集しています。日本語教育、学校教育、心理学、社会学など、さまざまな分野からの投稿を歓迎いたします。
(教務課・紀要編集委員会 担当:佐藤恵美子)