第52号(2011年10月1日発行)  PDFファイル
特集 「支援・相談員」の現場から
教材・教育資料 『どっちから勉強する?日本語?母語?』子どもラーニングサポート
とん・とんインフォメーション
  『下伊那のなかの満洲 聞き書き報告集9』
  厚生労働省主催:中国残留邦人等への理解を深めるシンポジウム
  『医療通訳教本 −外国人患者によりよい医療を− 』
  「HSK入門級」と「C.TEST(筆記試験)」、中高校生は受験料が無料!
  進学進路情報:高校入試特別措置情報UP予定、奨学金情報
遠隔学習インフォメーション
 「日本語遠隔学習課程(通信教育)」受講者募集中!!
事例紹介 「人生の分岐点」

「支援・相談員」の現場から ―帰国者の日常に寄り添う―

特集 「支援・相談員」の現場から

 平成20年4月から、中国残留邦人等の老後の生活の安定を図るための「新たな支援」の一つとして、支援給付制度がスタートしました。そして、支援給付の実施機関窓口には、「支援・相談員」(以下、相談員)が置かれるようになりました。相談員の仕事は、支援給付事務を行う職員の補助業務、また、地域支援プログラムの支援メニューへの助言や日常生活上の相談対応、自立支援通訳や地域生活支援事業の企画、立案の補助業務などです。なお、実際の支援の形は地域のニーズや事情によって異なっているようです。
  相談員は、現在、全国に約500人が配置されています。選任に当たっては、中国残留邦人等に対する理解があり、通訳能力を有するということで、帰国者2、3世の採用も積極的に推進されています。設置主体は、市区町村、または、都道府県となっています。実際に相談員となって活躍している方には、元自立指導員、帰国者2、3世、国際結婚で日本に住む中国、台湾人の方等がいるようです。
  相談員は、公的な施策として、地域性を持つ帰国者援護の最前線で活躍する重要なポストです。日々、帰国者の日常に伴走する相談員は、帰国者の現状や抱えている問題をいち早くキャッチする存在でもあります。また、日々持ち込まれる相談に自らも悩みながら、解決のために行政や地域の人々と連携しながら活動しています。時に、言葉や文化的習慣、価値観の違いで調整が難しい問題にぶつかったり、社会状況、制度の壁に突き当たったりと悪戦苦闘したり無力感に襲われたりする時もあると聞きます。このような状況にある相談員の方々も、日々の活動は一人で行うことが多いので、なかなか他地域の帰国者や相談員の様子は掴みにくく、相談員同士の情報交換の機会も得にくいとのことです。そのような、最前線の支援者を結ぶ役割をNL上で少しでもできればと思います。また、相談員の方々の声は、相談員だけでなく帰国者支援に係わる全ての人にとって、これからの帰国者援護の方向を探るヒントになるのではないかと考えます。
  今後も「『支援・相談員』の現場から」は、いろいろな地域の相談員の方にお話を伺っていきます。第一回目は、2名の方にお話しをお聞きしました。相談員や帰国者の方々の日常が身近に感じられる内容です。地域による違い、共通点、相談員としての悩み、提案等、とても参考になります。ぜひ、ご一読いただきたく思います。


Aさん(帰国者2世)
中部 地方都市 所属:県(2008年度〜) 3市3町19世帯32人を担当

1.帰国者の最近の様子と日頃の業務について教えてください。

 本人世帯は高齢になって体が思うように動かなくなり、特段趣味もない人は、ひきこもり気味になることが多いです。私の最近の業務としては、何らかの病気を持っている人も多いので、週3日ぐらいは病院へ付き添って医療通訳しています。介護保険申請や認定のために市町村や医師との連携を取ることもあります。
 二世世帯は来日当時と比べ就職に大変苦労をしています。以前は呼び寄せ家族として帰国し、一家の生活費を稼ぐために日本語が分からないまま仕事に就かなければなりませんでしたが、職さえあれば生活は一般の日本人と変わらない生活ができました。しかし、日本社会の変化と共に、企業のリストラや人員の縮小などで、多くの帰国者二世達は職を失ってしまいました。夫婦で失業している、または夫婦のどちらかは失業という世帯が増えています。収入が減り、日々の生活が困窮するため、精神的に不安定になる人もいます。電話での相談を受けることが多いですが、電話だけでは解決しないので、ハローワークや関係機関まで出かけることもあります。
 これまで、県独自の支援策は新制度とあまり違いがなかったので、生活保護から支援給付金に移行した世帯は、制度がどのように変わったかあまり実感がないようです。けれども、生活保護に頼らず生活していて支援給付金に移行した世帯は、「医療費の負担がなくなった。老後の不安がなくなり、生活が楽になった」という声もあります。

2.どんな相談がありますか?

 医療通訳、葬祭、就労、家庭内の事、近隣とのトラブル、住宅、学校生活等、一般生活の相談です。各関係機関(市町村、学校、医療機関、自治会)からの相談もあります。
 本人世帯は「生活費の心配はありません。健康で暮らしていければいい。それよりも二世の生活が心配」と二世についての相談を受けることも多くなりました。

3.提案や課題だと思うことは?

・二世世帯との同居が進むと良いと思います。帰国者本人達が高齢になっているので、本人達が安心して身の回りの世話をまかせられる人が必要です。同居することで帰国者の孤独感を減らすこともできると考えます。
・介護が必要になった時の支援体制が必要です。
・呼び寄せ家族への支援拡大(日本語教育、就労対策、子育て支援策等)の検討が必要です。
・配置される支援・相談員は日本語と中国語ができるだけでなく、地域事情に通じた日本で教育を受けた人も含まれるとよいと思います。

4.相談員としてのお悩みは?

・支援する家庭の中には、休日や深夜に自宅まで相談の電話があり、家までやって来る人もいます。病気や怪我など緊急の用件が発生した時には、できるだけ支援をしたいと思います。勤務時間中で間に合うことは、職場に連絡をいただけると有り難く思います。
・帰国者本人世帯の皆さんはご高齢の方が多くなってきていますので、病院等への通院回数も多くなっています。医療通訳として同席して欲しい旨の要望にはできるだけ日程調整を行い対応したいと考えていますが、重複してしまい、対応できない日もありますので、申し訳なく思うことがあります。
・帰国者に対する支援は帰国者二世である自分の使命だと思い、仕事をしてきました。しかし仕事と心情のジレンマに陥ることもあります。常に帰国者二世である原点に立ち戻り、共感と感動を持ち続けたいと思っています。

5.最後に

 支援・相談員は通訳者としてだけではなく、帰国者の相談にのることが大事だと思います。また、各地域の帰国者の生活状況や支援上の問題について、支援・相談員同士で情報や意見交換をする機会が増えればよいと思います。


Bさん(元自立研修センター講師・相談員):
中部 地方都市 所属:市 (2008年度〜) 7世帯(市の10世帯のうち)を担当

1.日頃はどのように活動されていますか?

 週1回の勤務で、午前中は市役所の会議室を利用して日本語学習の場(“日本語サロン”)を設けています。ここに来ることができる一世世帯に対してはこの時間に相談対応をしますが、足腰が弱り外出が困難な世帯(およそ半数の世帯)は、午後訪問しています。制度としては一世の支援が中心ですが、国費私費にかかわらず、これらの世帯の二世が職安に行く際の通訳等、就労支援も行うこともあります。

2.相談内容にはどんなものがありますか?

・一世の通院付き添い等
 一世は高齢化が進んでいて、体の不調を訴え、健康・病気についての相談や、通院のサポートが必要になってきています。症状や治療の希望など、医者に伝えたいことを日本語のメモにして渡しますが、時間が合えば通院に同行することもあります。同行してみると、医師とのコミュニケーションはほとんどとれていないことがわかります。医師からも、なるべく同行してもらえるとありがたいと言われます。病院へは、二世が休みを取れる時は同行してもらっていますが、二世が忙しいのは一世もわかっていて、我慢したり市販の薬で間に合わせてしまったりということも多いのです。また、厳しい生活を経て年を取った一世の訴えは、二世に実感、共感を持って理解してもらうのは難しいという面もあります。その点では、年代の近い(親の介護などで経験もある)相談員は一世にとって、親身になって聞いてもらえる、助言も受けられるというメリットがあるのではないでしょうか。そのような痛みを感じ取れる相談員として、日中の習慣の違いを踏まえて助言をしていけるように努めています。

・二世の就労支援
 この地域では20年以上前に帰国して、十分な日本語研修を経ることなくすぐに就労して自立、そして定年を迎え今日に到っている一世が多く、従って2世も、国費・私費にかかわらず皆ほぼ自立しており、基本的に自力で何とかしなければという思いがあるようです。この不況下でも、解雇等生活が不安定になったときに相談に来たのは2世帯程度でした。生保にいったん頼ってしまうとなかなかそこから脱却できなくなるという例を大都市で多数見てきたので、生保を最後の手段として、それ以外の方策を一緒に考えながらもう少しがんばってみるように奨めています。職安に付き添う、社協の貸付金(無利子だが実際に現金を得ることができるまでにはけっこう時間がかかる)申請を手伝う、一緒に家賃延納の依頼に行く等のサポートを行っているうちに、友人の紹介でアルバイトの口が見つかったり、仕事にまた復帰できたり等で、結局生保に頼らずに切り抜けることができました。困ったときに、一緒にいろいろ対策を考えてくれる人がいる、最後には生保があるという、安心感が大切なのだろうと思っています。

・その他
 この他には、支援金の計算や、家に来るいろいろな通知やダイレクトメールなどについての質問、住宅の不具合や近所とのトラブルの相談等々。近所とのトラブル時には、民生委員に繋いだり、警察の〈市民相談〉に同行したりしました。

3.「新たな支援」開始以降の変化は、何かお感じですか?

 長年帰国者と接してきて、新制度(老齢基礎年金を満額でもらえる)以降は、生活も落ち着き、表情が明るく穏やかになったと感じます。年金が満額になったということは、ただ経済的な意味だけではなく、プライド(尊厳)の観点から、日本人として社会に受け入れられた、日本人としてのアイデンティティーを持てたことにつながったのではないでしょうか。

4.今一番問題だと思われることは?

 一世は、近い将来、介護サービスを受ける状況が確実に想定されますが、日本語力がないと、介護を受ける場面でのコミュニケーションも困難になります。また、それ以前に介護サービスを受けることに対して及び腰になってしまうことも容易に想像できます。介護サービスの種類、利用法等の知識と同時に、そうした場面で必要となる語学力の向上が求められます。しかし、一世は、年齢や中国での就学歴等の関係から、日本語を体系的に学ぶのは難しい人々が大半です。こうした人々が、老後の生活に必要な日本語力を獲得していくためには、日々生活のなかで感じた不便さ、課題の解決にダイレクトに結びつくような学習法が望ましい。例えば、現在歯科にかかっている人がおり、歯科医院での会話を、『医療』(遠隔学習課程テキスト)の中の使える部分を利用して、皆でおしゃべりを楽しみながら学習していますが、高齢の一世にとっては、『医療』テキストは非常に実践的です。このように高齢者の生活に即した、“老後のための日本語”テキストを作ることはできないでしょうか。

5.相談員としてのお悩みは?

・車での送迎について
 地方で生活することの一番の問題は“足”です。一世は歩いて通院できないので、子どもたちの車に頼ることになるケースが多く、そのため子どもたちの予定に沿う形でしか診療を受けることができません。市の車を使うことはできるのですが、現在、自分の仕事に車での送迎を加えるかどうかについては悩んでいるところです。安全に責任を持つことの重さもありますが、週1回の相談業務時間内で全体のニーズに応えることができるかという疑問もあります。

・地域での帰国者同士の人間関係
 狭い地域で長年顔見知りの帰国者同士には、例えば“日本語サロン”に参加するという場合、誰々が参加するなら自分は行かない、といった現れも当然考えられます。帰国者の絶対数が多い都市部であれば、多数の参加者の中でこうした人間関係も紛れてしまうのですが、地方の小都市は、密な地縁ゆえに難しいところがあります。


 「特集『支援・相談員』の現場から」の中国語版をセンターHPの「とんとんWEB版10月号(10/28アップ予定)に掲載いたしますので、中国語でお読みになりたい方はそちらでご覧下さい。

教材・教育資料

 『どっちから勉強する?日本語?母語?』
小学校国語教科書翻訳教材(光村図書 小学校「国語」教科書4年生準拠)
作成:子どもラーニングサポート北陸(子どもラサ)、2011年3月発行

 本紙46号でもご紹介した上記の小学校教科書補助教材はホームページでの公開を経て、今回、冊子版が完成しました。
 『白いぼうし』『ごんぎつね』『一つの花』『アップとルーズで伝える』の作品のすべてに中国語(簡体字、繁体字)、ポルトガル語、タガログ語、タイ語、ロシア語の翻訳文が付いています。また、日本語の理解につなげるための「粗筋理解のためのイラスト」、「母語学習用ワークシート」、「日本語学習用のワークシート」も掲載されています。

@母語で教科書の内容を知り理解を高めること
A現在の母語能力を保持すること
B日本語で教材を理解することに結びつけることがこの翻訳教材の目的です。

 入手方法については以下のサイトの〈教材のひろば〉をご覧ください。

子どもラーニングサポート北陸〈教材のひろば〉
http://kodomo-mirai.sakura.ne.jp/resource/

とん・とんインフォメーション

『下伊那のなかの満洲 聞き書き報告集9
満蒙開拓を語りつぐ会 編 飯田市歴史研究所 発行
2011年7月 367頁 B5判 定価1000円

 本紙28号、49号でご紹介した『下伊那のなかの満洲 聞き書き報告集』の第9集が発刊されました。
 戦時中、全国で最も多く満洲開拓移民や青少年義勇軍を送り出した長野県飯田・下伊那地方。「満蒙開拓を語りつぐ会」(筒井芳夫代表)は、年に1集ずつ刊行を重ね、10周年を迎える来年の10集で活動を終えます。
 9集では、開拓団や義勇軍の記録写真を撮影した熊谷元一さん(H22年11月に他界、101歳)、中国残留婦人・孤児の帰国支援に生涯を捧げた中島多鶴さん(86歳)、集団自決の直前に脱出したという体験をもつ竹内和市さん(H23年2月他界)など12人の聞き書きが収録されています。
 問い合わせ:飯田市歴史研究所 電話 0265-53-4670 FAX 0265-21-1173
 Eメール iihr(a)city.iida.nagano.jp

厚生労働省主催:中国残留邦人等への理解を深めるシンポジウム
11月5日(土)13:00〜17:30/広島県民文化センターホールにて

参加申込方法はシンポジウムホームページをご覧ください(http://chu1000.net/zanryusympo/)
○劇団道化「吉林食堂〜おはぎの美味しい中華料理店〜」
○パネルディスカッション:コーディネーター/大谷 昭宏氏 (ジャーナリスト)
パネリスト/浅井 基文氏 (前広島市立大学広島平和研究所所長) ほか
○帰国者による秧歌踊り、太極拳、歌
申込締切:10月28日(金)必着(メール・HPは午後5時まで)※入場無料、先着500名
     中国語への同時通訳あり レシーバー予約はイベント申し込み時に
問合せ先:日本語:TEL:082-236-2244(中国新聞企画サービス内)
中国語:TEL:080-2901-4193(中国・四国 中国帰国者支援・交流センター内)

『医療通訳教本 −外国人患者によりよい医療を− 』
 財団法人 岐阜県国際交流センター

 今回も前号に引き続き医療通訳者育成のための冊子を紹介する。
 本紙Web版2011年8月26日号で紹介した『医療通訳者のためのトレーニング・ガイドブック』は医療通訳を目指すための概論的要素が比較的濃かったのに対し、本書はより実践的な内容が多く、医療現場での詳細なシナリオをもとに医療通訳を疑似体験しながら学べる構成になっている。さらに、冊子は無料でホームページから誰でも自由に利用できるようになっている。頭痛、バセドウ病、心臓の痛み、肝硬変等の具体的症例が提示され、診療室内での医師と患者そして通訳のロールプレイを通じ、それぞれの立場を体験しながら学習ができる。シナリオには「覚えたい用語」「指導のポイント」が注釈として特記されている。その後頁には「シナリオで覚えておきたい用語」として、ポルトガル語、中国語、タガログ語により対訳集がまとめられ、受付事務、症状・病状、検査、救急等医療現場でよく見聞きする日本語表現も紹介されている。
 後半の「参考資料」では、「患者さんが話しやすい態度を」「プライバシーを守る」「自分の意見と患者の訴えを混ぜない」等11項目の医療通訳の心構えを紹介し、医療通訳に必要な「人体図・覚えたい用語」として英語、中国語、ポルトガル語対訳による身体部位、症状、治療処置等の医療用語集が掲載されている。
 さらに、参考文献・サイト情報として、医療会話・用語集、医学辞典、多言語対応の「診察補助表」や「医療制度」「母子保健」に関する参考書籍、インターネット上の外国人医療支援、医療通訳、薬等サイトについて紹介されており、とっさの時にも大変使い勝手がいいものになっている。
 なお、同教本は下記サイトより無料でダウンロードが可能。
 http://www.gic.or.jp/japanese/contents4-8-1.html

「HSK入門級」と「C.TEST(筆記試験)」、中高校生は受験料が無料!

 中国語学習者のための水準認定テストの一つとして、北京語言大学HSK(中国漢語水平試験)センターが行っているテストがあります。今回はそのうちの「HSK入門級」と「C.TEST」についてご紹介します。
 HSK入門級は、最も易しいレベルの試験で、聴解、読解、総合的な表現力を測定します。試験問題の説明が日本語でなされているため、入門レベルの学習者が受験しやすくなっています。中国語学習時間80〜300時間の人を対象者としており、900点満点中470点以上が合格です。
 C.TESTは、実践的な中国語力を測定する試験で、中国人とのコミュニケーションに必要な語学力を実践的な問題を通して測定します。試験は、A−Dレベル試験(学習時間1000時間以上)、E−Fレベル試験(学習時間400時間以上)の2種類があり、それぞれ試験のスコアによって、レベルが認定されます。E−Fレベルの試験内容は、リスニング及び文法・読解です。
 2012年までは、どちらのテストも中・高校生は受験料が免除(無料)となっています。中国語が母語ではない人の中国語力を測定するために作られた試験ですが、中国帰国者子女の母語保持や中国語学習へのきっかけとしてみてはいかがでしょうか。
 HSK入門級は年2回、C.TESTは年3回実施されており、次回の試験実施日は、HSK入門級が12月18日(日)、C.TESTが11月13日(日)です。詳しくは、以下のサイトをご覧下さい。問題のサンプルも見られます。
 C.TEST/HSK入門級日本事務局 http://c-test.jp/xp/


奨学金情報

★「坪井一郎・仁子 学生支援プログラム」・「生活支援プログラム」
  社会福祉法人 さぽうと21

http://www.support21.or.jp/で前年度の詳細が見られます。
本年度は、11月以降に事務局まで直接、お問い合わせください。
Tel :03-5449-1331
Fax:03-5449-1332

★「中国帰国子女高等学校等奨学金」
  財団法人 山崎豊子文化財団

・対象:大阪府下に住み、府内の公立高校・公立高専・公立専修学校に入学を希望する中学3年生
・募集期間:平成23年11月1日〜11月25日
・奨学金:月額2万円(返済の義務なし)
〒592-8345 堺市浜寺昭和町3丁391番地2
Tel 072-266-2522

★「就学資金対象者募集案内」
  公益財団法人 中国残留孤児援護基金

 @高等学校、大学及び専修学校、日本語等教育機関等への就学
  締切(予定):平成24年1月31日
 A鍼灸師養成への就学
  締切(予定):平成23年12月15日
 詳細はこちら
 http://www.engokikin.or.jp/
  (11月以降掲載の予定)


お知らせ

当センター・ホームページ「同声・同気」トップ −支援情報 − 〈進学進路情報〉コーナーhttp://www.kikokusha-center.or.jp/

◆11月上旬に更新予定!
《 全国中国帰国生徒及び外国籍生徒への高校入試特別措置情報 》
《 昼間の中学校編入情報 》
◎昨年から、政令指定都市のうち12都市の市立高校調査も追加◎

◆随時更新!
《 2012年度(2012年4月入学)中国引揚者等子女特別枠のある大学入試情報 ホームページアドレス一覧 》
《高校進学ガイダンス情報》埼玉・東京 更新

  


 この紙版『同声・同気』は、随時発行しているweb版『同声・同気』(当センターHP http://www.kikokusha-center.or.jpに掲載)から抜粋して編集しています。
 このweb版につきましては、情報掲載時に、その内容をメールにてお知らせすることができますので、ご希望の方は、以下の宛先まで、@お名前(団体窓口者の方は団体名も)とAご自身のメールアドレスをお教えください。
 宛先:tongtong(a)kikokusha-center.or.jp
(お問い合わせは 電話04-2993-1660 FAX 04-2991-1689 )

遠隔学習インフォメーション

「日本語遠隔学習課程(通信教育)」受講者募集中!!

 下半期の「日本語遠隔学習課程(通信教育)」に新コース、新教材が登場します。募集要項が必要な方は、センターまでお問い合わせください。

★新コース!「おしゃべり話題コース(CD付)」 2012年2月開講予定

 簡単な自己紹介程度のやり取りはできるが、もう少し長い時間、周囲の人たちと「おしゃべり」する力をつけたい人。どんな話題で、どんなことに気をつけながら会話すればよいかを、たくさん聞き、声に出す練習を通して学習していきます。中国語母語話者の発音の弱点を取り上げた練習もついています。インターネットのスカイプを使ったプログラムもあります。

★新たに音声教材が付きました!

「漢字ゆっくりA/Bコース(CD付)
 「漢字ゆっくりコース」は、生活の中で比較的よく使う漢字語彙の読み書きを学ぶコースでしたが、皆さんのご要望にお応えして11月からは音声教材(CD)がつくことになりました。生活の中で使う漢字語彙を声に出して練習することができるようになります。
*センターHPで「遠隔学習課程」の詳細をご覧になれます:
http://www.kikokusha-center.or.jp/
*「遠隔学習課程」についてのお問い合わせ先:電話:04-2993-1662(教務第2課)
E-mail:kyohmu-2(a)kikokusha-center.or.jp

事例紹介

「人生の分岐点」

 今号では遠隔学習課程「自己表現作文」を受講された帰国者二世配偶者(19年前来日)のAさんの作文をご紹介いたします。

 日本に帰国すると決めたのは突然のことでした。既に日本に帰っていた義父が病に倒れ、危篤状態になりました。そのために長男である夫と一緒に日本へ来ました。気がつけばもう私は、今までに人生の三分の一を日本で過ごしています。初めは、日本に永住するとは想ってもいませんでした。
 旅行は青春時代からあちこちに行きました。違う環境で生活するのには、それなりに自信がありました。ですが、外国に永住となると話は別です。単純に好きな旅行ができると浮かれていて、このことに気がついたのは、いざアパートを借りて、日本に暮らし始めたときでした。
 初日アパートに入ると、主人と子供が私を見つめました。私は不安と緊張で少し体が震えました。主人と子供は外国で暮らすのは初めてという初心者です。彼らもまた不安でいっぱいのはずでした。こちらの不安を悟られないように、まずは思いっきり大きな声で「今日はおいしいものを作るよ!」と言いました。向こうからも負けないくらい大きな声で「手伝うよ!何をすればいい?」と返事が返ってきたので、その返事を聞いた瞬間、私の不安と緊張はどこかに吹き飛んでしまいました。「家族がいるから、なにもこだわらなくてもいい。家族がいるから、みんなで楽しめることができればいんだ。」こう考えたら、とても気が楽になりました。もう怖いものは何にもないと思いました。それに、空港まで見送りに来た父が「辛くなったら、帰りたいときにいつでも帰って来ていいよ。こっちに帰る家があるんだから。」と言ってくれました。私は帰る所があると思って、とても気楽な気持ちで日本の生活の幕を開けることができました。
 最初はうまく話せないときがあり、いろいろなことがなかなか伝わらず苦労しましたが、子供はどんどん上達していきました。日本に来て3ヶ月で、私の通訳として、何でもできるくらいにまで上達しました。それから二年後、子供が「母ちゃん、日本に連れてきてくれてありがとう。」とお礼まで言われたことは、忘れることのできない思い出です。日本に来て以来の苦しさと子供にお礼を言われた嬉しさを同時に味わいました。この国でもうちょっとがんばりたいと思うようになりました。
 生活するうちに喫茶店やカラオケバーにも行きました。電車の中ではゴミを捨てる人が見当たりません。スーパーやバイト先で見る日本人は積極的にルールを守り、仕事に一生懸命な姿が印象的で、いろいろ教わりました。なかでも、バイト先の店長は毎日深夜1時まで仕事をして、翌日は時間通り9時には既に店におられます。さらに土日もバイトを指導するために店によく見えました。私の日本人観に大きな影響を与えてくれました。そして、私も一生懸命がんばりました。
 また、経済条件が許す限り年1〜2回中国へ行って、両親・友人と楽しいひとときを過ごすことができたのはなによりでした。帰るたびに変化していくふるさとでも、人間の気持ちは昔のままです。
 私にとっては、中国は心の安まる場所であり、日本は気を張ってがんばれる場所です。これからも、このような生活を続けていくつもりです。人生の生き方とは思わぬことからつくられるものだと感じています。