第53号(2012年4月10日発行)  PDFファイル
地域情報ア・ラ・カルト
 「支援・相談員」の現場から〈その2〉 Cさん/中文訳・Dさん
行政・施策
 厚生労働省から ― 平成24年度中国残留邦人等支援関係予算の概要
 お知らせ「永住帰国した中国残留邦人、樺太残留邦人のみなさまへ」
教材・教育資料
 日中対訳育児用語集:『子育ての日本語』、『子育ての日本語U(健診)』
とん・とんインフォメーション
 『中国帰国者等生活ニーズ調査報告書』北海道中国帰国者支援・交流センター
 『外国人のための 改定入管法 Q&A』中長期在留者向け/非正規滞在者向け/特別永住者向け
 ニュース記事から 2011.06.02〜2012.02.29
 庵谷磐さん 人物紹介コラム
 多言語による高校進学進路ガイドブック
 各地の中国帰国者のための墓地一覧
遠隔学習インフォメーション
  遠隔学習課程教材見本が見られます!音声も!
  遠隔課程受講者募集中!
事例紹介 「50歳の新しい出発」
  遠隔学習課程「自己表現作文コース」より

 この紙版『同声・同気』は、随時発行しているweb版『同声・同気』(当センターHP http://www.kikokusha-center.or.jpに掲載)から抜粋したものも含まれています。目次のは、web版(2011年11月号、12月号、2012年2月号)で紹介済の記事です。
 web版は、情報掲載時に、その内容をメールにてお知らせすることができますので、ご希望の方は、以下の宛先まで、@お名前(団体窓口者の方は団体名も)とAご自身のメールアドレスをお教えください。
 
宛先:tongtong@kikokusha-center.or.jp
 お問い合わせは 電話04-2993-1660 FAX 04-2991-1689

地域情報ア・ラ・カルト

「支援・相談員」の現場から〈その2〉

Cさん
中国・四国 地方都市 所属:県(2008年度〜)
3市1町9世帯を担当 教育委員会の「学校生活支援員」を兼務

1.日頃の活動:

  平日は教育委員会関係の仕事で、中国から帰ってきた子どもの生活支援・通訳として小学校に勤め、土日祝祭日に帰国者本人・関係機関からの依頼で支援・相談員としての業務をおこなっています。緊急時には、即現場にかけつけています。主に、男性の単身者を担当しています。

2.帰国者の最近の様子と相談内容:

  支援給付が始まって以後、帰国後生活保護を受けないで就職して頑張った方々も「生活が安定した。日本に帰ってよかった」「帰るべき所に帰った」との声が聞かれるようになりました。しかし、日本語の習得が困難な方、日本の生活にどうしてもなじめない方は、今も多くの複雑な悩みを抱え、生活をしておられます。
  最近あったことですが、「携帯電話が故障して3年間使っていないのに基本料金を預金から引かれた」と訴えた人や、市内(路面)電車に乗り、料金を支払うように言われ「自分は中国から帰国した老大爺だ。けしからん」と訴えた人がいました。
これらは極端な例ですが、最近私が感じるのは、若い時期には日本の文化習慣に合わせながら生活してきた人も高齢になり、中国で長い間に身につけた考え方や生活のあり方が表面に出てきているのではないかと思うことがあります。特に一人住まいの男性はこの点、深刻です。
  この他、最近よくある一世からの相談は、自分亡き後の二世・三世の生活のことです。「息子が40歳過ぎても結婚しない」「仕事はまじめにしているが、会社が不況で倒産しそうだ」「息子が働かない。日本語を勉強しない。生活保護を受けているが、日本も景気がよくない。将来どうなるか心配」の声を耳にします。私の家にもよく話しに来ますので共に食事をしながら、共 に考えるようにしています。

3.今後の問題と相談員としての悩み:

  帰国者一世の中には、帰国後配偶者を亡くしたり、離婚したり、共に帰国した子供たちも結婚して遠くの地へ行き、別居している方もおられます。まさに現代日本のうつし絵の状況です。
  “孤独”の声は多くの男性の方々から聞かれます。「二世・三世との同居ができないか」と私も周りの方々からよく言われますが、男性の場合はいろいろと問題があり、同居が難しいのが現状です。また、一人住まいの男性帰国者から「茶飲み友達を紹介してほしい」との相談をよく受けますが、これも難しい問題です。それから、一世の介護・入院への対応は“待ったなし”ですので、私たち支援・相談員としても迅速な対応を心がけたいと思います。
  もう一つは、自費帰国者・呼び寄せ家族への対応です。自費帰国者は生活意欲旺盛で帰国後すぐ就職し、安定した生活を送っていましたが、最近は、定年・企業のリストラにより失業し生活保護に移行しております。共働き夫婦も一方が失業するとたちまち家庭が困窮し、夫婦間がぎくしゃくしているとの相談もよく受けております。自費帰国者への支援体制の拡大はとても大切なことと考えています。
  最後に、帰国者の中には、いろいろとたくさんの仲よしグループができています。これはとてもいいことですが、中国にいた頃の生活環境の違いイコール付き合える相手、付き合えない相手となることは寂しいことです。共に中国で苦労した仲間です。「みなさん、仲よくいたしましょう!」私たち支援・相談員からのお願いです。

所沢センターより

  支援・相談員の派遣のされ方もいろいろですね。やはり、個人の家を訪問するわけですから、相談員と帰国者のマッチングは自治体も苦労されるところでしょう。今回の相談員の方は、男性帰国者、特に一人住まいの高齢者を担当されることが多いとのこと。その高齢帰国者に関して興味深い指摘があります。第二言語学習者が、高齢になると第一言語(母語)に戻っていくという話はよく言われるところですが、生活様式も考え方も戻っていくという点です。逆に言えば、帰国者の方々は、それまでの日本生活で入郷随俗を胸に、日本の生活習慣に我慢しながら合わせて生きていたとも言えますね。もちろん、帰国者の方々は中国での生活様式も様々です。今回ご報告いただいた事例は、たまたま対応されたその中のごく一部の例だと思います。しかし、一人住まいとなった男性帰国者の方々は日本語の問題やプライドの問題等で周囲と関係を持っていくことは難しい場合もあるでしょう。特に、間に入る二・三世も近くにいないとすると、そのような帰国者を一人にしない方策を考える必要があります。
  また、相談員は、予測もしない事態への対応や異文化間の調整という難しい役割を担わざるを得ないこともよくわかりました。

 

 

Dさん(帰国者2世)

1.日頃の活動:

  平成20年4月から支援・相談員を担当しているが、新支援策が施行される前から自立指導員として帰国者の支援に当たってきた。
新支援策によって年金問題は改善を見た。里帰りや墓参りなどにも自由に行けるようになったことも大きい。以前、生保受給時に感じていたストレスも軽減されたが、福祉事務所の訪問時にはまだ不安を感じる人もいるようである。
  今多いのは通院時の通訳、介護保険についての質問や申し込み時の手助けだが、一世世代は日本語での会話がもともと難しかったことに加え、歳とともに更に日本語の力が衰えてきているため、やはり生活のあらゆる場面で助けが必要となっている。この他に、この1年の範囲では、亡くなった帰国者のお墓をどうすればいいのかという相談や残された配偶者の支援について、問い合わせがあった。

2.問題と感じること:

  一世世帯は新支援策のおかげで昔に比べれば生活のストレスは軽減されたが、一世の多くが心配しているのは自分たちよりも二世世帯のことである。二世は今や帰国者大家族の大黒柱として、後から帰国した呼び寄せ家族の仕事探しや日本語学習を助けている。そのような苦労の中で、呼び寄せ家族はどうして援護策を受けられないのかと感じることも多い。同伴できるのは1家族だけだが、呼び寄せ家族の方がずっと数は多い。しかし、来日時に集中的な日本語教育や日本での生活についての説明等も受けられないため、特に1、2年目は、子どもの学校、予防接種、年金加入の手続き、自動車免許の書き換え等々、生活のあらゆる面で支援を要することが多い。運転免許は日本で生活する上で非常に大事なものである。中国から持参してきた自動車免許証を、来日早々、切り替えるための手続きにかかりたいという心情は理解できる。しかし、こうした手続きはとてもではないが手助けなしにできるものではない。その後も、例えば、法務局での帰化・国籍取得の手続きは、煩雑すぎ日本語ができない人には非常に難しいものである。ヘルパー資格取得の勉強がしたい、ハローワーク主催の講座や民間業者が主催の就労のための講座を受けたい、こうしたこと一つとっても、最初の段階で手助けしてやらないとうまくいかないことがある。
  私の属する自治体の帰国者援護の担当部署では、呼び寄せ家族の支援に赴くことも認めてくれている。しかし、自費帰国者は基本的には支援の対象外であることに変わりはない。制度に組み込まれていない支援は、今回は可能でも次回は不可能ということにもなりかねない。幸い地域支援プログラムによる日本語教室は、呼び寄せの人も参加できるのでそれはありがたいことだが…。
他の地域では、呼び寄せ家族の支援はどのように考えられているのだろうか。実際に支援を必要としている帰国者は、行政以外に頼れる人がいないのが現実である。意欲的に日本での生活に取り組もうとする人に支援してあげようと私たちは思っている。しかし、それが自費帰国者ということで、支援通訳の派遣ができないと行政が判断した場合、立場上どうすることもできない。一世の安心は、二世世帯の自立と経済的な安定があってこそである。自費帰国者への支援体制の拡大が、現在一番問題となっていることではないかと考える。
  また、一世の介護については、書類やパンフレットでの説明では理解してもらいにくいので、制度の説明だけでなくデイケアセンターなどの介護施設を実際に見てもらうことはできないだろうか。また介護を受けるとき、日本語力が限られていることから、サービスを受けられたとしてもそれ自体がストレスになってしまう。言葉の壁のために介護サービスは受けたくないという一世世代は、二世たちが代わりに介護するしかないが、忙しい二世が仕事等の事情で介護できなくなったときにはどうするのだろうか。日本語ができないために在宅介護も施設入所も希望しない一世世代、彼らをどう支援するかも、大きな問題である。

3.二世相談員として

  一世は皆高齢である。彼らが助けを必要とするときには駆けつけて支援にあたろうと考えている。今まで本当に苦労続きだった彼らには、せっかく帰ってくることができた祖国で、幸せな老後を送ってほしいと切に願っている。

 

行政・施策

☆厚生労働省から

平成24年度中国残留邦人等支援関係予算の概要

【23年度予算額】    【24年度予算額】
11,038百万円  →  10,924百万円

「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律」に基づく満額の老齢基礎年金等の支給、老齢基礎年金等を補完する支援給付の実施など、中国残留邦人等への支援策を着実に実施する。

1.中国残留邦人等に対する生活支援
10,000百万円 → 9,978百万円

(1)満額の老齢基礎年金等の支給
312百万円 → 327百万円
満額の老齢基礎年金等の支給に必要な保険料納付のための一時金を支給する。
(2)中国残留邦人等に対する支援給付の実施
9,688百万円 → 9,650百万円
支援給付を実施するとともに、その実施機関に支援・相談員を配置する。
(3)地域生活支援事業の実施
(20,000百万円の内数 → 23,724百万円の内数)自治体を実施主体として自立支援通訳の派遣や日本語学習の支援、交流事業等を行う。

2.定着自立援護
462百万円 →  429百万円
中国帰国者自立研修センター及び中国帰国者支援・交流センター運営事業を実施する。

3.帰国受入援護
534百万円 →  481百万円
中国帰国者定着促進センター運営事業を実施するとともに、永住帰国旅費等を支給する。

4.身元調査等
42百万円 →   36百万円
中国残留孤児の身元調査のため、訪中調査等を実施する。

※上記の他、職業安定局及び職業能力開発局において永住帰国した中国残留邦人等の二世・三世に対する就労支援を実施
52百万円 → 33百万円
ハローワークにおけるきめ細かな職業相談や試行雇用の実施等の就労支援を促進する。

※百万円単位で四捨五入しているため、各欄の増減が一致しない場合がある。


お知らせ

《永住帰国した中国残留邦人、樺太残留邦人のみなさまへ》

  満額の老齢基礎年金受給申請の締め切りは平成24(2012)年12月31日です。詳しくは当センターホームページの新着情報コーナーをご覧ください。
http://www.kikokusha-center.or.jp/ 日本語版、中国語版あり。 ロシア語版は5月に掲載予定。

■問合せ先
  厚生労働省社会・援護局援護企画課中国孤児等対策室 自立援護係
  電話 03-5253-1111(内線3468) 03-3595-2456(直通)

 

教材・教育資料

日中対訳育児用語集:『子育ての日本語』、『子育ての日本語U(健診)』

『子育ての日本語・育儿日?』 2010年3月発行 A5判 71ページ 頒価700円
『子育ての日本語U(健診)・育儿日?U(体?)』2011年3月発行 A5判54ページ 頒価700円
にほんごサポートひまわり会 編

 「子どもがいると、保育所や病院、日本のお母さんとのつきあい、子どもへの話しかけなど、いろいろな場面で日本語が必要です。中には辞書に載っていない言葉もあって、たいへんです。」「乳幼児健診の時の特有な言葉がわかりにくい」といった外国から来たお母さんたちの声に応えて、にほんごサポートひまわり会から『子育ての日本語』『子育ての日本語U(健診)』が発行されました。
 『子育ての日本語』は、子育てでよく使う言葉を集め、日本語と中国語の対訳にしたもので、あいさつ、家族、食事、服装、日常生活、遊び、友だち、感情・性格、励ます・ほめる、赤ちゃん、保育所・幼稚園、病気、薬と注射、けが、安全、交通、街で、祝日と年中行事など様々な場面ごとに簡単な発話例や語彙集にまとめられています。また、巻末には付録として年月日・曜日・期間、時間・時刻、主な量詞・単位、親族呼称、アルファベットなどの言い方も紹介されています。
 『子育ての日本語U(健診)』は、乳幼児健診の際によく使われる言葉や問診票に出てくる言葉などを集めて、日中対訳にしたものです。基本的な用語、妊娠中のこと、出産時のこと、お母さん・養育者、新生児、栄養・便、病気・けが、成長・発達、目・耳・歯、予防接種などの項目について簡単な発話例や語彙集にまとめられています。
 なお、同会では外国にルーツを持つ子どもたちに大人はどう関わっていけばいいのか、その事例をまとめた『外国から来た子どもを地域で支える(全五集)』も出しています。(本紙NL38号で紹介)

■購入等連絡先
にほんごサポートひまわり会  斎藤裕子
電話:090-6676-5839
e-mail:himawarij1511@gmail.com
http://www.himawarikai200311.org/

とん・とんインフォメーション

『 平成22年度地域生活支援推進事業 中国帰国者等生活ニーズ調査報告書 』

発行:社会福祉法人 北海道社会福祉協議会、北海道中国帰国者支援・交流センター 平成23年3月

 この報告書は、帰国者の老後の安心を支える地域生活支援推進事業の具体的な計画策定を目的として実施され、道内の中国/サハリン帰国者一世本人を対象に、調査員※が家庭を訪問して面接調査した結果をまとめたものである。北海道全域の帰国者を対象とする調査は初めてのものであり、この調査を通して帰国者の「高齢化・虚弱化・介護」の問題が如実に浮かび上がってきていると本書は述べている。
内容は、調査の概要と結果、「うつ病スクリーニング尺度」との関連要因についての分析、生活ニーズをめぐっての調査員による座談会の記録、帰国者の生活事例報告、この調査に基づいて企画された地域生活支援推進事業「介護保険制度理解のための見学会」の報告等からなっているが、本稿では、特に、調査結果からうかがうことができる帰国者一世の高齢化の状況や実態、本人達の思い等に焦点を絞り、その一部を要約して紹介したいと思う。
[回答数:中国帰国者99名・サハリン帰国者56名 平均年齢:71.1歳]

●健康状態:「あまり健康ではない/健康ではない」が60%と、内閣府の65歳以上日本人の調査結果(2002年)26.5%というデータと比べ、高い数字が出ている。(単純に比較はできないが、帰国者の生活歴・生活環境からやはり疾病をかかえる者が多いと想像される)また、中国帰国者は40.4%が病院受診時に通訳が必要としている。介護については、「〈介護保険制度〉を知らない」が31%いるが、「すでに介護施設に入所している」等が16人、「何らかの介護を受けている」は全体の11.0%おり、介護サービス対象者は確実に増加している。将来の介護に不安を持ち、特に施設入所の場合、コミュニケーションや文化の違いに不安があるとの声が多く聞かれた。

●メンタルヘルス:帰国者は特異な人生を送ってきた人々である。過去の悲惨な経験、加えての異文化適応という課題から、様々なストレスを抱え、引きこもり、鬱的な傾向が見られる例もある。調査項目に「鬱病スクリーニング尺度」の〈2質問法〉を用いた設問を加えた結果では、約2割が「鬱状態」にあると判定されている。また、この設問とその他の設問項目との関連を見た結果からは、日本語の力、それも会話力と鬱状態に関係があること、会話力の向上は予防効果が大きいこと、付き合いがよく、日本文化に親しみを感じていると鬱的な症状は軽くなること、鬱的な傾向に陥りやすい帰国者にとっては、趣味・娯楽の活動が有効であり、生活の満足度をいかに上げるかが重要であること等が指摘されている。

●心配なこと:中露を問わず、@健康と今後の生活、A二・三世の生活や将来、B配偶者の老後、が挙げられている。
Aについて:二・三世は、圧倒的に自費帰国者が多く、国の日本語学習・就労支援は受けられない。二世の年齢は30代〜50代、中には60歳を超える二世もいる。一世は、新たな支援策※※により経済的に一定の安心が得られているが、二世はこれまでも、自身の就労、子どもの教育問題等苦労を重ねてきており、昨今の不況下、不安定な就労状況、高年齢の二世の場合は自らの老後の問題が不安の原因となっている。一世の心配はこうした二世の状況についてのものである。
Bについて:配偶者の支援給付に係わる問題を指している。一世本人の死後、国民年金の満額支給が停止され支援給付のみの支給となったときのことが生活不安となっており、これは全国の帰国者から制度の問題として改善要望が出されているものである。
こうした調査結果とともに掲載されている、6人の帰国者の生活事例報告も貴重なものである。高齢化の進む帰国者一世の状況を知り、今後の支援の方向を探るための資料として一読をお勧めしたい。

この報告書は、北海道中国帰国者支援・交流センターHPからダウンロード可能
→ http://www.hokkaido-sien-center.jp/
※ 調査員:支援・交流センター職員、支援・相談員、身元引受人、自立指導員
※※「新たな支援策」:2008年4月より施行された、老齢基礎年金の満額支給、それを補完する生活支援給付等、帰国者(孤児/婦人等)の老後の生活安定のための支援策。身近な地域での日本語教育支援事業や自立支援通訳等の派遣など、地域社会における帰国者本人とその家族のための生活支援も含まれている。
 


『外国人のための 改定入管法 Q&A

中長期在留者向け/非正規滞在者向け/特別永住者向け
○B5判カラー、中長期滞在者向けは16頁、他は12頁、2011.6.15発行
○編集・発行…「移住労働者と連帯する全国ネットワーク・入管法対策会議」、「在留カードに異議あり!NGO実行委員会」
○多言語版発行…「外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会 」
○メール:aacp@repacp.org、URL:http://www.repacp.org/aacp/

 2009年7月、「新たな在留管理制度」と「外国人住民票制度」に移行する入管法・入管特例法・住民基本台帳法の改定案が、国会で成立しました。新制度は2012年7月から実施されます。
 新制度は、1947年に始まった外国人登録制度を廃止し、在日外国人を「特別永住者」「中長期在留者」「非正規滞在者」という3カテゴリーに分けて管理するものです。例えば、特別永住者には市区町村から「特別永住者証明書」が、日本人の配偶者などの正規滞在者には地方入国管理局から「中長期在留者」としての「在留カード」が交付されます(帰国者の場合、一世配偶者や二世配偶者がこのカテゴリーに含まれます)。
 これらの新証明書はどのようなものなのか、権利や制限については何が今までと異なるのか、当事者への周知が遅れている中、編著者が、「改定」入管法及び住民基本台帳法の条文に即して、法務省と総務省のウェブサイトや、法案作成者たちによる解説書などを参照しながら、改定法が適用される外国人の視点から構成したのが本パンフレットです。「外国人登録証明書がなくなるの?/外国人住民票って?/罰則制度は緩和されたの?/再入国許可がいらなくなったの?」などの質問に答える形でわかりやすく書かれています。
 日本語版Q&Aは、3種セット販売が基本となり、1セット3冊で300円(送料込)、種類別のばら売り(1冊あたり100円・送料込み)は、30冊から受け付けるとのこと。
 購入希望の向きはhttp://www.repacp.org/aacp/ (入管法対策会議 + 在留カードに異議あり! NGO実行委員会 + aacp)内の用紙にセット数/冊数・送り先等を記入して、Faxで申し込み用紙記載の番号まで。代金は、送られてきたパンフ同封の郵便振替用紙で。10セットまたは30冊以上は、10〜50%の割引あり。詳しくは同サイトで。
 英語版・ポルトガル語版・スペイン語版、中国語版・ハングル版・タガログ語版・タイ語版の『「中長期在留者」向け・「非正規滞在者・難民申請者」向けQ&A』も順次発行の予定とのこと。これらはウェブ上では既に公開されており、PDFでダウンロードできます。2011年12月21日現在、上記言語に加えてビルマ語版もアップされています。
 ちなみに、入国管理局もhttp://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_1/index.htmlにて、簡単な説明を日・英・中・韓・スペイン・ポルトガル語で公開していますが、詳しい「Q&A在留管理制度 よくある質問」は日本語版しかありません。(http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_1/q-and-a.html)
 なお補足情報ですが、在留カードは2012年1月から入管窓口で受け付けを開始し、7月の施行以降に発行されます。しかし、1月に大勢が殺到すると入管の業務もパンクしてしまうことと、7月前に申し込むと、申し込み時と取りに行く時とで二度手間になってしまうことから、外国人登録証や在留資格の期限が7月前に切れる人以外は、この間3年間は現行の外国人登録証を「みなし在留カード」とする経過規定が設けられているので、7月以降にゆっくり手続きをしても間に合います。


ニュース記事から 2011.6.2〜2012.2.29

2011/06/09 高齢化する永住帰国した残留邦人、道内初の生活実態調査 北海道中国帰国者支援・交流センター/札幌
2011/06/15 中国残留孤児未認定(物的証拠や証言者が乏しく認定されない)の徐士蘭さん、ボランティアの助けを得て一時帰国
2011/06/18 中国帰国者の生活安定を求め「中国帰国者の尊厳を回復する岡山の会」発足/岡山
2011/08/07 旧満蒙開拓の慰霊碑撤去 建立から10日余り/中国・方正県
2011/08/08 日本語指導必要な外国人児童生徒は2万8511人/文部科学省調査
2011/10/12 中国残留孤児、新たに1人認定 杜春泉さん
2011/11/03 浜口タカシさん、中国残留日本人孤児の訪日調査記録写真等を援護基金に寄贈/横浜
2011/11/06 5日、「中国残留邦人等への理解を深めるシンポジウム」開催/厚労省、広島
2011/11/09 8日、「外国人集住都市会議」開催。外国人に対する施策の推進を求める/飯田市
2011/11/29 中国残留孤児、杜春泉さんが一時帰国。肉親捜しの訪日調査は2年ぶり
2011/12/21 中国帰国者の墓碑完成 18日開眼式/仙台
2012/01/06 5日、元中国残留孤児問題全国協議会会長の庵谷磐氏死去/東京
※庵谷磐さんの人物紹介コラムが下にあります。
2012/02/02 満蒙開拓平和祈念館事業準備会主催、満蒙開拓団の歴史を語り継ぐ連続講座開始/飯田市
2012/02/23 在日高齢者に安心の場 NPO法人がグループホーム7月開設/神戸・長田
 


人物紹介コラム

「元中国残留孤児問題全国協議会会長 庵谷磐(いおりや いわお)さん」

 中国残留孤児、残留婦人を長年支援し、国の責任を問い続けた。
 1917年旧満州・瀋陽の生まれ。東大卒業後、満鉄撫順炭鉱に勤務。1945年8月ソ連軍の侵攻から逃げてきた避難民を同炭鉱が受け入れた経緯がある。1976年から支援活動に関わり、理論派として知られる。膨大な資料を収集し、その一部は当センターHPに「いおりやノート」※として掲載されている。晩年は満鉄会の専務理事も務め、2007年には640ページにも及ぶ『満鉄40年史』を出した。
 2012年1月5日逝去。享年94歳。(朝日新聞2012年2月18日夕刊より)

※「いおりやノート」を見るには、
中国帰国者定着促進センターHPトップ コンテンツガイド→ 教材・論文→ 孤児関連文献等と入ってください。訪日調査、国籍・戸籍問題、中国残留邦人問題史、二世問題等のテーマ別に、新聞記事の見出しと掲載年月日、法令の廃止・成立などの記録、年表、参考文献などが、掲載されています。  (→「いおりやノート」にジャンプ

 


多言語による高校進学進路ガイドブック

 全国各地で高校進学ガイダンスは例年、6月ごろから始まります。本年度も当サイトhttp://www.kikokusha-center.or.jp/の〈支援情報〉コーナー「進学・進路情報」に随時、掲載します!
 以下は現在、入手可能な多言語進路ガイドブックのリストです。
 詳細は「web版同声同気2012年2月24日号」をご覧ください。
(http://www.kikokusha-center.or.jp/shien_joho/newnl/nlframe.htm)

・宮城県 http://shinro-miyagi.jimdo.com/ 英・中・韓・タガログ・日
・埼玉県 http://www.sia1.jp/guidance/guidance11.html 英・スペイン・ポルトガル・中・タガログ・ベトナム・日
・東京都 http://www.tokyoguidance.com/guidance.html 中、韓・朝鮮、英、タガログ、スペイン、タイ
・神奈川県 http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f6923/ 英、中、スペイン、ポルトガル、韓・朝鮮、タガログ、タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム
・滋賀県 http://www.s-i-a.or.jp/gaikokuseki/mirai/index.htm 日・英・ポルトガル・スペイン・中
・静岡県 http://www.n-pocket.jp/ 日、ポルトガル、スペイン、英、タガログ、中


「各地の中国帰国者のための墓地一覧」
が中国帰国者支援交流センター(首都圏センター)のサイトに掲載されました。

http://www.sien-center.or.jp/
トップ画面右→コンテンツ〈生活相談事業〉→相談実例→生活
東京都あきる野市を除き、宮城県仙台市、群馬県前橋市、山梨県甲府市、長野県長野市・松本市・飯田市、愛知県名古屋市、福岡県福岡市は墓地所在地の自治体居住者が対象です。
詳細は上記のサイトで。

 

遠隔学習インフォメーション

★「遠隔学習課程(以下、遠隔課程)」で使用されている教材の一部が見られます!
音声も聞けます!

 遠隔課程で使用されている教材は、全部で30種類以上あります。コースを選ぶにも内容がわからないと選びようがないなあ、と思っている方も多いかと思います。センターHPで教材の目次や内容の一部が見られたり、CDが付いている教材は音声も聞けます。是非一度アクセスしてみてください。http://www.kikokusha-center.or.jp/ 教材は購入もできます。

★遠隔課程の受講者を募集中です!

・「めざせレベルW おしゃべり話題コース(CD付)」快調にスタート!

 「日本に来て大分長くなるけど、周囲の人とのおしゃべりには自信が持てない。」「挨拶はするけどその後の話が続かない…」という人に薦めたい、会話力アップのためのコースです。インターネットのスカイプでおしゃべり練習をするプログラムもあります。

・「生活場面日本語 学校コース(CD付)」が改訂されました!

 語彙リストを充実させ、わかりにくい語彙にはイラスト、写真を付けました。音声も付いているので、保育園や学校でもすぐ使えます。日本事情の情報量も増えました。
◎遠隔課程、申し込みについての問い合わせ先
電話:04-2993-1662(教務課) 
E-mail:kyohmu-2(a)kikokusha-center.or.jp

事例紹介

 今号では遠隔学習課程「自己表現作文(2)「日本の生活」Aコース」を受講された中国帰国者一世の長尾ますみさん(69歳)の作文をご紹介します。

「50歳の新しい出発」 長尾ますみ

 1972年、日中の国交が正常化された後、養母が一時帰国する残留婦人に頼んで、私の肉親を探しました。紆余曲折を経て、ようやく肉親を見つけました。心から養母に感謝し、一時帰国して、祖国を見たい、両親に会いたいと思いました。
 しかしその時、中国では文化大革命がまだ終わっていなかったので、日本へ行ったら家族がまた文革の影響による迫害を受けるかもしれないと思いました。不安な気持ちを持って一時帰国しました。
 初めて日本の土を踏んだとき、まるで別の世界に着いたかのようでした。耳に聞こえたのは分からない日本語で、目を引いたのは、人々の身なりでした。奇抜な服装をして、様々なアクセサリーをつけ、厚化粧をするなど、その姿を見て、本当にびっくりしました。
 当時、中国ではみんな大抵同じデザインの服装で、色ももえぎ色、グレー、紺など限られたいくつかの色だけでした。そしてアクセサリーをつけ、化粧するのは演劇するときだけでした。誰かがこの規則に違反したら、白い目で見られ、資産階級生活スタイルと言われることさえありました。
 日本の実家で半年ぐらい暮らした時、見るもの、聞くもの何もかも新鮮に感じました。便利な交通、発達している商業、色々な文化などがとても印象的でした。
 日本にいる間、両親と兄弟が親切にしてくれました。終戦時、私と生き別れたこと、父がシベリアに抑留されたことで、母が一時失明したことなどの話を聞いて、私は深い感動を受けました。親子の情愛も徐々に甦りました。
 一時帰国後、日本語が分からない私たちは日本で仕事ができないことを心配しました。それに、私を育ててくれ、何十年間私と互いに頼りあって生きてきた養母と離れることがどうしてもできませんでした。1990年、養母が脳梗塞で突然亡くなり、職場も倒産寸前になりました。私は大きな精神の支柱を失いました。それで、帰国の決心をしました。
 帰国して、就職のため、兵庫県に定着しました。家は職場まで近くて、静かな公営団地でした。当時、会社が忙しかったので、入居後、すぐ出勤しました。会社の主な製品は皮革で、私は皮の塗装の仕事、夫は皮をバイブレーションで柔らかくする仕事でした。毎日緊張し、忙しく、その上、夏の職場はとても暑かったですが、就職する前に苦労する覚悟ができていたので、二人とも一心不乱に働きました。
 会社の中には、日本人だけでなく、ベトナム、ラオス、韓国人もいました。最初は不自由な日本語で交流するのはとても難しかったです。日常生活でも団地の当番、亡くなった隣人の通夜など分からないことも多くありました。幸い、仕事の仲間、隣の人が親切に教えてくれ、皆さんのおかげで私は困難を乗り越えました。
 50歳からの新たな生活はほとんどゼロから出発して、たいへんでしたが、新しい環境で自立するため、14年間仕事を続けてがんばり通しました。帰国当初、母は私たちの日本での生活能力を心配しましたが、今は天国の母に「娘はもう安定した生活ができるようになったので、ご安心ください。」と告げることができます。

 

●張雨均さん(ご主人)の切り絵