法律第30号

中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律
(目的)
第一条
この法律は、今次の大戦に起因して生じた混乱等により、本邦に引き揚げることができず引き続き本邦以外の地域に居住することを余儀なくされた中国残留邦人等の置かれている事情にかんがみ、これらの者の円滑な帰国を促進するとともに、永住帰国した者の自立の支援を行うことを目的とする。
(定義)
第二条
この法律において「中国残留邦人等」とは、次に掲げる者をいう。

一 中国の地域における昭和二十年八月九日以後の混乱等の状況の下で本邦に
引き揚げることなく同年九月二日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたもの及びこれらの者を両親として同月三日以後中国の地域で出生し、引き続き中国の地域に居住している者並びにこれらの者に準ずる事情にあるものとして厚生省で定める者
二 中国の地域以外の地域において前号に規定する者と同様の事情にあるものとして厚生省で定める者
2 厚生大臣は、前号第一号又は第二号の厚生省令を定めようとするときは、あらかじめ、法務大臣及び外務大臣と協議しなければならない。
3 この法律において「永住帰国」とは、本邦に永住する目的で本邦に帰国することをいう。
4 この法律において「一時帰国」とは、親族の訪問、墓参りその他の厚生省令で定める目的で本邦に短期間滞在するために本邦に帰国することをいう。
 (国等の責務)
第三条 国は、本邦への帰国を希望する中国残留邦人等の円滑な帰国を促進するため、必要な施策を講ずるものとする。
第四条 国及び地方公共団体は、永住帰国した中国残留邦人等の地域社会における早期の自立の促進及び生活の安定を図るため、必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、必要があると認めるときは、地方公共団体が講ずる前項の施策について、援助を行うものとする。
第五条 国及び地方公共団体は、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援のための施策を有機的連携の下に総合的に、策定し、及び実施するものとする。
 (永住帰国旅費の支給等)
第六条 国は、中国残留邦人等が永住帰国する場合には、当該中国残留邦人等に対し、厚生省令で定めるところにより、当該永住帰国のための旅行に要する費用(当該永住帰国する中国残留邦人等と本邦で生活を共にするために本邦に入国する当該中国残留邦人等の親族等であって厚生省令で定めるものがいる場合には、当該親族等の本邦への旅行に要する費用を含む)を支給する。
2 国は、中国残留邦人等が永住帰国する場合には、当該中国帰国邦人等及びその親族等(前項に規定する当該親族等をいう。以下第十一条までにおいて同じ)が出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)その他出入国に関する規定に基づき円滑に帰国し又は入国することができるよう特別の配慮をするものとする。
(自立支度金の支給)
第七条 国は、中国残留邦人等が永住帰国した場合には、当該中国残留邦人等に対し、厚生省令で定めるところにより、中国残留邦人等及びその親族等の生活基盤の確立に資するために必要な資金を、一時金として支給する。
(生活相談等)
第八条 国及び地方公共団体は、永住帰国した中国残留邦人等及びその親族等
が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするため、これらの者の相談に応じ必要な助言を行うこと、日本語の習得を援助すること等必要な施策を講ずるものとする。
(住宅の供給の促進)
第九条 国及び地方公共団体は、永住帰国した中国残留邦人及びその親族等の居住の安定を図るため、公営住宅(公営住宅法(昭和二十六年法律第百九十三号)第二条第二号に規定する公営住宅をいう。次項において同じ。)等の供給の促進のために必要な施策を講ずるものとする。
2 地方公共団体は、公営住宅の供給を行う場合には、永住帰国した中国残留邦人等及びその親族等の居住の安定が図られるよう特別の配慮をするものとする。
(雇用の機会の確保)
第十条 国及び地方公共団体は、永住帰国した中国残留邦人等及びその親族等の雇用の機会の確保を図るため、職業訓練の実施、就職のあっせん等必要な施策を講ずるものとする。
(教育の機会の確保)
第十一条 国及び地方公共団体は、永住帰国した残留婦人等及びその親族等が必要な教育を受けることができるようにするため、就学の円滑化、教育の充実等のために必要な施策を講ずるものとする。
(就籍等の手続に係る便宜の供与)
第十二条 国は、永住帰国した中国残留邦人等が戸籍法(昭和二十二年法律二百二十四号)第百十条第一項に規定する就籍その他戸籍に関する手続を行う場合においてその手続を円滑に行うことができるようにするため、必要な便宜を供与するものとする。
(一時帰国旅費の支給等)
第十三条 国は、中国残留邦人等が一時帰国する場合には、当該中国残留邦人等の親族等であって厚生省令で定めるところにより、当該一時帰国のための旅行に要する費用(当該一時帰国する中国残留邦人等に同行する当該中国残留邦人等の親族等であって厚生省令で定めるものがいる場合又は当該一時帰国のために介護人が必要な場合として厚生省令で定める場合には、当該親族等又は当該介護人の本邦への旅行に要する費用を含む)を支給する。
2 国は、中国残留邦人等が一時帰国する場合には、当該中国残留婦人等並びに前項に規定する当該親族等及び当該介護人が出入国管理及び難民認定法その他出入国に関する法令等の規定に基づき円滑に帰国し又は入国することができるよう特別の配慮をするものとする。
附則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(厚生省設置法の一部改正)
2 厚生省設置法(昭和二十四年法律第百五十一号)の一部を次のように改正する。
第五条第百八号の次に次の一号を加える。
百八の二 中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(平成六年法律第三十号 )の施行に関する事務で厚生省の所掌に属するものを処理すること。
(労働省の設置法の一部改正)
3 労働省設置法(昭和二十四年法律第百六十二号)の一部を次のように改める。
第四条第五十一号中「及び看護婦等の人材確保の促進に関する法律(平成四年法律第八十六号)を「、看護婦等の人材確保の促進に関する法律(平成四年法律第八十六号)及び中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(平成六年法律第三十号)」に改める。
法務大臣 三ヶ月 章
外務大臣 羽田  孜
文部大臣 赤松 良子
厚生大臣 大内 啓伍
労働大臣 坂口 力
建設大臣 五十嵐 広三
自治大臣 佐藤 観樹
内閣総理大臣 細川 護煕