中国帰国者が日本の生活の中で直面する問題          

1998.12.12
                             中国帰国者定着促進センター
                             平城 真規子

T.中国帰国者の概要

●中国帰国者とは
 ・永住帰国した中国残留邦人とその家族
  残留孤児(敗戦当時13歳未満)とその配偶者、二世とその配偶者、三世、養父母
  残留婦人(敗戦当時13歳以上)とその配偶者、二世とその配偶者、三世
●国費帰国者と自費帰国者
  国費帰国者…孤児とその同伴家族(大体20歳前後までの二世を含む)
        婦人とその同伴世帯
       ※平成9年度から婦人の他、55歳以上の孤児についても、二世家族(一世帯)の同伴帰国が認められている。
  自費帰国者…主に上記国費帰国者の呼び寄せ家族
・所沢センター学習者の状況
  多様な生活背景を持つ人たち(居住地域、職業、教育水準等)
  年齢構成(0歳から80歳まで)、母語(主として中国語、他に朝鮮語やモンゴル語等)
2.帰国者を生み出した歴史的背景
  1931年 中国東北地方を占領
  1932年 満州国の樹立
        満蒙開拓団と称された農業移民計画〜45年、総勢32万人
  1945年 ソ連対日参戦、関東軍の撤退
 
3.戦後から帰国までの道のり
  1972年 日中国交回復
  1981年 訪日調査による肉親探し実施
         帰国条件…身元判明者、肉親の身元引き受け
  1984年 日中政府間で「残留孤児引き取りに関する口上書」
        (帰国を希望するすべての残留孤児の引き取りと養父母の扶養費の保障)
  1993年 特別身元引受人制度により、帰国婦人への援護施策開始
 
●定着地…全国的に定着【別紙資料@】
●帰国状況
 ・国費帰国者
 ・呼び寄せ家族

U.帰国から定着自立までの流れと学習支援制度

  定着促進センター
  自立研修センター

V.「移住者」としての中国帰国者の側面

V−1異文化適応過程におけるストレスの要因と心理的変化の過程

 1)移民に見られるメンタルヘルス上のリスクファクター
    a.移住に伴う社会的・経済的地位の低下
    b.移住した国の言葉が話せないということ
    c.家族離散、家族からの別離
    d.受け入れ国の友好的態度の欠如
    e.同じ文化圏の人々に接触できないこと
    f.移住に先立つ心傷体験もしくは持続したストレス
    g.老齢期と思春期の世代

『カナダ移住者と難民の精神保険に関する特別委員会』報告書


 2)中国帰国者の適応初期の精神的課題
 〔孤児本人の場合〕

〔 配偶者の場合〕

〔 2世の場合〕

@日本語学習困難
A家族内の来日動機の不一致
B定着後の生活不安、不満

@故郷的なるものの喪失
A来日不安
B定着後の生活不安
C日本語学習困難
@定着後の不安
A故郷的なるものの喪失
B日本語学習困難
C帰国を巡る両親の葛藤
                               

 『移住と適応』江畑・曽・箕口

 

V−2 異文化適応と日本語

 1)異文化の地で「適応」するってどんなこと?
   「異文化適応してるってどんな状態をいうのか」
   「郷に入っては郷に従え」をどう思うか
 2)第2言語としての日本語教育の特色
   @サバイバル訓練的な性格
   A母語並の日本語能力志向する性格
   B生涯教育的な性格
   C社会的・文化的な性格
   D実存的な問題をはらむ問題

4.定着地での生活に伴う様々な問題と日本人側の課題
 ・言葉や文化の違い、教育制度の違いから生じる問題、援護政策上の問題、受け入れ側の不慣れさからくる問題(例:単一民族国家観と同化政策)
 

W.住民としての「学習権」

 1)教育を受ける権利/文化的な生活に参加する権利
    国際条約『国際人権規約』(1979批准)「学習権宣言」(1985)等
    『受け入れ国の社会に…適応するために、そして…出身の社会に再適応するために必要とされる言語上の知識及び一般知識並びに技術的、専門的な資格を取得させる』                     ユネスコ「成人教育に関する勧告」
 2)地域住民としての「共生」
    ・地域住民としての権利を共に守る
 
4.外国人定住者への「支援」
 1)「支援」の領域、役割

           外国人定住者
            を含む家族
              ||
 学校 ← PTA等の ← ご近所 → 日本語   →  日本語
      関係者?   サポーター   ボランティア   教師
              ↓
           生活支援の専門
           ボランティア
              ↓
            援護行政

 2)「支援」の形態・方法
   形態:教室・グループ・マンツーマン・ホームチューター・通信教育
   方法:定期的な授業・短期間の授業・スクーリング・学習相談・情報提供