資料5【学習者タイプ特定の基準】(案)

【学習者タイプ特定の留意点】

 再研修のコース設定にあたっては、研修を受ける学習者がどのタイプに属するか
を特定しなければなりません。カリキュラム設計の枠組みの「学習者タイプ」の定
義からそれを判断するのは非常に困難です。そこで学習者に求めたい技能を具体的
な項目にして判断の目安となるようにしたものが、この【学習者タイプ特定の基準】
案です。まだまだ妥当性の面でも実用性の面でも問題は多いのですが、実際に使用
されたセンターからご意見をいただいて改善していきたいと考えています。
  各技能が学習者に備わっているかどうか、評価する方法はいくつか考えられます
が、ここでは方法は問いません。その学習者の能力に一番近いと見なせる項目をチ
ェックしていきます。学習者の日本語力は各技能が平均していることのほうが少な
く、その学習者によって、得意なこととそうでないことがあります。チェックして
いくと、学習者によってばらつきが見られますが、最も多くチェックの入ったタイ
プをその学習者のタイプと特定することとしました。

タイプT:仮名や基本的な漢字の読み書き、サバイバルレベルの生活行動における簡単
な意思の疎通も不自由で、ゆっくり反復しながら学習を進める必要がある学
習者;「日本語未習〜初歩」
 

コミュニケーション力

日常的な場面以外では、コミュニケーションがまったく成立しないことが多い
一問一答式のやりとりなら成立するが、中断することも多い(reactive)

読む・書く

ひらがな・カタカナの拾い読みができる
日常よく目にする漢字表記がいくつか理解できる
いろいろなフォーマットに記入するとき、補助が必要になることが多い

聞く・話す

単語を聞いて、多少不正確でもひらがなで綴れる
日常の挨拶ができる
自分自身のことについて、年齢や出身地など、具体的な事柄を聞かれて答えられる
買い物など比較的なじんだ場面でなら、なんとか行動達成ができる

文法知識

「日本語能力試験」等のペーパーテストにはなじまない
初級の文法文型のうち、「新日本語の基礎T」等程度の学習項目の一部が理解でき使用できる




タイプU:基本的な文字の読み書きや、簡単な文法構造の知識は身に付けており、サバ
イバルレベルの簡単な意思の疎通はできる学習者;「初級〜中級前期」
  

コミュニケーション力

身近な話題やなじんだ話題を巡ってなら双方向のやりとりがなんとかできる。
なじんだ場面以外では、やりとりが一方向的になったり中断したりしがちで、コミニュケーションが成立しづらいこともある

読む・書く

簡単な漢字仮名交じり文の拾い読みができる
季節の挨拶状など、形式が一定のものをモデル文を参照して書くことができる
単語や短文を聞いて、ひらがなや漢字仮名混じり文で綴れる
一日の生活や自分のことを紹介する内容について、400字〜800字程度の作文ができる

聞く・話す

自分の行動や日課など、具体的なことについて説明できる
自分自身のことについて、年齢や出身地など、具体的な事柄であれば質問に答えられ、また、自己紹介もできる
日程やスケジュールなど具体的な内容がなんとか聞き取れる

文法知識

「日本語能力試験2級」程度の問題が20〜40%程度できる
初級の文法文型のうち、「新日本語の基礎T」等程度の学習項目について、未定着のものも少なくない




タイプV:日常の生活行動や意思疎通には困らない。比較的早いペースで学習を進める
ことができると考えられる学習者;「中級後期〜」

コミュニケーション力

不十分ではあっても、場面によってモードを変えてコミニュケーションできる
話題を展開させながら、話し手・聞き手として双方向のやりとりができる(interactive)

読む・書く

ある程度の長さの漢字仮名交じり文が音読できる
新聞記事で自分の興味ある話題であれば、本文内容が推測できる
自分の意見や主張を述べる内容で800字程度の作文ができる

聞く・話す

自分自身の考えを、意見や主張として述べられる
具体的な話題を巡って、まとまった談話の形でやりとりができる
自分自身のことについて、略歴や抱負が述べられる
テレビドラマやニュースの内容がある程度理解できる

文法知識

「日本語能力試験2級」程度の問題が50%以上できる
初級の文法文型はほぼ理解しているが、「新日本語の基礎U」等程度の学習項目については、未定着のものや運用がスムーズではないものがある