資料6【教材リスト】

 プログラム設計の段階で重要な問題となるのは教材ですが、「再研修」の場合、市販の教材で、学習者のレベルやプログラムの目的にぴったり合致したものはほとんどないというのが現状です。とは言え、教材を総て自主開発していくのも容易なことではありません。「再研修」を長期的、継続的に運営していくにあたっては、市販のものをできる限り利用しつつ、それでは対応しきれない部分について教材開発を行っていくというようなやり方が現実的でしょう。市販のものをテキストとしてそのまま用いるということはできなくても、利用可能な部分を組み合わせて用いる、作り変えたり編集し直したりして用いる、あるいは素材として用い学習活動はそこからより実用的なものに発展させるというようなやり方であれば、利用できる教材も少なくないと思われます。この「資料6」では、こうした視点から、利用可能と考えられる市販教材を、コースタイプごとにリストアップし出版社や定価等を紹介するとともに、利用の目的と利用にあたっての留意点についての簡単な説明を加えました。本報告では、カリキュラムモデルで使用したものと、現在所沢センターが入手しているものの中からいくつかを紹介していますが、【教材リスト】としてはまだまだ十分なものとは言えません。今後も、「再研修」実施の二次センターから使用教材についての情報提供をいただき、リストの充実をはかっていきたいと考えています。



〈復習コース〉


@『ひらがな練習帳1〜3』中国残留孤児援護基金各412円、セット価格1030円
  1「読んでみよう」、2「書いてみよう」、3「すらすら読んでみよう」の3分冊からなるひらがな導入用教材。1は、絵と中国語訳がついた単語帳のような形になっており、あ行、か行、さ行…と、1行ずつ練習を積み重ねていける。2は、ひらがなを書く練習のための教材。3は1の続編に当たり、行ごとの語彙数を大幅に増やすことで、より速くよりなめらかにひらがなを読み取る力をつけることができる。教師者用解説付き。
 
A『カタカナ練習帳1〜3』中国残留孤児援護基金/各412円、セット価格1030円
 「ひらがな練習帳」に続くカタカナ導入用教材。構成は「ひらがな練習帳」と同じだが、1には、付録として、生活関連の基本的なカタカナ語彙を分野別に集めたものが付いている。
B『身のまわりの漢字−覚えよう−』中国残留孤児援護基金/550円
  語彙トレーニング用教材。日常よく使われる漢字語彙を、「食品」「服装」「日用品」等の分野別に集めた。付録として、漢字を用いる動詞、形容詞語彙のうち基本的なもののまとめが付いている。単語の漢字表記、その読みがな、中国語訳の3つの部分に分かれているので、日本の漢字から中国語の意味をとる、中国語部分を見て日本語を言う、読みがなを見て漢字を書くといったさまざまな練習に使用できる。
 
C『日本の生活とことば』シリーズ1〜15/中国残留孤児援護基金/1100〜3100円
  「あいさつ」「郵便局・商店」「交通」といった基本的な生活場面をとりあげ、日本で生活していくための基本的情報を身に付けるとともに、そこで必要となるコミュニケーションの力を養うことを目的とした教材。それぞれのテーマは「情報編」と「会話編」からなる(一つのものもあり)。「会話編」は、「こんなとき、あなたはどうするのか」「どうやって問題を解決していけばよいのだろうか」というように、テーマごとにいくつかの場面に分けられている。
 〈復習コース〉の場合は、この中から学習者にとって実用的な生活場面を選び、その場面ごとに行動力とコミュニケーション力をつけるための活動を組んでいくのがよいだろう。学習者用テキストとしてよりは、教師用の指導参考資料として使用するのが適当。
 
D『中国からの帰国者のための看・听・学』文化庁編/エンドレスエコー/1986年/絵カードとテープからなる 8100円
  学習者が高齢だったり学校教育を受けた経験が少なかったりすると、教室で語学を学習すること自体に過度の緊張が伴い、「覚えられない」「できない」と諦めてしまうことがある。この教材は絵カードとテープを使って楽しく日本語学習をすることを目的に作られたもので、上記のような学習者に、初歩的な語彙表現を無理なく覚えてもらう工夫がしてある。指導者用解説、テープのスクリプト付き。
 
E『絵とタスクで学ぶにほんご』村野良子・谷道まや著/凡人社/1989年/2060円
 テープ:4500円
 基礎的な文法項目から選び出された表現(全25課)からなる。イラストを多用しテープもあるので,読み書きの苦手な〈復習コース〉の学習者にも比較的抵抗の少ない教材と言える。ロールプレイやインタビューのタスク等には,このコースの学習者には難しい部分もある。わかりやすく身近なものに改変して用いる必要があるだろう。
 
F『絵でマスター にほんご基本文型85』村野良子著/凡人社/1996年/2266円
  初級の文法・表現から選ばれた85文型を,すべてイラストを使って練習するというもの。読み書きに抵抗のある学習者に適している。ただし,文型・語彙の中国語訳は付いていない。


〈サバイバルコース〉


@『生活日本語T』文化庁編/文化庁/1983年/1957円
  帰国直後に帰国者が遭遇する生活場面を取り上げ、場面ごとに情報と日本語を提示してある。指導参考資料とテープは市販になっていない。

A『日本の生活とことば』シリーズ1〜15/中国残留孤児援護基金
詳しくは〈復習コース〉のC参照
 このシリーズで取り上げられている場面は『生活日本語T』とほぼ共通ではあるが、会話は「場面をこなす」ことを第一目的として作られており、『生活日本語T』より易しい。〈サバイバルコース〉の場合、実際の生活で日本語が必要となる緊急度を考えると、このシリーズで情報と会話を同時に学習していくのがよいと思われる。

B『ひらがな練習帳1〜3』中国残留孤児援護基金
 『カタカナ練習帳1〜3』中国残留孤児援護基金
 『身のまわりの漢字−覚えよう−』中国残留孤児援護基金
詳しくは〈復習コース〉の@AB参照

C『行動族日語 T JAPANESE FOR BUSY PEOPLE T』中国語版/国際日本語普及協会/紀伊国屋書店
 カセットテープ:4900円
教師用指導書(日本語版):2500円
ワークブック:2200円
ワークブックテープ:3800円
 日常的な生活場面の行動達成のための日本語を学ぶ教材。場面会話・語彙・文法解説・学習項目のポイント解説・応用練練習・まとめテストからなる。完全中国語版。来日直後の学習者向き。

D『SITUATIONAL FUNCTIONAL JAPANESE 話してみよう1ー場面と機能で学ぶ日本語ーNOTES 中国語版(繁体字)筑波ランゲージグループ著/頭山文化出版社/1993年/1800円
 DRILLS 中国語版(繁体字):1700円
テープ:NOTES、DRILLS 各2400円
教師用指導書/凡人社 :2800円
 初級の文型文法と語彙表現を、使用場面と機能の観点から組み立て、実用的な活動と結びつけて構成している。「NOTES」では、中国語で、場面会話と文法・文型項目が詳しく解説されている。日本事情に関する情報も含まれる。「DRILLS」は「NOTES」の練習用教材で,語彙導入・文法文型トレーニング・会話トレーニング(テープ付き)・タスク(テープ付き)という構成。一つの課の語彙・文法表現の量が比較的多く,練習量や活動パターンも豊富なので、適性が高く年齢も若い学習者向き。なお課によっては、場面を留学生場面から帰国者の生活場面に変える必要がある。

E『耳で学ぶ日本語 わくわく文法リスニング99 ワークシート』小林典子他著/凡人社/1995年/1900円
 カセットテープ:4500円
指導の手引き:2600円
 初級文法の聞き取り練習用教材。数字の聞き取りから初級の文型表現まで、1課1ページで全99課。設問は中国語付き。授業の始めや終わりの既習項目のチェック用、宿題用等、補助教材として使うのに便利。

F『すぐつかえる にほんご』中国語版/TOPランゲージ日本語研究会/(財)職業訓練教材研究所/1996年/2900円
教科書指導書(フロッピーディスク):3000円 
付属カセットテープ:2800円
各国語版絵カード(現在製作中)
 テープと中国語訳が付いているので、主に作業現場等で働く学習者用。現場の指示語等の聞き取り教材として利用するのがよいだろう。ただし,扱われている日本語のTPOについては補足指導が必要。系統だった日本語学習のためというよりは補助教材としての使用が適当。


〈レベルアップコース〉


@『しんにほんごのきそT・U 本冊漢字かなまじり版』
 海外技術者研修協会編/スリーエーネットワーク/1990年/2580円・2600円
分冊中国語訳:1550円・1600円
文法解説書中国語版:1700円・1800円
テープ:16480円・17000円
標準問題集:850円・900円
教師用指導書:各2800円
 
A『にほんご1・2・3(上)(下)』寺内久仁子他著/アルク/1996年/各1500円
テープ:各1800円 
 練習帳:各1500円
単語帳 中国語:1400円
  @Aとも、これまで蓄積した文法文型の知識を復習・整理し、理解の不十分な部分を補強しつつ運用力をつけていくことを目指すコースの教材として利用可能。入門期のテキストとしては難しいと思われる学習者であっても、再研修の時期にはゆとりをもって取り組むことができると思われる。テキストの理解を土台に、場面を、具体的な職場や地域での生活に広げ、ロールプレイ等の活動を取り入れると効果的であろう。サバイバルレベルの生活行動力はついているので、ロールの状況理解もたやすくなっていると考えられる。@Aとも、後半は新出の項目も多く含まれてくるので丁寧な指導が必要。
 
B『中国からの帰国者のための生活日本語T・U』文化庁編/文化庁/1983年/各1957円/指導参考資料とテープは市販になっていない。
  Bも@Aと同様の目的で利用できる。Tは本来来日初期の〈サバイバルコース〉用の教材であるが、〈レベルアップコース〉では、生活情報や行動達成の面よりも「ことば」に重点をおき、文型練習を中心に、日本語の運用力を伸ばすための教材として使用するのがよいだろう。
 
C『SITUATIONAL FUNCTIONAL JAPANESE 話してみよう1ー場面と機能で学ぶ日本語ーNOTES 中国語版(繁体字)』
詳しくは〈サバイバルコース〉のD参照
 @Aと同様の目的で使用できるが、テキスト中のさまざまな活動の意味が理解できない学習者も多いかもしれない。したがって、学習適性が高く年齢も若い学習者向き。
 『SITUATIONAL FUNCTIONAL JAPANESE 2・3』も出版されているが、英語圏の学習者向けのものしか出ていないので、教師が活動の参考とするにはよいが、学習者用には大幅な作り直しと中国語による説明の添付が必要である。
 
D『実用ビジネス日本語ー成功への10章ー』T0Pランゲージ著/アルク/1993年/2500円
 テープ:3800円
 〈レベルアップコース〉の中でも〈ハイレベルコース〉に近い学習者向き。挨拶、電話、注文、意見交換等の基本的なビジネス場面から構成されている。場面のやりとりを通して、文法文型の知識を整理・補強するとともに運用力の向上を目指すコースに利用できる。中国語訳はついていない。
 
F『〈求職篇〉実践日本語会話』荘隆福・新保進著/亜太図書出版社/2884円
 台湾で日系企業への就職を希望する学習者のための面接会話練習教材。面接のトピックによる構成(43章)。繁体字による中国語訳付き。就職や転職を目指す学習者が対象となるが、〈特殊ニーズ〉の教材としてよりは、そうした目的のための準備としての使用に適している。大学生向けなので、一部内容を変更する必要がある。
 
G『楽しく聞こうT・U−文化初級日本語聴解教材−』文化外国語専門学校編/文化外国語専門学校/1994年/各1800円
 テープ:各5000円
 教師用指導書:3500円
 T・Uあわせて36課からなる。補助教材としてさまざまな利用が可能。
 
H『絵で学ぶコミュニケーション』高岸雅子他著/凡人社/1991年/7000円
 教え方マニュアル:2000円
  会社・生活編あわせて20のトピックからなる絵カード集。文型表現の導入や発話練習、ロールプレイを行う際の補助教材として利用できる。


〈ハイレベルコース〉


@『日本を話そう 15のテーマで学ぶ日本事情』日鉄ヒューマンデベロプメント/日本外国語専門学校著/1994年/2060円 中国語語彙表付き(別冊)
  現代日本事情・伝統文化・日本的経営および労働観・歴史の4分野から、15のテーマが取り上げられている。テーマとなっている話題を巡って、総合的に学習を進めるコースの教材として利用できる。テキストにある会話や資料を活用するだけでなく、「日本事情」に関する生の材料(新聞記事、雑誌記事、ニュース等)も授業に取り込むようにすると効果的だろう。
 
A『日本語表現とビジネスマナー 日本でビジネス』堀内みね子・足高智恵子著/専門教育出版/1989年/1030円
  〈ハイレベルコース〉の学習者のうち、仕事をしている人や仕事をしたい人向けにオプションの授業を組むときに使用できる。オプションの授業は短期間に数コマ組む程度のものになろうが、限定された時間内で、基本的なマナーと会話を身に付ける目的で使用するのがよいだろう。
 
B『新聞で学ぶ日本語 読んで話す現代の日本』水谷修・水谷信子著/ジャパンタイムス/1996年/2060円
 テープ:4635円
  この教材は、短い本文(約150〜250字)に「聞く練習」と「会話」「談話練習」が付いており、運用能力全般を向上させる目的で使用できる。全部で60課あるので、学習者の興味関心に合わせてトピックを選ぶことができる。
  本文は実際の新聞記事ではないが、典型的な新聞の文体で書かれている。授業ではテキストの本文だけでなく、本文と同テーマや類似テーマの実際の新聞記事を加えて、タイムリーな新聞読解に持っていけるとよいだろう。〈ハイレベルコース〉の学習者のうち、日本の新聞を読みたい人向けに使用できるが、聞き取り練習やディスコース練習も行い、運用力を総合的に高めていきたい。英訳はついているが中国語訳はついていない。
 
C『ロールプレイで学ぶ会話 こんなとき何と言いますか(1)(2)日本語教授法研究会編/凡人社/1987年・1988年/1957円・2163円 中国語訳冊付き
  授業でロールプレイを行うとき、場面や状況の取り出し方が参考になる。中国語訳もついているので、新たにロールカードを作るときにも便利。会話のなめらかさを伸ばすためには、学習者に与えるロール自体をもう少し単純にして状況を把握しやすくした方がよいだろう。
 
D『文化中級日本語T、U』文化外国語専門学校日本語課程編著/凡人社/1994年・
 1997年/2884円・2500円
 テープ:各4000円
  各課が1つのトピックでまとめられているので、T・Uを通して、学習者の興味関心に合わせてトピックを選んで使用できる。もともとは日本の高等教育機関への進学を希望している人や進学を果たした人対象の教材なので、若い世代の学習者で総合的な運用力をつけたい学習者に向いている。各課で要求される活動にはバリエーションがあり、参考になる。
 
E『よく使われる新聞の漢字と熟語』豊田豊子/凡人社/1993年改訂/1545円


〈目的別コース〉


 −大学・専門学校等入試コース−
@『−外国人学生のための−大学合格 面接』吉木徹・米澤文彦著/専門教育出版/
 1995年/750円
  本書は、大学側が要求する面接のポイントと受験生が注意すべきポイントを、悪い例やタブーなどを示しながら解説している。また実例に基づいた想定問題集となっているので、指導参考書としてあるいは補助教材としても活用できる。
 
A『−外国人留学生のための−面接試験AtoZ』文化外国語専門学校編/凡人社/1994年/1500円
  第1章では日本の教育制度にはじまって、面接試験を受ける前に知っておいてほしい基本的な知識を紹介。第2章では面接試験でよく聞かれる質問に沿って、好ましい回答例や不十分な回答例を紹介している。全体を通して平易な言葉で書かれているので、自習用としても使うことができる。
 
B『小論文−留学生のための大学入試シリーズ@』創学社大学入試研究会編/図書刊行会/1993年/1200円
  外国人受験生用の「小論文」の書き方マニュアル。「小論文とは何か」から始まって、具体的な課題別の小論文の書き方が示されている。テーマごとに例題や予想問題がついているので、実践的な練習にも適している。
 
C『−私費外国人留学生のための−世界史(統一試験対策)』ヒューマン・アカデミー編/凡人社/1992年/2400円
 国公立大学合格を目指す外国人受験生にとって、世界史は難解な科目の一つである。本書は世界の歴史の流れを地域別にわかりやすく示すとともに、中級レベルの日本語を用いての説明が加えられている。また、頻出する動詞については英語、韓国語に加え中国語訳が付いているのも便利だ。練習問題もあるので、自習用教材としても活用できる。
 
◎その他入試に必要となる日本語力一般についての教材は省略
 −日本語能力試験コース−
@『平成7年度日本語能力試験−3・4級試験問題と正解−(聴解問題カセットテープ付)』
 『平成7年度日本語能力試験−1・2級試験問題と正解−(聴解問題カセットテープ付)』
 (財)日本国際教育協会 国際交流基金/凡人社/1995年/各1200円
 この他にも平成2〜6年度のものが市販されている
 
◎能力試験対策用教材については多種市販されている。詳しくは『日本語教材リスト』(凡人社)の「日本語能力試験対策」の項参照。