大 阪 YWCA モ デ ル T


コース設定

★ニーズタイプ

イ.一般的日本語学習ニーズ

★学習者タイプ

タイプV:日常の生活行動や意思疎通には困らない。比較的早いペースで
     学習を進めることができると考えられる

★コースタイプ

Bハイレベルコース

★コース目標

☆何のために学習するか
 ・職場や日常での生活をより円滑に営むため
 ・近隣、地域社会、あるいは日本人の親戚とより深くつき合うため
 ・地域の帰国者や日本人との接触の機会を得て、交流や生活情報の交換
  を行うため
 ・就職、転職のため

☆何を学習するか
 ・わかりやすい発音
 ・文法知識の整理、増強
 ・使用語彙や文型の整理、増強
 ・仮名や漢字を読み書きする力
 ・手紙や作文を書く力
 ・お知らせや新聞を読み取る力
 ・よりスムーズに会話する力(含む:方言)
 ・各種放送やテレビ番組を聞き取る力
 ・日本事情や一般教養
 ・自学自習の方法
 ・コミニュケーションへの積極性
 ・異文化間調整能力
 ・生活に有用な技能

★コース期間・時間

6か月 週2回1コマ(1時間半) 計40コマ(60時間)

★曜日・時間帯

水曜日・金曜日 18:30〜20:00



コース設計

★コースの指導形態

主に「あ.クラス一斉型」。実習の時は、ボランティアを導入して「い.
クラス個別型」をつくることもある(1クラスの学習者数は10人まで)

★コースの構成

@プログラムの種類:

    a.読解・聴解プログラム
    b.実用会話プログラム
    c.漢字・作文プログラム

Aプログラムの配置:
 水曜日:主に「a.読解・聴解プログラム」
 金曜日:主に「b.実用会話プログラム」
 「c.漢字・作文プログラム」の「漢字」については各コマの初めか
  終わりに5〜10分程度行う

★プログラム所要時間数

a.読解・聴解プログラム:16コマ(コース全体のオリエンテーション
             を1コマ含む)
b.実用会話プログラム :21コマ
c.漢字・作文プログラム:「漢字」10分×31回/「作文」3コマ
             ※1コマ=1時間20分(休憩時間を除く)


 
 
プログラム設計
 
「a.読解・聴解プログラム」


★プログラム目標


 
 

@日本事情(職場・生活習慣・人間関係・話題のニュース等)や現在
 の中国事情について知る
A身近な情報源(TVニュース、新聞等)を使って自学自習する方法
について知る

 

 
 

@読解ストラテジー(既知語の活用・未知語の処理・文脈の類推等)
が使える
Aまとまった文章をより速く読めるようになる
B聴解ストラテジーを使ったり、字幕を手がかりにしたりしてテレビ
ニュースの聞きとりができる
C身近な情報メディアを通して、語彙・表現を増やす


 

@未知の日本語があっても「読んでみよう」「聞いてみよう」という
姿勢を養う
A身近な情報メディアを通して日本社会や生活情報についての知識を
 得ようとする態度を養う

★プログラムへのアプローチ
 (留意点)

 
 
 






<読解の場合>
@テーマについて話題導入を行う。
A大意を取る。
テキスト黙読後、内容について2〜3問のQAを行い、大意の把握
 を確認する。
B段落に沿って文脈を辿る。(やや丁寧な読みとり)
 段落ごとに音読後、内容についてQAを行いつつ、クラス全体で読
 解ストラテジーを用いて文脈を推測していく。意味確認の流れの中
 で併せて新出語彙・重要表現を導入する。
C重要表現の運用力強化を目的に文型練習を行う。※
D活動に変化を持たせる目的で、テーマを巡って自由会話を行う。
※授業中、Cで取り上げた表現以外に個別の質問が出れば説明は次
回にする。(個別対応)
<聴解の場合>
@テーマについて話題導入を行う。
A映像や既得の知識や語彙を手がかりに内容を推測する。
字幕無しの映像を全体を通して1、2回見た後、基本的な内容につ
いて2〜3のQAを行う。
B文字情報と合わせて1カット毎に意味を確認する。
 字幕付きの映像を一時停止を使って1カットごとに見ながら、新出
 語彙・表現の導入および意味の確認を行う。
C音と意味を結びつけて定着させる。
 字幕無しの映像を通して見る。さらにもう一度見て、内容について
 QAを行う。
D聴解教材と同じテーマの新聞記事を読み、わからない語彙・表現の
 意味を導入する。
E内容について意見や感想を述べあう。

 
 
 







・生活の中で情報を得たり、日本語力をつけたりしていける(自学自
 習できる)ということを意識させるように心がける。例えば、聴覚
 障害者用テレビニュース、中国語普通語放送(ラジオ)、中国語海
 外向けニュースサービス電話等の他、利用しやすい活字媒体の紹介
 等。
・読解教材は難度を考慮し、指導段階に合わせて配置する。例えば初
期は中国語や既習の語彙表現を使って新しい情報を得られるという
達成感をもてるような教材を作成し、後期は新聞記事のような生の
 材料も使用する。
・読解テーマの選択に際しては、プログラム実施時期に話題になって
 いるニュースや、帰国者の生活に役立つような実用的な情報、中国
 事情などの興味が持てるような話題を選ぶよう心がける。聴解教材
 もプログラム実施時期に話題やニュースになった、新しい題材を取
 り上げる。


 

・自主開発教材「読解」テープ付き(以下、「テキスト」)
・聴覚障害者用ニュースの録画ビデオ
・その他:新聞記事、テレビニュースの録画ビデオ等


宿
 

・復習用に記事内容についてのQAプリント(B5で1枚程度)
・復習用に記事を音読したテープ(繰り返し聞くことによって語彙・
表現の定着をはかるもの)

 
 

 
 
 

 

・学習者の自己評価については、3つのプログラムを総合的に評価す
 ることとし、コース中間時、終了時に学習相談を通して行う。学習
 相談は授業と平行して個別に行う(1人15分程度)。したがって、
 この時間は、授業担当の教師と学習相談を行う教師の2名を確保す
 ることが望ましい。その際、学習者の自己評価を確認するととも
 に、教師による学習者評価を行う。学習者評価では評価の観点別に
 (例:読解のスピードの変化、発音の聞き取りやすさ、聴解力、会
 話の正確さ・適切さ・なめらかさ等)初期と終了時に観察結果を記
 録したカルテを示し、学習者にその伸びを意識させるようにする。
 併せて、今後の学習に向けてのアドバイスを与える。
・学習者によるコース評価については、コース中間時と終了時に行う
(方法としてはアンケートやインタビュー等)




★学習計画表       ※点線で区切られた1まとまりを1コマ(約1時間20分)とする

●学習テーマ・学習内容
教  材
備  考

○コース全体のオリエンテーション
・学生カード記入
・学習希望調査票記入
・自己紹介
・ゲーム(日本語力が見られるよう
     なもの)
・テキスト、学習計画表を渡す
・授業方針説明
・ボランティア紹介


・コースの初めにニーズ調査と
 学習者のレベルの測定も兼ね
 て、オリエンテーションを行
 う。


読解「パート」
テキスト第1課

・できれば中国語ができる教師
 が読解プログラムのオリエン
 テーションを兼ねて実施する


読解「震災孤児」
テキスト第2課

・漢和辞典の利用方法の説明も
 状況を見て行う


読解「親父の背中」

テキスト第3課



読解「作業日誌」「災害報告」

テキスト第4課



読解「おばあちゃんの知恵」

テキスト第5課



読解「O−157」

テキスト第6課



聴解「ニュース」

TVニュースビデオ@
新聞記事
新聞番組欄

・聴解障害者用字幕入りニュー
 スについて紹介する。新聞の
 テレビ欄からニュース番組を
 探す。


読解「老朋友のつきあい」

テキスト第7課

・学習相談、コース評価


読解「都会はいやだが仕方なく」

テキスト第8課


10

読解「電磁波と医療機器」
テキスト第9課


11

聴解「ニュース」
TVニュースビデオA


12
読解「車の免許がほしいあなたへ」
テキスト第10課


13
聴解「ニュース」
修了評価

TVニュースビデオB


14
読解「ビジネス文書」
テキスト第11課


15
読解「笑い話」
テキスト第12課

・学習相談
・コース評価




「b.実用会話プログラム」

★プログラム目標



@授業や地域住民との交流会などを通して、日本事情(職場事情、生
 活情報等)について知る

 

 

@職場でより円滑なコミュニケーションをはかるために必要な語彙・表現を身につける
Aいろいろな話題をめぐって、よりスムーズで適切なやりとりをする
 ことができる
B職場や近隣の人々とあいさつ等の簡単なやりとりが大阪弁でできる


 

@地域の日本人との交流を通して、既習の日本語を使用することに慣
 れ、コミュニケーションに対する自信をつける
A職場や地域社会への参加に対する積極的態度を養う

★プログラムへの
 アプローチ
(留意点)

 
 
 






<実用会話>
●「頼む」の場合
@職場や日常生活の中で、実際に「頼む」状況としてはどんなものが
 あるか、自分たちの経験を出し合い、それぞれの状況ではどんな表
 現を使ったかを再現してみる。
Aテキストの状況設定、および学習者の生活の中で起こり得る様々な
 状況から、いくつかのタイプを取り出し、ロールカードを作成して
 おく。ロールプレイ練習「こんな時どういうか」を行う(この時テ
 キストは見ない)。
Bロールプレイ後、新出語彙・表現を導入し、テキストの会話文を音
 読する。
Cテキストに載っていないが「頼む」という状況で使用できる語彙・
 表現を導入し練習する。
Dロールカードの場面ごとに、状況にバリエーションを加えてロール
プレイ練習をする。
 
<実用会話「大阪弁」の場合>
@本文のテープを1文ごとに一時停止しながら聞かせ、会話の内容を
推測させる。
A聴解した内容が文字ではどう表記されているかをテキストで確認し
 た後、文型練習をする。辞書形から「大阪弁」形を作る。
B教師と学習者、あるいは学習者同士で会話練習をする。
 
<交流会(1)の場合>
@自己紹介(5分)
A交流会の目的、進め方を説明(5分)
B雰囲気作りのためのゲーム(20分)
例:「中国の漢字」ゲーム
 日本側ゲストに中国の漢字(日中で意味の異なる漢字または中国
語独自の語彙)のカードを見せて、その意味を当ててもらう。学習者は
ゲストに日本語でヒントを出す。
Cグループごとに、家族や故郷等についての身近な話題を巡って会話
 する。相手を交代して2回行ってもよい。(60分)
 
<交流会(2)(5)の場合>
@交流会の目的、進め方を説明(5分)
Aグループごとに座談会(約40分)
 ・学習者は2、3人の小グループに分かれ、テーマをめぐってゲス
  トと話し合う
  ※初対面同士の場合は、最初に自己紹介をする
  ※学習者側、日本人ゲスト側双方に課題意識をもって参加して
    もらうために、いくつかの観点(異言語間のコミュニケーシ
    ョンの工夫について何か発見はあったか、相手の文化や社会
    について発見はあったか等)について尋ねる感想アンケート
    用紙を渡しておく。
B全体でのまとめ会(約40分)
・教師は司会(あるいは通訳)として参加し、グループ別座談会で
  出た話題や情報を整理し、かつ疑問点について話し合う。
・(時間が許せば)日中の違いの重要な事柄について、現象面だけ
  でなくその背景事情についても話し合ってみる。
C感想アンケートの記入(5分)

 







・「実用会話」については、語彙・表現は耳からの導入とその時間内
 での暗記を心がける。
・地域のボランティアをゲストとした交流会については、学習者が一
 方的に日本語や日本文化を学ぶ場と考えずに、互いに対等の立場で
 コミュニケーションを図る努力をしたり、相手の文化や自分の文化
 に対する理解を深めることを目指す場と考える。このような交流会
 の目的・課題について、ゲスト側にも十分な理解を得るため、事前
 の説明を行うとともに、事後にも課題の達成について感想を述べあ
 う時間を設ける。なお「職場の人間関係」や「日中の違い」を扱っ
 た交流会の後半部分(全体でのまとめ会)では、教師は話の「交通
 整理役」に徹し、過度に結論づけしないように心がける。
・交流会は1時間30分とする



・自主開発教材「会話」テープ付き(以下、「テキスト」)

宿

・授業で扱った単語・表現プリントの復習
・会話テープの聴解



・「読解プログラム」の評価欄を参照のこと。




★学習計画表      ※点線で区切られた1まとまりを1コマ(約1時間20分)とする

学習テーマ・学習内容
教 材
 備 考

実用会話(1)「自己紹介」
テキスト第1課


実用会話(2)「クイズ:こんな時
       どういいますか?」

テキスト第2課


実用会話(3)「食べ物」
テキスト第4課


実用会話(4)「お金」
テキスト第5課


交流会(1)「身近な話題をめぐっての会話」

・ボランティア参加


実用会話(5)「大阪弁T」
テキスト第8課
聴解テープ



実用会話(6)「頼む」
テキスト第3課


実用会話(7)「断る」
テキスト第6課


実用会話(8)「中国」
テキスト第7課

10
実用会話(9)「大阪弁U」
テキスト第9課
聴解テープ


11
実用会話(10)「電話」
テキスト第11課

12
実用会話(11)「テレビ」
テキスト第13課

13
交流会(2)「中国と日本の違い」

・ボランティア参加

14
交流会(3)「大阪弁を話そう」

・ボランティア参加

15
交流会(4)「ボーリング大会」

・ボランティア参加

16
実用会話(12)「謝る・言い訳する
テキスト第10課

17
実用会話(13)「ニュース」
テキスト第12課

18
実用会話(14)「家族」
テキスト第14課

19
実用会話(15)「相談する・助言する」
テキスト第15課

20
交流会(5)「職場の人間関係」

・ボランティア参加

21
実用会話(16)「気持ちを表す」
テキスト第16課



「c.漢字・作文プログラム」


★プログラム目標


@職場や日常生活で必要な書類などの書式について知る


 

@漢字仮名交じりの短文が音読できる
A理解し使用できる漢字語彙を増やす
B職場の作業日誌やビジネス文書が書ける
Cワープロ(パソコン)で簡単な文が作れる


 

@職場での読み書きに対する抵抗感をなくす
A簡単な機器操作を通じて、将来役立つ技術習得への意欲を持つ
B地域の人に技能を習うことを通じて、コミュニケーションに対す
 る積極的な姿勢を養う

★プログラムへの
 アプローチ
 (留意点)

 
 
 






 

<作文>
・学習者には事前に、現在または将来希望する仕事の内容や、現在
 の職場や生活で書く必要のある書類等について聞いておく。
・作文プログラムにはボランティアを導入する(パソコン操作のボ
 ランティアはなるべくパソコン,ワープロの習熟度の高い人を選
 ぶ)。活動は学習したい文書の種類ごとのグループ別指導、また
 は個別指導で行い、学習者はボランティアに尋ねながらビジネス
 文書等を作成(パソコンで作成も含む)し、チェックや添削をし
 てもらう。
・特に「作業日誌、ビジネス文書の書き方」の授業では前半の一定
 時間「身近な話題」をめぐって、ボランティアとグループ別に会
 話等行ってもよい。
 
<漢字>
・1コマにテキスト「漢字」の1ユニットの三分の一を進めるペー
 ス。(aプログラム、bプログラムの初めから終わりに5〜10分程度
 組み込む)
・1回ごとに以下のような手順で学習する
・テキストおよび音読テープは事前に渡しておくが、特に課題とは
 せず自習用とする
 @教師がルビ付きの文を範読する
 A意味のわからない漢字について、質問を受ける
 B教師の後からコーラスで音読する
 C熟語のフラッシュカードを使用する
 Dルビ付きの文を個別に音読する
 Eルビなしの文を個別に音読する


 
 

・「読解プログラム」の評価欄を参照のこと。
  但し,「漢字プログラム」については,学習者の希望があれば
 学習者の指定した範囲の中から出題する漢字テストを行ってもよ
 い。(解答を準備し,自宅でテスト及び,自己採点をさせる方法
 もある)

 

 
 

・作成教材「漢字」音読テープ付き(日本の生活に役に立つ知識や
 中国について紹介した文。同内容をルビ付き、ルビなしで併載し
 てある),「熟語フラッシュカード」
・作業日誌、災害報告書、ビジネス文書は何パターンか実物を準備
 し、オプションとして、幼稚園や小学校から記入を求められる書
 類を準備する
・パソコン操作に必要な語彙表




★<作文>学習計画表 ※点線で区切られた1まとまりを1コマ(約1時間20分)とする


学習テーマ・学習項目

教 材
備  考


・作業日誌、災害報告書の書き方

左記フォーマット
テキスト「読解」第
6課

・ボランティア参加
・「a.読解・聴解プログラム」
 提示順6の「作業日誌」「災害報
告書」に続けて行う


・パソコン操作(主にワープロ機
 能)の基礎

パソコン操作に必要
な語彙表

・ボランティア参加


・ビジネス文書の書き方

ビジネス文書数種

・ボランティア参加
・「a.読解・聴解プログラム」
 提示順11の「ビジネス文書」に
続けて行う



★<漢字>学習計画表は省略