V カブラマタ地域とカブラマタ・
         コミュニティ・センターの概要
カブラマタ地域の概況
 
 現政策が導入される以前は異文化を排除する社会であったため、様々な文化背景を持つ人たちはグループを組み、一定の地域に固まって住み、コミュニティを形成する傾向にある。オーストラリアでは、大半が海岸沿いの都市に居住し、内陸部に住む者は少ない。ここに紹介するフェアフィールド市のカブラマタ地域は、下の地図にあるように、海岸から奥まったところに存在する。
 海岸沿いに住むのは一定の収入を得る豊かな家族であるのに対し、シドニーから電車でだいたい30分位かかるカブラマタ地域は、比較的貧しい人たちが住み、移民が多い。特に多いのはインドシナ難民だが、最近はボスニアから来る人たちが増えている。現在、約90の民族グループが把握されており、それと同数の文化や言語が流通していることになる。
 また、オーストラリア外で生まれた人は、1986年統計では全国平均40%だが、この地域が含まれるビクトリア・ニューサウスウェルズ州は62.9%である。


カブラマタ・コミュニティ・センターの概要
 
 カブラマタ・コミュニティ・センターはカブラマタ地域の中心にあり、住民の生活支援の必要性から設置され、歴史がある。各種事業・活動を直接実施することに加えて、フェアフィールド市内にある各コミュニティ・センターを統括し、指導する役割を持つ。各センターに専属のスタッフはいるのだか、カブラマタ・コミュニティ・センターのスタッフは特定の課題をもってここから各センターや地域に派遣される。各専門家もここを拠点に据えている。
 様々な地域の生活課題の解決に向けて、《23頁》のような機構でサービスを実施したり活動を展開するのである。
 フェアフィールド移民援助センターは、新たなプロジェクトの指導センターになっている。そのため、様々な生活課題について調査・研究を行い、政策提起に結びつけることも行なっている。情報センターとしても機能し、各種情報や資料を収集する。
 女性のシェルターはコミュニティ・センターとは違うが、カブラマタ地域にある施設である。住み込みの職員が運営しており、各コミュニティ・センターのワーカーから女性の保護を依頼されると対応を図る。対象となる多くは13歳から21歳までの少女で、2年間の保護期間中に、自立生活を営めるように生活指導を行う。保護後は学校や他施設につなげるが、彼女たちはシェルターを出た後も、いつでも情報を求めたり指導を求めることができる体制を組んでいる。
 先述のとおり、この地域には約90の民族グループが住み、それと同数の文化や言語が流通している。しかしカブラマタ・コミュニティ・センターの対応は全てには行き渡らず、どうしても多数の方に向かうという課題を抱えている。
 
実践の中核となるワーカーの確保
 
 カブラマタ・コミュニティ・センターは、多文化を背景とした人々の生活を支援するための専門職を配置している。バイリンガル代弁ワーカーとバイリンガル福祉ワーカーである。彼らに期待する職務は(1)ネットワークの構築及び定着、(2)情報提供、(3)政策提起・陳情活動、(4)アドボカシー、である。
 公設民営である当センターは、このワーカーの人件費を民族問題委員会と地域サービス局から確保しているが、その確保、養成及び継続的な研修は独自に行なっている。後述のとおり、支援対象となった者が自立後にワーカーやスタッフとして採用され、積極的に職務を果たし意義深い実践を積んでいる例がいくつもある。
 現在の配置状況は以下のとおりである。


 l)バイリンガル代弁ワーカー
    ◎職 員 数:8名
    ◎多言語対応
            クメール語
            ラオス語
            アラビア語
            ベトナム語
            スペイン語
            トルコ語
            中国語

 (2)バイリンガル福祉ワーカー(派遣型)
    特にケースワークを意識して活動する。情報提供や照会サービス(他機関や施設が必要と
   なった時、利用者の要請に応じて照会する)が主な仕事。
     ◎拠点:ボニリグ・コミュニティ・センター
         カラマー・コミュニティ・センター
         マウント・プリチャード・コミュニティ・センター
         ウェスリルパーク・コミュニティ・センター
     ◎多言語対応
            アラビア語
            スペイン語
            中国語
            ベトナム語
 



 
 
 
○養成プログラム
 1.プロジェクト再構成ワークショップ(仕事内容の詳細な説明)
 2.プロの通訳によるサービス
 3.アドボカシー・ワークショップ
 4.書類の書き方
 5.統計資料の作成とアクセスの障害となるものの文章化
 6.コンピューター講座
 7.センターの活動と政府及び民間サービスに関する新情報
 
○研修内容
 1.移民について
 2.教育システムについて
 3.借家に関する法律について
 4.人権について
 5.地域開発の秘訣について
 6.交渉を成立させるための秘訣について
 7.HIV/エイズについて
 8.性暴力について
 9.家庭内暴力について
 10.家族法について
 11.その他必要に応じて企画
 
○最近メンバーとして参加している主な会議
 ・フェアフィールド移民支援連絡会
 ・フェアフィールド移民女性の難民救済事業
 ・州アドバイス委員会
 ・C.C.C.職員会議
 ・住居に関するアドバイス委員会
 ・移民局、社会保障省(行政)コミュニティ相談
 ・移民と難民行動グループ
 ・高齢者のためのプログラム委員会
 

カブラマタ・コミュニティ・センター(C.C.C)機構図