文学教材にあらわれた複文および説明文との比較
−―文学教材と説明文のまとめとして―−


三宅 節子


はじめに

 この稿では、紀要107号(注*)の調査方法に基づき、接続節の数に応じて幾つかのの項目に分け、項目ごとに、文学教材(以下物語文と略記)の複文について調査し、次いで説明文に現われた複文との比較(★で示した箇所)を試みた。項目は以下に記すとおりである。なお、説明文の複文ならびに文中で使用する分類用語などについては、上記の紀要107号を参照されたい。

接続節0:
1.全体の内訳 2.N節の現われ方、働き 3.引用節、会話文について
接続節1:
1.全体の内訳 2.α系列、β系列における基本類型の割合および学年別出現数 3.節末語について 4.N節の位置、働き 5.引用節、会話文について
接続節2:
1.全体の内訳 2.α系列、β系列における基本類型パターンの割合および学年別出現数 3.節末語および「つなぎの言葉」について 4.N節の位置、働き 5.引用節、会話文について
接続節3:
1.全体の内訳 2.α系列、β系列の割合および学年別出現数 3.基本類型パターンについて 4.「つなぎの言葉」について 5.N節の位置、働き 6.引用節、会話文について
接続節4以上:
1.全体の内訳 2.α系列、β系列の割合および学年別出現数 3.基本類型パターンについて 4.「つなぎの言葉」について 5.N節の位置、働き 6.引用節、会話文について

1.接続節を含まない文における複文について

1-1.全体の内訳

 物語文では接続節を含まない文の割合は物語文総文数の約5割を占める。接続接を含まない総文数のうちN節も含まない文は8割強を占め、残りがN節を含んだり、引用節やN節内にN節や接続節を含む文である。
 ★説明文では説明文総文数における接続節を含まない文の割合は約6割弱と、物語文と比べると出現率はやや高い。また、接続節を含まない総文数のうちN節も含まない文の割合は約5割強で物語文より出現率は劣る。他方、N節を含んだり、引用節やN節内にN節や接続節を含む文の割合が5割弱と物語文と比べて高い。説明文の方がやや文構造が複雑な文の出現率が高いと言えるかもしれない。

1-2.N節の現われ方、働き

 N節を含む文ではその大部分がN節1であり、N節2以上含む文は非常に少なく、それらはすべて4年以上の学年で出現する。またN節中に接続節を含んでいる文ではそのほとんどはN節1であることに注目したい。まれにN節のうちに接続節を3以上含む文も見受けられるが、これらはみな高学年で現われる。N節2含む文では「並列型」「入り組み型」の両方が見られるが、後者では底の名詞が共通の「入り組み型」も若干例、5年以上の学年で現われる。N節3以上はきわめて少ないが、1例を除き、すべて「混交型」である。高学年で現われることは同様である。次にN節の文中における働きについては、N節1の文では「こと節」や「の節」も含めて、補足語要素は約5割を占め、その中では助詞「が」を伴うN節が多い。特に「の節」ではこの補足語要素が大部分である。さらに「を」「に」「も」を伴うものが続く。助詞相当の表現を伴うN節は「といったら」が1例あるのみである。その次には述語要素がき、主題要素、修飾語要素の順である。また「〜のは(〜だ)」の形式で現われる節もかなりの数見られた。
 N節2の文について見ると、「並列型」と「入り組み型」がともに現われるが、前者では修飾語要素がほとんどないということ以外は目立った特徴が見られない。後者の場合、補足語要素となる「が」を伴うN節が、N節を含んでいる場合が最も多い。N節2全体で、助詞相当は「といえば」が1例見られるのみである。N節3以上(N節4は1例のみ)は数えるほどしかないが、上記のようにすべて6年で出現する。N節の数が多いといっても、主として「〜か、〜か、〜か」や「〜だの、〜だの」といった並列関係で結ばれたN節で文が拡大化している。
 ★物語文でも説明文でもN節を含む文のほとんどがN節1であることは共通している。またN節2以上含む文はどちらも非常に少ないが、物語文では4年以上で現われ、一方説明文では低学年でも若干出現している。N節の文中における働きについては両文ともに補足語要素が多いが、割合はやや説明文が高くなる。また説明文では助詞「が」を伴うN節が圧倒的であったのに対し、物語文ではやはり多いが、際立ってというほどではない。次いで「を・に・も」を伴うN節がくることでは両者とも一致している。さらに物語文では述語要素、主題要素、修飾語要素と続き、説明文では述語要素、主題要素が同じ程度の割合で現れ、修飾語要素が最も少ない。また「〜のは(〜だ)」の形式は物語文で目立つ。助詞相当を伴うN節は説明文の方が種類、数ともに多いことがわかった。
 N節2含む文については、両文とも数が少なくはっきりした特徴がつかめないが、いずれもやや補足語要素の割合が高く、特に物語文では「入り組み型」で「が」を伴う補足語要素が多くなる。また助詞相当については、N節1の文と同様、説明文の方が数も種類もやや多い。N節3以上の文では、両文とも並列関係で結びつけられたN節によって、文が拡大化している場合が多く、それぞれのN節を別個に取り出して理解させることが可能である。


1-3.引用節、会話文について

 接続節もN節も含まない文における引用節は1割に満たないが、単文として理解させることが可能なものである。これらの引用節では、直接引用の方が間接引用より多くなる。引用節内に接続節やN節を含む文は全体ではわずかだが、3年、5年、6年に多く現われ、N節が0で引用節内に接続節1あるいはN節1だけ持つ例が最も多い。引用節内にN節と接続節の両方を持つような複雑な引用節もあるが、全体としてはごくわずかである。引用節を受ける動詞は「(〜と)言う」が多く、「(〜と)思う・考える」などは少ない。
 接続節もN節を含まない文における会話文の割合は5割弱、N節1含む文におけるそれは2割強存在する。N節2以上においても現われるが、その割合は非常に少ない。引用節内にN節や接続節を含む文における会話文の割合も2割ほどである。
 ★N節も接続節も含まない単文としての引用節の割合は物語文の方が高くなる。また直接引用の割合も物語文の方が高い。説明文では1例をのぞいて他は間接引用であるという特徴があった。引用節内に接続節やN節を含む文は両文とも数は少ない。その場合、物語文では引用節内に接続節1あるいはN節1だけ持つ例が大部分であるが、説明文では接続節1だけの文が多くなる。どちらも引用節内の文構造はそれほど複雑ではない。引用節内に接続節やN節を含む文において引用節を受ける動詞は、説明文ではすべてが「(〜と)考える・思う」などであったが、物語文ではそれらはむしろ少ない。 会話文は物語文で際立っており、特に接続節もN節を含まない文ではそのおよそ半数がそうである。説明文ではごくわずかである。両文のジャンルの違いを考慮すればこれは自然なことであろう。ただし会話文は、N節が増大するかあるいは引用節内にN節や接続節を含むなど文構造が複雑になるにつれ、その数が減少しており、会話文自体の文構造はそれほど複雑化しえないと言えるのではないか。



2.接続節1含む文における複文について

2-1.全体の内訳

 物語総文数中の約2.5割を占める接続節1の文のうち、N節0は約8割を占め、次いでN節1が約2割弱、N節2以上はN節4まで出現するが、全体の1割にも大きく満たない。N節3と4は、高学年で各1例ずつ出現する。
 ★物語文のN節を含まない文の出現率は説明文よりも高い。またN節1の出現率は説明文の方が高くなる。N節2以上は両文とも1割に満たない出現率であり、物語文ではN節4まで現れ、説明文ではN節3までしか現われない。いずれにしても、N節2以上は全体の割合からして、問題にならないくらい少ないので、N節0の文を主体に、次にN節1以上を適宜教えていくことには変わりない。物語文ではN節0の重要性は説明文よりもっと大きくなろう。


2-2.α系列、β系列における基本類型の割合および学年別出現数

【N節を含まない文について】 α系列がβ系列を上回り、すべての学年においてもα系列がβ系列を上回る。特に、6年ではα系列がβ系列の約2倍となる。基本類型に関してはα系列のハがイ、ロの約5倍弱と圧倒的に多い。イ、ロの数は大体同じぐらいである。β系列では基本類型のイがロやハより多くなり、ロ、ハは大体同じである。学年別に見ると、α系列のハは4年以上の高学年で多くなるが、それらの学年では出現数はあまり変わらない。イ、ロに関してはそれほど著しい特徴は見られない。ロに関して4年でやや少ないといった特徴がある程度である。β系列のイは2年以上で次第に多くなっていき、ロとともに5年で一番多くなるようだが、目立って多いというわけではない。両系列のいずれの基本類型とも1年から出現している。
 ★説明文ではN節0のとき、α系列の文が約3倍と圧倒的にβ系列の文を上回っていたが、物語文ではα系列の文とβ系列の文にそれほど大きな数の違いはない。α系列のハが多いことでは同じだが、物語文の方がその割合が更に高い。α系列のイ、ロは、両文とも大体同数である。物語文のβ系列ではイがロやハを上回っているが、説明文ではイ、ロ、ハはほぼ同数である。学年別では、α系列のハが高学年で多いことは共通している。説明文では特に6年で多くなるが、物語文は高学年では出現数にそれほど差はない。β系列では学年別の著しい特徴はないが、物語文ではハだけでなく、イやロも1年から出現する。また、ハの節末語も説明文のように「とき」がほとんどということはない。
【N節1含む文について】 α系列がβ系列を上回るが、差はそれほど大きくない。各学年でも1年を除いて、α系列がβ系列を上回る。基本類型で見ると、α系列のハはイ、ロの4〜5倍近くある。イとロはほぼ同数である。β系列では、N節0のときと同様、イが一番多い。次いでハ、ロの順となる。α系列のハはやはり高学年で多くなるが、その学年間では出現数はほとんど変わらない。α系列のイは1年、2年、4年で見られず、ロは1年、3年で見られなかった。β系列ではイが2年以上の学年に、ロやハは各学年に分散して現われる。
 ★両文ともα系列がβ系列を上回るが、その差は物語文ではあまり大きくない。また物語文では、1年でβ系列がα系列を上回る。α系列のハが高学年で多くなることは共通している。物語文ではβ系列のイがロ、ハの数を上回るが、説明文ではハがイ、ロより少なくなるという特徴が見られた。説明文ではα系列のロは3年から出現していたが、物語文では2年に現われ、1年や3年には見られなかった。説明文では高学年になってしか現われないβ系列のロ、ハも、物語文ではすでに1年から出現している。
【N節2以上含む文について】 α系列がβ系列を上回るが、3年には両系列とも見られず、1年と4年ではβ系列のみである。α系列のハはやはり高学年に集中している。β系列は2年と3年には観察されなかった。N節3と4は各1例ずつ、いずれも高学年で、α系列のハに属する。
 ★α系列がβ系列を上回り、α系列のハがもっとも多いという点では共通している。物語文ではα系列のロは皆無である。


2-3.節末語について

【N節を含まない文について】 α系列のイでは「て(付帯状況)」が圧倒的に多く、次いで「ながら」「ように」と続く。「て(手段・方法)」は少ない。「ように」や「て(手段・方法)」は一年では出現しない。α系列のロでは「て(順次動作)」が格段に多く「連用形(順次動作)」が続くが、後者は2年から出現している。α系列のハでは節末語の種類は非常に多くなる。中でも目立つのは条件系の「と」、ついで「て(因果)」「たら」「て(並列)」と続く。この中で、「たら」はほとんど会話文で用いられていることに注意する必要がある。また「て(因果)」と「て(並列)」は1年では現われない。β系列の節末語はイ、ロにおいては、α系列とあまり変わらないが、ハはかなり異なっている。ここでは条件系の「と」よりも「て(因果)」の方がはるかに多くなる。次いで「と」の順である。どちらも2年以上で出現する。また1年のβ系列における節末語は「とき」に限らないことはすでに述べた。
 ★物語文では両系列ともにイにおいて、「て(付帯状況)」に次いで多いのは「ながら」である。「ように」はそれほど多くない。説明文では「ながら」は若干見られるのみであった。ロはほぼ共通しているが、「連用形(順次動作)」は物語文では2年から、説明文では3年から出現する。β系列のハは、説明文では「て(並列)」や「とき」が多くなるのに対し、物語文で多いのは「て(因果)」であり、次に「と」がくる。説明文の高学年において見られた文に後接する助詞相当表現は物語文には見られなかった。説明文の方がより分析的であることを示すものと言えるだろう。
【N節1含む文について】 α系列のイでは「て(付帯状況)」が多いことは変わらず、次には「ほど」がくる。いずれも、3年以上で出現する。ロではやはり「て(順次動作)」がほとんどであり、次いで「連用形(順次動作)」がくる。「てから」は見られなかった。ハでも条件系の「と」が多いことは変わらず、次いで「て(並列)」、逆接系の「が」が多い。β系列のイではやはり「て(付帯状況)」が非常に多く、次に「ながら」がくる。ロもα系列とほぼ同様である。ハでは様々な「節末語」に分散して現われ、「て(因果)」「て(並列)」「と」が若干多い程度である。
 ★α系列のハでは両文とも条件系の「と」が多いことでは共通。次に説明文では「連用形(並立)」がくるのは、物語文との違いである。また説明文ではβ系列ロの「節末語」がすべて連用形であるという特徴があったが、これも物語文とは異なる特徴である。α系列のハでは際立っている「と」がβ系列では少ないことは共通している。
【N節2以上含む文について】 α系列のイは「て(付帯状況)」が1例あるのみ、ロはまったくなく後はすべてα系列のハである。節末語は分散しており、「て(並列)」がやや多い程度。β系列はイ、ロ、ハすべてが出現するが、目立った特徴は見られない。N節3、4は省略。
 ★両文ともα系列ハが多く、α系列ハにおける「節末語」がいろいろな節末語形式に分散していることでは共通している。


2-4.N節の位置、働き

【N節1含む文について】 N節の位置は、α系列のロとハでは主節と従属節にほぼ均等に出現するが、イにおいては従属節に位置するものが多く、次いで文頭に位置するN節がくる。β系列のイでは文頭に位置するN節が従属節に位置するものと同じくらい多くなるが、ロやハでは主節や従属節に位置するものの方が多くなり、それらがほぼ均等に出現する。イでは主節に位置するN節は少ない。N節の働きについては、両系列を通じて補足語要素が目立っており、次いで主題要素、述語要素の順である。文頭に位置する主題要素はβ系列のイで多くなる。また、α系列ハやβ系列では述語要素や修飾語要素も観察され、α系列ハでは述語要素が修飾語要素を、β系列では修飾語要素が述語要素を上回る。また「入り組み型」や、底の名詞が共通の「入り組み型」は両系列を通じて若干例見られた。 ★物語文と説明文のN節の位置は、前者ではα系列のイで従属節に位置するものが多く、後者ではイにおいては主節と従属節に位置するものは均衡している。また、説明文のハでは、主節に位置するN節が断然多いが、物語文では従属節に位置するN節もかなり多くなる。両文とも「と」でつながれる文においては、N節はほとんど主節に位置しているという点では共通する。N節の働きについても、両系列とも補足語要素が多いという点で一致している。また、β系列では主題要素となるN節が増えてくるという点でも一致する。が、説明文では皆無だった述語要素は、物語文では両系列に見られるが、その場合α系列の方が多くなる。
【N節2以上含む文・N節中に接続節を含む文について】 ほとんどが「並列型」となる。それらは主節と従属節に分かれて現われるものが約半数を占め、次いでα系列では、従属節中に分かれて現われるものがやや多い。β系列では、これは見られなかった。N節の働きから見れば、補足語要素同士の組み合わせが一番多く、その他の組み合わせでも、補足語要素を含むものが半数を超える。述語要素同士の組み合わせも若干例観察された。N節3と4も一例ずつだが、いずれも「並列型」であり、N節3では、N節はすべて従属節に現われ、一つのN節が引用節を含んでいた。N節4は、二つのN節が従属節に別の二つのN節は主節に現われるもので、きわめて安定した文構造をとっている。
 N節のうちに接続節を含む文も存在するが、そのほとんどは接続節1である。接続節を2以上含む文は高学年でしか出現しない。N節の位置は、基本類型の従属節中に置かれるのが最も多く、次いで主節、文頭に置かれる。文中における働きは、補足語要素が多く次いで述語要素がくる。N節のうちに含まれた接続節に関しては、ほとんどが接続節1で、基本類型イとハが多くほとんど同率である。
 ★ここでは、若干の例外を除いて「並列型」であり、N節3以上は高学年で出現し、N節の働きもほとんどが補足語要素であるという点で両文は共通している。ただし、物語文の場合はN節の位置は従属節と主節に分かれて現われるものが多いが、その他の組み合わせもかなり見られる。説明文ではほとんどが、従属節と主節に分かれて現われる。N節のうちに接続節を含む文も、ほとんどがN節1で、含まれている接続節も1であることでは一致しているが、物語文では4年以上の学年に、説明文では高学年に集中している。N節の位置は、物語文では従属節中にあるN節が多いが、説明文では主節、従属節どちらにもほぼ均等に現われる。文中における働きは両文とも補足語要素が多い。


2-5.引用節、会話文について

 接続節もN節も含まない引用節は、α系列のハで最も多く、次いでβ系列のイで多い。引用節の位置はα系列では、主節、従属節に位置する引用節の数はあまり差がないが、β系列では全体的にやや主節に位置する引用節が多いようである。また、引用節が主節と従属節の両方に現われるものが、α系列で若干見られた。また、引用節内にN節を1含むものも、両系列に若干存在するが、α系列ではそのすべてが基本類型ハに現われている。また、引用節内に接続節を含む文も両系列にほぼ同数観察されるが、α系列ではハがほとんどであり、β系列でもややハが多くなっている。
 会話文は接続節1の文全体の約2割を占める。特にα系列のハに偏って現われる。β系列では全体的に非常に少ない。会話文内に引用節を持つ文は数はあまりないが、やはりα系列のハに偏っている。 ★引用節の現われ方は、説明文ではα系列に偏って出現しているが、物語文ではややα系列に多いという程度である。α系列では、主節、従属節にほぼ同じ割合で見られるという点では一致している。 会話文は説明文では、説明文における接続節1の文全体の1割にもはるかに満たない。物語文では約2割を占めるのだから、物語文の特徴として、会話文の文体を教えていく必要がある。


3.接続節2含む文における複文について

3-1.全体の内訳

 物語総文数中1割弱を占める接続節2含む文においては、N節0の文が8割弱、N節1の文は2割弱、残りの0.3割ほどがN節2の文である。N節2以上の文は1例をのぞき高学年で出現し、N節3が1例あるが、ふたつのN節が「入り組み型」なので基本的にはN節2として扱える。またN節が1以上でそのうちに接続節を含むような複雑な文も若干例ある。
 ★接続節2含む文の割合は、説明文がやや高くなる。またN節を含まない文は、物語文の方が割合が高いが、N節1を含む文は説明文の方が割合が高くなる。N節2以上は両文とも数えるほどしかない。説明文にはN節3の文が1例見られるが、物語文の場合は基本的にはN節2までと考えてよい。またN節のうちに接続節を含むような文は両文ともきわめて少ない。


3-2.α系列、β系列における基本類型パターンの割合および学年別出現数

【N節を含まない文について】 物語文のN節を含まない文において、α系列はβ系列の2倍を超え、α系列においてはa型がs型を上回る。またa型では、a型イがもっとも多く、a型ハ、a型ロの順である。s型ではs型イとハはほとんど同率で、s型ロが少なくなる。β系列ではやはりa型がs型より多く、a型ではa型イが多く、a型ロとハは同率、s型ではs型イとハは同率、s型ロがやや少ない。N節を含まない文の約1.6割を占める単文型でも、α系列がβ系列を上回ることは同様である。学年別で見ると、α系列のa型イとハでは全学年にわたって出現するが、a型ロは3〜5年の中学年を中心に現われる。s型ではイ、ロ、ハのいずれともほぼ全学年にわたって出現する。β系列a型イ、ロ、ハも大体全学年にわたっているが、s型では全学年で出現するのはイのみで、ロとハは中学年が中心である。単文型では両系列とも、ほぼ全学年で出現し目立った特徴はない。
 ★物語文でも説明文でもα系列の文数はβ系列を大きく上回る。物語文ではα系列a型がs型を上回るのに対し、説明文ではほぼ同率である。a型は、物語文ではa型イが一番多いが、説明文ではa型イとa型ハは同率である。どちらもa型ロが一番出現率が低い。s型は物語文ではs型ロが少なくなるが、説明文ではs型イ、ロは同率、ややハが多い。β系列では、両文ともa型がs型を上回る。a型では、物語文はa型イが多いが、説明文ではa型イとハは同率である。s型は説明文では出現数自体が少なく、はっきりしたことはわからない。単文型については、出現率は物語文がやや高く、ここでは両系列に見られるが、説明文ではα系列にのみ出現する。学年別では、物語文ではα系列a型、s型ともにa型ロを除いて全学年に現われるが、説明文ではa型は3年以上の学年が中心であり、s型はs型ロ以外、ほぼ全学年にわたる。s型ロは2年と高学年で出現する。β系列においては、物語文ではs型イの他は中学年が中心となり、説明文ではa型は3年以上、s型も4年以上の学年が主である。単文型は物語文では、ほぼ全学年で出現するが、説明文では中高学年で見られる。
【N節1含む文について】 接続節2でN節1含む文において、α系列の出現数はβ系列の約3倍である。α系列ではa型イが出現率が高く、次いでa型ハ、a型ロの順である。s型では、s型イとハはほぼ同率、s型ロが一番少ない。a型、s型ともに基本類型ロの出現率がもっとも低いことがわかる。β系列のa型では、a型イがほとんどで、s型ではs型ハのみ現われる。また単文型はβ系列にのみ出現しているが、その例はごくわずかである。学年別では、両系列ともほぼ全学年に見られるが、α系列では4年以上の高学年が、β系列では4年と5年が中心である。単文型もβ系列で4年と5年で現われる。
 ★説明文では物語文よりもっと、α系列の出現率がβ系列に比べて高い。物語文ではa型イの出現率が高いが、説明文ではa型イとハはほぼ同率である。s型については、説明文での出現数が少なく、違いはあまりはっきりしない。β系列においては、物語文ではa型はイがほとんど、説明文ではa型イのみである。s型では、物語文ではs型ハのみ現われるのに対し、説明文ではs型ロも出現する。すでに述べたように、物語文では両系列とも4年以上の高学年が中心となるが、説明文でも2例をのぞき、すべて4年以上の高学年で現われるという特徴が見られる。
【N節2以上含む文・N節中に接続節を含む文について】 N節2以上含む文は非常に少ないが、N節0や1のときと同様、α系列がβ系列を上回る。α系列では単文型に1例ある他はa型である。β系列では2例しかないが、やはりa型である。s型やa型ロは出現していない。学年別で言うと、すべて5年以上の高学年で現われる。
 N節中に接続節を含む文もごくわずかで、それらはα系列で出現する。単文型はなくa型とs型が現われているが、用例が少ないので出現傾向ははっきりしない。学年別では2年と3年といった低学年で見られるので、注意を要する。
 ★物語文でも説明文でも出現数が非常に少ないという点では一致している。α系列ではa型が中心であることは同じだが、説明文のβ系列ではs型も出現する。a型ロが出現しないことでは一致する。学年別では物語文では5年以上、説明文では4年以上の高学年で現われる。
 N節中に接続節を含む文も、両文とも数えるほどしかない。物語文ではα系列で現われるが、説明文ではβ系列にも1例ある。両文ともN節が1である場合が主となっている。学年別では物語文では2年と3年に現われるという特徴があったが、説明文では3年以上の学年で見られる。


3-3.節末語および「つなぎの言葉」について

【N節を含まない文について】 物語文のα系列a型イにおける基本類型イ中の節末語としては、
「て」の付帯状況が格段に多く、次に「ながら」と続く。特にこのa型イでは「つなぎの言葉」が条件系(節末語としては「と」)で、イ中の節末語が付帯状況の「て」であるというパターンが際立っている。次に多いのは「つなぎの言葉」が順接系(節末語としては「ので」)の場合である。この場合もイ中の節末語は付帯状況の「て」である。a型ハでは節末語も「つなぎの言葉」も種類が多様だが、「つなぎの言葉」では順接系が最も多く、次いで、逆接系が条件系をやや上回る。a型ロでは「つなぎの言葉」が条件系(節末語としては「と」)でロ中の節末語が順次を表わす「て」のパターンが際立つ。α系列のs型イでは「つなぎの言葉」が条件系(節末語としては「と」)でイ中の節末語が付帯状況の「て」であるというa型イと同様なパターンが目立ち、節末語も「て」の付帯状況が大部分である。s型ロにおいては、「つなぎの言葉」が条件系(節末語としては「と」)でロ中の節末語が「て(順次)」のパターンが多い。s型ハではa型ハと同様、節末語も「つなぎの言葉」も種類が多くなるが、「つなぎの言葉」は順接系が主で条件系や逆接系は非常に少ない。節末語に関してはあまり特徴が見られなかった。β系列に関しては、a型イの基本類型イ中の節末語としてはα系列のときと同様に付帯状況の「て」が多く、次いで「ながら・ように」などがくる。このa型イでは付帯状況なので、「つなぎの言葉」をつけないで理解させた方がよい場合もかなりある。β系列のa型ロとハについては「つなぎの言葉」に条件系が現われないこと以外、目立った特徴がない。a型イでも条件系の「つなぎの言葉」が見られない。β系列s型イのイ中の節末語はやはり「て(付帯状況)・ながら・ように」などであり、s型ロとハは際立った特徴が見られず、s型でも条件系の「つなぎの言葉」は出現していない。両系列とも「につれて」などの助詞相当は見られなかった。単文型のα系列では順次動作の接続よりも、「て(並列)」や「たり」による並列接続の方が多く、β系列では順次動作が主である。
 ★物語文、説明文ともにα系列a型イにおけるイ中の節末語は付帯状況を表わす「て」が中心であるが、物語文では次に「ながら」、説明文では「連用形」がくる。α系列a型ハでは物語文の場合、種類は多いが、目立って多い節末語がなかったのに対し、説明文では動詞の連用形による並列接続が多いという特徴がある。「つなぎの言葉」では物語文では順接系が多いが、説明文では逆接系、条件系も多くなる。a型ロでは「つなぎの言葉」が条件系(節末語としては「と」)でロ中の節末語が順次を表わす「て」のパターンが両文とも目立つ。α系列のs型イ、ロではイ、ロ中の節末語の大部分が付帯状況の「て」、順次動作の「て」であることは共通している。s型ハのハ中の節末語については、物語文には目立った特徴がないが、説明文では「て・たり・と」による因果、並列の接続が多い。「つなぎの言葉」は物語文のs型イ、ロでは条件系、s型ハでは順接系が主であるのに対して、説明文ではイ、ロ、ハを通じて条件系が中心となる。β系列については説明文において用例が少なくはっきりしたことがわからないが、物語文では「つなぎの言葉」に条件系が見られないのに対して、説明文には条件系も現われる。両文とも順接系が中心であることでは同じである。「につれて」などの助詞相当は説明文のα系列a型ハのハ中の節末語として出現する。単文型のα系列では物語文は「て(並列)」や「たり」による並列接続が多く、説明文は順次動作の接続がやや並列接続を上回る。単文型のβ系列は説明文には現われていない。
【N節1含む文について】 α系列のa型イでは節末語は「て(並列)・連用形(並列)・と」などで、「つなぎの言葉」は順接系、条件系がほとんどである。a型ハの節末語は「ても・ので・から・とき」など多様になり、順接系、逆接系、条件系のすべての「つなぎの言葉」が現われる。a型ロは1例で、「つなぎの言葉」は条件系である。α系列s型イの節末語は条件を表わす「と・たら・ば」が中心で、したがって「つなぎの言葉」も条件系が主である。s型ハのハ中の節末語は「が」がやや目立ち、したがって「つなぎの言葉」は逆接系が中心である。s型ロは非常に少ないが、「つなぎの言葉」は条件系のみである。β系列のa型イでは節末語は「て(付帯状況、順次、並列)」が中心で、「つなぎの言葉」は順接系のみである。a型ロは1例で、「つなぎの言葉」は順接系、a型ハは見られなかった。s型はs型ハのみで、節末語は並列の「て・連用形」「つなぎの言葉」で言えば、順接系「そして」だけである。単文型はごくわずかで、β系列の順次動作の接続である。底の名詞が共通の「入り組み型」が1例β系列にあるが、これも単文型(順次動作の接続)となる。
 ★物語文と説明文のα系列のa型イでは節末語が並列を表わす「て・連用形」「つなぎの言葉」は順接系がほとんどである点で一致する。a型ハでは物語文では順接系、逆接系、条件系のすべての「つなぎの言葉」が現われるが、説明文では条件系は見られない。a型ロは両文とも出現例はきわめて少ない。s型も説明文での用例が非常に少なく比較できない。β系列も用例不足で比較は難しいが、ハでは両文とも「つなぎの言葉」が順接系「そして」だけである点で共通する。単文型も両文ともごくわずかで、物語文では順次動作の接続、説明文はα系列で並列の接続である。
【N節2以上含む文・N節中に接続節を含む文について】 すでに述べたようにN節2以上含む文では、α系列の単文型(順次動作の接続)が1例、β系列の単文型(並列の接続)がある他は、両系列ともa型となる。用例が少なく出現傾向を見るのは難しいが、a節と基本類型との「つなぎの言葉」はα系列では順接系、逆接系、条件系のすべてが現われ、β系列では順接系と逆接系である。
 N節中に接続節を含む文については、a型イとs型イで現われるが、節末語は「と・し・て」で、「つなぎの言葉」は順接系と条件系である。N節中に含まれる接続節は付帯状況や順次動作を表わす。ここでも用例が少なく出現傾向を見るのは難しい。
 ★物語文のN節2以上含む文は単文型を除き、a型イとハで現われ、「つなぎの言葉」はα系列では順接系、逆接系、条件系のすべてが現われるのに対し、説明文でもα系列はa型で「つなぎの言葉」は順接系と逆接系である。β系列では、説明文でs型もあるが、「つなぎの言葉」は順接系と条件系となる。単文型は説明文ではβ系列に現われ、順次動作の接続である。
 N節中に接続節を含む文については、物語文ではα系列で現われるが、説明文ではα系列a型とs型、β系列s型で見られる。「つなぎの言葉」は物語文は順接系と条件系、説明文では順接系である。


3-4.N節の位置、働き

【N節1含む文について】 α系列のa型イでは、a節中に位置するN節が大部分でそれらはすべて補足語要素である。残りは基本類型イにおいて主題要素となるN節や、基本類型中の従属節に置かれ、補足語要素となるN節である。a型ロは1例しかないが、補足語要素となるN節が基本類型中の主節に位置する。a型ハではN節は基本類型中の従属節か主節のいずれかに位置し、すべて補足語要素として働く。α系列のs型イでは、s節中で補足語要素として働くN節がやや多いが、基本類型イ中で補足語要素、主題要素、修飾語要素として働くN節も存在する。s型ロではs節に位置するN節と基本類型ロ中の主節に位置するN節とがあるが、いずれも補足語要素として働く。s型ハではs節中で主題要素として働くN節以外は、基本類型ハ中に位置する。この中では、主節中に位置し補足語要素として働くN節が目立つ。β系列で一番多いa型イでは、基本類型イ中の従属節に位置し、補足語要素として働くN節が中心となる。s型ハでは基本類型ハ中の主節に位置し、補足語要素として働くN節のみである。その他β系列では単文型が若干あるが、文頭に位置し主題要素の働きをするN節と、2番目の節にあり補足語要素の働きをするN節が見られる。N節1の「入り組み型」がβ系列に1例あるが、これはa型ハであり、a節中にある補足語要素の「こと節」のうちに修飾語要素のN節を含む。
 ★物語文のα系列のa型イ、説明文のα系列のa型イ、ロにおいては、a節中で補足語要素として働くN節が際立つ。a型ハでは、物語文の場合、N節は補足語要素として基本類型中に位置していたが、説明文ではa節や基本類型中に位置し、補足語要素として働くN節が大部分である。α系列のs型では説明文の場合はどれも補足語要素として働き、物語文でも大部分が補足語要素して働く。N節の位置については説明文の用例が少ないので有効な比較はできない。物語文のα系列では文全体の主節に位置するN節が、最初の節に位置するN節をやや上回る。説明文のα系列では最初の節に位置するN節が現われることが最も多い。β系列では、文頭に位置し主題要素の働きをするN節が現われることで一致する。説明文では、その他のN節は文全体の主節に位置していたが、物語文のβ系列では、文全体の主節に位置するようなN節はきわめて少ない。両文とも「入り組み型」では補足語要素中にN節が存在することが観察される。
【N節2以上含む文・N節中に接続節を含む文について】 α系列では基本的にはN節2の「混交型」が1例ある他は、並列型である。「混交型」はa型ハでa節にある主題要素の「こと節」と、基本類型中の従属節にあってN節を含むN節である。この二つのN節はともに補足語要素である。「並列型」ではN節1は必ず最初の節に置かれている。N節の文中における働きは補足語要素の他、述語要素、修飾語要素も現われる。β系列では2例とも「並列型」で、N節1はやはり最初の節に置かれ、別のN節は文頭か2番目の節に置かれている。N節の文中における働きは補足語要素と主題要素である。 N節中に接続節を含む文のN節の位置は、N節が1のときは文全体の主節に位置し、N節が2のときは、最初の節と文全体の主節に置かれている。補足語要素、主題要素、述語要素の働きをするN節が現われる。
 ★説明文ではN節3の文も1例あるが、すべて「並列型」である。N節の位置については物語文の場合、一つのN節は必ず最初のa節に位置していたが、説明文ではa型で基本類型中の従属節と主節中に分かれて現われることもある。N節は説明文では補足語要素として働く。物語文のβ系列では、N節の一方が最初の節に置かれているという特徴が見られる。N節の文中における働きは補足語要素と主題要素で両文とも共通している。
 N節中に接続節を含む文については、N節1のとき、物語文ではN節は文全体の主節に置かれ、説明文では最初の節に置かれている。N節2のときは、物語文では最初の節と文全体の主節に置かれ、説明文では文頭と文全体の主節に位置する。N節の文中における働きは、説明文では補足語要素、主題要素で、物語文のように述語要素の働きをするN節は現われない。


3-5.引用節、会話文について

 引用節の位置は、引用節が1の場合、α系列、β系列を通じてs節、次に基本類型中の主節に置かれることが多い。類型別に見ると、α系列のa型イで出現率が高く、次いでα系列a型ロ、s型ハとなる。引用節が2の用例は少ないが、すべてα系列でa節と基本類型中、s節と基本類型中というように分散して現われるので、個別に取り出して教えることができる。N節1の文でも引用節は出現するが、用例はきわめて少なく、引用節1が基本類型中の主節に位置している。N節2以上の文には引用節は現われない。また、物語文全体では直接引用の数が間接引用を上回る。
 会話文はN節を含まない文では、α系列a型とs型に多く、特にα系列a型に集中している。β系列には数えるほどしか出現しない。単文型でもα系列に偏るが、用例はごくわずかである。N節1以上含む文においても、α系列a型とs型に現われ、β系列では1例のみs型に現われる。単文型の会話文は見られなかった。
 ★説明文では物語文に比べ、引用節、会話文ともに出現例はきわめて少ない。説明文の引用節はα系列a型とs型で現われ、N節を含まない文ではs型でs節に置かれ、N節1の文ではa型に偏る。N節1の文では引用節も1であり、N節2以上の文には現われないことは共通している。また引用節2ある場合はs節と基本類型中に分かれて出現するのも、両文の共通点である。直接引用と間接引用については説明文の用例が少なくはっきりしたことは言えない。
 会話文は、接続節2含む説明文では見られなかった。このことは、物語文と説明文の根本的な違いの一つであろう。


4.接続節3含む文における複文について

4-1.全体の内訳

 物語総文数中の接続節3含む文の出現率は0.2割弱、そのうちN節0の文は接続節3含む文全体の6割を超える。残りがN節1や2の文である。N節1のうち2例は引用節内に含まれるN節である。
 ★接続節3含む文の出現率は、物語文も説明文もほぼ同率である。ともにN節3以上は存在しない。N節0の文の接続節3含む文全体における比率は、物語文の方が高い。反面、説明文ではN節1の文の比率が高くなる。指導の際には、両文ともN節0と1が中心となることでは共通している。


 高学年で多く現われ、特に5年が最も多い。いずれの学年においてもα系列の数がβ系列を上回り、6年でその差が著しい。N節3含む文が最も多い5年ではβ系列も全学年を通じて最も多くなる。
 ★説明文においては低学年の例は非常に少なく、ほとんどが高学年において出現しているが、物語文では学年を追うごとに増え、3年でもかなりの数が現われる。高学年で多く、5年で出現数が最も多くなるというのも同じ。また、物語文ではいずれの学年においてもα系列の数がβ系列を上回っていたが、説明文ではβ系列の数自体が少ない。特に1、3、4年には現れない。α系列の数がβ系列を大きく上回っていることでは一致する。(ただし、説明文では用例自体が少ないことに注意する必要がある)。


4-3.基本類型パターンについて

(1)イハのように二つの基本類型で書き表せるもの:
40例(α系列28、β系列12)
 このうち、両系列を通じて多いのがハハ、ロイ、イイなど、α系列ではハハ、ロイ、β系列ではイ イの組み合わせが多く見られる。
(2)aイsのように一つの基本類型とa節とs節との組み合わせ:
aイs/aロs/aハs:14例(α系列9、β系列5)
(3)abハのようにa節、b節で切れて、最後に基本類型がくるもの:
 abイ/abロ/abハ:
12例(α系列10、β系列2)
(4)単文接続(各接続節が順次動作、または並列の関係で結びついているもの)、およびそれに類するもの(aロ変、aハ変のように便宜的に書いたが、a節以外は順次動作であるか、並列節となるもの、イロ変のように基本類型イが初めにきて、それから順次動作が続くもの):
 単文接続:4例(α系列3、β系列1)
 aロ変/aハ変:3例(α系列1、β系列2)
 イロ変:4例(α系列0、β系列4)
(5)イcsのように一つの基本類型とc節とs節との組み合わせ:
 イcs/ハcs:5例(α系列5、β系列0)
 α系列、β系列ともに(1)のパターンが最も多い。次いでα系列では(3)および(2)が、β系列では(4)のパターンが多くなる。(5)はα系列のみで見られた。
 ★説明文では見られなかった(4)(説明文ではaハ変とハ変sのみ)や(5)のパターンが観察された。物語文、説明文両方のα系列、β系列を通じて、(1)のパターンが最も多く、次いで、α系列では(2)や(3)が多いことで共通している。また(1)のパターンでは、説明文、物語文ともにβ系列ではイイの組み合わせが多い。(α系列については説明文の例が少ないので、はっきりしたことは言えない)。(1)のパターンが多くなるのは文構造の安定性を考えればうなずける。(4)のパターンはβ系列に多くすべてロ変をそのうちに持つ。説明文ではハ変となる。


4-4.「つなぎの言葉」について

 「つなぎの言葉」が一つのとき:(1)のパターン(以下出現順に記す)
《α系列》 しかし(節末語:が、けど、ものの)→そして(節末語:て、連用形、と)→
      すると/そうしたら(節末語:と、ば)
《β系列》 そして(節末語:て、連用形、と)→しかし(節末語:が)→だから(節末語:て)
      「つなぎの言葉」が二つのとき:(2)、(3)、(5)のパターン
《α系列》 そして(節末語:て)、すると(節末語:と)の組み合わせ→すると(節末語:
      と)、そして(節末語:連用形)及びそして(節末語:て)、だから(節末語:て)の組
      み合わせ(いずれも「そして(節末語:て/連用形)」をそのうちに含む)
《β系列》 そして(節末語:て)を持つ組み合わせ→しかし(節末語:が)を持つ組み合わせ

 「つなぎの言葉」が一つのときはα系列では逆接系、順接系、条件系の順で出現し、β系列では順接系がほとんどで、節末語「と」も「つなぎの言葉」「そして」で言い換えられる。「つなぎの言葉」が二つのときはα系列では順接系と条件系の組み合わせが最も多く、次にくるものも順接系をそのうちに含む。逆接系と条件系の組み合わせは見られなかった。また、β系列では順接系同士の組み合わせが最も多く、次いで、逆接系と順接系の組み合わせ、α系列で多かった順接系と条件系の組み合わせは1例のみで、α系列と同様逆接系と条件系の組み合わせはなかった。
 ★説明文は例は少ないのだが、「つなぎの言葉」が一つのときは、両系列を通じて逆接系が多く、逆接系が多いというのは物語文のα系列と一致する。「つなぎの言葉」が二つのときは順接系と条件系、次いで順接系同士の組み合わせとなる。二つの系列の違いははっきりしないが、α系列ではすべてが、「つなぎの言葉」の「そして」で言い換えられる節末語「連用形」をそのうちに含んでいる。これは「て」が多い物語文との違いと見られる。物語文と同様、逆接系と条件系の組み合わせはない。


4-5.N節の位置、働き

 N節1ではα系列にはるかに多く出現し、N節2では両系列にほぼ同等に現われる。α系列では基本類型の従属節中に出現するものが最も多く、次いで単文に切った場合、その単文中に現われる。反面、基本類型の主節中に現われるのは両系列を通じてほとんどなかった。β系列では文全体の主語となるN節が2例、単文中に2例、他は基本類型の主節と従属節中に1例ずつである。N節の働きでは、α系列では補足語要素のN節がきわめて多く、次いで主題要素となるN節がくる。β系列では文頭に位置する主題要素のN節と、補足語要素のN節が同数である。N節2はα系列ではすべて単文中に現われる「並列型」であり、β系列では「並列型」とa節中にN節を含む「混交型」が各1例ずつ見られる。N節の働きについては、はっきりした特徴はつかめない。
 ★説明文ではN節1のとき、基本類型中の従属節中に現われる例は見あたらなかったが、物語文ではそれが非常に多いという特徴がある。β系列では文頭に位置し主題要素となるN節が観察されるという共通した特徴がある。N節2のときは物語文では「混交型」も出現するなどやや文構造の複雑なものもあるようだ。が、ほとんどは「並列型」であることは両文に共通している。N節の文中における働きも補足語要素が多いという点では一致している。


4-6.引用節、会話文について

 引用節の位置はN節と同様、α系列では、基本類型中の従属節中に置かれるものが一番多いが、単文中に位置するものや、基本類型中の主節中に置かれているものもかなりある。β系列では非常に少ない。すでに見たようにα系列には引用節中にN節を含む文が2例ある。会話文はα系列には見られるが、β系列には現われない。
 ★説明文では引用節を含む文は1例しかなかったが、物語文のα系列には接続節3の文全体の4分の1ほどに引用節が含まれている。β系列にはあまり見られなかった。会話文も説明文にはなかったが、物語文のα系列には少ないが、出現する。


5.接続節4以上含む文における複文について

5-1.全体の内訳

 接続節4以上含む文の物語総文数中の出現率は0.1割にも満たない。接続節4の文は接続節4以上含む文全体のほぼ6割を占める。残りが接続節5の文である。接続節6は1例のみである。
 ★接続節4以上含む文の出現率は、説明文では0.1割強で、物語文に比べやや説明文が高くなる。また説明文では、接続節4の文は接続節4以上含む文全体の6割以上であり、この比率も説明文の方がやや高い。説明文ではN節2は接続節5の文で見られ、物語文では接続節4の文で見られるが、1例のみであり、N節1含む文もわずかである。両文ともN節0が中心である。


5-2.α系列、β系列の割合および学年別出現数

 接続節4の文は大体が高学年で現われ1年では出現しないが、2年と3年でもわずかながら出現していることに注意する必要がある。接続節5以上は3年、5年、6年に集中し、特に5、6年に偏る。4年には出現していない。接続節6の文は6年に1例あるのみである。α系列、β系列の割合は、α系列が3年以上の学年でβ系列を上回る。接続節4の文では5年のみ例外である。いずれにしても全体の数から言えば、β系列はα系列を大きく下回る。
 ★説明文においては低学年の例はなく、すべてが高学年において出現しているが、物語文では高学年に多いながら、2年や3年にも現われる。物語文は、接続節5以上では3年の例はあるが、4年の例がないという特徴が見られる。接続節6は物語文では6年で、説明文では2例とも4年で現われる。
また、説明文では用例自体が少ないのだが、1例を除き、すべてα系列である。両文ともα系列の数がβ系列をはるかに上回ると言える。


5-3.基本類型パターンについて

【接続節4含む文について】
(1)aイイのようにa節と基本類型の組み合わせ:3例(α系列3、β系列0)
(2)ロイsのようにs節と基本類型の組み合わせ:2例(α系列0、β系列2)
(3)単文接続と考えられるもの:6例(α系列5、β系列1)
(4)イcハのようにc節と基本類型の組み合わせ:8例(α系列5、β系列3)
 ★説明文では見られなかった(4)のパターンが出現。しかも一番多くなっている。

【接続節5以上含む文について】
(1)ハロハのように三つの基本類型の組み合わせ:2例(α系列0、β系列2)
(1)'三つの基本類型と単文節の組み合わせ(接続節6):1例(α系列0、β系列1)
(2)a節と、b、c、dのいずれかの節と、二つの基本類型の組み合わせ:
 5例(α系列4、β系列1)
(3)単文接続と考えられるもの:5例(α系列5、β系列0)
 ★(2)、(3)が説明文に見られなかったパターン。(2)、(3)は同等の出現率。(3)はβ系列にはなかった。


5-4.「つなぎの言葉」について

【接続節4含む文について】
 「つなぎの言葉」が二つのとき:(1)、(2)、(4)のパターン
順接系と条件系(「そして(節末語て)」と「すると(節末語と)」など)及び、逆接系と順接系
(「しかし(節末語が)」と「そのとき?(節末語とき)」など)
(3)では「ハ変」は見られたが、「ロ変」は見られなかった。
 ★説明文との比較は困難である。条件系が多いというのが共通かもしれない。
【接続節5以上含む文について】
 「つなぎの言葉」が二つのとき:(1)のパターン
順接系と順接系(「そして(節末語ないで)」と「それから(節末語てから)」)
条件系と逆接系(「すると(節末語と)」と「しかし(節末語が)」)
 「つなぎの言葉」が三つのとき:(1)'、(2)、のパターン
順接系同士(最初の二つの「つなぎの言葉」は並列を表わす)や、順接系と条件系と逆接系の組み合わせ
付帯状況の「て」と順接系逆と接系の組み合わせ(接続節6はこの組み合わせ)
(3)では「ロ変」「ハ変」両方見られた。β系列には出現していない。
 ★接続節5では説明文では(1)のパターンのみ。物語文では(2)、(3)、のパターンが新たに出現する。接続節6はのパターンは同じである。


5-5.N節の位置、働き

【接続節4含む文について】 N節1では単文に切った場合の単文中に現われるものと、最初に基本類型中の主節中に現われるものがある。N節の働きは「入り組み型」を作るN節が主題要素となる他は、含まれるN節もその他のN節もすべて補足語要素である。N節2が1例あるが、「並列型」でいずれも単文中に位置し、その働きは補足語要素である。
 ★両文を通じて物語文の1例を除き、N節は補足語要素である。N節の位置については単文中に位置する傾向があるのかもしれない。
 
【接続節5以上含む文について】 N節の出現はきわめて少なく、接続節5にN節2が1例あるのみ。それは「並列型」で単文中と後にくる基本類型中の従属節中に位置する。文中での働きはいずれも補足語要素である。
 ★やはりN節の働きは両文とも補足語要素である。位置についてははっきりわからない。


5-6.引用節、会話文について

 引用節は接続節4ではα系列にのみ出現し、いずれも単文中に位置する。しかし、出現率は低い。接続節5以上では、基本類型中の主節に位置するものと、単文中に現われるものがあるがいずれも出現率はきわめて低い。引用節についてはあまり注意する必要がなさそうだ。会話文となっているものも見あたらなかった。
 ★説明文でも、引用節は4例しか観察されていない。接続節の数が増大していく段階ではN節とともに引用節も減少すると言えるのではないか。


おわりに

 物語文と説明文では、各々の総数は前者が後者のおよそ4倍と、もともとかなりの隔たりがある。したがって、両文における複文についての比較を試みる際には、そのことをまず念頭におく必要がある。基本類型や節末語形式、基本類型パターンなどにおいて、説明文に現われないものが多かったのはある程度、もともと存在する総文数の差異によるものであるかもしれないということは考慮しなければならない。しかし、それでもなお接続節やN節を含む文の出現率や、節末語の「連用形」、助詞相当表現、会話文、引用節の現われ方など、物語文と説明文自体の質的な差異から生じる様々な特徴も見出せたと考える。むろん、共通点も数多くあった。また、両文における文末表現の調査など、やり残した比較事項もあるし、用例数が少ないために比較にはいたらないことも多かった。大切なことは、教える側が、本質的ではない共通点や相違点を見きわめながら、他方、本質的な差異については十分それを踏まえて指導に当たることである。(了)


−注−

*光元聡江・三宅節子「説明文にあらわれた複文について」『岡山大学教育学部研究集録』第107号、 1998年