援護基金機関紙51号(平成15年2月)から

定着状況調査集計結果

 

 概要編 

 昨年九月に実施した、定着状況調査のアンケートは、 予想を大きく上回る皆さんの御協力で十分に実態に迫れそうです。10月1日に締め切った後も、続々と返信が寄せられ、15日までに到着した回答を集計しております。その後到着したものは、今後の資料として役立たせていただきますが、 現在の集計は、一応区切ったもので行っています。  その回答状況は、表1のとおりで、また、提出された回答者の 構成比は、図1のとおりです。 援護基金では、ここに掲げたように、残留邦人本人、その配偶者、二世、その配偶者、三世と、 いわゆる帰国者とその家族を身分のうえで分類、さらに、帰国した年代別に分け、 帰国後の経過年数でも区分し、それぞれ集計しております。帰国したときの年令で、日本社会適応にどのような違いが生じているのか、時の経過とともにそれぞれどう変わっていくのか、変わらないのか。 同じ人の経過を見るのも一つの方法ですが、それは時間がかかりすぎるので、 帰国後2年の人、4年の人、10年の人といった具合に、同一時に多くの人を 見ることで、時の経過による変化を見たいと考えています。  そのうえで、今後、援護基金として、どのような事業を展開していけば、 皆さんの役に立つのかを検討することにしています。 詳しい分析結果は、次号の機関紙で特集しますが、まずは、今までのところで、 大まかな概要を報告いたします。

 

表1 定着状況調査回答数

  男性 女性 合計 構成比
残留邦人本人 325 426 751 49.7%
残留邦人配偶者 142 109 251 16.6%
残留邦人二世 214 160 374 24.7%
二世配偶者 29 35 64 4.2%
三世(含配偶者) 32 40 72 4.8%
合計 742 770 1512 100.0%

 

図1 回答者構成比

帰国の動機は、

日本人だから

(本人)

配偶者が望むから

(配偶者)

親が望むため

(二世)

 複数回答でいいとした問ですが、残留邦人本人は、「日本人だから」を、 751人中の504人が挙げ、以下、「余生を故郷ですごしたい」(同293)、 「肉親を探したかった」(同170)と続いています。 一世の配偶者は、「配偶者(残留邦人本人を指す)が日本へ帰りたいと望むため」 (251人中190)がトップで、次に「子供の将来のため日本の方がいい」(52) が断然多くなっています。 

 

図2 回答者の帰国後経過年数

 
表2 帰国の動機(複数回答)

残留邦人本人 ベスト5

日本人だから 504
生まれ故郷で余生を過ごしたい 293
肉親を探したかった 170
子供の将来のため 131
中国でいじめられた 41
 
残留邦人の配偶者 ベスト2
(3番目はごく少数でバラツキ)
配偶者が望むため 190
子供の将来のため 52
 

二世のベスト5

親が望むため 217
子供の将来のため 63
親に連れられて来た 57
日本の方が可能性がある 35
日本の方が経済的に豊か 30
 
 
 

日本語と日常生活

個人差が大きく開く
 純粋な日本語力より、日本語を使ってどのような生活環境を作っているか、といもので、性格も影響しているのかと推察できます。たとえば、帰国後六年足らずで、5%の人が在来日本人と同じぐらいに話せるとしている一方、2%あまりの人は、帰国後10年以上経ってもあいさつ程度しかできないと答えています。 これは適応の基本的な形でもあると思われるので、年代別、帰国後年数別、男女別等、 細かく分析検討したい項目です。 

生活情報

テレビは何でも視るが、情報は中国新聞で(本人) 
 一世については、36%の人が、テレビはどんな番組でも 視ると答えています。 新聞を購読している一世は14%に過ぎず、27%の人が中国語の週間新聞で 情報を得ているようです。 二世になると、31%の人がテレビのどんな番組でも視、 新聞は、中国語のものが21%、日本の新聞購読者は29%と 逆転しています。これより多い、30%が、読めるが購読していないと 答えています。  

友人関係

本人は帰国者を意識せず多くの友人、 同数で帰国者仲間だけ
 一世配偶者は、帰国者仲間だけが33%と多く、 二世は、帰国者を意識しない友人が39%と増えています。
 

 

図3 友人関係

地域での交流

地域の行事には六割以上が参加
 積極的には参加しない15%を大きく上廻り、特に女性の参加が多いようです。 

 

図4 地域の行事への参加

就労関係

本人は22%が就労 働きたいが仕事がない 35%
 帰国者の置かれている厳しい状況が現れています。 二世は、86%が就労、11%が求職中です。 また、就労中の人では、一世が現職に満足している人が多いのに対し、 二世は、転職を希望する人が就労者の半数近くにのぼるのが特徴です。 賃金も、中途採用によるためか低く押さえられているのが実情です。 

 

図5-1 就業状況 残留邦人本人

 

図5-2 就業状況 配偶者

 
 

図5-3 就業状況 二世

 

表3 二世の就きたい仕事ベストテン

男性 (回答149人)

 
 工員   24人 
 車の運転手   20人 
 貿易会社経営   17人 
 事業会社経営   12人 
 通訳   12人 
 食堂経営   8人 
 中国語教師   6人 
 調理師   6人 
 事務員   6人 
 設計技師   6人 
 土木作業員   6人 
 園芸   6人 
     

女性 (回答124人)

 
 通訳   25人 
 貿易会社経営   21人 
 中国語教師   14人 
 工員   13人 
 事務員   12人 
 事業会社経営   5人 
 食堂経営   5人 
 教師   4人 
 販売業経営   4人 
 美容師   3人 
 弁護士、会計士等の専門家   3人 
 店員   3人 
     
住宅事情

大部分が公営住宅 93% 持ち家率は、4%
 二世の場合も、71%が公営住宅に住み、 持ち家率は、7%と一世を上廻っています。   

 

図6 住宅の状況

帰国した満足と不安

帰国したことに満足 しかし、老後が不安
 83%の一世が帰国したことに満足し、 後悔している人は、4%にすぎません。 二世の場合も78%が満足し、後悔している人は2%です。 しかし、最後に自由筆記した欄には、極めて多くの人が、 忍び来る老後に対して大きな不安を持っている状況です。

 

図7 日本への帰国(来日)の満足度

まとめ

 以上は、現在集計分析中に目についた特徴を、概要として述べたものです。 現在詳しく分析検討しており、次回は、特集号として様々な表などで報告したいと考えております。