初めて日本語指導担当になられた方へ(1)
神戸市立の本山第二小学校の「国際教室」担当の村山勇です。
これまで六年間、港島小学校ワールドルームで日本語指導を担当しました。
この四月から、初めて日本語指導担当になられて不安を持っている方がおられましたら、
私の実践した具体的な手立てを紹介します。
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(1)日本語教室や日本語指導担当教師のPR
・入学式で、新一年生の学級担任や、一年生に関係する養護教諭やなかよし学級の担任紹介があると思います。
同時に、日本語指導担当も紹介してもらいましょう。このとき、児童の母語の「こんにちは」などを言うと、印象に残ります。
・「学校だより」や各「学年だより」に、日本語教室と担当者の紹介を必ず載せてもらいましょう。
写真か似顔絵を添えて印象付けましょう。
・学年集会などで、子どもたちへ各先生の紹介があるとき、必ず出むいて、日本語担当者も紹介してもらいましょう。
このとき、「日本語教室は、関係の子どもだけでなく、だれでも来てもいい。」ということをPRしておきましょう。
全ての学年へ行くようにしています。
・当分の間、胸に日本語教室担当○○○と書いた名札をつけて、校内を歩きましょう。
・校舎に入って、すぐ目に付くところに、「職員室は、○階です。日本語教室は、○階です。」という案内を掲示しましょう。
各母語で表示してあると、もっと親切です。履き替えのスリッパは、子ども用も用意しておくと、喜ばれます。
・名刺を作りましょう。外国からの保護者のために、日本語はルビ付き、ローマ字や母語も併記したものがいいです。
これを持って、早速家庭訪問にいきましょう。「困ったことがあったら、すぐに学校の私のところへ電話をください。」と言って、
外国から来た保護者の不安を少しでも、和らげましょう。
・給食の時間は、関係のある学級へ出向いて、そのクラスの子どもたちといっしょに、食べています。
「自分の教えていない言葉を、どうして、この子が覚えたのか。」わかります。
こうして、周りの子どもたちとも、仲良くなっておきましょう。
・こうして、外国からの保護者や日本の保護者に、日本語教室のことをPRしておくと、やがて、いろいろな物品の寄付を募ったり、
「外国から来た保護者のための日本語教室」を開くことが容易になります。
(2)児童や保護者の紹介
・日本語教室の世界地図の上に、それぞれの国から来た子どもの写真をはり付けます。
また、別に子どもの自己紹介やデーター(来日年月日、出身地など)を書いた表も掲示します。
(趣旨を説明し、本人や保護者の許可を取ってから)
・職員室には、その子どもと家族の写真、データーを記入した表を掲示します。
(学校へ来られた時点で、趣旨を説明し、許可を得ます。)
これは、他の先生方に、子どもと家族の顔を覚えてもらうためです。
あまり、目立たちすぎないように、掲示しています。
・外国から来た児童の紹介のために、「日本語教室だより」を、毎月発行しましょう。児童の日記や作文、イラストを入れます。
このとき、日本での体験だけでなく、母国の同じ行事の様子も書くように指導しています。
外国から来た子どもの作品は、母語で書かれたものと、その翻訳をつけました。
また同じクラスの子どもの作品も時々混ぜます。
月初めの発行は、他のおたよりとまぎれるので、月半ばにしていました。全校全員配布ではなく、各学級掲示から始めました。
・日本語教室の廊下の掲示板には、「今、日本語教室では、こんな勉強をしています。」というコーナーを作り、各児童の勉強の進歩の様子を紹介しています。
同様に、在籍学級にも、同じコーナーを作ってもらいました。
・取り出しの日本語指導を効率良く行うためには、一時間ごとの子どもの組み合わせが大切です。
そこで、子どもの学級担任に、この事を説明し、学級の時間割の調整をお願いしましょう。
(複数の子どもが、同じ学年、レベルなら同一の教材で、競争して伸びていきますので、同じ時間に来れるようにしてください。)
・校内テレビ放送で、日本語教室の様子を放映しましょう。
在籍学級とは一味違った様子が、紹介できます。
・全校集会で、転入生の紹介があると思います。このとき、外国から来た子どもだけでなく、日本の子どもも緊張しています。
そこで、このとき、高い台の上に上げるのは避けて、全校生の方が、しゃがむようにお願いしています。
また、自己紹介は、初めにつかえると後が困るので、上手な日本の高学年の子どもが先に言うようにしています。
・教員向け「日本語教室だより」を発行しましょう。教員が知っておくとよいその国のこと、その子どもの成長や進歩の様子、日本語指導の
知識(先生は、まず「ます形」でしゃべってくださいね。など)、技術などを紹介しましょう。
・偏見や差別は、情報が少ないところから発生します。
担当教師は、マスコミになって、その子どもや国の情報を、できるだけたくさん紹介していきましょう。
神戸市立本山第二小学校 国際教室の村山です。
(1)お勧めの文献集
@「外国語としての日本語 その教え方・学び方」
佐々木瑞江 講談社現代新書 650円
内容は留学生向けですが、「国語と日本語の違い」がよく分かります。「日本語
で日本語を教える直接法」に自信が持てます。この中で紹介されている日本語文法
の表などを「子ども向け」に改造し、定着させる楽しい方法をいろいろ考えました。
以下は、コメント無しですが、児童の背景、学校現場の様子、授業のアイディア
などを知る上で、どれも大変役に立つ本ばかりです。(値段は、変更があるかも知
れません。)
A「「ガイジン」生徒がやって来た」
高橋政夫、シャロン・S・バイバエ 大修館書店 2100円
B「入国児童のための日本語教育」
縫部義憲 スリエーネットワーク 2940円
C「実践国語研究別冊1998 No.184
日本語教室の実践と日本語教室のあり方」 明治図書 1850円
D「日本語の教え方実践マニュアル 子供のための日本語教育」
山本紀美子、荻野誠人、浅井清子、吉田絹子 アルク 1942円
E「子どもといっしょに!日本語授業おもしろネタ集」池上摩希子・大蔵守久
凡人社 1050円
(2)お勧めの教材集
私は、以下のものを大体番号順に、前後はかなり重複しながら使っています。
@「日本語学級1,2」波多野ファミリスクール 大蔵守久 凡人社
1800円、1900円
A「にほんごだいすき 1、2」 鈴木重幸、工藤真由美 むぎ書房
テキスト(1165円、1200円)、ワークブック(583円、800円)
たんごのほん(1748円)
B「ひろこさんのたのしいにほんご1、2」 根本牧、屋代瑛子、永田行子 凡人社
テキスト(1800円、1800円)
ぶんけいれんしゅうちょう(1200円、1800円)
C「にほんごだいすき 2 れんごのほん」 むぎ書房 1200円
D「にほんごをまなぼう 1」 ぎょうせい テキスト 951円
E「日本語学級3」 足し算・引き算 日本語クリアー」 凡人社 1600円
F「日本語ワークブック」 日本語ぐるりっと編著 凡人社 1300円
G「日本語を学ぼう 2、3」ぎょうせい テキスト 1068円,1262円
H「わたしのにほん BOOK1,2,3」チャールズ・イー・タトル出版
各1000円
I「新文化初級日本語 T、U」 凡人社
テキスト(各2000円)、練習問題(各1000円)
初めて日本語指導担当になられた方へ(3)
お勧めのパソコンソフト集
(1)CD−ROM「マルチメディア版 にほんごをまなぼう」
製作:日本語指導教材研究会(平成10・11年度文部省委託)
各都道府県市の教育委員会やセンター校などに、配布されています。
著作権は文部科学省にありますが、コピーしても良いそうです。
テキスト「にほんごをまなぼう」に準拠していて、日本語、英語、スペイン語
ポルトガル語、中国語、韓国・朝鮮語で、登場人物が話します。また任意の一
言語を追加できます。発音練習やデジタルカメラで写真の取りこみができます。
ウィンドウズ対応版のみです。
(2)CD−ROM「五味太郎の言葉図鑑 動きの言葉」 NECインターチャネル
4800円
(3)CD−ROM「五味太郎の言葉図鑑 かざる言葉」 NECインターチャネル
4800円
(4)CD−ROM「外国人用日本語のきそ」 TEK 7800円
(これは、大人向けで、紙教材をパソコンにのせただけの感じです。今後、自
己開発する場合の音声の必要場面の参考になります。)
(5)その他、大阪府や大阪市では、パソコンソフトを自己開発しているようです。
私も、パワーポイントを学んで、自己製作したいと考えています。
(6)市販の教科教材では、「ランドセルシリーズ」や「ケンチャコシリーズ」などが、
学年別になっていて、使い良いです。また、「漢字学習」のものも多数あります。
いずれも、「音声をたくさん伴っている」か、「画面上のキーボード入力が、五
十音」かなどを、選択の基準にするといいと思います。