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巻頭言  「勉強したいけど、忙しくて…」
こんなところ・あんなところ・どんなところ
 九州地方 そのA ─鹿児島県─
 地域情報 ア・ラ・カルト
 宇治「朋友館」 /関西の日本語マップ/広島JLI/長野飯田市竜丘公民館
行政・施策
 厚生省から
 文化庁から
研修会
教材・教育資料
とん・とん インフォメーション

巻頭言

「勉強したいけど、忙しくて…」

 全国各地に定着したセンター退所生及び、その呼び寄せ家族、およそ100名を対象にそれぞれの居住地域にある日本語教室について情報提供を行った。対象者は20、30代の青年層。日本語力の伸びも期待できる世代、また、生活の中で日本語を使う場面も多かろうと予想される人々だ。特に呼び寄せ家族は、日本語学習の機会に恵まれなかった人も多く、日本語学習ニーズが高いのではないかと思われた。回答が得られたのは42名で、そのうち、この世代の人々の状況を代表している回答として、「勉強したいが、今は忙しくてできない」というのが15名あった。これは全回答の約3分の1を占め、多数派である。忙しさの理由としては、仕事、子育てが主であった。この年代の特徴として、結婚し独立して間もないケースが多く、子育てで自分の時間を確保することが難しい時期である。また、来日後数年間は、日々の糧を得ながら、安定した生活の基盤づくりのために収入を得る活動が生活の中心となると考えられる。つまり、この時期は日本語に困りながらも他に生活上の優先事項のある時期と言えるのだろう。  しかし、今、「忙しくて…」と言う人々も長い人生の中ではいくつかの節目を迎えるはずだ。その節目、節目で日本語に対するニーズも高まるものと思われる。例えば、子供の成長、それに伴う学校や近隣社会との接触場面の増加。また、職業上で更なる自己実現を目指すための資格取得や昇進のため。そして、子育てが一段落したときの再就職や生きがいづくりのため。また、地域社会の自立した成員となり、人間関係を広げ深めていくため。このような状況の変化で、「日本語をもう一度学習したい」と感じることも出てくるのではないか。これらのニーズが、いつどのように訪れるかは本人でさえわからないことかもしれない。しかし、一人の帰国者の人生の中で幾度か意識されるものだろう。その時に、そのニーズを満たせる場や方法があるかどうかは、その人の人生を左右する問題と言えるだろう。そのような場や方法が、どこに住んでいても得られるようになることが帰国者や他の定住外国人にとって、また、彼らへの支援を考える者にとっても「夢」ではないだろうか。  地域における支援活動は、一人の帰国者を対象に長期的なスパンの中で行われるものだろう。その付き合いは継続的な線としてではなく、学習者は支援者の前に現れては消え、消えては現れるというような断続的な点線として長期的なものになっていくのではないだろうか。そして、その支援の内容も、一般的な日本語能力のレベルによってのみ切り口を考えるのではなく、一人の帰国者の人生を通して、そのニーズの生まれる背景を理解し、そのニーズの高まりに応える支援を考える必要があると思う。

こんなところ・あんなところ・どんなところ?

九州地方 そのA ─鹿児島県─

T.中国帰国者事情概況

 2月末現在、鹿児島県在住の中国帰国者数は呼び寄せ家族も含めて225世帯607名。県の国保援護課から帰国者事情についてお話しを伺いました。 ◇子女の教育:小中学校での受け入れに関してはあまり問題もなく、また高校進学には海外帰国子女特別選抜が県内26校58学科で実施されていて、この制度で受験できる。中学校からの調査書と面接、作文のみで行われるこの選抜は来日2年以内の生徒に適用されている。中国で中学を卒業してきて高校入学を希望する場合も中国の中学校の卒業証明書と県の国保援護課長名の推薦状があれば、面接と作文で入学試験が受けられるし、高校中退で来日した場合も中国の高校の成績証明書と面接、作文で編入試験が受けられる。鹿児島市内にある県立鹿児島東高校国際教養科には現在、2年生と3年生合わせて8名が学んでいて、放課後には日本語などの特別クラスも開かれている。 ◇住 宅:孤児または婦人本人が帰国して1年ぐらいで、中国の家族を呼び寄せるケースが多く、一挙に2〜3世帯10人以上が来日し、本人が住む集合住宅に同居する。大所帯が一緒に生活するので、住居の隣近所にまで迷惑を及ぼすことがある。国費帰国者は公営住宅に優先入居できるが、呼び寄せ家族が公営住宅の入居を申請するには、会社の給与証明書が必要であるため、孤児や婦人本人に付いている自立指導員が呼び寄せ家族の就労の世話までしている状況。 ◇就 労:中国でしていた仕事に就きたいと希望しても、不況による就職難のうえ言葉や資格などの問題もあり、若い人々は仕事を求めて県外に転出する傾向が強くなっている。そのため、県は平成9年度から鹿児島県中国帰国者等援護協力会に委託して、従来の日本語教育の他に、新たに就労可能者150名を対象とする就労支援事業を開始した。

U.中国帰国者自立研修センター

 鹿児島県が平成2年に中国帰国者等援護協力会(鹿児島市新屋敷町16-401、TEL099-222-7637)に委託して開設したもので、国費帰国者を対象に下記のように8か月間の研修をしています。

◇日本語指導:  週5日の平日午前9時から12時までと午後2時から5時まで。学習進度別の3クラスで現在研修生は12人。

◇生活指導:  日本の生活習慣、こどもの学校、生活保護やその他の制度について、毎週1時間指導。生活相談には随時応じている。

◇就労相談と職業オリエンテーション:  就労指導、職場訪問、職業安定所訪問など。

◇地域交流会:  地域にとけこみ定着を図るため、鹿児島市施設見学、おはら祭り、餃子作り、桜島地区見学等の交流会を行っている。ちなみにおはら祭り交流会は11月3日の鹿児島市の「おはら祭り」で、下竜尾町の「おどり連」に帰国者やセンターの職員等が参加させてもらい2時間ほど町の人といっしょにおどるもの。

◇再研修:  働きながら日本語をもっと勉強したい人のための教室で、月に4回、土曜日の夜開いている。平均出席者数は4〜5名で、自費で帰国しすでに就労している人が多い。

V.中国帰国者のための県単事業

 中国帰国者等援護協力会に委託して行っている事業です。 1)日本語補充教育等援護事業  帰国者の自立を援護するために、県や共同募金会、中国残留孤児援護基金などの補助金や会費、寄付金などで実施しています。  年4回会報を発行して援護協力会員、帰国者世帯、県市町村、関係機関や企業等に配布したり、新しく来日した帰国者を中心に地域交流会を催したりもしていますが、主な事業は日本語教室の開設です。これは原則として来日後3年未満で、今までに日本語学習の機会に恵まれなかった呼び寄せ家族を含む帰国者が日本語の基礎を学習するための教室です。帰国者の居住状況により教室の場所をきめていますが、平成10年度も前年度と同じく、鹿児島市、鹿屋市、出水市、姶良地区、志布志町、名瀬市で開きます。学習期間は6か月または1年間です。一週間に2日、月8回、日曜日や平日の夜間に実施しています。 2)中国帰国者就労支援事業  帰国者の就労機会を拡大するため、各地区の福祉事務所や公共職業安定所、ポリテクセンター鹿児島等の協力で平成9年度から行っています。9年度は、鹿児島、鹿屋、出水、名瀬の4地区で企業や関係機関との連絡会、未就労の帰国者のための企業研修会や既に仕事に就いている帰国者の体験発表会を行いました。  企業や関係機関との連絡会は帰国者の雇用促進について企業の理解を得ることと、就労者の実体を把握することが目的ですが、働いている帰国者について「まじめに働いてくれる」「日本人より頑張ってくれる人もある」という声がある一方、「日本の雇用制度が分かっていない人がいる」とか「ことばの関係で微妙な点が理解できないことがある」などという声もありました。体験発表会では自立して頑張っている帰国者に自立までの苦労や現在の気持ちなどを話してもらったり、職業安定所や企業の方から日本の労働慣行について話してもらいました。また、仕事の内容を理解させ労働意欲を高めるために、企業研修として各地区にある工場を見学し、説明をうけました。少しずつこの成果が見えています。

地域情報 ア・ラ・カルト

★宇治ボランティア日本語教室「朋友館」

◇「朋友館」の誕生  平成8年9月に宇治市立平盛小学校で中国帰国者子女に日本語の指導をしていた猪熊先生と南宇治中の宮崎先生が成人帰国者のための教室「朋友館」を開設しました。宇治市には国費帰国者よりも、私費や呼び寄せ家族の方が多いのですが、彼らに日本語学習の支援を行う教室がまったくありませんでした。二人の先生の熱意と実践は指導者の輪を広げ、クラスに来る帰国者も増えていきました。 ◇ロータリークラブとの出会い  平成3年10月、ロータリークラブのメンバーの方々が教育委員会主催の主張大会で中国帰国者の子どもの主張を聞き、感動。その時、中国帰国者子女の存在を初めて知り、何かの役に立ちたいと思いました。ロータリークラブには奨学金制度があり、中国帰国者子女を応援することになりました。  そんな中で「朋友館」を設立した二人の先生が青年海外協力隊に参加するため日本を離れることを知り、「朋友館」の灯りを消さないためにロータリークラブが協力しようと決意しました。スタッフ集め、運営母体を明確にすること、運営のシステムを作ることの3点にしぼり活動を開始しました。 ◇平成9年5月 新「朋友館」スタート  宇治市国際親善協会(宇治市の外郭団体)が正式に運営母体になり、市の施設である「青少年ふれあいセンター」で毎週金曜日7時から9時まで教室が開かれることになりました。現在、口コミで集まった61名の帰国者が5つのクラスに分かれて学んでいます。講師は正式に市から認められた8名とほかに2名。宮崎先生の南宇治中日本語学級での教え子だった帰国者2世の高校生も中国語のできない講師のクラスに入って説明の通訳をしています。この教室の学習目標は、仕事をして自立するために日常場面の会話ができるようになることです。  ロータリークラブでは今後、支援センターを作る構想があります。そのために、まず中国帰国者の生活実態調査をしたいと思っています。また、医師による健康相談の実施も考えています。

「朋友館」〒611-0025 宇治市神明宮東4-3 朋友館運営委員会 TEL:0774-22-4038(代表:山田定男) (2007.01.10変更)

★「関西の日本語教室まっぷ」 関西国際交流団体協議会 1998年3月

 関西国際交流団体協議会が昨年「関西の日本語教室ダイレクトリー」を発行したことは「同声・同気」第10号でご紹介しましたが、同協議会はこのほど、「関西の日本語教室まっぷ」を作成しました。  これは日本の土地勘が無く、日本語が不充分な外国人が利用しやすいよう、「関西の日本語教室ダイレクトリー」に掲載されている134の日本語教室を地図上に示したものです。外国人学習者の母語に合わせて日本語併記の8カ国語(英語、中国語、韓国・朝鮮語、スペイン語、ポルトガル語、タガログ語、タイ語、ベトナム語)で作成しました。大阪版とその他の府県(滋賀・京都・兵庫・奈良・和歌山)版の2種類に分け、コピーしやすいA3用紙の地図上に教室と最寄り駅が示されており、裏面には各教室の名称、連絡先、電話番号、交通機関・最寄り駅、開催曜日と時間などが一覧表で示されています。  同協議会では、これらのダイレクトリーとマップの作成が、関西における日本語教室のネットワークの形成と推進をはかり、外国人と日本人が共に住みやすい社会づくりの一助になればと願っています。  マップは無料で、在住外国人のコミュニティ組織、支援団体、国際交流団体、自治体、社会教育機関、大学の留学生センター等に配布します。希望者は住所、名前、電話番号、希望言語、大阪版か他府県版のどちらかを書き、送料分の切手を同封して申し込んでください。送料は1〜3部=100円、4〜6部=200円、7〜16部=300円です。  問い合わせ・申込先:関西国際交流団体協議会   日本語教室係 〒543-0001 大阪市天王寺区上本町8-2-6        大阪国際交流センター 2階  TEL:06-773-0256  FAX:06-773-8422

★広島JLI

 広島市では約500人(中国帰国者子弟230人を含む)の児童生徒が公立小・中学校で学んでいます。平成2年から市教育委員会が「日本語指導協力者派遣事業」を開始、現在では約300時間の指導を確保してくれるようになりました。  しかし市教育委員会の支援体制はなく、指導協力者は教材・マニュアル・指導法・学校との関わり方など多くの問題を抱えながらも相談できず、一人一人が手探り状態で進めていました。そんな中、指導協力者の持っている悩み・問題・情報を共有しようと平成4年にJLIグループが結成されたのです。  グループ名の「JLI」は、“Japanese Language Instructor”の略です。小・中学校で子どもたちと関わる日々は、単に日本語指導だけではなく生活面・精神面での支えになることも求められ、『日本語教師』としてだけの[Teacher]ではなく、いろいろな意味での指導者になりたいという願いを込めて[Instructor]としました。  しばらくは指導協力者の「悩み相談」が続きましたが、平成8年4月にはシンポジウム『帰国入国児童生徒を対象とした日本語学習現場からの声』を開催し、地方新聞にも取り上げてもらいました。また平成9年10月には日本語教育学会で『マルチメデイアによる語彙力調査とその教材化』について発表するなど、少しずつ活動の場を広げています。  残念ながら広島市では指導者や学習者への指導・相談に対応できるセンター的機能がありません。そこで指導協力者がいつでも相談でき、またお互いがいろいろな経験・情報を交換しながら研鑽し合える場としてこれからも発展させていきたいと考えています。そのためにも今後、効果的な教授法の開発研究・教材の開発作成・帰国入国児童生徒同士の交流・また他府県、他グループとの交流などを進めて、広島の子どもの日本語教育の発展に役立てるような活動を続けて行きたいと思っています。  「地方」というハンディ・行政の日本語教育(特に外国人児童生徒の受入)への意識の低さは拭えませんが、今は『情報化の時代』。マルチメデイアを駆使して多くの方々と意見交換・情報交換できることを願っています。 (早川敦子 広島市日本語指導協力者、須藤とみゑ 広島市温品小学校 広島女学院高等学校 非常勤講師)

                JLIグループ                  TEL 082-509-0319              代表 須藤とみゑ

★公民館だからできること

 飯田市竜丘公民館では、平成6年度から、外国人を含む地域住民が共に気持ちよく暮らしていくために、市民大学講座の一つとして、国際交流会を開催してきました。その中で、竜丘地区に居住している海外から来られた皆さんと、食文化をきっかけとした交流会も行ってきました。参加したある女性が「スーパーで買い物をしていたら、偶然見かけ声をかけたら覚えていてくれて、楽しく話が出来た。交流会に参加して本当に良かった。」との感想を寄せてくれるなど成果をあげてきたと、その当時は感じていました。  平成8年のある夏の日、私の元へ1通の封筒が届きました。竜丘地区内長野原在住のAさんからの手紙で、「竜丘では国際交流会を年に一度行っているが、余り意味のある事ではない。そんなことより中国帰国者のために日本語教室を是非開講してほしい。」という内容でした。この手紙の持つインパクトは私にとって強烈で、このことをどう受け止めるべきか、しばらく考え込んでしまいました。何度となく公民館長と打ち合わせる中で、公民館に期待されている以上積極的に取り組んでいこうと意志が固まったのは、平成9年に入ってからでした。  しかしながら、公民館活動は運動会や文化祭など年間を通じて行事も多く、集中的な取り組みはなかなか出来ませんでした。帰国者についての体系的な知識もなく、何のノウハウも持たない私たちを一定の方向に導いてくれたのは所沢の中国帰国者定着促進センターの皆さんでした。(注:所沢センターでは現在文化庁から委嘱されたプロジェクトの一環として、飯田市公民館との共同調査研究を進めています。)何度となく飯田を訪れていただく中で、帰国者の実態や何を行うべきかが、おぼろげながら見えてきました。竜丘公民館では、単なる日本語教室とならないよう、住民が自主的に参加できる基盤づくりを進めてきました。平成10年1月には、公民館スタッフ、青年会や社会福祉協議会役員など20余名による開設準備会を開催しました。この中で、具体的に「テキストは何を使うのか」「1人でも要望があれば行うべきとは思うが、帰国者の皆さんは本当に望んでいるのか」という疑問が投げかけられました。そこで、2月に所沢センターから講師をお願いし、竜丘地区の人々に広く呼びかけ、『帰国者のことを考えてみる集い』を開催しました。当日は30余名という参加者でしたが、帰国者のBさんにも参加していただいたため、とても中味のあるものとなりました。Bさんは、「すべてを一律に考えるのではなく、高齢者と働き盛りの世代と若者を分けて考えるべきで、高齢者は地域のしきたりや習慣、働き盛りの人は仕事で必要なことばを、若者は日本語全般を学びたいと考えている」と話してくれました。参加者からは「単なる日本語教室にせず、日本人も中国語を学ぶべき」「マン・ツー・マンで日本語を教えるのと同時に、多くの人が触れあえる時間も必要」との意見が出されました。『集い』終了後、スタッフ内部で議論を深める中で、改めて『ニーズ調査』の重要性を認識してきました。現在、主な帰国者と面談を行い、本格的な『ニーズ調査』に向けて住民主体で地道に準備を進めています。今後の進め方については、この調査が終了し次第、既成概念に捕らわれないよう考えていこうと思います。        前竜丘公民館主事 伊藤 康弘        竜丘公民館 長野県飯田市時又503-1              TEL0265-26-9303

行政・施策

★厚生省から

1.平成9年度中国帰国者定着促進センター施設長会議の開催

 平成10年度中国帰国者定着促進センター施設長会議が、平成10年2月6日、厚生省で開催されました。各センター、分室の所長等14名、厚生省職員7名が出席し、平成9年度の事業報告、質疑要望・意見交換等が行われました。  冒頭、本田中国孤児等対策室長より挨拶がありました。そこではまず、帰国希望者の受入れの促進と日本社会における早期の定着自立及び生活の安定を目指し、引き続き積極的に取り組むことが述べられました。しかし、今後帰国者数は次第に減少していくものと見込まれたため、平成10年1月に山形分室を閉所、平成10年度にも年度途中で岐阜、広島、宮城の各中国帰国者定着促進センターを閉所する予定であることが説明されました。また、平成10年度予算案についての説明も行われました。また、センター入所生が不法入国に巻き込まれることのないよう引き続き指導願いたいとの説明が行われました。  次に、中国孤児等対策室より中国残留邦人に対する援護施策について説明が行われました。さらに、各センター、分室より事業報告が行われ、運営上の問題点等についても併せて説明されました。

2.中国残留邦人等の援護対策関係予算

平成9年度予算額   平成10年度予算(案)   3,126百万円  → 2,637百万円

 10年度においても引き続き、永住帰国希望者の受入れ及び自立支援等を行うこととする。

@永住帰国者援護     367世帯  → 292世帯        1,396人    1,112人 A一時帰国者援護     499世帯  →  342世帯         730人      507人 B肉親調査の継続   訪日調査 26人 →  26人

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★文部省から

平成10・11年度 中国等帰国孤児子女教育研究協力校

文部省では、従来から中国残留邦人等の児童生徒に対する教育指導に関する調査研究を行い、中国等帰国孤児子女の積極的受け入れ、我が国の学校生活への円滑な適応のための学習面・生活面及び日本語の指導などを研究協力業務とする教育研究協力校を指定しています。  このたび、平成10・11年度の中国等帰国孤児子女教育研究協力校として22校(9・10年度は28校)が下記の通り指定されました。

岩手県/ 金ヶ崎町立金ヶ崎小学校
宮城県/ 仙台市立折立中学校
群馬県/ 前橋市立広瀬中学校
埼玉県/ 岩槻市立東岩槻小学校 岩槻市立桜山中学校
東京都/ 墨田区立堤小学校
長野県/ 飯田市立松尾小学校  飯田市立緑が丘中学校
愛知県/ 名古屋市立浦里小学校 名古屋市立千鳥が丘中学校
京都府/ 京都市立池田小学校 宇治市立南宇治中学校  京都府立鳥羽高等学校
大阪府/ 松原市立恵我南小学校 門真市立第四中学校 大阪府立上神谷高等学校
兵庫県/ 神戸市立神陵台小学校 明石市立松が丘小学校 神戸市立神陵台中学校
広島県/ 広島市立幟町中学校
福岡県/ 福岡市立壱岐東小学校 福岡市立壱岐中学校

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★文化庁から

平成9年度文化庁「日本語教育機関連絡協議会」 について

 平成10年2月26日、東京において、「地域の国際化と日本語教育施策の在り方─21世紀への課題─」というテーマで「日本語教育機関連絡協議会」が開催されました。この協議会は毎年1回年度末に開かれているもので、事例報告者数人、約30の日本語教育機関代表者と日本語教育に関わる行政機関の代表者が一堂に会し、日頃の活動報告と協議を行う場となっています。「同声・同気」今号と次号の2回にわけ、平成9年度協議会の概要をお伝えします。今回は前半です。  「国際化に対応した日本語教員養成:各機関の連携と将来構想」という議題で、まず、学識経験者からの事例報告として、長友和彦氏(お茶の水女子大学教授)から「大学院での日本語教員養成及び日本語教育学会主催日本語教師研修の現状と課題」、山田泉氏(大阪大学留学生センター教授)から「『多文化コーディネーター』としての日本語教員の養成について」、徳川宗賢氏(学習院大学文学部教授)から「日本語教員養成の課題」という題でそれぞれ問題点の指摘と提言があり、その後約1時間の協議が行われました。協議内容の主なものは次のとおりです。 1.大学院の教員不足から来る研究指導の限界状況を軽減するためには、大学間の単位互換制度の拡充や大学院日本語教員養成連絡協議会のような組織の設立などが期待される。 2.学校教育、特に帰国児童生徒や外国人児童生徒に対する日本語指導のニーズに大学院がどう応えていくか、また、学会の実習においても、国内外のニーズにどう応えていくかが問われている。益々腰を据えて、日本の対外言語政策を確立していく必要がある。 3.日本語を国際語として確立するには、国連の公用語にしていくことが肝心である。そのことが大学院生の就職先を拡大し、留学生の増加にも繋がるであろう。 4.日本語教育政策を、日本の自衛政策の一環と考えてもいいのではないか。この政策を支える日本語教員(専門職)の養成を考える場合、即戦力は望まず、長い目で育てる姿勢が必要。 5.地方自治体や学校教育、社会教育の現場での日本語教育専門家受け入れ体制の拡充を図ると同時に、「多文化共生」型社会で必要とされる能力をもつ「多文化コーディネーター」としての日本語教員の養成が必要。 6.1985年、教員養成に関するガイドラインが出て10年以上がたった。これまでの単線型のガイドラインを複線型のガイドラインに改革していくために、広い範囲の人たちの知恵や情報を集める機構・構造をつくっていく必要がある。                 (文化庁 野山) 研修会 ★子どものための日本語教育ネットワーク ★多文化交流会「みんな友だち地球の仲間」に参加して

★研修会情報

★「子どものための日本語教育ネットワーク」  定例会の報告とお知らせ

 1997年末に「就学児童・生徒の日本語教育相互研修部会」が埼玉日本語ネットワークから独立し、名称も「子どものための日本語教育ネットワーク」と変更して新たなあゆみを始めました(これまでの活動については『同声同気』第10号、第9号で報告)。埼玉県外からも参加者があること、県内に限らずいろいろな地域の方々と情報交換を進めていく必要があることが主な理由です。  この「子どものための日本語教育ネットワーク」の今年度第一回目の定例会が4月4日に埼玉県大宮市で開かれました。主な内容は次のとおりでした。

 ◎テーマ「日本語教室の役割を考える」  ・報告1.日本語教室の評価をどうするか       高木智慧子(川口市柳崎小学校)  ・報告2.埼玉県における日本語教室の設置基準と日本語教室の位置づけ       《中間報告》       酒井 雄市(川口市日中友好協会子どものための日本語教室)   ・2つの報告を聞いて       斎藤 里美(東洋大学)

 当日の参加者は、埼玉を中心に千葉、秋田、広島などから27名でした。実践に基づいた報告1を聞いて、日本語教室ではなんのためにどんな評価をする必要があるのか、問題点は何かを話し合いました。評価の問題は、『日本語指導が必要な』児童生徒とは客観的にどういった子どもたちをいうのかという問題に直結し、報告2で提起された問題につながっていきました。日本語教室や指導員の配置は『日本語指導が必要な』児童生徒数と関連があるからです。なお、報告2は中間報告で、話し合いも結論を出すといったものではなく検討が続いています。  このネットワークでは引き続き、第二回定例会を7月24日(金)に第三回を8月28日(金)に予定しています。第二回には指導法や教材に関するテーマで報告と話し合いが、第三回には外国人の父母や学習者の立場にある方もお招きしてシンポジウムが行われる予定です。この会にご興味のある方は返信用封筒を同封した封書にて、以下にお問い合わせください。 〒351-0007 埼玉県朝霞市岡2-11-10   東洋大学朝霞校舎日本語研究室気付   「子どものための日本語教育ネットワーク」事務局

★多文化交流会「みんな友だち地球の仲間」に参加して

 3月8日(日)、長野県飯田市公民館(飯田市吾妻町139番地、TEL0265-22-1132)において、多文化交流会「みんな友だち地球の仲間」が開かれました。これは、飯田で暮らす中国帰国者の家族を含む海外出身家族、日本人親子、日本語学級や小学校の先生が集まって、それぞれの国の良さを知り、違いを認め、違いを楽しむ機会にしたいと考えて企画されたものです。平成9年に日本語交流の場として始まった「わいわいサロン」に関係する方を含め、学校、家庭、地域、公民館関係者の交流会の形で実施されました。「わいわいサロン」には、飯田市丸山小学校と松尾小学校の「日本語学級」に通っている帰国者及び外国人児童の母親達が参加しています。  当日のプログラムは、1.公民館長の挨拶/2.「春がきた」をみんなで合唱/3.松尾小学校の皆さんの発表/4.丸山小学校日本語教室の様子をビデオで紹介/5.田中美恵子さんの発表/6.中国の学校生活・生活習慣の違いなどの話/7.ブラジルの学校生活・生活習慣の違いなどの話/8.昼食会/9.交流会、といったものでした。  はじめに松尾小学校の中国帰国児童7人が、作文、漢字ゲーム、歌、紙芝居、作文を発表しました。それから、松尾小学校5年2組の皆さん17〜18人も参加し、「友だちになるために」という歌を手話を交えて歌いました。丸山小学校日本語学級からは中国帰国児童、ブラジル人児童7人が参加しました。日本語学級のビデオからは、一人一人の児童に配慮した指導や、児童の生き生きとした楽しそうな様子がうかがえました。緑が丘中学校1年生の田中さん(95年10月帰国)は、昨年長野市で行われた日本語弁論大会のときに発表した作文「私の夢」を披露しました。昼食は中国の餃子、ブラジル料理、ちらし寿司と、各国の料理を楽しみました。交流会ではまず3カ国語で挨拶を覚え、それから周りの人たちに声をかけて互いの名前を聞きあうといった活動が行われ、それから「WAになっておどろう」を踊りました。  当日の参加者は全部で60名ほどでした。この日の交流会では、普段接する機会の少ない日本語学級の活動を知ることができてとても有意義だったと思います。また、別の日本語学級の生徒同士が知り合うこともできました。今回は日本の小学生は多数参加していたものの、保護者の参加が少なかったようです。小学生の父母の方々には、今自分の子供たちの学校にどんな人たちが来ているのか、今後どのように関わっていけばいいのかを考えるためにもこのような活動にはぜひ参加していってほしいと思いました。(センター田中)

教材・教育資料

★『同声・同気』第11号で一部を紹介した斎藤裕子さんの教材(NL第11号8ページ 参照)を引き続いてご紹介します。

1)『日語常用短句−日本語の決まり文句』

 この本は、文法はひと通り勉強したがまだ言葉が使いこなせないという人のために作られたものである。斎藤さんが関わっている帰国者のための日本語教室で使っている中級クラスの教材から、使用頻度が高いと思われる表現を、内容別に31章に分けて日中対照で示してある。標準的な言い方だけでなく、簡体や省略表現、さらには関西弁も載っている。各章にはそれぞれ必要に応じてその言葉・表現の説明がつけられていて、これは実際に使うときのことを考えればとても有用だろう。さらに、各章ごとに中国語の囲みで日本語および日本人の言語行動についての著者の考えが示されている(巻末にまとめて日本語訳がある)。著者は、話が通じるかどうかは言葉の問題だけではない、習慣や感じ方、表現の仕方が違うことによる、と考えている。だから著者は、学習者が、使われている言葉の背景を知り理解することで、「習慣の違い」を「悪意」や「差別」だと勘違いしてせっかくの味方を失ったり、逆に誤解されたりすることを少しでも減らしたいと思っている。巻末には、文型索引が日本語・中国語のどちらからでも引けるように付けてある。

2)『日本語生活用語集・学校分冊』

 中国から日本に来て間もない小中学生のために作った日中対照の用語集である。学校生活でよく使う言葉のうち、日中辞典にも載っていないような学校特有の言葉を集めてある。さらには、保護者向けに日本の学校事情にもふれ、子どもたちへの配慮を促すための一章も設けられている。巻末には、日・中どちらからでも引ける索引が付いている。

3)『日本語生活用語集・医療分冊』

 第1章医療関係分類用語集、第2章受診時の会話、第3章病気に関する日常会話、巻末の索引で構成されているが、各章には、ミニ知識として医療に関する囲みコラムがある。実に詳細かつ多岐にわたる内容である。病気の症状の言い方は勿論のこと薬の服用、医者の指示、検査や手術、入院、さらには職場での病気やけがに関する会話など“病気”に関してその周辺までをも含めて広くとりあげている。また索引は、1)50音順の日語索引、2)中国語の発音から引く日語索引、3)中国語索引と懇切丁寧に3種類ある。日本語学習者は勿論、中国語を学ぶ人にも役立つものであろう。

問い合わせ先:〒546-0035         大阪府東住吉区山坂4丁目15−1          斉藤裕子(問い合わせはハガキで)

★子どものための6か国語絵単語帳「どこいくの?」

 『同声・同気』第8号で予告したチャレンジ日本委員会発行「これって、なに?」の第二弾「どこいくの?」ができました。これは子どもたちが学校や家庭から外の世界へ出かけていき、一層活発なコミュニケーション活動ができるようになってほしいとの願いをこめて作られたそうです。小・中・高校在学の日本語が不十分な外国人子女には、全国の市の教育委員会を通して配布されますが、この他にご希望の方はFAXで下記に申し込んでください。  大学入試センター研究開発部 小野 博研究室  FAX 03-5478-1297  TEL 03-3468-3311(代表) FAX 03-5478-1297

★「はじめくんとまりちゃんのにほんごきょうしつ 3」  大宮市立教育研究所 1998年2月

『同声・同気』第9号でご紹介しました教材の続編です。日常的な日本語の語彙や短文を学習している児童生徒が、ゲームやインタビューなどを通して、より円滑な会話力を身につけることを目的にしています。若干残部があり、外国人児童生徒を受け入れている公的機関にお分けできるそうです。  問い合わせ先:〒330-0022  埼玉県大宮市堀崎町48-1大宮市立教育研究所  (TEL 048-688-1453 Fax 048-688-1464)

★新潟県日本語教室ダイレクトリー1997

 長野県上田市にある上田女子短期大学国文科の2名の学生が卒業研究として、自分たちの出身地である新潟県下の日本語教室の状況についてまとめた小冊子です。  新潟県下の日本語教室の団体名、連絡先、最寄り駅からの交通機関、使用テキスト、開催日、学習形態、受講者の数、電話番号等がリストアップされていてマップも載っています。申し込みは160円切手同封で下記まで。(所沢センターホームページでも閲覧可能。)

上田女子短期大学日本語教育研究会/国語研究クラブ 〒386-1214 長野県上田市下之郷620  TEL 0268-38-2352(代) FAX 0268-38-7315

★『病院で困らないための中国語』王燕玲・松本 洋子編著 サンセール

 病気になったときのために病院での日本語会話を練習しておくことも大切だが、その学習がすむまで病気が待ってくれるわけではない。病院で医師と患者(帰国者)とが行う意思疎通は、多くの場合緊急のものであり、ときには命にかかわることさえある。正確に素早く意思を伝達し合う必要があるのだ。  本書は日本語学習(または中国語学習)のための教材ではないと言うべきだろう。もちろん使い方によっては言葉の学習にも役に立つだろうが、それは副次的な効用である。本書の主な用途は、中国人が日本で病気になった場合、あるいは、日本人が中国で病気になった場合に、病院で医師や看護婦と患者との間で、互いに意思表示したい箇所を指差し合って、必要なコミュニケーションを行うことにある。  内容はすべてが日中対訳になっており、会話編では場面別に「医療従事者」と「患者」とに分けて、それぞれの典型的な発話が並べられている。また、用語編は日本語話者用は50音順、中国語話者用はピン音アルファベット順に配列されている等、「指差し」で使うための配慮も徹底されていて使いやすい。    T 図−人体各部etc.    U 会話編    V 用語編−日中英対照(50音順)    W 用語編−中日英対照(ピン音アルファ ベット順)  なお、本書は日中両国の医療従事者が協力して編集したものであり、不可欠な内容が吟味されていると信頼できる。病院に備えてあれば重宝する一冊である。   (¥2,500 1997年5月刊行)

とん・とん インフォメーション

★中国語で聞けるラジオ放送案内

 最新の中国情報や生活情報などを中国語で提供するFM放送局が増えてきました。例えばインターFMの「華人天地」(中国語広場)という番組では月一回のリスナーとスタジオを結ぶホットライン討論があり、いつも電話が殺到しているそうです。

●インターFM(港区芝浦局76.1MHz 横浜局76.5MHz)

 「母国語情報」月曜:12時40分〜13時  「華人天地」月曜深夜1時〜2時   03−5444−6716

●FMCO・CO・LO(京阪神、滋賀、和歌山、姫路76 .5MHz)

 「華夏之声」月〜金曜10時〜11時  「ココロ・メッセージボード」日曜12時30分〜15時 リスナーとDJが母国語、中国語、韓国語、英語、日本語を交えてトーク。  「ビヨンド・ザ・ボーダー」月曜18時〜21時  「ファンキー末吉 ぼちぼちいこか」土曜21時〜23時   06−615−7650

●Love FM 761(福岡76.1MHz 北九州局 82.7MHz)

 「Asian Wave 76.1」月曜、水曜20時〜23時  092−724−7610

●CROSS FM(福岡78.7MHz、北九州77.0M Hz、久留米86.5MHz、行橋87.2MHz、大牟田 87.8MHz)

 「ASIAN WIND」土曜7時〜8時  093−541−0072

 ※放送時間、番組名は1998年4月10日現在のものです。

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★メーリングリストに参加しませんか?!

 所沢センターでは帰国者の子どもたちに対する日本語教育、また学校での適応や学習適応、もっと言えば、「ここ」で元気にやっていくための支援、そうしたことにも興味と必要性を感じて、これまで情報収集や情報交換を行ってきました。  現在、いろいろなところで「ネットワーク」の必要性が言われていますが、子どもたちのことにかかわっているみなさんひとりひとりとお話する機会があると、やはり、「ネットワーク」が話題になります。メーリングリストを利用することで、私たちでひとつ「ネットワーク」を作ってみよう、そう考えて昨年11月末に「子どもたちの日本語教育(+α)を考えるメーリングリスト」を立ち上げました。  メーリングリストは、1通のメールがリストに登録されたメンバー全員に届くしくみです。メンバーそれぞれが自分の立場でメールを読み、書きたい人は意見や返事を書きます。メーリングリストを通して流せば、その「返信」もメンバー全員に配信されます。メーリングリストに参加することで、このようにして情報を共有することができます。ただ、今回私たちは情報を共有し交換することだけを目標とするのではなく、共有・交換を通して「新たな価値」を作り出していくことを目標としたいと思っています。すぐに実現できる目標ではなく、少し遠い目標となるかもしれませんが。  現在、動き出して5ヶ月と少し、メンバーもまだ45名ですが、交わされたメールは200通を越えました。メンバーは小中学校の先生や取り出し担当の先生、ボランティアで子どもたちの支援をしている方々、また、大学生大学院生の方々と多様です。メンバーが支援に携わっている子どもたちも中国帰国者の子どもたちだけではなく、日系の子どもたち、留学生や研究者の子どもたちと多様です。  さて、いかがでしょう。「子どもたちの日本語教育(+α)を考えるメーリングリスト(略称 “子どもメール”)」に参加してみませんか。様々な立場のみなさんのご参加を期待しています。参加してみようと思われる方は、所沢センターまでメールでお返事ください。追って参加方法をお知らせいたします。より大きなつながりができることを期待しています。

メールの宛先:kyohmuka@kikokusha-center.or.jp または JDD04672@nifty.ne.jp センターホームページURL http://www.kikokusha-center.or.jp/

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新聞記事から(98.1.6 〜 98.4.17)

1.6 「日系偽装中国人」の不法入国が急増
2.10 中国残留孤児ら21人が12日から一時帰国
2.14 中国残留孤児家族入院認められず直後に死亡
2.21 中国人窃盗団31人逮捕、帰国者子弟も加わる。
3.14 大阪入国管理局昨年1300人の偽孤児親族の入国を不許可
4.17 厚生省孤児の身元判明率向上のため中国 に職員派遣を決定

★研修会のお知らせ

シンポジウム 地域で支える日本語教育 ’98東北(国立国語研究所日本語教育相互研修ネットワーク研修会)  4月25日(土)・26日(日)   秋田県生涯学習センター「ジョイナス」(秋田市)

日本語教育学会春季大会   5月23日(土)・24日(日)   東京都学芸大学(東京都小金井市) 問い合わせ:日本語教育学会 03-3262-4291(代) 

異文化間教育学会第19回大会   5月30日(土)・31日(日)   神田外語大学(千葉市幕張) 準備委員会 043-273-2324

文化庁日本語教育大会   7月29日(土)・30日(日)   昭和女子大学 (東京都世田谷区) 

★府外教移転のお知らせ

大阪府在日外国人教育研究協議会(府外教)は下記へ移転しました。従って「同声・同気」第10号でお知らせした社会科及び第11号の理科教材については下記へ問い合わせてください。   〒560-0025 大阪府豊中市立花町1丁目10−1  TEL 06-842-3163 大枝明先生

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★山形分室閉所のお知らせ

平成6年8月に開設し、厚生省の委託を受けて事業運営をしてきた中国帰国者定着促進センター山形分室は、第10期生の終了をもって本年1月31日に閉所となりました。

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★人事異動

平成10年3月31日付で財団法人中国残留孤児援護基金の村瀬松雄常務理事が退職、後任には4月1日付で田代章一氏が、また、同時期に中国帰国者定着促進センターの濱野朔所長が退職し、後任に森田登氏が就任。

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『中国帰国者定着促進センター 紀要』  第6号は、5月末発行の予定です。  内容は、所沢センターによる調査研究報告の他に、中国帰国者子女が在籍する中学、高校、大学それぞれの教育現場、また地域の日本語教室支援の分野からの実践報告や事例研究等等。今号は、このようにさまざまな分野の方から投稿いただくことができました。これからも、広く外部からの報告・研究を募り、帰国者や定住型外国人の支援に関わる分野全体の「紀要」として機能するものにしていきたいと考えています。  なお、帰国者支援に関わる機関やグループでこの紀要を希望される場合は、[所沢センター教務課:佐藤 連絡先『同声・同気』編集部に同じ)にお申し込みください(無料)。

いまどきのキーワード その(3)

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アクション・リサーチ(Action research)

 教育現場で起きることがらと格闘していると、いわゆる理論や研究とは距離が出来てしまいがちです。そうはいっても、日々の疑問をなんとか解決してくれるものはないかと、研究から生まれてくる成果に期待するところは小さくありません。また、研究の側からも、現実の課題に対応した生きた研究の必要性が言われています。現場と研究とを結びつける実践的な研究方法として、「アクション・リサーチ」という社会学的手法があります。アクションは「行動」、リサーチは「調査」です。この方法では、研究者が現場の実務者と協力して調査を行い、ある集団が実際にどのように行動しているか観察し、記録し、分析します。そして、調査の結果にもとづいて診断をし、それを現場にフィードバックします。フィードバックを通して、調査の対象となった集団が抱える問題の具体的改善・解決を図ることを目的とする研究が、この「アクション・リサーチ」と言えるでしょう。  中国帰国者が地域社会の中でどのように生活しているか、その過程でどのようなことが起こっているか、社会学や心理学、言語学等の研究領域で様々な研究が行われています。その一方で、帰国者の生活や学習の支援に実際に携わっている私たちは、その関わりの過程で様々な問題を感じて、それを解決しようと試行錯誤しています。ここで私たちと研究者との良好な協力関係が作られれば、アクション・リサーチによって、問題の所在を明確にでき、改善方法が導かれるでしょう。例えば、帰国者が日本という異文化社会の中でどのように適応していくか、私たちと研究者が協力して調査することで、適応に関する問題点がより明らかになるでしょう。  また、アクション・リサーチの手法を教師自身が積極的に教育現場に持ち込むことも行われ、教育活動・教室活動の改善を目的として、学習者やクラスを対象に調査研究を行っています。研究者による調査より小規模に行われることが多いのですが、フィードバックは確実で、研究の焦点がはっきりと教育活動の改善に当てられます。これまで、様々な調査に協力して労力を割いても、提示された結果は現場の問題点をなぞるだけで実質的なフィードバックが少なく、調査や研究といったものに不信感を持った、という経験はないでしょうか。とはいえ、私たちがなすべきことは、現場を閉じてしまうことではなく、より主体的なアクション・リサーチを実施し、確実に現場の改善を進めていくことだと思われます。    そして、アクション・リサーチで大切なことは、どのような調査がだれによって行われるにしても、対象者は対象者である以前に個人として在るのですから、調査の対象となる集団を十分尊重することが必要だということです。その意味では「対象」という言い方には少々違和感を覚えることさえあります。  実社会で生活し学習を続ける帰国者への支援を考えるとき、今後、このアクション・リサーチの方法は、より必要になってくると思われます。研究者と実務者というように役割を二分して定義すること自体、改めなければならなくなるかもしれません。アクション・リサーチによって、私たち自身が研究者と実務者の両方の視点から日々の実践を見直すこと、教育現場を改善すること、ひいては社会全体へ提言をしていくことが求められています。