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中学3年生の中国帰国や外国籍生徒たちとその保護者のための進路ガイダンスが夏から秋にかけて各地で開催されています。
帰国・外国籍の中学生にとって、卒業後の進路を決めることは日本人生徒に比べて非常に荷の重い課題です。まず、日本語があまりできないと、学校で日本人生徒と同じ進路指導を受けても必要な情報が得られないという問題があります。
しかし、問題はそれだけではありません。そもそも日本の進学事情については保護者もよく把握していないことが多く、子どもの将来を見据えた進路の可能性を提示してやることが困難です。たとえば、高校進学率が日本ほど高くない国から来た家族の場合、親が子どもの希望を聞かずに就職を勧めるというようなケースがあります。
もっとも、日本人生徒と同じ条件で入試を受けても合格が難しいという理由で、進学を初めから諦めている子もいます。実は、自治体によってはこれらの生徒たちのための入試特別措置や特別枠を設けているところもあるのですが、本人・保護者はもちろん、中学校の先生ですらそのことを知らないという場合もあるのです。また、学費支弁が困難な場合も奨学金等の方法がありますが、保護者がこの種の情報をほとんど持っていない場合がすくなくありません。さらに、高校に進学しないにしても、進路の可能性についての幅広い情報が得られれば、子どもたちも自身の将来に希望が持てるでしょう。
しかし、@媒介語の問題、A特に帰国・外国籍生徒に必要な情報、の2点を考慮して各学校が彼らに進路指導を行うことは非常に難しいのが現状です。ここ数年、そんな彼らの苦難を見てきた高校・中学の先生方など有志の手によるボランティアの進路ガイダンスが開かれるようになってきています(1995年から神奈川で、1998年からは大阪、今年は東京でも)。そこでは、日本の教育制度そのものについての説明に始まり、学校の種類(高校、高専、専修学校など)、高校受験に必要な基礎情報(高校の種類、公立/私立、所在地、外国人生徒の多い高校、日本語の補習のある高校、選抜の方法など)、学費と奨学金、受験勉強の仕方までもが通訳を介して説明され、職訓校・職安など就職につながる情報も提供されます。保護者にとっても、こうした場は学校関係者と直接接する貴重な機会となっています。
本来なら、こうしたガイダンスは教育委員会が開催すべきでしょうが、「待ったなし」で進路決定を迫られる子どもたちと保護者のためには、どのような形でもとにかく各地で地域の実状に合ったガイダンスが開かれてほしいと切に願うものです。(今後の日程等は〈とんとんインフォメーション〉に掲載しました。)
昭和48年度以降、京都府に定着された中国帰国者は、平成13年9月1日現在、145世帯、499人です。また、呼び寄せ等で入国された2世等を含めると、千人を超える人数となっています。定着者が多いところは、最近では、京都市、宇治市、京田辺市等です。
@公営住宅のあっせん・優先入居
A知事激励金・テレビの贈呈
B京都府中国帰国者生活相談員の派遣
援護期間を経過した帰国者や援護の対象とならない呼び寄せ家族等に対し、必要に応じて生活相談員を派遣し、生活・就労相談及び指導を行っています。
昭和63年6月27日の事業開始以降、入所された帰国者は、平成13年9月1日現在、276人です。定員に余裕があれば、2世及び2世の配偶者についても入所を認めています。
@日本語教室
クラスは、現在、3クラスあり、定員は1クラス15人です。講義日は各クラス毎週5日間(月〜金)で、講義時間は各クラス1日3時間です。8か月間の研修期間を4期(1〜4組)に分け、期毎に到達目標を設定しています。各クラスとも、入所時の1組から修了時の4組まで、各組2か月ずつ在籍の後、進級します。
A日本語再研修講座
受講対象者は、国費帰国者で帰国後5年以内の方のうち、自立研修センターを修了された方又は帰国後1年を経過された方です。受講期間は受講承認の日から2年間です。講義日は毎週土曜日で、講義時間は2時間です。
B生活・就労相談及び指導
相談及び指導は、日本語教室における1組から4組までの各進級段階に応じた内容で行っています。センター修了を間近に控えている4組に在籍する通所生に対しては、通所生毎に就職問題懇談会を開催しています。懇談会には、その帰国者を担当しているケースワーカーにも出席してもらっています。健康、住宅、子どもに関すること等、就職以外の問題についても懇談しており、効果をあげています。
C地域交流事業
近洋会という名称で様々な活動を行っている近畿青年洋上大学の同窓生たちと、13年前から年1回交流会を開いています。
交流はまずギョーザの準備から始まります。センター通所生は本場のギョーザを近洋会の青年たちに教えながら作ります。平成12年度からは、お返しとして、散らし寿司の作り方を近洋会から習うようになりました。
交流会では、いっしょに料理を味わいながら、ゲームをしたり、日中それぞれの歌を歌ったり、踊り等特技の発表があったり、楽しい時間を過ごします。
帰国から間がなく、まだ一般の日本人の友達が少ない帰国者にとって、貴重な機会であるとともに、中国を訪問して、関心を深めた青年たちにとっても、意義あるひとときとなっています。
その他、民間ボランティア団体「七星会」とも、七夕飾りを作ったり、年賀状の書き方指導を受ける等、交流を図っています。
岡山大学教育学部の学生が中心となって組織している「日本語教育の必要な外国人児童生徒の教科学習支援学生ボランティア」について紹介させていただきます。
この学生ボランティアは外国人児童生徒(以下子ども)の日本語教育と国際理解教育とをテーマとした「国際理解教育概説」(教職専門科目、選択必修、光元担当)の受講生の発意により平成12年10月より正式に立ち上がりました。
また、岡山大学教育学部と岡山県教育委員会とが相互に連携協力を行い、教員の資質能力の向上と教育上の諸課題への研究を行うために「連携協力に関する覚書」を締結(平成12年9月1日)したことにより、この連携協力事業の一つとしても位置付けられ、学部、県教委、市教委、学校現場との連携協力の中で現在、活動しています。この覚書の締結は、平成11年12月10日に教育職員養成審議会から出された「養成と採用・研修との連携の円滑化について(第3次答申)」の提言を受けたものです。
岡山大学には、日本語教育の講座はなく、日本語教育についての知識はないが、学校教員志望の学生であるため教科指導の知識や教育実習の経験もあります。そのメリットを活かしつつ教科の学習支援をしています。支援の過程で日本語教育の知識のいかに必要であるかを痛感しては、勉強し工夫をして活動に取り組んでいます。
現在までに3つの中学校と1つの小学校で活動してきましたが、対応する外国人児童生徒には、それぞれに異なった個性と学力レベルがあり、個別的な対応によって支援しなければ効果はあがらないことを学生は痛感しています。特に中学校では、高校入試に向けて短期決戦型の学習支援が必要で、対応に苦慮しています。
日本語教育の教員養成講座はないけれども、学校教員志望者として外国人児童生徒の問題に直に触れ、問題解決に向けて実践力をつけていく体験は、今後の教育現場を変えていく意識ある教員の養成に資することができるのではないかと実感しています。
(岡山大学教育学部 光元聰江)
@中国帰国者支援・交流センターの目的
中国帰国者の平均年齢は60歳代となり、就労はもとより、言葉や生活習慣の相違から、社会的自立が困難な状況にあります。また、高齢の残留邦人は子世帯(二・三世)を同伴して帰国できるようになったことから二・三世世代も増加し、それらの者についても就労が困難なことや社会的事件に巻き込まれる者など地域社会からの孤立に起因する問題が指摘されているところです。
こうしたことから、中国帰国者問題について、国民の関心と理解を促し、地方公共団体との連携の下に民間ボランティアや地域住民の協力を得ながら、日本語学習支援、相談事業、交流事業及び普及啓発事業(準備)などを中長期的に行うため、「中国帰国者支援・交流センター」(東京、以下「首都圏センター」という)、「近畿中国帰国者支援・交流センター」(大阪、以下「近畿センター」という)を設置します。
A事業概要
日本語学習支援事業:
現在の研修だけでは日本語が習得できない高齢者の増加や成年層でも希望する職種に就業できないという現状に鑑み、進度別、目的別など帰国者のニーズに合わせ、就労に結びつく日本語教育を継続的に実施します。なお、首都圏センター、近畿センターにおける通所課程のほか、首都圏センターでは 遠隔学習(通信教育)も実施し、いつでもどこでも必要な日本語を学べるよう支援します。
相談事業:
帰国者の年齢層の拡大により、相談内容も多種多様になってきていることや帰国後3年を経過した者が相談する場がないことから、首都圏センターに相談窓口を開設し、専門機関、行政機関等と連携しつつ電話・手紙等での相談にも対応します。
さらに、高齢化した帰国者や障害のある帰国者については、地域社会での孤立も指摘されていることから、帰国者に対し、首都圏センターから積極的に生活情報や交流会等の情報を提供する等孤立化防止対策についても努めていくこととします。
交流事業:
言葉の問題や生活習慣の違い等を抱える帰国者が地域住民、ボランティア等と交流しコミニュケーションが行える場や帰国者同士が相互に情報交換・交流ができるような場の提供に努めていきます。
首都圏センターに談話室を設けて高齢者を対象とした常設サロンとすることや、 教室を帰国者・ボランティア団体・サークル等の利用に供すること、また、ホームページを開設してボランティア団体や帰国者が現に参加しているサークルなどの情報を提供するなど交流の場を提供していきます。
普及啓発事業(準備):
中国残留邦人問題の背景や経過についての情報を収集・提供し、国民の皆様に理解とご協力を得ることが、帰国者の自立を支援するうえでも不可欠な要素となっています。そのため、首都圏センターに資料収集検討委員会を設置し、中国残留邦人の貴重な資料の流失を防ぐため収集する資料の検討を行うとともに、収集した資料をいかに後世代に伝えるかを検討することとしています。
B事業の開始について
日本語学習支援事業は平成13年10月に受講生の募集を行い、11月1日から授業を開始します。
@中国残留孤児の肉親捜しについては、孤児の高齢化に伴う精神的・身体的負担の軽減や早期の帰国希望に応えるため、平成12年度より新たな方式を導入したところです。具体的には、厚生労働省職員が訪中し、中国政府の協力を得て現地で共同調査(訪中調査)を行った後、日中両国政府で日本人孤児と確認された方について、日本で肉親との離別状況等の情報を公開し、日本側に肉親情報がある方のみに訪日していただき、肉親関係者との対面調査を行うものです。
なお、この対面調査に参加できなかった方についても、希望により一時帰国や永住帰国をすることができます。
A平成12年度は、訪中調査の結果、新たに20人の日本人孤児が確認され、対面調査などにより、これまで3人の身元が判明しました。
B平成13年度は、7月上旬から約3週間にわたり訪中調査を行い、黒竜江省、吉林省、遼寧省を中心に6カ所の都市において、新たに申請のあった孤児申立者33人、証言者43人の対象者と面接調査を行いました。
現在、日中両国政府で日本人孤児と確認された方について、報道機関等の協力を得て名簿の公開を行い、肉親情報の収集に努めているところです。
肉親関係者から対面の申し出があった方については、本年11月に訪日していただき、対面調査を行うこととしています。
去る7月25日から8月3日にかけて、文部科学省と独立行政法人教員研修センターの共催によりホテルフロラシオン青山を会場に平成13年度外国人児童生徒等日本語指導講習会を開催しました。
この講習会は、日本語指導を担当する教員等の指導力の向上を図ることを目的に、学校で日本語指導を担当している教員や日本語指導担当の指導主事等を対象に平成5年度から行っています。本年度は都道府県及び附属学校を置く国立大学から推薦を受けた94名の教員及び指導主事等が参加しました。
今回からより多くの先生方が本講習会に参加できるよう、日本語指導に必要な基本的知識の習得に重点を置いた前期と応用的知識の習得やグループ演習に重点を置いた後期の2部に分け、どちらか一方のみの参加も可能としました。
前期では理論的分野に関する講義や、先進的な研究を行っている学校の先生から、日本語指導の実践及び学校での受け入れ体制等について事例発表をしていただきました。
後期では実践的分野に関する講義や、1グループ5名ほどに分かれ、それぞれテーマを設定して、指導案・教材等を作成して模擬授業等を行うグループ別演習を行いました。
また、今年も引き続き、中国帰国者定着促進センターの池上摩希子先生に講師をお願いして、「定着促進センターにおける日本語指導」について講義をしていただきました。
外国人児童生徒が各地域・学校へ分散化・浸透化し、その背景が多様化している状況の中、受講された先生方に、地域の日本語指導担当教員への指導的役割を果たしていただくとともに、講習の成果をそれぞれが担当している児童生徒たちへの日本語指導等に還元していただくことを期待しています。
文部科学省 初等中等教育局 国際教育課 適応・日本語指導係 甲斐
文化庁(国語課)では、8月7日(火)、8日(水)及び28日(火)の3日間、「文化庁日本語教育大会」を「転換期の日本語教育の在り方について考える」という全体テーマで開催しました。一日目は文部科学省分館・虎ノ門ホールで二つのシンポジウムを、二日目は昭和女子大学(研究館)で研究協議会(四つの分科会)を、三日目は都久志会館(福岡県博多市)で研究協議会(講演、円卓会議、分科会等)を、合わせて約千二百人の参加者を得て開催しました。本大会は今回で7回目を迎えましたが、日本語教育の水準の向上とその推進に資することを目的に、シンポジウム、研究協議会等を集中的に開催しているものです。
開会に当たり、佐々木文化庁長官が挨拶し、続いて、片山国語課長から、日本語教育施策の現状と展望について、具体的なデータに触れながら事業説明を行いました。
その後、午前中は「高度情報化に対応した日本語教育の在り方について」をテーマとして、これまで行ってきた様々な調査・研究(衛星通信を活用した実験、CD-ROMの制作、メディア教育の内容や方法など)の結果を踏まえながら協議を行いました。また、文化庁で構築し、独立行政法人国立国語研究所で今年度から運営を始めた日本語教育支援総合ネットワーク・システム(http://www.kokken.go.jp/nihongo)の紹介を行うとともに、このシステムの活用の在り方について協議しました。
午後からは、これまで数年間続けて行ってきた地域日本語教育セミナーの成果や地域日本語教育推進事業(福岡県福岡市、沖縄県西原町など)の取組の事例報告や提言等を踏まえ、大会初の試みとして(国際日本語普及協会(AJALT)の協力を得ながら)地域日本語教育活動推進(へ向けての)シンポジウムを「これからの地域日本語学習支援活動の充実を考える」というテーマで開催しました。
二日目及び三日目の午後(後半)は、全体テーマに対応した「日本語教育研究協議会」が開催され、「これからの地域日本語学習支援活動について」「日本語教育支援総合ネットワーク・システムの活用方策について」「日本語教育機関・施設における日本語教員養成課程の在り方について」「今後の日本語教育内容と日本語能力試験の在り方について」の四つの分科会が開かれ、事例報告や文化庁の報告書(「日本語教育のための試験の改善について−日本語能力試験・日本語教育能力検定試験を中心として−」)等に基づきながら活発な協議が展開されました。なお、三日目の午前は「日本語教育の新たな展開と地域日本語学習支援活動の充実へ向けて」というテーマで水谷修氏(名古屋外国語大学教授)の講演を、そして午後(前半)は「地域日本語教育推進円卓会議」を行いました。
*その他、文化庁国語課では7月に「地域の日本語教室に通っている在住外国人の日本語に対する意識等」についての調査結果を発表しました。本調査は、今回が初めてで、今後の日本語教育施策の参考に資するために実施したものです。調査結果の概要は文化庁のホームページ(http://www.bunka.go.jp)に掲載されています。
文化庁国語課(日本語教育調査官) 野山 広
厚生労働省より委託を受けて、11月1日から東京都台東区東上野に中国帰国者支援・交流センターを開設いたします。
最寄り駅:JR御徒町駅徒歩7分
都営地下鉄大江戸線新御徒町駅徒歩1分
営団地下鉄日比谷線仲御徒町駅徒歩6分
援護基金では、中国残留邦人本人、その配偶者及び二・三世が高等学校、大学、専修学校で就学する場合の就学資金を貸与しています。また、日本財団の助成事業として、帰国後3年以内の二・三世を対象に、大学等に入学するために必要な教育課程を設置している日本語学校への就学資金の援助を行っています。平成14年度についても募集を行います。
都立深川高校作成の資料をもとに10月過ぎには、問い合わせに応じられます。
問い合わせ先: 財団法人 中国残留孤児援護基金 TEL 03-3501-1050
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-5-8 オフィス虎ノ門1ビル7階
平成12年度に〈総合研修〉と〈日本語研修〉の2部構成になり4日間に拡充された「自立指導員研修会」は、今年度も構成は同じですが、期間は2部合わせて6日間となりました。以下は、〈総合研修〉参加者の指導員 冨山 倶子さんからいただいた報告です。
なお、〈日本語研修〉は10月3日から5日まで、東京の九段会館で行われます。「日本語指導概論」に続き、グループ別に「指導の実際」、「コーディネーターの役割と可能性」について演習と意見交換を行う予定です。
7月17日から19日の3日間、東京の九段会館において自立指導員研修会が、全国からの自立指導員、厚生労働省、都道府県の担当職員が参加して開かれました。
1日目、神奈川県中国帰国者自立研修センターの就労への取り組みについての話は、データや具体例が豊富で分かり易く、指導員として必要なことは、県、職安等と情報交換を密にすること、帰国者のプライドを傷つけないこと、自分の価値観を押し付けないこと等、とても参考になりました。また山梨県主任指導員 中村氏の長年のご尽力には頭の下がる思いがしました。厚生労働省の中国孤児等対策室 高根室長からは、「今後の帰国支援としては、中国に生活の基盤を持ったまま毎年一時帰国するというのも選択肢の一つに入れていきたい」ということ、また自立指導員には「なんらかの形で社会と接触を持つことも“自立”と捉え、家に引きこもってしまわないようアドバイザーとしても協力してほしい」ということや、自立支度金は生活保護を受けていても本来収入認定の対象とはしないということ等の話がありました。
2日目、国際医療大学の相原先生の精神保健福祉の講義は、ご自身の中国帰国者との関わりを通してのものだったので分かり易く、問題を抱えて悩んでいる人に対しては、まずその人の話を十分に聞き、一度その人の側に立ってみること、そして同情ではなく“共感する”ことが基本であること等、学ばせていただきました。
そのあと、6グループに分かれて事例研究が熱心に行われました。
3日目、各グループの発表では、生活保護、世帯分離、就労、子供の進学、近隣との関係、身元引受人との関係、家庭内不和、定着地による格差、樺太からの帰国者に関する問題について、自立指導員の派遣回数について等、各地の自立指導員の苦労、努力の様子がうかがわれました。生活保護に関しては地域やケースワーカーの考え方によっても差があるので、連絡を取り合い関係を密にすることによって改善されるものもあるのでは、との印象を持ちました。樺太からの帰国者は、彼らの母語であるロシア語が話せる支援者がなかなかみつからない、また近くに日本語を学べる場がない地方に定着された方もおり、学習の継続にとても苦労されているのがよく分かりました。
暑い暑い3日間でしたが、本当に有意義な3日間でした。
7月7日(土)国立国語研究所において標記の研修会が行われました。午前中の第一部は「子どもの言語能力評価の考え方」というテーマで三つの報告がなされました。東京学芸大学の佐藤郡衛先生からは、今我々に求められているのは評価観そのものの転換(つまりカリキュラム観、授業観の転換)であるという趣旨の話がありました。トロント大学の中島和子先生からは、「バイリンガル児の言語能力評価の観点」の一例ということでカナダの会話能力テスト(OBC:Oral Proficiency Assessment for Bilingual Children※)の開発に関する報告があり、午後にはそのOBCを実際に使ってみるというワークショップがありました。これは、実際にテストを受けている子どものビデオを見ながら採点をしたり、3人一組になって「テスター」「子ども」「観察者」の役割をそれぞれ経験したりと、かなり実際的なものでした。OBCはテストというよりは会話力のカルテのようなものという説明が印象に残りました。また筑波大学の岡崎敏雄先生からは、「学習言語能力をどう測るか」という題で第一言語の保持と第二言語習得の度合いの測定(TOAM:Test of Language Acquisition and Maintenance)の開発に関する報告があり、午後には「日本語と母語の両方を測定する意味」と題し、TOAM作成の理念の説明と実際のテストの紹介がありました。日本語のテストをするだけでは片手落ちで、子どもの能力の全体像をとらえることが重要という考えから、子どもの母語と第二言語である日本語の両方の力を聴解と読解の形式で測定するテストです。また、母国にいれば普通に発達していたはずの認知能力が、外国に移り住み適切な対処がなされないことで中断され、ダブルリミテッド(=セミリンガル:言語的・認知的能力の発達が日本語と母語共に不十分)のベースをつくってしまうというショックな話もありました。岡崎先生のTOAM開発については国研から報告書が出される予定だそうです。
※OBCについてはカナダ日本語教育振興会『子どもの会話力の見方と評価−バイリンガル会話テスト(OBC)の開発−』が参考になります。
(所沢センター:小川、山田)
8月21日(火)、上記の講座を受講しました。このスクールは東京目白にある社会教育財団で、その中に「国際学級」があり21年間で1200人以上の海外帰国・来日児童生徒を教えてきました。今は学級を閉じており、その部門はテキスト出版や講演・出張授業などを行っています。講師の大蔵守久先生は全国各地からの依頼を受け、講演活動をされています。この日の参加者は76名で、全国各地から学校関係者だけでなく国際交流協会やボランティア団体関係者、個人の参加があったようです。
当日の内容は◆第1部:年少者日本語指導概論◆第2部:教材教具開発のコツ◆第3部は「中期以降の指導」と「教科学習と日本語」についてでした。第1部は「年少者指導の4つの柱」と「自然習得を早める工夫」についてのお話でした。その中で興味深かったのは五感を使わせる指導でした。例えば、「見せる」という学習活動1つにしても、じっくり見せる、ちらりと、ぼかして、一部を、影絵で、2つの絵を見せてどこが違うか比べさせる、など、いろいろな方法を使って子どもの興味を惹くのです。聴覚、触覚についても同様にいろいろな工夫があり、それによって、言葉がスムーズになる、意識を集中させる、理解が深まる、といった効果があるとのことでした。第3部は「教科指導は『まず30%で』」と題されており、この「30%」が、「理科と社会科は『見出し』→『結論』」(内容を精選し見出しと結論を教える)、「算数・数学は『一事習熟』の精神で」(場面1つ、文型1つ、もの1つ、解き方1つ)ということを、授業の例を挙げながら説明されました。
この日に紹介された授業アイディアは『日本語授業おもしろネタ集』(当紙20号で紹介)に載っているものも多かったのですが、本で読むのとはまたひと味違い、実演を通して理解、納得、感動できる部分が大きかったです。講義の内容がわかりやすく、また、自分の知識を整理するという点でも、とても役に立つ講座でした。
(所沢センター:田中)
波多野ファミリースクールのHP http://www2u.biglobe.ne.jp/~ork
今回は学校現場の実情報告と地域への要望・問題提起ということで、北条宗子氏(品川区立山中小学校)と岩科一平氏(杉並区立井草中学校)の報告から始まった。参加者は教員・NGOメンバー等合わせて30名弱。
北条氏は『総合的学習の時間』(以下、総合学習)を小学校1,2年で実施されている生活科の3〜6年生向け発展段階と位置づけ、国際理解教育は『総合学習』の一部としてあることを説明、国際化および情報社会化に向けた文部科学省の方針により、2002年からは年間115時間の実施が予定されていること、担任一人の力では限界があるのでゲスト講師など地域の人材の力を借りることで国際理解・囲碁・生け花等の少人数クラブが成立可能となったことを報告した。
岩科氏は昨年までの在籍校、大田区立馬込東中学校での実践「『命』を実感する授業と行事」を中心に報告、教育方針の変化に翻弄される現場の実情について本音で語った。氏は「在日韓国・朝鮮人の教育を考える会」での活動等を通じて、日本の教育に欠けているものは何か、という問題も提起した。
報告後の会場との質疑応答では、@アジアの子供への教育支援をしているNGOメンバーから、学校から授業の依頼があったとき短時間では現状を伝えきれないので、『総合学習』のうち何時間かをまとまった時間枠としてもらえないかA文部科学省は、学校側がボランティアへの交通費・必要経費が出せるような資金的裏付けを考えてほしいとの要望が出された。@に関しては教員側も好意的であり、Aについては他のNGOメンバーより地域のJCやライオンズクラブに働きかけて経費を獲得した例が報告された。主催者側からは、学校と地域が手を取り合ってみんなが元気になる国民的運動をおこそう、との呼びかけがあった。国際理解教育は、当センターで学ぶ子供たちにも密接に関係する分野であり、注意深く見守りたい。
(所沢センター:村山)
「地域日本語研究会」より、2つの報告書がまとめられました。ご希望の方は、下記の要領でお申し込みください。
昨年、福島県郡山市で開かれた医療通訳ボランティア養成のための研修会と学習会のまとめです。研修会は「医療通訳の実際と現状」「シミュレーション(模擬外来)」、学習会は「保健医療の現場から」「ソーシャルワークの現場から」「婦人相談所の立場から」「母子保健の立場から」「行政書士の立場から」「弁護士の立場から」の各テーマで行われ、各回の内容が詳しく紹介されている。19号でお知らせした『医療通訳養成講座 標準テキスト』は本研修会の中で使われたもので、報告書の中にも一部収められている。
この報告書は、20号でお知らせした講座案内「日本語支援を通して共生社会を考える」の「事例を通して問題解決能力を身に付けよう」(5回)、「日本語支援活動ウチとソトのつながり」(5回)の全10回をまとめたものである。その他に事例を通して学ぶ「コミュニティ心理学入門」も加えられている。本講座は、定住外国人への支援活動の中で、支援する側支援される側の間で起こるトラブルの解決方法を考えていくことで、自分自身がその活動にどう関わるかを問い直していくことをコンセプトとしており、日々の日本語支援活動の中で自分の位置を確認するのに役立つ1冊となっている。
【申し込み方法】
宛名明記の上、310円切手(2冊の場合は380円切手)を貼った角形2号封筒(A4サイズが入る)を同封し、地域日本語研究会事務局(〒247-0009 横浜市栄区鍛冶ヶ谷2-18-16 山本気付)までお送りください。折り返し報告書をお送りします。
所沢センターでサハリン帰国者を迎え入れるようになって3年になります。通常あまり意識されていないことですが、ロシアは日本と国境を接する隣国であり、日本の各地でも今後ロシアとの交流が盛んになると考えられます。その際にはロシア独特の伝統や習慣、エチケットを知っておくと役に立つでしょう。例えば、3月8日の国際婦人デーには必ず身近な女性に花を贈るなどです。ロシア出身の女性は、日本ではこの日が祝われないのを寂しく思うことでしょう。東洋書店から出ているユーラシア・ブックレットシリーズの一冊で、A6判、65頁、600円という手頃な厚さと値段です。『ロシア料理・レシピとしきたり』、『ロシア・インターネットの世界』もおすすめ。
「方言を学んで近所の人とよりよい関係を築きたい!」――こういった首都圏以外の地域で暮らす日本語学習者からの多くの声に応える「対訳集」や「教材」が各地で出されています。
今年出版された『飯伊方言―中国語対訳集』は、長野県飯田・下伊那地方の方言の日中対訳集。日常生活に必要な方言が五十音順に約1600語収録されており、それぞれ共通語と中国語に訳されており、用例やアクセントも添えられています
また、既に出版されている市販テキストとして『聞いて覚える関西(大阪)弁入門』があります。語彙、文法、聴解(カセットテープ)の学習ができ、会話文も関西らしいユーモアたっぷりの内容になっています(対訳はなし)。
他にも、広島や佐賀等の地域で、方言学習のための対訳集の作成や講座の開設等、方言学習支援の試みがなされはじめています。
こうした、方言学習の支援は、帰国者をはじめ、日本各地の定住外国人にとって、地域住民とのより深いコミュニケーションのために大変有意義なものとなるでしょう。皆様の地域にもこのような教材や講座等の取り組みがあれば所沢センターまでご紹介ください。
・『飯伊方言―中国語対訳集』飯伊方言―中国語対訳編集委員会(2001、小学館スクウェア、1,980円)
問い合わせ(購入申し込み):同編集委員会・稲垣代表(0265-26-6412)
・『聞いて覚える関西(大阪)弁入門』大阪YWCA日本語教師会(1998、アルク、2,200円)
中国帰国者やサハリン帰国者の中には、朝鮮語を母語とする学生がいます。今回ご紹介する本はそんな人たちに役立つと思われる、日本で生活するハングル語母語話者のための漢字教材です。本書では、漢字を難易度順や学校での学年配当の順ではなく、生活場面という切り口で取り上げています。各章では目的別に@意味が分かり読んだり書いたりできることを目指す漢字、A見て意味がわかればいい漢字に分けて提示し、学習者がその漢字をどうやって学習すればいいのかわかりやすくなっています。またすべての漢字や単語には,ハングルで意味と読み方がつけられています。各章は場面毎に独立しているので、どこからでも使い始められる工夫もあります。取り上げられている場面としては、病院、学校、消費生活など。学習者の生活者としての立場が重視されています。例えば、[妊娠、出産]の章では、「母子手帳」、「乳」、「看護婦」、[連絡帳、お知らせ]の章では、「早退」、「遅刻」、「参加」、「集金」などの単語や漢字を学習します。各章の最後には「活動」として学習したことを使って実際に近い、読み取りや記入の練習があります。絵や写真も多く使われ、場面の理解を助けると共に、楽しんで学習ができそうです。目にすることの多い漢字を学習することで、実際街角でその語を見て理解できた時にはきっと大きな達成感が得られることでしょう。
この本に先立って英語とタガログ語訳のついた『生活日本語 306』も町屋日本語教室から発行されています。
B5判 441頁 国際ボランティアセンター山形(IVY:アイビー)編 2001年5月初版 2,500円
中国帰国者、定住外国人等の支援に関わる活動では、その理念や目的として“学習権”の保障ということがよく聞かれます。この“学習権”は、成人学習者にとっても非常に重要なキーワードではありますが、ここでは子どもの“学習権”について取り上げてみたいと思います。
辞書や事典によれば、“学習権”とは、日本国憲法が保障する「教育を受ける権利」(第26条第1項)を教育学の観点から捉えおなし、学習する主体の側から表現した言葉であり、「子どもが自立した人間へと成長するために、必要かつ適切な学習環境および条件を、親、教師、教育行政機関など教育の実施主体に要求する権利」と説明されています。
参政権、労働権など他の基本的人権保障の前提をなすという意味で「人権中の人権」とも言うべきこの権利は、外国人の場合、どのような法的根拠を持っているのでしょうか。これについては、まず、国連が1966年に採択した国際条約である『国際人権規約』(日本は79年に批准)が挙げられます。規約1「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」第13条1項では、教育が、すべての者に対し「自由な社会に効果的に参加すること」を可能にすべきものであることが述べられており、第2項(a)では、初等教育は、義務的なもの、無償のものとするよう規定されています。(これは初等教育つまり小学校だけの規定になってはいますが、日本は小中学校が義務教育とされていることから、中学校も同様に扱われるべきものと考えられています)。また、1989年に国連総会で採択され、90年に国際法として発効、94年に日本が批准した「子どもの権利条約」でも、第2条1項、第28条1項で、締約国の「管轄内のどの子ども」に対しても差別なく教育を受ける権利が保障されるべきものであること、初等教育の義務化、無償化が定められており、こうした根拠から、保護者には子どもを日本の学校に就学させる義務はないが、就学希望者についてはすべて受け入れ、日本人と同じ行財政的待遇が受けられるものと考えられています。
しかし、ここで規定されている内容は実質的な学習権のごく一部であり、就学はいわばその“入り口”にすぎません。就学の後保障されるべき学習の内容についても、まだまだ検討すべき事柄は多いのですが(母語や母文化について学ぶことはどうするのか等も含め)、何よりもまず学習が成り立つこと、つまり、日本の学校が日本語を母語としない子どもたちにとっても十分な成長発達の場となること、そしてその結果、学力、そして進学進路の選択肢が日本の子と差別なく保障されること、こうしたことすべての保障がなされなければ学習権が守られていると言うことはできません。本号巻頭言を含めこのニューズレターでこれまで紹介してきた様々な取り組みも、すべてこの学習権の実質的な保障を目指すものと言えるでしょう。学校教育の現場が、そしてそれを支える地域社会が、まず足下の“国際化”を実現させることが求められています。すべての子どもの「人格、才能並びに精神的、身体的な能力を、それが本来可能性として持つ範囲いっぱいまで発達させる」こと(「子どもの権利条約」第29条1項(a))、私たちは、これを可能とする日本社会にしていかなければなりません。
参考:『広辞苑』岩波、『日本大百科全書』小学館、中西晃・佐藤群衛編著(1995)『外国人児童・生徒教育への取り組み』教育出版
9号は、外部からの投稿としては、帰国者及び外国人児童生徒に関わる事例報告・実践報告3編
●「中国帰国者」児童生徒のエスニシティと学校教育の有り方−両国の狭間にいる子供達−
●非漢字圏生徒に対する「書く」指導−「学習言語」習得を視野に入れた実践から−
●高等学校「国語科」における外国人生徒を核にした学習活動の試み−教科書教材から多言語情報紙を用いた活動へ−。
所沢のものとしては、国立国語研究所の委嘱を受けて行った調査研究報告3編
●帰国者の学習機会を広げるために「自学自習支援」を考える
●これからの高齢帰国者支援のあり方−「学習実態等に関する調査」から見えてきたこと−
●『同声・同気』読者アンケート調査報告。
センター子どもクラスの実践報告として2編
●実践報告:日本語学習初期段階における作文指導について考える−63期子どもクラスの作文の授業実践を基に−
●こぼれ話−「オタマジャクシを観察しよう」。
この他に
●センター2000年の記録
●入退所者統計
を掲載しました。
また、本号は【資料】として、平成12年12月に厚生省(当時)から出された「中国帰国者支援に関する検討会 報告書」を加えました。この概要についてはすでに本紙20号でも紹介していますが、帰国者支援の今後について一つの拠り所となる資料と考え、全文掲載したものです。
※本号を含め、これまで発行されたセンター紀要は、帰国者支援に関わる機関やグループには無料でお送りすることができますが、センターのホームページでもご覧になれます。ダウンロードも可能です(ダウンロードの方法の説明もあり)。ご利用ください。
巻頭言でも述べた「進路ガイダンス」、すでに大阪市では「多文化進路ガイダンス実行委員会・大阪」主催で7月に開催済みですが、これから開かれるものについてご案内します。
●大阪府 …大阪府在日外国人教育協議会主催。10月末〜11月、府内各地区で複数言語の通訳にて実施予定。
問い合わせは 府外協(TEL:0726-76-7582、ただし留守がちなので、できればFAX:0726-76-7583で)
●東京都 …「高校進学ガイダンス2001実行委員会」主催。
@ 9/30(日)国分寺Lホール(JR国分寺駅ビル8F)にて、14:00〜16:30。
A10/21(日)東京ボランティアセンター(飯田橋駅の西口すぐ右のセントラルプラザ10階)にて、14:00〜16:30。
通訳:英・中・韓朝・西・菲語、申し込みがあれば1〜2言語増も可。
当日、日・英・中・韓・菲語による資料「東京都・中学生のための進路案内ガイダンス」を
無料配布(後日の申し込みは各言語1部200円)。
問い合わせ:多文化共生センター東京21(火・木・土11時〜19時)TEL&FAX:03-5825-1290、
またはメール:cmia-tk@tctv.ne.jpにて申し込みのこと。
●神奈川県 …多文化共生教育ネットワークかながわ(高校進学ガイダンス実行委員会) 、いずれも13時〜16時。
@10/8(月・休)、県民センター301号室(横浜駅5分)、通訳:越・カンボジア・ラオス・西・葡・中・英・菲・韓朝・印尼
A10/14(日)、横内団地集会所(平塚市)、通訳:越・カンボジア・ラオス・西・葡・中・英
B10/21(日)、いちょう小学校(横浜市・泉区)、通訳:越・カンボジア・ラオス・西・葡・中・英。
問い合わせ:TEL:045-942-5202(高橋)
所沢センターのホームページでは、中国引揚者等子女特別枠のある大学入試情報のホームページにリンクを張っています。現在、2002年度の入試情報について随時更新中です。どうぞ進路決定の参考にお役立てください。
所沢センターでは、全日制高校、定時制高校それぞれについて、中国帰国生徒及び帰国生徒以外の外国籍生徒に対する入試特別措置の有無/措置の内容、特別入試枠の有無/試験内容等などについて、全国の都道府県教育委員会に問い合わせました(2001年8月現在)。同時に、昼間の中学校に編入可能な年齢の上限についても尋ねました。これらの結果のうち公開可能な情報を当センターのHP〈進学進路支援情報〉コーナーにアップしていますので、ご覧ください。
中国の小学校算数教科書の目次一覧を当センターホームページ〈教材〉コーナーにアップしました。
中国から来た児童の算数指導を進める上での目安にどうぞ!
(但し、入手できた教科書は出版社及び出版年度が違います。ご了承ください。)
06/01 <国連への手紙>:不法入国者の生徒らが摘発後も日本での学習を希望
06/21 支援金の給付制度創設を!残留孤児が老後の保障を求め厚労省周辺でデモ
06/30 16年ぶり姉妹と判明 中国残留孤児の女性
06/30 厚労省 来月(7月)2日から3週間にわたって中国残留日本人孤児の訪中調査
07/19 在住外国人を対象とした文化庁 初めての調査:読める日本語はローマ字よりひらがな/困った場面は 病院・近所づきあい
08/10 残留孤児1人(昨年11月の訪日調査参加者)の身元判明 広島県内の男性のおい
08/15 中国残留日本人孤児ら600人が老後保障を求めてデモ行進
09/17 新たに認定した中国残留日本人孤児20人の名簿・情報を公表11月に 訪日対面調査と集団一時帰国
帰国者1世世代の平均年齢も60歳を越え、老いや病気と付き合いながら、これから訪れる老後の不安を抱いている者が多い。“介護問題”は帰国者にとっても、これから大きなテーマとなって来るだろう。実際に身辺自立の難しくなってきた人もでてきている。
帰国者2世のKさんは、居住地域にある帰国者支援団体が主催する介護ヘルパー養成講座に参加し、介護ヘルパーの3級資格を取得した。彼女がこの資格を取ろうと思った直接のきっかけは、病気の夫の看護体験からであった。しかし、彼女の中には、帰国者である自分がこの資格を取ることによって、1世世代の老後生活を援助することができるのではないかという思いがあった。
3級ヘルパーの仕事内容は、買い物、料理、洗濯、掃除といった家事援助を通して老人の身の回りの世話をすることである。Kさんは今、週に1回、近くに住む89歳のおばあちゃんのうちでヘルパーをしている。しかし、家事だけとはいえ相手は日本人の老人である。コミュニケーションのうえで何かと苦労はある。「もちろん私の日本語はまだまだ上手じゃないんで、たまには、おばあちゃんと行き違いもあるんですよ。やってほしいことを勘違いして、別のことをやっちゃったりしてね。でも、おばあちゃんは寛容で、けして文句も言わないで、いつもニコニコ笑って、私のミスを見過ごしてくれるんです。だから私も2度と同じミスをしないように自分にいい聞かせているんです。それに、おばあちゃんと一生懸命おしゃべりしているうちに、日本語もちょっと上達してきた気がします。今では、おばあちゃんも週に1回私が行く日を楽しみにしているみたい。」
介護を通して、Kさんは日本での生き甲斐を見つけたようだ。「つい最近、介護ヘルパー2級の勉強も修了しました。3級の時と違って講座には通訳はいなくて、ほとんど日本語だけだったんで、ちょっと大変だったんですけど、もう大丈夫。実際にヘルパーをしている自信があるからね。早く2級の資格を取って(2級の資格を取ると身体介護ができる)、家事だけじゃなくて、直接身体に触れられるような介護をして、自分の力を生かせる場を広げていきたいんです。」ヘルパーの仕事を始めるまでは、内向的で照れ屋だったというKさんは、自信と希望に満ちた顔で語ってくれた。
Kさんが、ヘルパーの仕事に就くきっかけを作った、介護ヘルパー養成講座の主催者である、帰国者支援団体のMさんに、同講座立ち上げのきっかけを聞いてみた。「以前、帰国者の老夫婦のおばあちゃんが、病気のためヘルパーの派遣を頼んだんです。当然ながら、来たヘルパーは中国語もできず、料理も日本式でした。日本人であるおばあちゃんは大丈夫だったんですけど、おじいちゃんの方は慣れない日本語と和食のためストレスがたまって、半年でヘルパーを断ることになりました。結局ヘルパーは、3人も代わる羽目になってしまいました。」
Mさんと仲間たちはボランティア活動を通して多くの帰国者と接し、老いた帰国者たちは中国語や生活習慣をよく知っているヘルパーを望んでいることを強く感じていた。また、彼らの介護への関心度や必要度の高さにも気づいた。そこで、帰国者の2、3世を対象とした、介護ヘルパーの資格取得の講座を思いついた。とはいえ、あてにできるお金も場所もなく、僅かな同会の会費がその貴重な財源となった。主催者も講師も全員がボランティアのためそれぞれの都合により、各講座のスケジュールの調整には骨を折った。しかし、様々な困難を抱えながら始まった手弁当の講座は、多くの帰国者の支持を得た。3級の講座への申し込み者は二十数人にも上った。また、片道約1時間以上も離れた越境受講者もいたほどだ。
「私たちの団体はヘルパー派遣の資格をもっていないため、民間の介護保険登録団体を通して活動しています。具体的には、3級を取得した修了生を同団体に紹介し、面接の後、登録する仕組みになっています。今現在、3級取得者は12人、2級は4人います。但し、帰国者1世を対象として介護を行っているヘルパーはまだいません。私たちが今後、力を入れていきたいことは、近くの帰国者が集住する団地で、介護保険制度の説明会を開くことです。制度に関する中国語訳の説明書は役所から配布されてはいるものの、こうした制度がない中国から来た人々には、とてもわかりづらいんです。そこで、説明会を通し、潜在的に存在する介護の必要な帰国者1世を掘り起こし、制度の活用に繋げて行きたいと考えています。」Kさんのような人たちの活躍がまた、同支援団体の原動力にもなっているようだ。
新しい文化、言葉、習慣を受け入れることが難しい1世世代にとって、どんな介護が必要なのか。また、2世3世にとって、介護という仕事はどのような意味をもつのか。さらに、介護する側と介護される側はどのように向き合っていくべきか。Kさんたちと同支援団体の歩みは、私たちにその答えを探すヒントを与えてくれているのではないだろうか。
(小松)