HOME > 支援情報 > 機関紙「同声同気」 > 第43号(2008年9月24日発行)  PDFファイル
地域情報ア・ラ・カルト
 東北中国帰国者支援・交流センター
 進学進路ガイダンス 京都/福岡など
行政・施策
 援護基金から
  平成21年度 奨学生募集
 文化庁から
  平成20年度文化庁日本語教育大会の開催報告
  平成18年度・19年度国内の日本語教育の概要
 文部科学省から
  外国人児童生徒教育の充実方策について
研修会情報
 研修会報告
  異文化間教育学会 第29回大会
  移民政策学会設立大会
 研修会情報
  第9回 外国人児童生徒教育フォーラム
  第54回 全国夜間中学校研究大会
  第4回 日本パブリックサービス通訳翻訳学会大会
教材・教育資料
 『中学校の英語・翻訳教科書 中国語版』『中学校国語教科書・翻訳資料集−中国語−』
 『絵ときシリーズ 見てわかる日本』
 『用例付 学習語彙5000語』ポルトガル語版・スペイン語版
とん・とんインフォメーション
  日本語教室一覧 千葉/東京
  坪井一郎・仁子 学生支援プログラム
  『外国にルーツをもつ子どもたちへ 将来へ続く道−夢に向かっていっしょに生きよう−』
  『外国から来た子どもを地域で支える』第二集
遠隔学習インフォメーション
  2008年度下期(10月〜3月)募集開始
  受講に必要となる書類について
ニュース記事から 2008.05.11〜2008.09.10
事例紹介 写真家として日中間を生きる中国帰国者3世

地域情報ア・ラ・カルト

東北中国帰国者支援・交流センター

 昨年8月1日に東北帰国者支援・交流センターをオープンし、8月10日に開所式を行いましたので、1年を経過したことになります。当初、東北センターについては、他県に設置するという話しがあったり、仙台市内に決まってからも他団体が本命と言う事があったりで、受託に向けて準備はしてきたものの、今ひとつ現実味がありませんでした。そして、正式に決まったのが6月も末でした。その後に、8月開所に向けて、交流サロンや教室の確保のために工事を行いました。宮城県社会福祉協議会の会館を使って事業を行うことになったので、5階フロアー全部を教室や講師の控え室、相談室として使うために、入居団体の方々に立ち退いていただき、フロアーを空けてパーテーションで仕切る工事を行いましたが、予算の関係で全部を仕切ることが出来ないなど、本当に準備が大変でした。日本語講師についても、何にも分らず、日本語教室を行っている国際交流協会に見学に行き、講師の紹介のお願いまでするような状況でした。
 中国帰国者の方々についても、どこにどのようにしているのかについて、皆目分らない状態でした。関係団体や関係者に事前説明を行いましたが、ふたを開けて見るまでわからないというのが本当でした。しかし、日本語教室で100名以上、交流活動で50名以上の方々の申し込みがあり、日に日に増えていきました。開所から3月までは、帰国者お一人お一人の状況を見ながら日本語教室や交流事業を行いました。そして、3月の終わりに「日本語学習・交流活動発表会」を行い、日本語学習の上達ぶりをスピーチや寸劇で披露し、歌や踊り、太極拳などの交流活動での楽しさをステージの上で再現することができました。帰国者の皆さんの明るく自信に満ちた笑顔がこれまでの成果を物語っていました。本年4月からは、日本語が6ヶ月、パソコンが3ヶ月期間での本格的なスタートとなりました。一世の方々については、それぞれの力量に応じたクラス分けを行い、二・三世の方々については、段階的に就労に結びつくようなプログラムとしました。交流事業についても内容を充実しました。始まるまでは、どうなることかと本当に心配しましたが、何も分らないままやってきたのが、かえって帰国者の方々の自主性に結びつきよい結果となったのかもしれません。今後も帰国者の方々を中心とした支援に努めて行きたいと思います。

(東北帰国者支援・交流センター所長 加藤祐一)

現在の情況:
 ●通学課程13コース: 日本語初級/中級/ゆっくり日本語/生活場面「医療」・「消費生活」/パソコン講座等
 ●交流事業8教室: 書道/太極拳/野菜作り/絵手紙等
 ●遠隔学習課程(通信教育)スクーリング6コース

進学進路ガイダンス 《 京都/福岡 》

 今年も各地で、日本語を母語としない生徒を対象とした高校進学ガイダンスが開催されました。二つの地域の運営スタッフの方からの報告を紹介します。

◆京都では初めてのガイダンスが7月に開催されました。当日は、小学生3人、中学生22人、保護者29人、教員8人、教育委員会関係者、スタッフ20名を含む107人という多数が参加。進学ガイダンスへのニーズの高さが窺われます。中国語・タガログ語・韓国語の通訳つきで行われました。特に、保護者から「通訳があってよく理解できた」とのコメントが多く寄せられ、ガイダンス会場では「同じ国の人と知り合いになれた」との感想もあったとのこと。スタッフの間では、既に今回の反省から次回へ向けた話し合いが始まっているという報告でした。

◆福岡の参加者は、これまでで最高の約90人(スタッフを含む)。参加者の出身国は、中国、韓国、ペルー、ロシア、ブラジル、ドイツ。また、スタッフの中には福岡市立高校の教員や、私立高校教員も含まれ、通訳ボランティアとして多数の教育関係の大学院生等が参加しました。今回のガイダンスでは、日本の高校紹介に趣向を凝らして、漫画を作っての映写などビジュアルに表現してわかりやすいものを心がけ、先輩からのメッセージも、現役高校生、大学生、社会人の3人から示唆に富み、進学希望者を力づける企画となったとのこと。(このガイダンスは、翌日の『西日本新聞』に「受験制度わからない 疑問や不安の声続々」との見出しで、かなり大きく取り上げられたそうです。)

●前号以降、既に開催した地域 千葉(1回目6月29日)、大阪市(7月11日)、福岡(8月3日)
●これから開催が予定されているところ
【大阪】大阪市個別相談会は9月28日(日)午後ですが、予約の締め切りは9月18日です。
《大阪市外国人教育研究協議会 FAX:06-6754-3248 E-Mail:sigaikyo@pop16.odn.ne.jp
 ★詳細は http://www.globalcontents.co.jp/data/08GuidanceSep_last.pdf
【千葉】秋期ガイダンス(中学1年生〜3年生を対象)《白谷TEL:043-424-4364》
 @9月28日(日)千葉市  A10月12日(日)松戸市 B10月19日(日)船橋市  
【静岡】10月26日(日)浜松市《特定非営利活動法人 浜松NPOネットワークセンター 
 TEL:053-445-3717  E-Mail:info@n-pocket.jp  http://www.n-pocket.jp/

 なお、大阪府内の多言語進路ガイダンスの日程については大阪府教育委員会事務局市町村教育室児童生徒支援課のHP(http://www.pref.osaka.jp/kyoisityoson/jidoshien/)で紹介される予定です。

※三重県では 外国人生徒への看護学校進学ガイダンスも予定されています。詳細は、三重県国際交流財団のホームページ(http://www.mief.or.jp/index.html)で10月に紹介される予定とのことです。

行政・施策

☆援護基金から

平成21年度 奨学生募集

申請書類は平成21年1月31日までに必着のこと。問い合わせは当基金までお願いします。詳細はHPに11月中旬掲載予定です。中国語版、ロシア語版も見られます。

(財)中国残留孤児援護基金
URL:http://www.engokikin.or.jp/ トピックス→平成21年度就学援助募集のお知らせ
〒105-0001 東京都港区虎ノ門1−5−8 オフィス虎ノ門1ビル7階
TEL:03-3501-1050、FAX:03-3501-1026

☆文化庁から

平成20年度文化庁日本語教育大会の開催報告

 文化庁では平成20年度「日本語教育大会」を8月29日(金)に約400名の参加者を得て,昭和女子大学グリーンホール(東京都世田谷区)において実施しました。
 本年度は,「地域における日本語教育のコーディネート機能について考える」を全体テーマにして開催しました。開会あいさつ,施策説明に続き,日本放送協会プロデューサー・ディレクターのロッド・マイヤール氏より「多文化社会におけるコーディネートの課題〜災害情報などテレビ放送の提供を例に〜」というテーマでお話しいただきました。午後は,文化審議会国語分科会日本語教育小委員会における審議状況の説明(説明者:西原鈴子 東京女子大学教授,文化審議会国語分科会日本語教育小委員会主査)に続き,「地域における日本語教育のコーディネート機能について考える」というテーマでパネルディスカッション(進行:山西優二 早稲田大学教授)を行い,地域における日本語教育の体制整備とコーディネート機能についての協議がなされました。その後,平成19年度文化庁地域日本語教育支援事業の報告会が行われ,その成果を踏まえ,地域日本語教育支援事業協議会が行われ,今後の地域の日本語教育の在り方についての意見交換が行われました。

平成18年度・19年度国内の日本語教育の概要

 文化庁では外国人に対する日本語教育推進の基礎資料とするため,昭和42年以来,国内の日本語教育の実態調査を行っておりますが,このたび平成18年度11月1日と平成19年度11月1日現在の結果発表を行いました。平成19年11月1日現在の国内における日本語教育の実施機関・施設数は,1,801機関・施設,日本語教師数は,31,234人,日本語学習者数163,670人で,いずれも平成18年11月1日現在の調査結果と比べて増加しました。なお,本調査の結果は文化庁ホームページでも紹介されますので,御覧ください。
http://www.bunka.go.jp/

(文化庁文化部国語課 中野敦)

☆文部科学省から

「外国人児童生徒教育の充実方策について(報告)」

文部科学省初等中等教育局国際教育課

 近年、日本に在留する外国人が増加しており、公立の小・中・高等学校等に在籍する外国人児童生徒数は、72,751人(平成19年5月1日現在)、そのうち日本語指導が必要な外国人児童生徒数は25,411人(平成19年9月1日現在)となっており、外国人の子どもの就学や学校での受け入れ後の教育が大きな課題となっています。
このため、文部科学省では「初等中等教育における外国人児童生徒教育の充実のための検討会」において、これらの課題に関する当面の対応策について審議を行い、このたび報告書を取りまとめました。報告の主なポイントは以下のとおりです。

@外国人の子どもの就学状況に関する調査の定期的・継続的な実施や、教育委員会と地域のボランティア団体等との連携による就学相談・就学案内の実施などの外国人の子どもに対する就学支援方策
A外国人児童生徒の日本語指導に関するガイドラインの開発や、外国人児童生徒の指導にあたる教員や支援員等の確保・養成などの学校における適応指導・日本語指導の充実方策
B外国人児童生徒も含めた子どもの居場所作りや地域の日本語教育の推進などの地域における外国人児童生徒教育の推進方策

 文部科学省では、本報告の内容を実現すべく、必要な事業の予算要求を行うとともに、都道府県や市町村、関係機関・団体に対し協力を求めるなどの取組を講じていくこととしています。
詳しくはホームページをご覧ください
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/042/houkoku/08070301.htm

研修会情報

☆研修会報告

●異文化間教育学会 第29回大会 (5/31-6/1、於京都外国語大学)

 今年の大会は特定課題研究のテーマに「多文化共生社会を目指して−異文化間教育の使命−」を据え、@カリキュラム構築、A政策課題、B学校外の権力関係の3つの観点から提起がなされました。公開シンポジウムは「留学生交流戦略の世界的な潮流」をテーマに、欧州、アジア、日本各地の現状と提言がなされました。
 個人発表の中から二つご紹介したいと思います。一つは、外国人集住地域の小学校で外国人保護者を対象に行われた調査の結果についての報告でした。それまで学校側は「保護者は多忙であるし、定住の意志も不確かだから、子どもの学校には無関心」と考えており、また、保護者側にも、家庭と学校が密に連絡を取り合う日本の方式にとまどいがありました。しかし、保護者の母語での質問紙調査や懇談会でのニーズの掘り起こしにより、学校側・保護者双方が相手に対して持っていたこれらの先入観が解きほぐされ、双方が相手からの要望に応えるきっかけになったとのことでした。
 もう一つは、従来の「適応」「援助」「習得」を根幹とした教育ではなく、多文化の共生・共存関係を生み出せるような環境づくりを目的とした対話型カリキュラムの開発実践についての報告です。「支援員」を仲介者として児童、学校、大学、学生ボランティアらの生の声を取り上げた報告書も読み応えがありました。この報告書(宇都宮裕章編著『多文化共生社会に根ざす協働学級の構築に関するカリキュラム開発実践研究』)は主要な大学の図書館に寄贈されているそうです。大学図書館にアクセスできない方で報告書ご希望の方は、下記まで問い合わせてみて下さい。在庫があれば送料無料で配付可とのことです。

〒422-8529 静岡市駿河区大谷836 静岡大学教育学部日本語教育講座、
TEL/FAX:054-238-4583、E-mail:eahutsu@ipc.shizuoka.ac.jp

●移民政策学会 設立大会/第1回研究大会

 少子高齢社会の到来に伴って産業界や家庭内の労働力不足が露呈しつつある中、日本では日系人や実習生などの形で外国人労働者を事実上受け入れてきましたが、彼らの定住・永住を支援し共生社会の形成を図っていく上で、何らかの体系的な政策が求められています。そのためには、各分野の研究者と、法務や政策立案などに携わる現場の実践者が、交流・議論の場を構築してお互いの情報を共有しながら、学際的かつ実証的な研究を進める必要があります。そこで、そうした研究を目指す「移民政策学会」の設立大会と第1回研究大会が、5月17日(土)に東京の東洋大学白山キャンパスで開かれ、300人ほどの関係者が集まりました。
 研究大会では、近藤敦氏(名城大学)の基調講演の後、渡戸一郎氏(明星大学)の司会の下で記念シンポジウムが催され、井口泰氏(関西学院大学)、山脇啓造氏(明治大学)、佐藤郡衛氏(東京学芸大学)、石川えり氏(難民支援協会)がそれぞれの立場から報告を行いました。「日本語能力」を在留要件の一つにする動きがある中で、日本語教育の現場ではどういう内容を教えるのか、また日本語能力をどのように測定・評価するのか、といった問題提起に対しては質疑やコメントが多く寄せられ、参加者の関心の高さを垣間見ることができました。

☆研修会情報

●第9回 外国人児童生徒教育フォーラム

子どもが見える、子どもが変わる−子どものつまずきを解消していく教師と専門家の連携−
2008年10月4日(土)9:30〜16:30(受付9:10〜)/中野サンプラザ8階 研修室1
詳しくは東京学芸大学 国際教育センター HP http://crie.u-gakugei.ac.jp/event/event_08.html 参照

●第54回 全国夜間中学校研究大会

2008年12月4日(木)〜12月5日(金)/八王子市生涯学習センター「クリエイトホール」
詳しくは同事務局HP http://zenyachu.sakura.ne.jp/54th/index.html 参照

●第4回 日本パブリックサービス通訳翻訳学会(PSIT*)大会

日時:2008年10月5日(日) 午前午後
場所:東京会場  明治学院大学 白金キャンパス
            〒108-8636 東京都港区白金台1-2-37
    大阪会場  TOWAROW PLAZA東和エンジニアリング
            〒530-0015 大阪市北区中崎西4-2-27 
参加費:会員:500円  非会員:2000円(学生1000円)
参加申込:info@psit.jp 同学会事務局 まで (東京会場、大阪会場のどちらに参加するか記入のこと)プログラムの詳細は同学会URL http://psit.jp/info/index.html 学会からのお知らせ参照

*日本パブリックサービス通訳翻訳学会(PSIT)について−設立の背景、目的、特徴 −
 この10年間に日本への外国人入国者数は2倍に増加し、外国人登録者数は過去最高の200万人を突破。在住外国人の定住化傾向は進んでいます。その一方で、外国人を受け入れるための制度整備はなかなか進まず、特に在住外国人の「言葉の壁」は深刻な問題です。通訳翻訳による在住外国人に対する「ことばのサポート」の重要性は更に高まってきています。
 特に、その公共性の高さからパブリックサービスとも呼ばれる司法、医療、コミュニティ(行政、教育、福祉)の3つの領域における通訳翻訳は、独立した専門性を必要とする通訳翻訳領域であるという認知は得られていません。また、通訳者の養成や研修、報酬などのシステムが整っていないことから、多くのボランティアにより支えられているのが実情です。
 そこで、公共性の高い上記パブリックサービス分野の通訳・翻訳の高い専門性を認知し、通訳者の質の向上やユーザーへの働きかけを目指すための研究や研修を、各分野の専門家(弁護士や医者、行政職員など)とともに進めることを目的として、2005年9月にこの学会が設立されました。
 活動としては年1回の年次大会の他、研修会・研究会を行っています。
 詳細は同会HP をご覧ください。

教材・教育資料

教科補助教材 どちらも〈NPO法人子どもLAMP〉発行

『中学校の英語・翻訳教科書 中国語版』 B5判222頁 500円 

(『NEW HORIZON』(東京書籍)1〜3年の読物部分を翻訳) *ポルトガル語版もあり

『中学校国語教科書・翻訳資料集−中国語−』 B5判55頁 1,000円

(『新編 新しい国語』(東京書籍)各学年5本程度を翻訳)

子どもLAMP※では、日本語を母語としない子どもたちの、家庭での自主学習、また、その子供たちの支援のために、教材を作成しています。現在、中国語、ポルトガル語版が発行されており、今後、韓国語版、スペイン語版も発行予定とのことです。

※子どもLAMPの活動理念 http://www.kodomo-lamp.org/ より
 日本社会の国際化が進むにつれ、家族と一緒に来日し日本語教育が必要な子どもが増え続けています。しかし、実際は多くの子どもたちが、日本語も母語も十分に発達させることが出来ず、学校での教科の学習に困難を感じ、苦しんでいます。
 NPO法人子どもLAMPでは、地域の外国系児童生徒を対象に「教科・母語・日本語相互育成学習モデル」に基づいた学習支援を行っています。

◆購入希望の方は上記ホームページで「教科書翻訳プロジェクト」の項をご参照ください。

『絵ときシリーズ 見てわかる日本』

2002〜2003年,JTBパブリッシング,単行本,191頁,1,050円(税込)
*JTB(旅行会社)のグループ会社「るるぶ社」が企画・編集

 この本は、「日本」を知りたい人たちのために、日本の年中行事、暮らし方、食文化、交通機関といった日本人の生活や日本社会、そして、そこに息づく伝統や文化を、トピック別に「絵」でわかりやすく解説している。解説は、中国語版の他、韓国語版、英語版があり、どれも日本語が併記されている。本の題名に『絵ときシリーズ』とあるように、シリーズ本として「生活・社会編」と「伝統・文化編」が出版され、それぞれ次のような構成になっている。

●「生活・社会編」:日本の一年/生活の基本/日本に暮らす/生活の中の楽しみ/日常の習俗/日本人とは何か
●「伝統・文化編」:日本のこころ/伝統芸能と武道/伝統工芸/行事/民間伝承とくらし/日本の食 (歴史年表付)

 ややもすれば固くなりがちで、理解が難しいと思われている日本人の習慣や文化ではあるが、「絵」と簡潔な解説により、誰にでもわかりやすく、読んでいて楽しいものになっている。また、持ち歩きに便利なコンパクトサイズになっていることもあり、海外からの旅行者のためばかりではなく、地域の日本語教室などにおける話題のタネとしても、国際交流の場における相互の情報交換のきっかけとしても、面白く使えそうである。日本人であろうと、外国人であろうと、日本という国について知ることを通して、または、日本という国について知りたい人たちに日本という国を紹介することを通して、楽しいコミュニケーションの輪を広げられるかもしれない。

中学・高校生の日本語支援を考える会編『用例付 学習語彙5000語』ポルトガル語版・スペイン語版(2008年)

ポルトガル語版B5判280頁、スペイン語版B5判290頁、本体価格ともに2,500円

 本紙37号で中国語版の試用版、40号で完成版と紹介してきた教材ですが、このたびポルトガル語版・スペイン語版が完成しました。足掛け5年で完成されたという大作です。(中国語版の説明については所沢センターHPのコンテンツガイド〈ニューズレター〉コーナーからご覧ください。)
 本書はNPO〈中学・高校生の日本語支援を考える会〉が、母語がほぼ確立した中学生以上の外国人生徒のための自学自習教材として作成したものです。一つの学習用語について対訳と対訳付用例文が掲載されています。本書の見本は同会のHP(http://home.e07.itscom.net/maki/)で見ることができます。「地味な教材ですが、長く家族中で使えます」という代表の樋口さんのコメントからも、幅広い年齢層でさまざまな目的で利用できるものとなったようです(日本語教育学会のデモンストレーション発表では、日本人のポルトガル語学習者の表現活動、作文練習にも有効と評価をされたとのこと)。

【入手方法】
★ポルトガル語版(送料不要、消費税なし)
 振込先(郵便口座):NPO中学高校生の日本語   口座番号:00200−9−74056
★スペイン語版
 日本ペルー共生協会HP(http://ajape.org/jp/index.php)からお申し込みください。
 TOPページの右側、「メインメニュー」の「学習語彙5000語/DICCIONARIO JAPONÉS-ESPAÑOL」から、申込ページに行くことができます。

なお、公費で購入する場合の見積書・納品書・請求書・領収書が必要な方は、代表の樋口さんにご連絡ください。
問い合わせ先:同会代表 樋口万喜子(h-maki@h03.itscom.net
※ どちらもそうがく社、凡人社でも注文・購入できます。

とん・とん インフォメーション

日本語教室一覧 千葉/東京

地域の日本語教室一覧が冊子としてまとめられたものを紹介します。
※@作成者 A掲載教室数 B冊子の入手・閲覧方法

千葉県『あなたの町の日本語教室』(第4版)2007年

@房総日本語ボランティアネットワーク/財団法人ちば国際コンベンションビューロ A181教室 B希望の冊数、送り先を書いたものと80円切手5枚を事務局まで送付。4冊以上は別料金事前に要相談。
問い合わせ〒263-8522千葉市稲毛区弥生町1-33 千葉大学教育学部社会教育研究室内 TEL/FAX 043-290-2568 Mail:nagasawa@faculty.chiba-u.jp
◇ 最新情報はホームページで公開されています。⇒ http://www.mcic.or.jp/
*東京の日本語教室は7頁

東京都『ボランティア日本語教室ガイド2008東京』

@東京日本語ボランティア・ネットワーク A241教室 B頒布代金(1部700円)と送料を郵便局で払い込み。送料 1部290円 2・3部340円 4・5部450円 口座番号:00100-1-719259 加入者名:東京日本語ボランティア・ネットワーク/東京ボランティア・市民活動センターでも購入可 TEL 03-3235-1171
◇最新情報はHPで公開されています。⇒ http://tnvn.jp/

社会福祉法人さぽうと21《坪井一郎・仁子 学生支援プログラム》(坪井基金)

《さぽうと21》(東京都品川区)では、2005年から定住外国人の子女のために、大学生と大学院生を対象とした支援金制度を設けています。これは留学生と日本人のみを対象とする奨学金制度とは違い、より支援が届きにくい難民やその子弟、日系定住者子弟などの生活支援を目的としたものです。既にこの支援金を利用して大学を卒業した中国帰国者の子弟もいます。

(概要)
1.給付期間: 原則1年間(4月〜翌3月まで)
2.募集人数: 10〜15名程度
3.選考方法: 書類選考、小論文、面接
4.対象: 次年度に大学3年(専門課程)以上及び大学院生で
 @インドシナ難民、条約難民及びその子弟
 A中国帰国者子弟及び日系定住者とその子弟
 B上記@Aと同等の事情があると見なされる外国籍(元・外国籍)学生
 (留学生は対象にならない)
※詳細については毎年10月下旬以降に直接さぽうと21までお問いあわせください。随時ホームページにも募集要項を掲載します *URL:http://www.support21.or.jp/

《さぽうと21》〒141-0021 東京都品川区上大崎2-12-2 ミズホビル5F
 TEL:03-5449-1331 FAX:03-5423-4450 Eメール:info@support21.or.jp

『外国にルーツをもつ子どもたちへ 将来へ続く道−夢に向かっていっしょに生きよう−』

(社)国際日本語普及協会 日本語教育小委員会 外国にルーツをもつ子どもたちの将来を考える会 著

 現在日本では外国から来た多くの子供たちが日本の学校で学んでいます。しかし、学校では日本語が分からずに困っていたり、教科の勉強についていけず勉強が嫌いになったりしている子供もたくさんいます。
 そんな子供たちを励ますために作られたのがこの本です。この本は中国、ブラジル、ラオス、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、タイから来た10人の先輩たちのインタビューをまとめたものです。この10人の中には中国帰国者二世の先輩も含まれています。子供のころ文化や言葉の違う日本に来て日本の学校で勉強し、今自信を持って日本の社会で生活している先輩たちの力強いメッセージがたくさんのっています。先輩たちのメッセージを読むと勇気がわいてきます。
 この本は読みやすいように漢字には全て読み仮名がついています。まだ字の読めない子供には大人が読んであげたり、話したりしてあげてください。この本を読んでみたいという方は(社)国際日本語普及協会 akiko.sekiguchi@ajalt.or.jp まで、名前、住所、電話番号、必要冊数をメールでお知らせください。費用は送料のみの着払いとなります。(在庫数によって入手できない場合もあります。)

『外国から来た子どもを地域で支える』第二集

にほんごサポートひまわり会編 A5判183頁(2007年)

 本書は、第38号(2007年1月)に紹介した『外国から来た子どもを地域で支える』に続く第二集です。第一集発行以後に開催された「外国から来た子どもを地域で支える―ボランティア養成講座partU(2007年7月〜8月、全4回)」の内容の他、2006年度に同会が行ったサポート活動に関する記録を収録したものです。
 幼少時に日本に来た子どもたちの状況を紹介し、子どもたちの抱えている問題を明らかにすることによって、地域住民による支援の必要性や可能性に対する理解を深めてもらおうというもので、以下の五章で構成されています。

第一章:同会の活動である「日本語教室」「学びのサポート」とサポートメンバーによる体験談の紹介
第二章:ホリスティック教育実践研究所所長金香百合氏による「当事者の力を引き出す対人援助」の講演(対人援助の考え方について、対人援助者に求められる3つの力「人間力」「社会力」「対話力」について等)と、実際的なグループワークを行いながら進められた講座の様子
第三章:大阪市のスクールカウンセラーである陳薏雯氏の経験から、外国から来た子どもの実態と課題について(特に中国から来た子どもたちの抱える問題が取り上げられている)
第四章:同会が「日本語教室」を開いている大阪市平野区での支援の可能性を探る話し合いの記録
第五章:「学びのサポート」の活動を通して報告された子どもたちの生の言葉や、教材・教具を使う際の工夫や課題

問い合わせ先:斎藤裕子
E-mail:hmwr@mb7.seikyou.ne.jp
電話:090-6676-5839

ニュース記事から

ニュース記事から 2008.05.11〜2008.09.10

2008/05/30 残留孤児の語学交通費支給、昨年度は県内実績ゼロ 県周知不足/兵庫
2008/06/03 残留孤児 全国から1千万円超 四川大地震の被害者へ恩返しの義援金
2008/06/23 与党有志議連 外国籍の子どもたちの「学習権」確立を目指す「中間報告」を財務、文科両省に提示
2008/06/30 愛知県教委が日本で暮らす外国人の子どもたちへの日本語教育支援マニュアル作成
2008/07/07 文科省有識者会議報告書まとまる 外国人児童向け日本語指導、国が指針
2008/07/09 残留孤児と弁護団、訴訟費で対立
2008/07/10 残留孤児・婦人への年金支給、1000人満額受け取れず 厚労相 4月にさかのぼって満額支給する意向を表明
2008/07/13 残留孤児岡山訴訟の終結記念 原告ら支援者招き感謝の会
2008/07/15 比残留日系人16人 日本国籍の取得目指し来日 「親族情報を」
2008/07/23 愛知県国際交流協会:外国人児童らに日本語学習を 寄付募り基金を設立
2008/07/24 難民受け入れ 政府 避難国経由で移住「第三国定住」を導入する方針へ
2008/08/01 文科省調査:公立小中高 日本語指導必要な児童生徒が過去最多の2万5411人 実際に日本語指導を受けているのは83.5%
2008/08/04 在日外国人向けに高校進学相談 親子80人が参加/福岡市
2008/08/10 残留孤児を支援する岩手の会が解散総会/盛岡
2008/08/11 残留孤児訴訟に尽力の弁護士 虎頭(中国東北部)に日中の友好平和を願う石碑建立
2008/08/18 残留孤児:9割以上が健康に不安 兵庫の会、県内の孤児にアンケート
2008/08/19 残留孤児の支援相談員に2世 県内自治体採用増加/兵庫
2008/08/21 浜松市長、文科相などに外国人児童生徒の教育支援のための予算措置を強く要望
2008/09/01 残留孤児の2世・3世がマフィア化/東京 池袋

*前号「ニュース記事から」で紹介した「移民政策学会」の設立大会については次頁をご覧ください(→こちら

遠隔学習インフォメーション

《2008年度下期(10月〜3月)募集開始 *》

 〈遠隔学習課程〉では、年に2回大きな募集を行います。募集要項は、上期(4月〜9月)は2月下旬、下期は8月下旬に、センター(以下、「所沢」)が把握する全国の帰国者(約6,000世帯)と、支援者・支援団体には1,000件以上送付しています。現在、下期の募集要項を各帰国者家庭に送付してから2週間あまりたちましたが、最近は毎日、全国からの応募の手紙がポストいっぱいに届いています。今回初めて申し込む人の中には、所沢を20年以上も前に修了した懐かしい名前や、元入所生たちの呼び寄せ家族と思われる人、また、新しく帰国者家族となった人等が見られ、所沢を出た後の皆さんの歴史が見えるようで感慨深いものがあります。また、所沢修了後、長い年月を経た今でも、日本語の不全感を抱え学習を続けたいと思っている一世世代が少なくないのだなと再認識させられる日々です。
 サハリンからの帰国者に向けては、10月中旬ぐらいに募集要項を送付する予定です。新コースとして下期内に「医療コース」が開講される予定です。

*下期開講のコースについては所沢ホームページをご覧ください。 http://www.kikokusha-center.or.jp/

《受講に必要となる書類について》

 遠隔学習課程を初めて受講する際には、帰国者であることを証明する書類を提出しなければなりません。例えば、帰国者本人の「引き揚げ証明書」「自立支度金決定通知書」、また家族が応募する場合は「家族関係を証明する書類」等が必要です。これらの書類をそろえるのが応募者にとって手数を必要とする部分ではありますが、最近は「新たな支援制度」の中で支援給付金の支給対象者を特定するための「本人確認証」というカードが各自治体(市区町村)で作られており、これを帰国者本人の証明として利用する人が増えてきました。「本人確認証」があれば、本人配偶者でもそのコピー1枚で必要書類が揃うこととなり、応募手続きの手間がかなり省けます。この「本人確認証」は、給付金の受給や医療サービスの利用などの公的な支援を受ける際に用いられています。しかし、この「本人確認証」も自治体によっては準備が整っていなかったり、制度が始まったばかりで帰国者本人もどう利用できるのかを知らなかったりという場合もあるかと思います。遠隔学習課程の応募については、これが帰国者本人証明に代えられるので、支援者の皆さんも、もし、応募書類の提出に悩んでいる帰国者がいた場合は、アドバイスをお願いいたします。その他複雑な事情で、書類がなかなか揃わないときは、まず、所沢にご相談ください。

中国帰国者定着促進センター 教務第2課 受講生募集係
電話:04-2993-1662  FAX:04-2991-1689  メール:kyohmu-2@kikokusha-center.or.jp

事例紹介

 中国帰国者の多くは中国東北部出身だが、あえてその故郷のことを周囲の日本人に語ろうとする二世三世は少ない。そんな中、写真というメディアによって自分の原点である出身の地を見つめ続ける三世がいる。
(国立民族学博物館発行の『月刊みんぱく』二〇〇八年五月号より転載)

写真家として日中間を生きる―中国帰国者三世・高部心成さん

人びとの感動を呼ぶ

 写真家・高部心成(たかべしんせい)さん(中国名:周成)は、中国帰国者三世である。二〇〇二年のコニカフォトプレミオ入賞で新星の如くあらわれ、二〇〇三年にはビジュアルアーツフォトアワード大賞、二〇〇四年にはフォトシティさがみはら写真新人奨励賞と三年連続して受賞した。代表作『故郷 松花江 黒龍江省哈爾浜』は少年時代を送った中国の生まれ故郷を題材にしている。白黒の写真でのみ構成されているアルバムは、高部さんが写真家を目指してがむしゃらに打ち込んだ専門学校時代、幾度か中国にわたり撮り続けた、村の四季の生活を描く。中国帰国者のみならず、作品を見た人びとのほとんどが深い感動を覚えた。
 中国帰国者というだけで、今の日本では、中国での差別や生活苦、日本の生活への適応障害、孤立…、というマスメディアの作りあげたイメージがしばしばつきまとう。日本社会を懸命に生きる中国帰国者の姿は見えにくくなっている。高齢になって来日し、さまざまな理由で日本社会から隔離されがちな一世や二世と異なり、努力次第で日本社会に適応でき、活躍する機会の多い三世は、一刻もはやく日本社会に溶け込み、できる限り目立たず生きようとする。中国帰国者や彼らの出身地に対して日本社会がいだく想像がうとましく、過去について語るのを避けようとしたり、語ったとしても自分とはかかわりのない別世界のようにあつかおうとする人びともすくなくない。しかし、高部さんは何故故郷の村、少年時代を自分から進んで写真によって描こうとしたのだろうか。

故郷松花江

 高部さんが両親と二人の姉とともに大阪にやってきたのは、一九九五年、一五歳のときであった。彼が生まれるはるか以前になくなった祖母がいわゆる残留日本婦人であったこと以外、まったく普通の中国農村の少年であった。村では、他の子どもとわけ隔てなく育てられた。日本では日本語をしらぬまま、地元の中学で一年遅れの二年生に編入され、その後高校に入学した。当初は日本語も不自由で、日本人とは友人づきあいもほとんどなかった。もう学校をやめようかとも思ったころ、ふとしたきっかけで、勉強に打ち込み始めた高部さんは、成績がみるみる向上することにおどろいた。すこし自分の能力に自信がつくと、今度は自分の表情が柔らかくなっていくのを感じたという。まもなく友人の輪が広がり、生徒会や文化祭活動など充実した高校生活を送れたと思っている。
 そして二年生のとき、ある先生の誘いで入部した美術部で、油絵の世界に魅了されたのである。ことばを超えた最高の表現手段は芸術にあると感じ、毎日のように美術部の活動に没頭した。そして多くの仲間と同様、大学の美術学科を受験したが、失敗してしまう。そこで選んだのが、写真家の道であった。自己を表現する手段として、写真も美術も同じだ。それに、何日も制作にかける絵画にくらべ、シャッターを押すだけの写真は簡単に撮れる、仕事も多そうだ、こんな気持ちもあった。しかし、写真家の道もそんなに易しいものであるはずはない。写真関係の専門学校ビジュアルアーツに入って写真のすごさにぶっとばされることになった。
 毎日授業やハードな提出課題に取り組みながら、他人と同じものを撮っても面白くない、自分を表現するのに一体何を撮ればいいだろうかと高部さんは悩んだ。そこで思いついたのが「中国」であった。それまでの中国は自己を他人と「違う」者にしてしまう存在であった。高校三年生のときに日本国籍を取得した彼は中国の記憶を封印していた。しかし、この中国こそがむしろ他人と差異化を図るための特別な存在であることに気付いたのだ。彼は元気になり、その「強み」を活かすために中国行きを決心した。
 約六年ぶりに戻った故郷、中国の高度経済成長の波のなかでその風景は一変していた。人びとの意識も大きく変化し、同世代の若者は高いビルが林立する大都市の風景に憧れていた。しかし、高部さんは自分の子どものころの風景、黒い大地、松花江で戯れる子ども、移り変わる村の四季…を求めた。記憶のなかにあり体験した自分の中国はまだそこにあった。叔母のうちに居候しながら、人びとと大自然とのかかわり方という角度から故郷の風景を写真に収めた。過去への単なる郷愁や村の現実を描こうとする作品にはしたくなかった。自分の原点が故郷にあることを確認し、そこから日本に住み続けようとする自分の生き方が見えた気がした。

南 誠(中国名:梁雪江(りょう・せつこう)国立民族学博物館外来研究員)