HOME > 支援情報 > 機関紙「同声同気」 > 第48号(2010年6月21日発行)  PDFファイル
≪お知らせとお願い≫
NL発行発送の形態が変わります!
お知らせ-所長交代情報
地域情報ア・ラ・カルト
2010年度 高校進学進路ガイダンス情報
行政・施策
☆厚生労働省から
 平成22年度中国残留邦人等支援関係予算の概要
「子ども手当」が平成22年度から始まりました
☆文化庁から
中国帰国者教材の配布について
「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について
研修会情報 研修会報告
 MHB研究会:第2回 継承語教師養成ワークショップ「子どもの言語の力をどう測るか」
 公開国際研究会「移民の社会統合と読み書き能力を考える」
教材・教育資料
 『JSL中学高校生のための 教科につなげる学習語彙・漢字ドリル(中国語版)』
 『エリンが挑戦!にほんごできます。』WEB版ができました
とん・とんインフォメーション
 ニュース記事から 2009.12.26〜2010.05.20
 『二つの国の狭間で−中国残留邦人聞き書き集−』全5集完成!
遠隔学習インフォメーション
 2009年度スクーリング講師研修会報告:「高齢学習者へのスクーリングを考える」
 「遠隔学習課程」修了生から「こんな成果があった!」
 2010年度「遠隔学習課程」受講者募集中!
新コース予定「自己表現作文コース(2)日本での生活A」
事例紹介
 その後の小蓮:『小蓮の恋人』(1992年刊)の主人公の現在

《お知らせとお願い》

『同声・同気』発行送付の形態が変わります!
今回、本紙の発行が1カ月遅れたことをお詫びいたします。

 昨年末来の行政刷新会議による「事業仕分け」を始め、2010年度国家予算削減に向けての動きは皆様もニュースなどでご存じのことと思います。こうした国家財政における歳出削減の流れと、新たな帰国者数の減少等が加わり、当センター(中国帰国者定着促進センター)も大幅な予算削減を余儀なくされることとなりました。
このような情勢下、これまで4カ月に1度、年に3回、皆様にお届けしていた本紙も、誠に残念ですが、今年度より、“紙”版での発行は年1回とさせていただくことになりました。従いまして、今年度はこの48号1回のみの郵送となりますが、ニューズレター機能としては、これまで通り年3回の情報提供を、当センターHP上のWEB版ニューズレターという形で維持していきたいと考えておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

★お願い:経費(郵送費)削減にご協力ください
 今後、WEB版の閲覧のみでかまわない(紙版郵送不要)という方は、お手数ですが、その旨をこちらまで、メール、はがき、電話、FAX、いずれかの方法でお知らせください。
●7月21日までにご連絡いただければありがたいです
●宛先:中国帰国者定着促進センター 教務部NL担当
メール:tongtong@kikokusha-center.or.jp 
   電話:04-2993-1660 FAX:04-2991-1689 
   はがき:〒359-0042 埼玉県所沢市並木6-4-2
●お知らせいただきたい項目:@氏名(団体窓口者の場合は団体名も) A住所
※WEB版ニューズレター掲載時に、その目次をメールでお知らせすることができます。メールによる連絡をご希望の方は、@、Aに加えて、B「NLメール希望」と記入したメールを、こちらまでお送りください。
アドレス等いただいた個人情報につきましては厳重に管理し、『同声・同気』送付関係以外には使用いたしません。

お知らせ:所長交代情報

中国帰国者定着促進センター所長

 退任 小林 佑一郎 氏(3月31日)
 就任 小林 悦夫 氏(4月1日)(前同センター教務部長)

東北支援・交流センター所長

 退任 高橋 厚子 氏(3月31日)
 就任 長谷部 秀明 氏(4月1日)

東海・北陸支援・交流センター所長

 退任 稲垣 正志 氏(3月31日)
 就任 山口 薫 氏(4月1日)

中国・四国支援・交流センター所長

 退任 渡辺 邦男 氏(3月31日)
 就任 藤井 学 氏(4月1日)

地域情報ア・ラ・カルト

<2010年度の高校進学進路ガイダンス> 各地の情報

【埼玉】
@7月18日 (日) 行田市商工センターホール
A7月25日 (日) 三郷市瑞沼市民センター
B8月15日 (日) 大宮ソニックシティ市民ホール
C10月3日 (日) 市立川越高等学校
《(財)埼玉県国際交流協会(SIA)》
 加藤 E-mail: kato@sia1.jp
FAX:048-833-3291 (TEL:048-833-2992)
【福岡】
8月8日(日) 13:00-17:00 福岡市立博多小学校 5階ランチルーム
《ともに生きる街ふくおかの会、福岡地区進路保障協議》
TEL: 092-882-3855(福岡立内浜中学校 板山)
【神奈川】
@9月20日(月・祝) さがみはら国際交流ラウンジ
A9月23日(木・祝) かながわ県民センター
B9月26日(日) いちょう小学校コミュニティハウス
C10月11日(月・祝) 厚木ヤングコミュニティ・センター
D10月17日(日) ひらつか市民活動センター
《多文化共生教育ネットワークかながわ》
TEL :050-1512-0783
E-mail: me-net@nexyzbb.ne.jp
【滋賀】
8月8日(日)13:30-16:30 G-net しが(男女共同参画センター大ホール)
《(財)滋賀県国際協会》
光田(みつだ) E-mail:mitsuda@s-i-a.or.jp
TEL: 077-526-0931 FAX: 077-510-0601
【大阪】
10月 泉北地区、泉南地区
11月 豊野地区、三島地区、北河内地区
   中河内地区、南河内地区
《大阪府教育委員会事務局》
 明渡(あけど) E-mail:AkedoK@mbox.pref.osaka.lg.jp
TEL:06-6941-0351(内線3435)
FAX:06-6944-3826
【静岡】
10月3日(日) 浜松志都呂ショッピングセンター 「イオンホール」(予定)
《NPO法人 浜松NPOネットワークセンター》
TEL: 053-445-3717
E-mail: info@n-pocket.jp
◆今年度も、新たな情報が入り次第、当センターHPにて紹介していく予定です。
当センターHPトップ ニューコンテンツ欄→2010年度高校進学ガイダンス情報
http://www.kikokusha-center.or.jp/joho/shingaku/guidance/guidance2010.htm

行政施策

☆厚生労働省から

平成22年度中国残留邦人等支援関係予算の概要

【21年度予算額】    【22年度予算額】
11,113百万円  →  11,371百万円
「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律」に基づく満額の老齢基礎年金等の支給、老齢基礎年金等を補完する支援給付の実施など、中国残留邦人等への支援策を着実に実施する。

1.中国残留邦人等に対する生活支援
  9,950百万円 → 10,227百万円
(1)満額の老齢基礎年金等の支給
    192百万円 → 410百万円
満額の老齢基礎年金等の支給に必要な保険料納付のための一時金を支給する。
(2)中国残留邦人等に対する支援給付の実施
    9,163百万円 → 9,297百万円
支援給付を実施するとともに、その実施機関に支援・相談員を配置する。
(3)地域生活支援事業の実施
    562百万円 → 562百万円
自治体を実施主体として自立支援通訳の派遣や日本語学習の支援、交流事業等を行う。
2.定着自立援護
479百万円 → 479百万円
中国帰国者自立研修センター及び中国帰国者支援・交流センター運営事業を実施する。
3.帰国受入援護
625百万円 → 563百万円
中国帰国者定着促進センター運営事業を実施するとともに、永住帰国旅費等を支給する。
4.身元調査等
59百万円 → 52百万円
中国残留孤児の身元調査のため、訪中調査等を実施する。
※上記の他、職業安定局及び職業能力開発局において永住帰国した中国残留邦人等の2世・3世に対する就労支援を実施
91百万円 → 69百万円
ハローワークにおけるきめ細かな職業相談や試行雇用の実施等の就労支援を促進する。

「子ども手当」が平成22年度から始まりました
○ 「子ども手当」は、次代の社会を担う子どもの健やかな育ちを社会全体で応援する制度です。
○ 子ども手当は、日本国籍を取得していない中国残留邦人等2世(外国籍の定住者)の方でも、15歳以下のお子さんがいらっしゃれば、受給することができます。
○ 受給するための申請手続き等、詳しくは厚生労働省ホームページをご覧いただくか、または、お住まいの市区町村にお問い合わせ下さい。
《厚生労働省ホームぺージ 子ども手当について》
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/osirase/100402-1.html

☆文化庁から

中国帰国者教材の配布について

 文化庁では昭和58年より、自治体を通して中国帰国者及び日本語指導に従事している方に中国帰国者教材(「中国からの帰国者のための生活日本語」等)の配布を行って参りましたが、平成22年度からはより広く御利用いただけるように自治体を通した配布ではなく、文化庁ホームページから教材をダウンロードできるように準備を進めております。(※音声教材、絵カードについてもホームページに掲載することを予定しております。)

「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について

文化審議会国語分科会日本語教育小委員会では「「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について」を取りまとめました(以下、「標準的なカリキュラム案」という)。
標準的なカリキュラム案は「生活者としての外国人」が日本で生活する上で最低限必要とされる生活上の行為を日本語で行えるようにするための教育内容を取りまとめたものであり、中国帰国者定着促進センター、国立国語研究所、国際日本語普及協会(AJALT)等の研究・実践の成果を参考に作成しました。生活上の行為の事例(「医者の診察を受ける」、「店員に商品について尋ねる」等)を121事例取り上げ、それぞれの生活上の行為の事例に対し、教室活動の具体的な達成目標となる「能力記述」や生活上の行為が行われる「場面」、日本語での「やり取りの例」、「やり取りの例」に含まれる「文法」、「語彙」等の学習項目の要素を例示しています。
標準的なカリキュラム案は飽くまでも各地域の実情に応じた日本語教育の具体的な内容や教材について検討する際の基となるものであるため、各地域におかれましては、この標準的なカリキュラム案に工夫を加え、地域の実情に応じた日本語教育を展開していただきたいと考えております。

<文化庁ホームページ>
「生活者としての外国人」に対する日本語教育の標準的なカリキュラム案について(案)
http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/bunkasingi/kokugo_44/pdf/shiryo_5.pdf
※第44回国語分科会(平成22年5月19日)で配布されたものです。

研修会報告

「子どもの言語の力をどう測るか」

母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)研究会 第2回 継承語教師養成ワークショップ

2010年3月26日(金)・27日(土)、標記の研修会が行われました。継承語というのは親から受け継ぐ言語であり、現地語(マジョリティー言語)と対比して用いられるマイノリティー言語としての母語を指します。つまり中国帰国者にとって中国語は、中国にいれば単なる母語であるけれど、日本においては、現地語である日本語の脅威にさらされる継承語となるわけです。目の前の子どもにどんな支援が必要かを考えるとき、まずその子の言語の力を把握する必要がありますが、そういうときに使えるテスト・物差しについてはまだ決定打がなく、各現場で試行錯誤しているのが実情です。このワークショップでは、子どもたちの継承語力を測定する試みとして、「バイリンガル作文力」、「バイリンガル語彙力」、「バイリンガル読書力」の三つが紹介されました。
まず、「作文力」に関しては、以下の点が強調されていました。「書く力」は訓練しないと身に付かないので、とにかく書く機会を与えることが重要であること、できれば継承語(母語)と現地語(日本語)の両方で書くことが望ましいがまずは得意な方だけでも書くことが重要であること。また「語彙力」の測定については、いくつか既存のテストがあるけれど、万能のものはなく、使う場合は複数のものを組み合わせて使ったり、アレンジして使うのが現実的であるとのことでした。最後の「読書力」というのは耳慣れないことばですが、よく使われる読解力よりも少し広い概念のようです。紹介されたDRA (Development Reading Assessment)というテストは、30分程度のインタビューテストですが、まず子どものレベルに合いそうなテキストを一冊選んで、絵からお話を推測させたり、読み聞かせの後音読または黙読させてその後再話させたり、内容に関する質問に答えさせたりと色々なタスクが含まれています。30分間先生と一対一で向き合って一冊の本を材料にお話したり、音読したりという活動は、子どもたちにとっても非常に楽しい経験であり、それ自体に教育的効果があるという指摘は肯けるものでした。
発達段階にある子どもの言語能力を測定することは大変難しく、まだまだ問題点も多いようですが、それぞれのテストの長所短所を知り活用することは、子どもの支援にも有効であると感じました。         (所沢:小川)

公開国際研究会「移民の社会統合と読み書き能力を考える」

2010年3月28日、京都大学にて、複数の研究所補助金を受けて標題の研究会が共同開催され(日本学術振興会科学研究費2件、神奈川大学学内共同研究)、移民統合という、日本にとって将来不可避のテーマを巡って熱い議論が交わされました。概略をご紹介します。

第1部はナンシー大学のエルヴェ・アダミ氏による「フランスにおける移民の統合と言語教育:その歴史,制度,教育」についての講演で、移民にとっては、フランス語教育は権利であり義務でもあることから、400時間の学習が保障されており、要求水準もドイツなどとは異なり低めに設定されているので合格しやすいとのこと。しかし、中には母国での学校教育の経験のない人も多く、そのような移民は特に読み書き能力の習得が困難であるため、実用的かつ達成しやすい目標設定、抽象的な言葉を使わずに教えること、日常生活上の素材を使うことなどが必要と述べていました。
第2部は「移民の社会統合と読み書き能力:移民のおかれた状況と教育・習得支援」と題された討論会で、まず国立国語研究所の宇佐美洋さんから、外国人の書いた「生活場面で必要となりそうな日本語の文章」に対する一般日本人の評価についての調査報告があり、日本人側の評価の基準も実はまちまちであることが示されました。(謝罪文の場合、相手の要求に従えない理由を述べて代案を示したり相談を持ちかけたりする行いを、よりよい人間関係を構築しようとしているとプラスにとるか、言い訳がましい、あるいは出過ぎた振る舞いだとマイナスにとるかなど、評価が二極化している例など)
 続いて、神奈川大学の富谷玲子さんからは、川崎の国際結婚のフィリピン女性たちの場合、日本語の読み書きの自然習得はほぼ不可能と言えること、しかし移住初期に学習機会がないとその後は、仕事>家族の行事>学習という優先順位の中で学習の機会が得られにくいことが報告されました。その結果、“情報弱者”となり、非熟練工の仕事にしか就けず、自己肯定感も持てなくなるという悪循環に陥りがちであることから、日本語習得の初期に文字学習を開始することが鍵であるとの報告がありました。
山形大学の内海由美子さんの、山形の国際結婚女性の調査からも、富谷さんの報告同様、初期に日本語学習機会が得られない場合の悪循環が指摘されました。さらに山形の調査地の場合、交通の不便な土地柄で送迎の足が必須であるのに、家族が教室に否定的なため、事実上通えない事例が少なくないことや、仮に教室に来ることができたとしても、教室が文法積み上げ式学習のため、生活の中で身につけた自分の日本語力に欠けている部分の穴埋めをしたいというニーズに応えられず教室を離れてしまう例などが報告されました。これらを踏まえて、来日後半年以内に教室学習を開始し、一定期間継続すること、それには家族の協力が不可欠であることなどが結論として提示されました。
この後の質疑応答では以下のような意見がでました。
・初期集中学習では、「話題」をベースにしたアプローチにしても、やはり最低限の文法事項の積み上げが有効だろう。
・地域での学習を支える専門家の資質に求められるものは、地域の外国人事情を巨視的に理解できることに加え、行動達成のための日本語(構文力)という発想もできること、そして何よりも、学習者を見る目を持つことが重要である。
・仮名や漢字を減らすなどもっと非漢字圏の外国人にやさしい日本語にする努力について語るべきではないか。易しい日本語に読み仮名つき漢字表記という折衷案はどうか、漢字だけの問題ではなく行動達成のためにどのような読み書き力が必要かという視点が必要ではないか。
司会者からのまとめとしては、「今日特に印象に残ったのは、まず日本人の意識改革が必要なのではないかということ、識字とは字が判別できることだけではなく、読み書きというコミュニケーション行動によって社会参加の幅が広がったり質が向上したり、学習の継続につながったりするという面があるということ」とのコメントがありました。    (an)

教材・教育資料

『JSL中学高校生のための教科につなげる学習語彙・漢字ドリル(中国語版)』

2010年3月、樋口万喜子編、中学・高校生の日本語支援を考える会著
ココ出版、B5判248頁、本体1,600円+税

 本書は、来日数か月から2年ほどの中国語を母語とするJSL中学高校生*向けの独習教材です。中国語訳を参考にして日本語文の空欄に言葉を選んで入れる「語彙チェック」(全73回)、問題文に対訳のある「漢字の読み方テスト」(全46回)、使い方の難しい格助詞などの意味・用法の解説と練習問題からなる「日本語の文法」、そして英語・国語・数学・理科・社会の「教科の重要ポイント」が多くの図表とともに掲載されています。
 なお、語彙と漢字については、本紙37・40・43号でも取り上げた『用例付 学習語彙5000語 日中対訳』に基づいています。この重版に際して改訂を施した『JSL中学高校生のための教科につなげる学習語彙6,000語(中国語版)』(仮)は2011年3月に、またこのドリルのポルトガル語版とスペイン語版は2012年3月に、それぞれ本書の姉妹編として刊行予定とのことです。
*「第2言語/第2の母語としての日本語を学ぶ生徒」の意

『エリンが挑戦!にほんごできます。』WEB版ができました

https://www.erin.ne.jp/jp/

 本紙38号で紹介した国際交流基金制作のDVD教材/テレビ番組『エリンが挑戦!にほんごできます。』が、インターネットで無料で見られるようになりました。今回WEB版で公開されたのは、全25課の「基本スキット」「応用スキット」「大切な表現」「これは何?」「見てみよう」「やってみよう」のコーナーの動画と、テキスト中の「ことばをふやそう」です。これらは課ごとまたはコーナーごとに選んで見ることができます。なお、字幕は日本語(漢字かな混じり・かな・ローマ字)と英語のみで、DVD教材のスキットにあった中国語・ハングル・ポルトガル語は見られません。
 これらのコンテンツに付随したクイズやゲームもあり、コンピュータならではのインタラクティブな要素が豊富で、楽しく遊びながら学習を進めることができます。ユーザー登録の必要はありませんが、登録すれば、閲覧したページやクイズの成績といった様々な履歴が残せるなど、個々の学習者をサポートするための工夫がなされていて、自学自習にも便利です。

とん・とん インフォメーション

『二つの国の狭間で−中国残留邦人聞き書き集−』

    全5集完成! 中国帰国者支援・交流センター編 
本年3月に中国帰国者支援・交流センターから第5集目が刊行され、2002年から始まった残留邦人への聞き書き調査が完了しました。
8年の間に、50名の中国残留婦人、残留孤児の残留体験や帰国体験を「聞き書き」という形でまとめたこの報告は、残留邦人たちの生の声が聞こえてくる大変貴重な記録です。
『聞き書き集』はホームページで閲覧できます。
http://www.sien-center.or.jp/news/kikikiki02.html
第1集から第5集まで、冊子の在庫は若干あります。ご希望の方は支援交流センターにお問い合わせください。無償で提供いたします。
中国帰国者支援・交流センター 03-5807-3171 担当:高幣

ニュース記事から 2009.12.26〜2010.05.20

2010/01/15 景気悪化の影響受けブラジル人学校1月末閉校へ 子ども激減、授業料払えぬ家庭も/真岡市
2010/01/26 一時帰国した残留孤児の身元特定できず=2年ぶり身元判明者ゼロ/厚労省
2010/02/28 日本の土になりたい 中国孤児、墓建確保へ支援訴え署名運動始める/仙台市
2010/03/24 大阪府立高の帰国者・外国人生徒「特別入学枠」花開く 過半数が大学進学 
2010/03/25 映画:「嗚呼 満蒙開拓団」あす自主上映会/福井
2010/04/02 「中国帰国者定着促進友の会」解散 帰国者と「最後の花見会」/所沢市
2010/04/03 「壁」越えてつかんだ春、フリースクールの外国の子どもら全員が高校進学/横浜
2010/04/20 外国人の住居探し 県が支援事業開始/可児市
2010/05/10 「被災地の子ども 自分と重なった」 残留孤児が寄付 四川の小学校完成
2010/05/19 定住外国人の子どもたちに新たな教育支援で初方針(以下に解説)/文科省

定住外国人の子どもに関する新たな基本方針が文部科学省から発表された。文部科学省が、外国人に対する総合的な教育支援の在り方を打ち出すのは初めて。背景には、平成20年下期以降の経済情勢が悪化する中、不安定な雇用形態で就労する日系人の雇用、住居、子どもの教育等の課題が顕在化したことがある。
主なものを以下に抜き出すと
「入りやすい公立学校」を実現するための3つの施策
@ 日本語指導の体制の整備(JSLカリキュラムの普及、指導に関するガイドラインの作成、日本語指導担当教員の加配定数拡充等)
A 適応支援等の体制の整備(定住外国人児童生徒や親を支援する要員の配置促進)
B 受け入れ体制の環境整備及び上級学校への進学や就職に向けた支援の充実
(学齢超過の児童生徒も含めて入学・編入学させたり、下学年へ受け入れたり、夜間学級を活用したり等、小学校または中学校に入りやすい環境整備の促進、高等学校への受け入れについては日本語指導や就業体験などのキャリア教育推進等)
学校外における学習支援
子どもだけでなく、大人に対する日本語学習についても充実を図る
(平成21年度補正予算で3年間の期限付で開始された「虹の架け橋教室」事業についても継続を検討)
このほか
・外国人学校における教育体制の整備
(ブラジル人学校等が充実した教育内容を提供できるよう、各種学校・準学校法人化を促進)
・留学生に対する日本語教育や就職支援  等々

詳細は、文部科学省「定住外国人の子どもの教育等に関する政策懇談会」のページ(下記)から閲覧可能 
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kokusai/008/index.htm

遠隔情報

2009年度スクーリング講師研修会報告

 テーマ:「高齢学習者へのスクーリングを考える」
当センターの《遠隔学習課程(通信教育)》をサポートするためのスクーリングが全国各地で行われています。標題の研修会は、そのスクーリング講師を対象に、毎年、当センターが開いているものですが、前年度は2010年1月28日、29日の2日にわたって行いました。

第1日目には現在のスクーリングの状況と高齢者に対するアンケートの結果について以下のような報告がありました。
●全国のスクーリング実施状況:
・受講者は遠隔課程受講者全体の5分の1から4分の1(のべ3187人中690人 2009年12月末現在)
・受講コース:「医療」「入門日本語」「続入門日本語」「漢字ゆっくり」のコースが多い
・受講者の年代分布:50代、60代で全体の半分以上を占めている
・受講者の日本滞在年数:6割以上が来日10年以上、うち4分の1が来日20年以上
●高齢学習者に対するアンケートより
 スクーリングに参加してよかったと思う点は何かという質問には、「自学自習ではわからなかった所が解決できる」「会話の練習になる」「日本社会との接点がもてる」といったことが上位を占め、若い頃の学習との違いは何かという質問には「繰り返し学習することが苦痛でなくなった」「学習目標が若い頃のように進路を切り開くためではなくなった」という高齢者特有の回答がありました。また、どんな援助者や仲間がいるといいかという質問には「自分の学習を厳しく修正し、指導してくれる強い指導者」と「自分の学習ペースを尊重してくれる学習援助者」という相反する回答が上位を占め、厳しくしてほしいという反面、自分を理解してほしい、ゆっくりやってほしいといった高齢者の本音も垣間見えました。
 報告のあとは、各グループに分かれて、テーマを巡り、実際の事例(例「主体的に学習に取り組もうとしない」「加齢にともなう学習の困難」「プライドが高く自分の現状をなかなか受け入れられない」など)ごとにその対処方法について意見交換をしました。
スクーリング受講者の中には様々な高齢学習者がいます。例えば、高齢ではあっても学習意欲も旺盛で、自学自習能力も高いタイプ、学習の必要性は感じているが、学習に自信がもてず、やってはみてもすぐに限界を感じてしまうような勉強が苦手なタイプ、健康に問題を抱えているのに、遠隔学習が日常生活の大事な楽しみ、支えとなっていてつい無理をしがちなタイプなどです。意見交換のなかで、こうした受講者に対しては、「気持ちを認めて共感する/何ができるようになったかよりも、学習を“続ける”ということを大事にする/相手を変えようとしない/その人なりの学習技術が身につけられるよう粘り強く指導する/学習することが生きがいという受講者もいるので無理にやめさせない/目標を高く設定しすぎない」など支援者に必要な姿勢について改めて確認し共有することができました。

「遠隔学習課程」修了生から
「こんな成果があった!」

 今号では、「遠隔学習課程」の「修了アンケート」の中から、〈遠隔課程を受講して得られた成果〉の項に書かれていたものを紹介したいと思います。これらの成果は、もちろん帰国者自身の日頃の努力の賜であると思いますが、受講コース毎の特徴も見られますので以下ご覧ください。

◇職業訓練校入校準備/漢字/読解コース関係
・職業訓練校の入学試験に合格した
・漢字の読みができるようになって、新聞と雑誌が読めるようになった
・中国の漢字と日本の漢字の区別ができるようになった
・日本語能力試験の2級に合格した
◇就職対応/運転免許コース
・求人広告を見て飲食店に電話をして店長さんと就職の話をした。面接は行けなかったけど、電話で話せるようになっただけでもすごく嬉しかった
・新しい仕事が見つかった
・就職の面接の時勇気が出た
・面接の時そんなに緊張しなくなった
・運転免許を取った
・バイクの免許を取った
◇近隣交際コース
・日本の生活での常識や近隣との付き合い方が理解できた
・毎日隣の人と挨拶する自信ができた
◇入門日本語/続入門日本語コース
・孫の保育園に送迎に行くとき先生の話がわかるようになった
・(学習を通して)生活が楽しくなった
・訪問看護師との交流がうまくできるようになった
・親戚に葉書を書けるようになった
・学習後は生活が豊かになった気がする。日常生活も便利になった
・家でやることがないので勉強できるのは嬉しい
・ホームヘルパーの資格が取れて、今はヘルパーの仕事をしている
・(遠隔課程は)監督効果があり、怠ける習慣がなおった。精神的にも明るくなり、生活がもっと自由になった
◇生活日本語「消費」「交通」「医療」コース
・買い物が便利になった
・視野が広がり、生活が楽しくなった
・クリーニング、現像(写真屋)、郵便局に行って用事を済ませることができるようになった
・一人で買い物ができ、日本人との会話もできるようになり、生活が楽しくなった
・(病院で)診察を受けるとき前より病状を伝えることができるようになった
・安心して病院に行ける
・昔は病院に行くとき付き添っていってもらったが、今は一人で行けてすごく嬉しい
・今、入院中で医療用語が使える
・道を聞くときなど日本語でできるようになった
・今は昔よりお金の余裕があり、両足でちゃんと歩けるうちにあっちこっちに遊びに行きたいと思い、交通の勉強をしてすごく助かった
◇ピンイン/自己表現作文コース
・ピンイン学習をしてパソコンで中国語を打てるようになり、中国の友達とやり取りできるようになった
・中国語のピンインを学んで、中国語に興味がある日本人と交流できるようになった
・(作文を書く)自信がついた。勇気が出た
・「自分史」を書くのに役立った

2010年度「遠隔学習課程」受講者募集中!

 2010年度版「遠隔学習課程」募集要項ができました。4月下旬に全国の帰国者、支援者の皆さんにお送りしました。今年度の開講コースはほぼ昨年度と同様ですが、9月に「自己表現作文コース(2)日本での生活A」が新たに開講する予定です。自己表現作文シリーズの第二弾で、作文の内容は、「帰国の動機」「帰国直後の日本の印象」「帰国直後の生活」について書いていきます。ある程度、語彙表現はたまって来たが、まとまった文章を書くのはあまり自信がないという方、帰国してしばらく経ち、帰国当初を思い出しその時の状況や気持ちを書いてみたいという方等がいらしたら、是非お勧めください。一世の方、二・三世の方、それぞれの立場で書けるようにモデル作文も考えられています。
 募集要項がまだお手元に届いていない方、追加が必要な方はセンターまでご連絡ください。なお、HPにも本年度募集要項がアップされています。
http://www.kikokusha-center.or.jp/

事例紹介

その後の小蓮

 ある帰国者二・三世の集まりで、二世の女性の一人と知り合った。少しおしゃべりをした後、それまではきはきと話していた彼女がおずおずと「私、ずっと前に本に書かれたことがあるんです」と言う。以前に本に書かれた二世の女性と言えば、「もしかして小蓮!?」と思わず声を上げてしまった。
 『小蓮の恋人』という、帰国者二世が主人公のノンフィクションをご存じだろうか。初版は1992年だから既に18年が経とうとしている。著者の井田真木子は、中国帰国者のイメージが、苦労を重ねて立身出世した美談か、日本社会に溶け込めずに暴力と犯罪に走るかの二つのステロタイプばかりだった当時、この二つにハマらない、よりリアルな二世たちの青春を描きたいと思ったという。小蓮一家に寄り添って書かれた同書は、「帰国者」という存在がまだ珍しかった80年代初めに多感な十代で来日した小蓮とその兄弟たちが国境を跨いで苦悩し、成長する姿を描き出し、当時、関係者の必読書となった。翌年には講談社ノンフィクション賞を受賞している。
ところが、今度は「小蓮」がステロタイプになる。中国の農村生活の労苦、帰国後受けるいじめと差別、現業系しか進路の可能性がない二世のイメージを植え付けるのに『小蓮〜』が一役買ってしまった、と。そのような批判が出現し得るほどに、この間、二世三世の生き方が多様化したのだとも言えるが。
 では、同書以降の小蓮はどんな人生の途を辿ったのだろうか。小蓮自身の語りを紹介しよう。
 あの本に書かれた事柄の後は、北京で結婚、一年後に日本に帰国、その後、エステサロン、学童保育の保育士、中国系の顧客対応を主務とするアパレル店販売員などを経験した。しかし、それまでずっと日本人として生きてきたことから友人も日本人が多く、 「帰国者業界」とは距離を取ってきた。二・三世との関わり自体がなかった上に、あったとしても中国で成長してから帰国した二・三世とは話が合わず、「関わりたいけど、関わりたくない」という矛盾する気持ちをずっと抱えてきた。
 しかし、日本人の友人たちと接していても、またどこか自分は違うようにも感じていた。さらに、もう高校生にもなる子供たちに自身の来歴を話せない自分に気づく。最近になって、自分の生い立ちと真正面から向き合おうと、子供たちにも日本に来たときとその後のことを少しずつ話すようになる。それまでは自分に自信がなかったのだが、苦労話をして子供たちから「お母さん、古い〜」と言われたときなどは熱くなって反論したり話し合ったりもするようになった。しかし、平和ボケのこの時代に、ただでも難しい年頃の子供たちに親の辿った歴史を理解させるのは容易ではない。自分の子ですら『小蓮〜』を読まない。これが悩みの種でもあった。
 しかし、子供たちも少しは中国語がわかる。さらに自分たちが日中の「ハーフ」であるということも自覚しているようだ。先日、次男が突然、中国語の数の数え方がわかったと言ってきた。友達が中国語で数を数えているのを聞いていたら閃いたという。次男の保育園時代、送迎時に一緒に数えて聞かせていたことが記憶のどこかに残っていたのだろう。
 親の背中を見せるしかないと思っている。2008年からは、同じ二世の友人に教えてもらって支援・相談員の仕事を始めた。それを知った子供たちが「母は中国語の翻訳・通訳の仕事をしています」とよその人に話しているのを小耳に挟んで、嬉しい気もした。今、相談員の仕事をしていて日々感じるのは、一世の介護の必要性が増していくだろうこと。新支援策が施行され、医療通訳は喜ばれている。しかし、それ以前に、孤児世代の夫婦は日本と中国の両方に親族の生活基盤がある「国際結婚」であり、親族が別れて暮らしているから、寂しい複雑な心境で老後を暮らしているはず。その寂しさを紛らわせてあげたい。エステサロンに勤めた経験から思うのは、高齢になっても女性たちにはお化粧やネイルアート、服装のコーディネートを楽しんでほしい、そのための手伝いができないだろうかということ。女性はいくつになってもきれいでいたいものだと思う。これこそが今後の自分のテーマと考えている。
 自分の両親は大家族に囲まれて毎日幸せに暮らしている方だと思う。父は毎日リハビリとお風呂付きのデイサービスに通っている。母のおしゃれはもちろん自分が担当している!ときどき一緒に温泉で背中を流し合ったり、顔のマッサージをしてあげたりもする。
最近甥や姪たちが『小蓮〜』を読んだことを知った。これはとても嬉しかった。それぞれが家族の歴史を知り、自分探しを始めているようだ。自分の子供たちもこれから読んでくれるのでは、と期待が膨らんでいる。
 来日後もう30年になる二世もいれば、最近来日した三世、そして日本で生まれた三世四世もいる。それぞれが全く異なる物語を語り始めていることを実感させられた。 (an)

※『小蓮の恋人』は95年に文春文庫から再発行され、現在絶版だが、中古書店では今も入手可。図書館などにもあると思うので、ぜひご一読を。なお、著者の井田真木子氏は2001年3月に病逝されている。