中国・サハリン帰国者教育の相互支援ネットワーク

2013年12月13日号

編集・制作:中国帰国者定着促進センター
          教務部講師会
発行者:中国帰国者定着促進センター

今号を印刷してお読みになりたい方は、こちらのPDFをご利用ください。2013年12月13日号PDF

◎目次――――――――――――――――――――――――――――――――
地域情報ア・ラ・カルト
 ・「支援・相談員」の現場から(その8)−東北地方− +中国語訳
 ・デイサービス「寿楽」の挑戦(下)…異文化編…

研修会報告
 ・平成25年度 文化庁日本語教育大会

教材・教育資料
 ・『はじめまして にほん』 「生活のための日本語」学習教材 −ユニット学習編−
  『にほんご えじてん』 「生活のための日本語」学習教材 −絵辞典編−
 ・『絵と漢字から覚える平仮名と片仮名』

とん・とんインフォメーション
 ・中国残留邦人等への理解を深めるシンポジウム:厚生労働省主催
 ・中国語で運転免許の学科試験が受けられる道府県 追加情報
 ・2013年調査 高校入試特別措置等の情報更新!
 ・ニュース記事から 2013.9.6-12.6
 ・平成26年4月から「高等学校等就学支援金」制度が変わります

事例紹介
 ・「高望みせず、卑下もせず」−『みみタロウ』より抜粋

地域情報ア・ラ・カルト

「支援・相談員」の現場から(その8)−東北地方−

高橋紀子さん(C県スクーリング講師・支援相談員):
東北 C県  所属:県 (2008年度〜)4世帯を担当

1.日頃の活動
 C県ではM市と県央にあるK町で週1回日本語教室や文化教室を開催しています。県南のI市でも以前は日本語教室を実施しておりましたが、在住者の減少や高齢化のため、現在は不定期に文化教室を行っています。その他に年に1回、日帰りの旅行会を開催しています。この旅行会は県内に在住している帰国者が一堂に会する貴重な機会となっています。また年に数回、C県や仙台の東北中国帰国者支援・交流センター主催で研修会や交流会が開催され、こちらも県内の一世が集まれる機会となっております。

2.帰国者の最近の様子と相談内容
 新しい支援制度が開始されてから、多少余裕が出来たためでしょうか、旅行会や交流会など参加される方が増えたように感じます。ただ、最近は身体の不調、特に足の不調などの理由により不参加となる方も出始めていて、こういった状況は今後さらに増えていくことが予想されます。こういった方は家の中にこもりがちになるため、身体の不調も改善されませんし、家の中では日本語を話す機会がなくなってしまうため、日本語も以前より話せなくなってきているように感じます。精神的に落ち込んでしまうことも心配です。そういった状況を少しでも改善するためにも、最近は日本語教室よりも文化教室の実施に力を入れています。帰国者が少しでも参加する意欲がもてるように興味を持てそうなこと、または身体を動かして健康増進につながるような内容にしています。現在はプールで水中ウォーキングをしたり、ヨガなどを行っています。また、手芸教室なども喜んでいただいているようです。しかしながら、限りある予算の中でこういった文化教室を行うには難しい面もあります。特に「足」の問題です。予算の関係上、出来るだけ参加者を一箇所に集めて開催するためには、移動が必要です。C県は北海道についで県土面積が広い地域ですので、ひとつの場所に集まってもらうというのは、ほぼ不可能です。また電車やバスなど公共の交通機関も充分とは言えないので「足」の問題は深刻です。結局、相談員や講師の車に頼らざるを得ない状況ですが、これも乗れる人数に限りがありますし、安全性や万が一の責任問題を考えれば安易に頼ってよいか疑問です。
 新しい支援制度は新しいとは言っても、担当されるのは生活保護の時と同じ各市町村の福祉担当部署です。生活保護の時代は年に数回、担当者が帰国者宅を訪問し、各家庭の事情などもよく了解されていたようですが、新しい制度以降は、この訪問回数が減ってしまったことが気になります。担当課から通知等が来ても、こういった通知は大抵分かりにくいものなので、とても不安に感じるようです。以前なら担当者が訪問された際に質問することも出来ましたが、現在は担当者が誰なのかも分からない方もいます。出来ればもう少しケアがあって欲しいです。

3.今後の問題と相談員としての悩み
 
今後の問題はやはり一世の高齢化に伴うさまざま問題にどう対処していくか、という事だと思います。上記に挙げたことが理由で家庭内に閉じこもってしまう方も出始め、日本語能力の低下が見られます。そういった方々が介護サービスを受ける時にぶつかるであろう障害は想像に難くありません。現在は病院等に行く時は二世に頼ることも多いようですが、二世も仕事や子育てで忙しいですし、仕事を求めて関東方面に転居する二世も多いので、簡単に頼れる状態でもありません。また、二世自身も経済面や病気等さまざまな問題を抱えているケースも少なくなく、その事に対しても大きな不安を持っているようです。
 それ以外には本人が亡くなった場合に残された配偶者の待遇、自費帰国者はさまざまな支援の対象外となるために受ける制限等、私たち支援相談員個人ではなんとも出来ない問題が数多くあり、相談員が相談出来るような窓口があればと思います。今はさまざまな不安を出来るだけ軽減できるよう情報を共有、提供しあっていければと思います。


来自「支援・咨询员」的现场活动报告系列之八 -东北地方-

高桥纪子女士 (C县远程日语学习面授讲师・支援咨询员)
东北 C县 所属:县(从2008年度开始)共负责4个家庭的支援咨询工作

1.日常活动
  C县在M市 和在位于县中央地区的K町开设了每周一次的日语教室(学习班)、文化教室(讲习班)。以前在位于县南的I市也曾开设过日语学习班,由于居住者的减少及高龄化等原因,现在文化教室只能以不定期形式的进行活动。其他的还有、每年举办一次一日游的旅行会。这个旅游会为居住在县内的归国者们提供了很难得的欢聚一堂的机会。另外,C县每年还有几次与仙台市的东北中国归国者支援・交流中心共同举办的研修会、交流会,也给居住在县内的第一代归国者 (归国者本人)提供了相聚的机会。

2.归国者近期的状况及相谈内容
  
自从新的支援制度开始实施以来,也许是由于精神上及物质上多少有了富余的缘故吧,感觉好像参加旅行会及交流会等的人员有所揄チ。可是,最近开始出现有人由于健康状况不佳,特别是腿脚不好等理由而不能前来参加的情况,估计这种状况今后还会不断揄チ。所说的这种人很容易在家闭门不出,不仅健康状况得不到改善,而且由于闭门不出因而失去了讲日语的机会,感觉他们的日语会话好像不如以前了。另外令人担忧的还有精神上陷入情绪低落的状态。对于上述情形即使在一定程度上能够加以改善,与日语教室(学习班)相比,最近,在文化教室(讲习班)的实施方面加大了力度。选择一些能够使归国者对于提高参加意识所感兴趣的事情或是活动筋骨等与进健康有关的内容。现在所实施的活动有在游泳池里进行水中行走、做瑜珈等。另外手工艺教室(讲习班)也深受大家的好评。然而,在有限的预算内开设这样的文化教室(讲习班),也有其困难的一面。特别是「以车代步」的问题。因预算方面的关系,在举办活动时为了尽量把参加人员招集到一处,必须要大家前来参加。C县的土地面积之广阔仅次于北海道,将参加人员招集到一处,近乎不可能。另外电车和巴士等公共的交通机关也并不十分令人满意,所以「以车代步」的问题非常深刻。结果,现在处于不得不依靠咨询员或讲师开车迎送的状况,即便如此一方面受乘车定员所限,再者考虑到安全性及发生意外时的责任问题,对轻易地请求协助是否妥当,确实持有疑问。
  「新的支援制度」虽然说是一项新制度,但负责部门与接受生活保护时相同,都是由各个市町村的福祉部门负责。接受生活保护的时候,一年有数回负责职员到归国者的住处来家访,借此机会对各个家庭的事情等也能有充分的了解,可是实施新制度以后,家访次数的减少也令人担心。虽然负责部门会将通知等寄来,但是这类通知一般都不太容易看懂, 所以感到归国者对此好像很不安。如果是以前的话还可以利用负责职员前来家访之际,请教一些不懂的问题,而现在有的人甚至连负责职员是哪位都不知道。希望对归国者能尽量再多给予一些关照。

3.今后的问题和作为咨询员的苦恼
  
我认为今后的问题归根结底是如何应付解决伴随着第一代归国者(归国者本人)的高龄化而产生的各种各样的问题。如前所述由于上述理由而开始出现在家闭门不出的人,这些人其日语水平也有所下降。他们一旦在接受介护服务时,将遇到的障碍是不难想像的。现在,去医院就医等多半是依靠其子女(归国者的第二代),但是归国者们的子女因为工作忙或育儿等抽不出时间来、也有不少的子女为了找工作而迁居到关东地区,所以单纯地依靠子女并非是件轻而易举的事情。另外,第二代本身也有很多人面临着经济方面或身体健康方面的各种问题,对此第二代本身似乎更为担心。
  除此之外还有:归国者本人去世之后其配偶者的待遇问题、自费归国者因为不属于享受各种支援的对象而受到各种限制等、很多问题支援咨询员个人无论如何是无法解决的,希望有一个面向咨询员的咨询窗口,为了尽量减轻现在归国者的各种烦恼,在信息的共享及提供方面互通有无。


デイサービス「寿楽」の挑戦(下) …異文化編…

 (上)に続き、高齢帰国者のために二世が開いたデイサービス施設の運営の状況について、今号では、介護を巡る異文化を中心に、弘志さんに語っていただきます。

◆ 介護サービスに対する見方の違い
 異文化の問題とは言えないかもしれませんが、帰国者に対しても、行政はまずは慣例で日本人ヘルパーを紹介します。そうすると、料理が口に合わないなどの不満が必ず出てきて、最終的にうちに来るというケースが結構あるんですが、環境がよくなったことで介護度が3から2になった人もいるんですよ。しかし、利用者本人が初めからここに来たいと希望していても、うちが始めたばかりでまだ信用がないせいか、人によっては一ヶ月半ほども他のサービスを利用した後に、やっとここに来ることができるのが現状です。
 ところが、一回めの利用時に挫折体験があると、二度と施設は利用したくないと思ってしまいがち。こうなってからでは、帰国者向けのところであろうが中国語が通じようが利用したいと思わなくなってしまう人もいます。
帰国者の方も、もともと8割の人は介護制度をよく理解していないと思います。介護認定を受けられる程度に不自由なのに、そんな体で外を歩くといろいろ言われるからと引きこもり状態の人もいれば、無料で受けられると信じられなくて利用しない人もいます。
 また、制度は知っていても利用したがらない人も多く、大体は寝たきりになるまで何も利用しないんです。いよいよ寝たきりになって仕方なく施設に行っても、やはりコミュニケーションがとれない孤独感から「とにかくここを出たい」という話になる。
家族が無理をおして介護していて介護疲れで入院してしまうことも。家族のためにも、と説得して、やっと介護保険を利用してもらえるようになったケースもあります。
これらの人たちにこそ、帰国者の集う施設の意義があると考えているのですが…。
また、日本人もそういう傾向があると思いますが、年を取ると狭い世界から出るのが億劫になるため、知らない人のいる施設は利用したくないという人が多いですね。それと、中国人は情報源として口コミをやはり一番重視するので、知り合いのいるところか知り合いの紹介したところにしか食指を動かさない傾向があります。せっかく帰国者向けの施設を作ったのに、お試し利用もイヤと言う人が結構います。
 でもそれは、裏返せば、施設の中に誰か1人でも信頼できる人ができると来るということでもあります。うちの帰国者ヘルパーは高齢帰国者に対してとても親身になって世話をしてくれるのですが、このヘルパーさんがいるなら、と来てくれるようになった人がいました。
 とはいえ、一度施設利用でいやな思いをした人との間に信頼関係を築くのは容易ではありません。訪問をして6回「帰れ」と言われても引き下がらず、徐々に信頼関係を築いていったケースもあります。この人は9ヶ月前には全く寝たきりだったのが、ここに通うようになって数ヶ月かけてまた伝い歩きができるようになりました。

◆ 介護の現場で
 介護の現場での異文化見聞を紹介しましょう。
・マッチング…やはり、日本人ヘルパーと帰国者利用者の組み合わせは難しいです。日本人ヘルパーとの接触も経験してもらってもいいかと思って担当させてみたこともあるんですが、7割は失敗に終わりました。言葉の問題もありますが、ヘルシーな和食もたまには、と薦めても、強固に拒否されます。
・節約…総じて帰国者はやはり節約傾向が大です。昼食代の550円ではうちは利益はゼロですが、皆自己負担ではないにも関わらず、予算の上限までいかないように、と考えているのでしょう、とにかくお金は出したくないと言うんですね。そこで、とりあえず、自分で作って持参して食べるのはOKと決めました。
・異性介護…同性介護が基本ですが、欠勤などでやむを得ず異性になる場合もあります。そんなとき、日本人利用者は割り切ってくれますが、帰国者は異性のヘルパーへの拒絶度が高いですね。特に入浴やおむつ交換の抵抗は大きいです。逆に、男性の日本人利用者の中には、中日を問わず異性介護者を喜ぶ人もいて、セクハラで今までに100人ヘルパーが変わった強者もいます。
・食…帰国者からの食事の不満は(上)でも言いましたが、逆のことが帰国者ヘルパーに対する日本人利用者の場合にもあります。帰国者ヘルパーが夏に「豆腐が食べたい」という日本人利用者のために豆腐を炒めた料理を作ってあげたのですが、食べたかったのは冷や奴だったとのことで、クレームとなってしまいました。帰国者ヘルパーはがんばって和食にも挑戦していますが、素材を生かす和食の感覚が苦手で、どうしても中国風の味付けの調理をしてしまうのです。難しいですね。
・職務の範囲…日本人利用者はビジネスとしての割り切った利用ができますが、その分要求も細かい。その細かい要求がエスカレートすることもありますが。帰国者は、最初は事情がわからないので、プラン通りに利用しているのですが、そのうち、家政婦代わりに業務外のサービスを求めるようになります。でも、求められても共用スペースや窓の掃除は業務外です。
しかし、同じ業務外でも、帰国者が市役所からの手続き文書が読めなくて困っているときなどはやはりその人が困りますから、見てあげることもあります。同様に買い物の代行はなしですが、「見守り」(買い物に随行)はあり、というように業務の範囲で手助けするようにしています。
・配偶者…孤児本人である夫や妻に先立たれた配偶者の場合、立場上の心許なさも加わります。1人残されただけでも心細いのに、しかも中国人である身で異国にただ1人ということで、生活の保障もさることながら精神的にもより弱気になりがちです。こうした配偶者にはより一層の配慮が必要と感じます。

◆ 利用者間は…
 現在のところの利用者は帰国者が11人で、それぞれ週1〜3回利用。日本人も利用可ですが、経験上、サービスの質を確保する上で両方の利用者を同じ時空間に置くのは難しいと考えています。日を分けるか、普段受けている日本人向けの施設でのサービス+αとしてここに来るなら何とかなるかな。実は、この他に、以前に別の団地で自分たちが訪問介護をしていたのが縁で、日本人の利用者が1人、こちらにも来ているんです。この人は珍しく中国人の中に交じることが苦にならない人で、いろいろな手芸技術などを伝授してくれました。しかし、こういう人は稀で、やはり双方にとって異文化・異言語の壁は高いようです。

◆ ヘルパー間は…
 ヘルパーはデイサービスと訪問介護とを合わせて帰国者二三世が10名に日本人7、8名。デイサービスにも1人日本人ヘルパーがいたのですが、逆にスタッフの中で言葉がわからない疎外感から辞めてしまいました。訪問介護の事務所では、日本人ヘルパーや利用者の目があるので、スタッフには帰国者同士であっても日本語で話すよう指示しているのですが、なかなか守ってもらえていません。しかし、ヘルパー同士は、訪問介護がほとんどで顔を合わせる場面はあまりないので、中日のトラブルはなくて済んでいます。

◆ 職業としての介護:今後のこと
 中国文化で育った者として、細かい介護の仕事内容そのものが異文化で、ここまで細かくやることとやり方が決められていることに最初は驚きましたね。
 また、家政婦代わりに使われがちなことからもわかるように、職業としての介護は中国文化からはマイナスイメージです。日本でも待遇もまだあまりよくなく、二三世のキャリアとしては志向されにくいです。しかし、ニーズがこんなにあるし、今後、待遇は改善される可能性はあるので、二三世の雇用先として帰国者を介護する介護職は可能性があると思っています。
 地域で利用者を増やすための働きかけなども未着手で、この地域の他の帰国者支援グループとの連携も今後の課題です。
また、介護そのものではないのですが、帰国者は葬儀に関する不安も大きいですね。最近70代の帰国者が5人で相談に来たのですが、中国式にやりたいわけではないが、日本式の葬式の出し方もわからないと。この方面のニーズも大きいと感じています。 (談:An整理)

前列が「寿楽」利用者の方々。後列左が佐々木春海さん、右から2人目が佐々木弘志さん


研修会報告


平成25年度 文化庁日本語教育大会

 上記大会が、8月30日から31日にかけて昭和女子大学で開催されました。文化庁長官による基調講演や、文部科学省、文化庁の施策説明のほか、取組報告やパネルディスカッション、ワークショップ、ポスターセッション等、内容豊富な二日間でした。ここでは2つのポイントに絞って報告します。



❒パネルディスカッション「地域日本語教育と住民の社会参加−地域における日本語教室の在り方を考える−」:

 《「日本語教室」と地域の連携は不可欠であるが、どのように連携していったらよいのか》という問題を巡って議論が展開されました。このような問題は地域日本語教育の場でよく聞かれることですが、今回はコミュニティデザインを専門とする山崎亮氏によるまちづくりの事例紹介やコメントの数々が大変面白く示唆的で、「ハコモノ」ではなく「居場所」を作ること、「担い手(人)」を育て人と人とのつながりを作ることの重要性を改めて認識させられる内容であったと思います。ここでは、ディスカッションで出たキーワードのほんの一部しか紹介できませんが、当日の動画を文化庁のホームページ(下記*1)から閲覧することができます。
コミュニティの連携を考える上で重要なこと:
 ○「デザイン」「コーディネート」の視点 …連携のプロセス、支援のプロセスの見通しを持つ
 ○「ヒヤリング」…連携したい相手が求めているものの把握
 ○「発信」   …誰に発信するか/相手に聞いてもらえるものか・目をとめてもらえるものか
            自己満足になっていないか


❒「生活者としての外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム案等について:

 上記カリキュラム案関連の資料一式(全5冊)が来場者全員に配布され、1日目にはカリキュラム開発の進捗報告、配布された資料それぞれの位置づけ等の説明があり、国内2つの団体から、文化庁の助成を受けてカリキュラム案を活用した取り組みの報告が行われました。「さぽうと21」(東京都)による「生活場面切り取り動画」教材(*2)の開発に関する報告は、過去にあまり聞いたことのないユニークな取組みで興味深いものでした。 
 2日目のワークショップでは(1)「カリキュラム案」の目的や各資料の活用方法を理解する、(2)「教材例集」を活用して行動・体験中心の活動を考える、(3)「指導力評価に関するチェックシート」を活用して日本語教育プログラムを点検してみる、という3つのテーマで分科会形式のワークショップが行われました。分科会(2)では、5名程度の小グループに分かれ、@グループで対象とする学習者を1名選び、Aその学習者の生活課題やニーズを考え、共有し、B必要かつ優先度の高い「生活上の行為」を選び、Cその「行為」ができるようになるための「行動・活動中心の教室活動」を考える、というグループワークが行われました。限られた時間でしたが、様々な現場で日本語教育に携わる者同士の意見交換が行われ、得るものの多い時間になったと思われます。
 
*1 文化庁による大会報告及び当日の動画、発表資料、配布資料(当日のパンフレット、『「生活者として外国人」のための日本語教育の標準的なカリキュラム』関連資料 等)は、文化庁のホームページで閲覧・ダウンロード可能
 http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/kyouiku/taikai/25/houkoku.html

*2 「さぽうと21」の「生活場面切り取り動画」教材:
「歯科医受診」、「薬の購入」「美容院利用」など、「標準的なカリキュラム案」で示されている「生活上の行為」の場面について、その行為の流れや動きをわかりやすく収録した動画教材。「さぽうと21」のホームページ(http://support21.or.jp/)の「日本語教材(教材バンク)」のコーナーで閲覧可能。20種類ほど作られている。

教材・教育資料

『はじめまして にほん』

「生活のための日本語」学習教材 −ユニット学習編−
2013年3月 発行:公財アジア福祉教育財団 難民事業本部 http://www.rhq.gr.jp/
企画・編集・制作 公財:国際日本語普及協会 (AJALT)http://www.ajalt.org
(平成24年度文化庁予算作成) 著作:文化庁

 難民に対する日本語教育を行ってきたRHQ支援センター(以下「センター」)では、2010年度より、タイ国境の難民キャンプから来日した第三国定住難民を受け入れています。難民の研修のための教材を土台に、生活のための日本語学習教材―ユニット学習編『はじめまして にほん』と絵辞典編『にほんご えじてん』が作成されました。研修後に地域で学習を継続する難民とその支援者、また、その他の多くの外国人にも使える教材として開発されたのだそうです。

 『はじめまして にほん』は、日本社会へ自信をもって第一歩を踏み出していくために必要なユニットで構成されています。生活の中ですぐに必要となる実践的な日本語力獲得をめざした「交通」「買い物」「職場」、コミュニケーション力に焦点をあてた「身近な人と話す」「地域のコミュニケーション」、自分のことを話す力をつけていく「街へでかけよう」「自国紹介」等々。

 各ユニットの最初のページには学習内容がイラストで表現されているので、文字が読めない学習者にも楽に学習することができます。また、話す力が単語レベルであってもイラストや写真を使ってコミュニケーションをとることができるので、クラスの中でお互いをよく知るきっかけにもなります。頁のいちばん下には※で支援者のための学習活動の工夫やアドバイスが記載されており、大変便利です。
 また、この教材は以下に紹介する『にほんご えじてん』からのイラストを数多く含んでいるので、ふたつの教材の併用も効果的なのではないでしょうか。


『にほんご えじてん』

「生活のための日本語」学習教材 −絵辞典編−

 『にほんご えじてん』は、文字に親しみのない人のための教材で、絵を通して日本語を楽しく学べるように開発されました。日常生活に必要な名詞を中心に約2200語の語彙が収録されています。

 日本語の文字を初めて学ぶ人は、絵を見ながら文字を覚えていくこともできますし、文字を習得してからは、ふつうの辞書のように使うこともできます。巻末には、かな、漢字かな混じり、カレン語、英語で作成されている索引がついていて便利です。本文中の語彙表記はひらがな・かたかなのみになっています。

教材は文化庁のホームページからダウンロードできます。
『はじめまして にほん』http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/kyouiku/kyozai_2/index.html
『にほんご えじてん』http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/kyouiku/kyozai_1/index.html


『絵と漢字から覚える平仮名と片仮名』

作成者:北京国際関係学院 外籍教師 駒澤千鶴

 この教材は国際交流基金出版の視聴覚教材『エリンが挑戦』の付録教材で中国語を母語とする学習者が絵や漢字から比較的簡単に仮名を覚えられるようにプリント教材と絵を多用した動画教材(パワーポイント使用)で作成されました。現在、北京国際関係学院で日本語を教えている駒澤先生が、「中国語母語話者のいる教育機関で活用していただければ」と無料で提供してくれたものです。仮名の50音図をただ暗記するというやり方では覚えられなかった人も、中国語の単語と仮名の音を組み合わせて覚える、漢字の草書から仮名の字形を記憶するという方法なら覚えられる!これが本書の発想です。

 プリント教材から平仮名「い」と「う」を紹介します。


【教材のダウンロードの方法】
教材はすべてYahooメールのボックス※にアップされています。

1.Yahoo JAPAN(http://www.yahoo.co.jp/)のメールをクリックする。
2.以下のメールアドレスとパスワードを入力し、ログインする。
  メールアドレス:nihongonomoji@yahoo.co.jp
  パスワード abc1234
3.Yahooメールの「ボックス」をクリック。次に「絵と漢字で平仮名とカタカナ」をクリックし必要なファイルをダウンロードする。

 パワーポイントの動画教材は重いのでパソコンの容量を確認してからダウンロードすることをお勧めします。パワーポイントをお持ちでない方はパワーポイントビューアー(PowerPoint Viewer)を無料でダウンロードすることができます。
http://www.microsoft.com/ja-jp/download/details.aspx?id=6

とん・とんインフォメーション

厚生労働省主催:中国残留邦人等への理解を深めるシンポジウム

2014年2月8日(土)13:00〜17:00(開場12:30)
太白区文化センター「楽楽楽(ららら)ホール」(仙台市太白区長町5丁目3−2)にて

参加申込方法はシンポジウムホームページをご覧ください。http://www.zanryuhojin2014.jp

○演劇上演 仙台シニア劇団まんざら
 『花いちもんめ』−ある母親から明かされる歴史の真実−
○パネルディスカッション:パネリスト/岸井成格氏 (TBS『NEWS23』アンカー)、中国からの帰国者の皆さん
                コーディネーター/柳生聡子氏 (フリーアナウンサー)
○中国帰国者の皆さんによる合唱

申込締切:1月24日(金)必着 ※入場無料、要申込み、定員500名(応募者多数の場合は抽選となります)
     中国語への同時通訳あり レシーバー予約はイベント申し込み時に
お問合せ先:日本語:TEL:03-3518-9755(シンポジウム事務局)
     中国語:TEL:022-263-0948(東北中国帰国者支援・交流センター)


 

中国語で運転免許の学科試験が受けられる道府県 追加情報

 『同声・同気』54号(2012年10月号)では、中国語で運転免許の学科試験が受けられる15道府県の運転試験場及び免許センター等を紹介しましたが、現在は下記の7県が増えて22道府県で受けられるようになりました。(2013年11月現在)
※ロシア語での学科試験については北海道と新潟県に確認してみましたが、今のところ導入予定はないとのことです。 

試験場名 電話番号
栃木県 栃木運転免許センター 0289-76-0110
新潟県 新潟県運転免許センター 025-256-1212
長岡支所 0258-22-1050
上越支所 025-536-3688
佐渡支所 0259-57-5067
長野県 北信運転免許センター 026-292-2345
東信運転免許センター 0267-53-1550
中南信運転免許センター 0263-53-6611
静岡県 中部運転免許センター 054-272-2221
東部運転免許センター 055-921-2000
西部運転免許センター 053-587-2000
兵庫県  明石運転免許試験場  078-912-1628
但馬免許センター 079-662-1117
岡山県 岡山県運転免許試験場 086-724-2200
鹿児島県 鹿児島県運転免許試験課 0995-65-2295

  
  


2013年調査 高校入試特別措置等の情報更新!

-2014年度(2014年4月入学)都道府県立高校の中国帰国生徒及び外国籍生徒への高校入試特別措置情報-

 平成12年度より当センターHPにアップしている「全国中国帰国生徒等の高校入試特別措置情報」及び「全国中国帰国生徒等の中学校編入関係情報」を、各都道府県及び12政令指定都市の教育委員会に問い合わせ(2013年11月現在)、更新しました。
 今回の調査では、和歌山県で一般入試における帰国者生徒及び外国人生徒に対する入試特別措置ができ、入学後の日本語支援も行われるようになった等の変化がありました。
以下のサイトよりご覧ください。
 http://www.kikokusha-center.or.jp/shien_joho/shingaku/kokonyushi/kokonyushi_top.htm


ニュース記事から 2013.9.6-12.6

 2013/09/30 「大地の子」山崎豊子さんが死去 ※1
 2013/10/12 夜間中学、統合で5校から1校に/横浜市 ※2
 2013/10/15 中国残留孤児の訪日調査、今年も見送り/厚労省
 2013/11/06 二世が残留邦人向け介護施設「常楽園」開所で言葉や生活習慣に対応/前橋市
 2013/11/12 安倍首相、中国残留邦人等の表敬を受ける
 2013/12/06 改正中国残留邦人支援法が成立 2014年10月より死亡孤児の配偶者にも給付金 ※3


※1―3については以下に解説があります。

※1 山崎豊子さん
 中国残留孤児を描いた『大地の子』など社会派小説で知られた作家の山崎豊子(本名=杉本豊子)さんが9月29日、死去した。88歳だった。
 毎日新聞大阪本社に入社。在職中に小説を書き始め、「暖簾(のれん)」で作家デビュー、「花のれん」、「白い巨塔」、「華麗なる一族」、「不毛地帯」、「大地の子」、「沈まぬ太陽」、「運命の人」など話題作を相次ぎ発表。多くが映画化・テレビドラマ化された。
 中国が舞台の「大地の子」では、反骨精神から〈残留孤児〉ではなく〈戦争孤児〉の言葉に固執した。「大地の子」について、2013年11月19日NHK総合で放送されたクローズアップ現代「小説に命を刻んだ―山崎豊子 最期の日々」では彼女の肉声テープで「中国大陸のそこここで、自分が日本人であることも分からず、小学校にも行かせてもらえず牛馬の如く酷使されているのが本当の戦争孤児ですよと…、私はこれまでの色々な取材をしましたが、泣きながら取材したのは初めてです。敗戦で置き去りにされた子どもたちが、その幼い背に大人たちの罪業を一身に背負わされて小日本鬼子、日本帝国主義の子といじめられ耐えてきた事実、日本の現在の繁栄は戦争孤児の上に成り立っているものである事を知ってほしい。大地の子だけは私は命を懸けて書いてまいりました。」と紹介された。
 また、「大地の子」の取材をきっかけに、帰国した戦争孤児家庭の子どもたち(大阪府内在住及び通学者)に奨学金を贈る「山崎豊子文化財団」を93年に設立した。

※2 横浜市夜間中学
 横浜市教育委員会が10月11日開かれ、市内の市立中学5校に設けている夜間学級を来年4月から1校に統合する事務局案を承認した。夜間学級の生徒数は現在15人で、新たな入学者がいなければ来年度には4人になる見込み。市教委指導企画課は「生徒を1か所に集め、よりよい学習環境を整えたい」としている。
統合について、市民団体「神奈川・横浜の夜間中学を考える会」は、「手続き的にも内容的にもあまりにもひどいものであり、到底容認できない。多様な生徒にきめ細かく対応する教育こそが夜間学級の特徴で、統合により距離や時間の関係で通い続けられなくなる生徒も出てくる。長年、専任教諭を置かず、夜間学級周知のPRも不足していた。減少の原因を作りながら、少ないから統合し効果を上げるというのはおかしい。他地域はチラシやポスター、福祉現場との連携のほか、広報紙に繰り返し載せて発掘している。実態調査を先にすべき」として、計画の見直しを求める署名活動を行っている。
署名開始から2週間あまりの10月21日に、第1次分として453名分を、11月6日、第二次分として1922名分を横浜市教育委員会に提出したとのこと。

神奈川・横浜の夜間中学を考える会
<公式ブログ>http://yokohamayakan.blog118.fc2.com/

※3 改正中国残留邦人支援法
  残留孤児が日本に永住帰国する前から婚姻関係にあった人を対象として、新たに「配偶者支援金」を創設。月額約6万6000円の老齢基礎年金の3分の2に当たる約4万4000円を支給する。2014年10月より施行。


平成26年4月から「高等学校等就学支援金」制度が変わります。

(平成25年11月29日発表)

 「就学支援金」を受け取るには、課税証明書(市町村民税所得割額が記載されたもの)と学校を通じて配布される申請書の提出が必要となりました。新制度は、平成26年4月以降に入学する方が対象です。
詳しくは文科省のHPをご覧ください。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/__icsFiles/afieldfile/2013/11/29/1341956_01_2.pdf

事例紹介

「高望みせず、卑下もせず」

『みみタロウ』(滋賀県国際協会ボランティアグループ作成)より抜粋
  滋賀県の生活情報誌『みみタロウ』に本年10月号に掲載された中国帰国者三世の趙偉華さんのインタビューから抜粋したものを紹介します。趙さんは現在、児童クラブで指導員をされています。

 
 私は中国で、建材関連の仕事や義母を手伝って保育園や塾の仕事をしていましたが、祖母に誘われ、2005年に家族を置いて一人で来日しました。

 日本語は「あいうえお」程度しか知らなかった私に、できる仕事が限られているのは承知の上です。長崎に到着後、すぐに料理店で下ごしらえの仕事を始め、その後親戚のいる町に移り、病院内の清掃業に就きました。その1ヶ月後に仕事が認められて正社員になることができ、なんとか生活の目処がたったので、夫と当時10歳だった娘を呼び寄せることができました。日本で生活していくには日本語が肝心です。地域の国際協会の日本語教室で日本語を学び、今は中国帰国者定着促進センターの遠隔学習課程(通信教育)でスクーリング講師の吉川先生に見ていただきながら日本語の勉強を続けています。

 その後、引っ越すことになって清掃の仕事を退職しましたが、その失業保険の受給中、職業訓練の日本料理の講座を受講しました。このおかげでスーパーの就職試験に合格し、仕事に就くことができました。スーパーでは、お弁当、すし、天ぷらなどいろいろ調理を担当して順調に仕事を続けていましたが、残念ながら追突事故に遭い、体を痛めて退職することになってしまいました。
 仕事をするのはまずは生活のため。できることがあれば何でもしなければいけません。でも勉強することでその選択肢を少しずつ広げることができますし、資格を持つことでいざというとき、必ず身を助けることができると思うのです。それで治療の後、3つの講座を受講することにしました。ハローワークの定住外国人向けのパソコン講座と、自費で受講した介護ホームヘルパー講座、そして県主催の淡海子育て支援養成セミナーで、それぞれ無事に修了証書をいただきました。
 実は、この子育て関係が、私が一番やりたい仕事。生活のためではない、私の夢の仕事です。「日本では無理だろう」と主人に言われたりもしましたが、採用してくれる児童クラブがあり、2年前から児童クラブの指導員になりました。現在、午前中は食品会社で働き、午後週3回は、児童クラブでおやつを出したり、片づけをしたり、宿題を見てあげたりしながら子どもたちと一緒に過ごしています。宿題は、国語はちょっと無理ですが、算数なら見てあげられます。子ども達におかしな日本語を笑われたりすることもありますが、間違っていることをした時にはきちんと注意しながら、子どもたちの安全に気を配っています。
 児童クラブでは外国人も含め様々な子どもたちがいて、保護者や指導員の教育観もまちまちです。個人的には、教育は行政や学校ばかりに頼るものではなく、最終的に親の責任だと考えていて、もし自分の子どもに足りない部分があれば、親がそこを補うような努力をしなければならないと思っています。外国人の子どもの場合、どうしても言葉の部分から来るハンディがあるので、親にも何らかの気配りが必要だと思います。私の場合、子どもには学習塾に行かせてきて、お金はかかりましたが良かったと思っています。

 タマネギをむいたり、掃除したりなど、祖国の大学時代の友人に話すには気おくれするような仕事なのかもしれませんが、こうして自立して生活を築くことが何より大切だと思うので、胸をはって生きています。私の好きな言葉は「高望みせず、卑下もせず」。前を向いて今できることから努力を続けていきながら、一歩ずつ夢に近づきたいと思っています。外国生活では思うように行かないことも多く、どの人も同じように様々な苦労をされていると思いますが、困ったときにはおおらかな気持ちで、お互い助け合いながら乗り越えていければいいですね。

■『みみタロウ』(7言語の情報紙(日、英、ポ、ス、中、ハングル、タガログ))は滋賀県国際協会のホームページ URL:http://www.s-i-a.or.jp で閲覧できます。多言語、多文化の理念を掲げたホームページで外国にルーツをもつ子どものための学習支援サイト等をまとめた「多文化共生学校づくり支援サイト」、「SIA(しーあ)多言語子育て情報」、「多言語の防災情報」などが充実。2005年より実施の「多言語の高校進学進路ガイダンス」は滋賀県国際協会が自治体国際化協会の助成を受けて実施しています。

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