中国・サハリン帰国者教育の相互支援ネットワーク

2015年2月10日号

編集・制作:中国帰国者定着促進センター
          教務部講師会
発行者:中国帰国者定着促進センター

今号を印刷してお読みになりたい方は、こちらのPDFをご利用ください。2015年2月10日号PDF

◎目次――――――――――――――――――――――――――――――――
地域情報ア・ラ・カルト
 ・京都「夕陽紅(シーヤンホン)の会

行政・施策
援護基金から
 ・訪問介護ステーション 寿星(じゅせい) オープン

研修会報告
 ・2014年度スクーリング講師研修会報告:所沢センター
   「これでいいの? 私のスクーリング−スクーリングの工夫や悩みをシェアしよう−」
 ・外国につながる子どもの高校進学ガイダンス主催者交流会2015

とん・とんインフォメーション
 ・マルチメディアDAISY図書とは?
 ・夜間中学映画祭開催!

遠隔学習インフォメーション
 ・遠隔学習課程コース紹介 日本語能力試験N2 受験準備コース

地域情報ア・ラ・カルト

京都「夕陽紅(シーヤンホン)の会」


○会の立ち上げと活動

 中国帰国者の二世・三世らにより「夕陽紅の会」が発足したのは2011年。京都の大学が実施した外国人高齢者と外国文化の背景を持つ人を対象とした生活調査がきっかけとなり、調査員として参加した二世たちが、一世世代の厳しい老後の生活を自分たちの世代で何とかできないかと会を立ち上げた。
介護予防教室をはじめ、手芸、将棋、マージャン、書道などの趣味講座、地域交流イベントの開催、そして二世三世対象の介護ヘルパー資格取得支援など、一世支援のための様々な活動に取り組んでいる。

○活動見学:「介護予防講座」2014年10月19日(日)

 この日の参加者は30名ほどで、中には所沢センター修了生や遠隔学習課程受講者も何人か来ていた。参加者を口コミで増やしていて、知り合いに誘われて来た人にも次回からは案内ハガキを毎月出すようにしているとのこと。ボランティアの方々は10数名。帰国者の同年代から高校生まで幅広い。介護・運動機能リハビリの専門家や、介護士、アコーディオンで歌の伴奏をする人、今回初参加という人も。このように、いろいろな人が集まって会を盛り上げているのは本当に頼もしいことだと思う。

《当日の活動プログラム》(13:00〜16:00)
 受付・血圧・体温を測定/夕陽紅健康芸術団の踊り/健康講座/健康体操/お誕生会/皆で歌う/
 集団レクリエーション/利用者の感想・意見を聞く

・踊り…そろいの綺麗な衣装で華やかに踊っていた。参加者も大喜び。
・講座…「インフルエンザの予防接種」と「台風対策」についての解説。自治体からの通知など届いていても読まない人が多いため、重要なものを選んで解説するようにしているとのこと。この年(2014)8月には京都市内に大雨・洪水警報が発表され、場所によっては大きな被害を受けていた。
・体操…立って行う体力派(?)のグループと、椅子に座って行う軽めの体操グループの2組に分かれて行った。左右の手で別々の動きをするものや、踏み台昇降など、脳トレや日常生活機能を維持するための運動に、笑顔で取り組んでいた。
・お誕生会…10〜12月の誕生日の人に額縁入りのポートレート写真が贈呈される。毎年やっているらしく、「去年の写真を見れば今年の方が若いとわかっていいよね!」と粋なコメントも。
・歌…アコーディオンの伴奏で、歌詞カードを見ながら日本語で歌う。
・レクリエーション…〈障害物競歩とクイズ〉という組合せ。体と頭を同時に働かせることは交通事故に遭わないための訓練だとのこと。若い人には難しめの課題をあて、全員が当たるまでやっていた。

プログラムは全体としてゆったりと進められていたが、進行役が圧倒的なパワーで参加者を引っ張っていた。参加者をきちんと“大人扱い”しつつ、盛り上げ方もとても上手だった。

○今後の活動

 11月には初の「外出」活動を予定している。もともと前年にやりたかったのだが悪天候やボランティア不足で実現しなかった。家に閉じこもりがちな人が多いので何とか外に連れ出したい。できるだけ乗り換えなしに行けるところを探していくとのこと。(⇒後日二条城見学になったと伺った。)
  現在はボランティアをA(偶数月担当)、B(奇数月担当)の2チームに分けていて、それぞれのチームのボランティア2名に会の中心メンバー1人が加わって活動の計画を立てている。今後はボランティア一人一人が力をつけていって、現中心メンバーの3人がいなくてもチームで企画から実施までできるようになっていってほしいと、今後の在り方についても話を伺うことが出来た。また、将来的には配食サービスやデイサービス施設も考えているとのこと。高齢化の進む帰国者一世世代のために、一日でも早く計画が実現されることを期待したい。

夕陽紅(シーヤンホン)の会活動報告はこちら
http://xiyanghong.blog.fc2.com/
(T)

夕陽紅健康芸術団の踊り 自治体のお知らせ等を示して説明
健康体操(座位グループ) 集団レクリエーション

行政・施策


★援護基金から
公益財団法人 中国残留孤児援護基金

訪問介護ステーション 〈寿星(じゅせい)〉 オープン


 同法人は、高齢化する中国からの帰国者の介護ケアニーズに対応するため、中国語が話せる訪問介護員を派遣する事業所〈寿星〉を平成27年2月1日に開設しました。対象地域は中野区・練馬区・杉並区の3区ですが、中国帰国者の場合にはできるだけ都内全域のニーズに対応していく予定とのこと。

営業時間:平日 月曜日〜金曜日 9:00〜17:45(土、日、祝、年末年始は休み)
住 所 :東京都中野区弥生町5−5−3 中野富士見スカイマンション102
電  話:03-6382-7125 ファクス:03-6382-7202
E-mail :jusei@engokikin.or.jp
HP   :http://www.engokikin.or.jp/tabid/117/Default.aspx

 

研修会報告

2014年度スクーリング講師研修会報告:所沢センター


研修会テーマ:「これでいいの? 私のスクーリング
−スクーリングの工夫や悩みをシェアしよう−」


 「遠隔学習課程(通信教育)」のスクーリング講師を対象とした研修会を平成26年度は、11月13日、14日の2日にわたって行い、36名の参加を得ました。
 1日目は、まず概論として遠隔学習課程とスクーリング状況について、受講者の世代や滞日年数、全国のスクーリング実施状況、修了アンケートよりスクーリング受講者の声等を報告しました。その後、主に通信のコース別で5〜7人の6グループに分かれ、参加講師が現在担当している個別の受講者のスクーリングについて、1人ずつ順々に紹介をしてもらいながら、指導で工夫している点、対応に迷う点、今後の方針などに関する意見交換を約140分行いました。
 2日目は、個別の受講者の対応にとどまらず、スクーリング指導全般において意見交換をしたいこととして希望が出ていた事柄から、4つのグループ(受講者へのアプローチ、自学自習の指導、受講者の学習ビリーフへの対応、指導中に出てくる相談への対応)に分かれ、8〜10人のグループで意見交換を約70分行いました。その後、全体会で新コースである「日本語能力試験N2受験準備」コースの紹介や質疑応答などを経て、閉会しました。

 自学自習が中心となる遠隔学習課程の学習を、月に1回2時間程度、側面からバックアップするというのがスクーリングです。受講者の状況に合う短期的/長期的な学習目標をどのように立てるのか、また、何から始めてどう進めるのかなど、スクーリング講師として悩みは尽きないというのが本当のところだろう思います。その一方で、スクーリング講師同士が指導に関して気軽に話したり意見を尋ねたりする場も機会も少ないのが現状です。今回の研修会では、参加者一人一人が発表するスクーリング、受講者の状況について、グループの皆が耳を傾け、一緒に考えられたこと、そして複数の感じ方・見解に触れることができたことに意義があったと感じます。また、意見交換を通じて、いろいろな工夫や対応のアイディアを共有できたことも大きな収穫でした。
(N)


 

外国につながる子どもの
高校進学ガイダンス主催者交流会2015


 2015年1月11日(日)、北浦和のカルタスホールで上記交流会が行われました。
 主催者交流会は14回目となり、今回は栃木、群馬、茨城、千葉、東京、神奈川、静岡、山梨、埼玉、長野から70名を超える参加がありました。
(1)全体会
@各県からの報告:外国につながる子どもの県別高校入試の現状と課題
A特別報告:熊谷市の調理師専門学校の外国人入学拒否問題について
(2)分科会
  A:外国につながる生徒の高校進学の現状について
     @「外国籍県民かながわ会議の提言」
     A「外国人特別選抜の問題点」
  B:外国につながる生徒の高校進学と在学中の支援について
     @「千葉県の現状と課題」
     A「多言語による生徒の相談会活動・定時制高校での試み」
     B「高校生向けのキャリアガイダンスの実施報告」

分科会Bの@について白谷氏(房総日本語ボランティアネットワーク)の報告を簡単に紹介したいと思います。

●千葉県における「日本語を母語としない生徒」の高校進学と高校での指導に関する現状と課題」

 日本語の生活言語は習得に2年、学習言語は習得に5〜9年かかるといわれている。そのため、日本語力がまだ十分でない生徒を対象に特別選抜が行われているが、これには二つの考え方がある。一つは「日本語が十分でない生徒も入学させ、入学後も学校の責任で日本語を指導する」(神奈川県、東京都等)、もう一つは「入学後、(その高校の)授業についていける日本語力を持つ者のみを合格させる」(千葉県、埼玉県等)という考え方である。
 前者では「定員内不合格」は出さないことになっているが、後者は募集定員が定められておらず「おおよそ○名以内」となっており、学校が「入学後、その学校の授業についていける日本語力を持たない」と判断すると合格者は0でもかまわないということになる。この考え方はその後の学校での対応(日本語指導、補習等)や教育委員会の支援体制(教員の加配、ボランティアの交通費支給等)にも影響している。
 また、「日本語を母語としない生徒」で卒業までたどり着いた生徒は、神奈川県では90%、千葉県では59.7%であり、千葉県の退学率が30%も高くなっている。
 このような現状を少しでも改善しようと、房総日本語ボランティアネットワークを含めた15団体は、千葉県教育委員会に対し、2014年5月、
 ○東京都、神奈川県、埼玉県のように「外国人の特別入学者募集人員」をはっきりさせてほしい
 ○東京都、神奈川県のように「募集人員」に相当する「入学許可候補者」数を確保するよう、「外国人の特別入学者」選抜高等学校を指導してほしい、
との要望書を提出している。

※埼玉県は「募集人員」ははっきりしているが「定員内不合格者」を出している。

進学ガイダンス主催者交流会HP
 http://www.tim.hi-ho.ne.jp/meri-/sg/index.htm
(T)

とん・とんインフォメーション

マルチメディアDAISY図書とは?


 DAISYということばを聞いたことがあるという方、どのくらいいらっしゃるでしょうか。
 DAISY(アクセシブルな情報システム: Digital Accessible Information System)というのは、視覚障害だけではなく、学習障害、知的障害等、様々な障害に対応する情報技術として日本障害者リハビリテーション協会が普及を進めている国際標準規格です。デイジー図書というのは、印刷物を読むことが困難な人のための図書の一種で、音声読み上げだけでなく、テキスト・画像・映像などを連動させて表示できるものです。つまり、読むのが苦手な人のためのお助けツールで、音声を聞きながら、今どこを読んでいるかを確認することができる便利なものです。外国にルーツをもつ子どもたちにとっても、有用なツールになりそうです。例えば、デイジー教科書というのは、テキストと音声がセットになった教科書で、パソコンやタブレット(iPhoneでも)に入れて使います。自分で音読する前に、テキストを確認しながら繰り返し音声を聞くことが出来るので、まだ文字と音声の結びつきが弱い場合や、読めない漢字がたくさんある場合には、この教科書を使うことで、かなり負担が軽減されるのではないでしょうか。以下の日本障害者リハビリテーション協会のサイトに、デイジー教科書の申請方法、使い方、活用事例などが詳しく載っていて参考になります。音読嫌いのお子さんが、PCを使うことでハードルが下がって、音読に取り組めるようになった事例なども紹介されています。
http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/book/daisytext.html

 またデイジーで絵本等を読むこともできます。著作権法との絡みで、提供制限がありますが、絵とテキストを見ながら音声を聞くことが出来ます。同じく以下のページで、デイジー図書の一覧を見ることができます。
http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/book/index.html

 マルチメディアDAISY図書は、ソフトさえあれば自分で作ることができるので、教科書や絵本のデイジー図書を各地のボランティア団体が作っています。(著作権保護のための制限があります。詳細は日本障害者リハビリテーション協会のHPを参照のこと)大きいところでは、「日本ライトハウス情報文化センターhttp://www.iccb.jp/mmd/mmdownload/」「伊藤忠財団 http://www.itc-zaidan.or.jp/ebook.html」がかなりの数のデイジー図書を作成しています。また、以前NL(web2012年6月12号)で紹介した「多言語絵本の会RAINBOW」でも、マルチメディアデイジー対応の多言語電子絵本を作成して、提供しています(http://www.normanet.ne.jp/services/download/daisy.html)。関心をもたれた方は、是非各所にお問い合わせください。


夜間中学映画祭開催!


 2月7日から13日までの7日間、東京・中野で映画祭が開かれます。戦後、昼間に中学に通えない子どもたちのために開設された夜間中学、現在は戦争や貧困で学べなかった人、不登校だった若者、中国帰国者、仕事や国際結婚で来日した外国人やその家族、難民など、10代から80代の人々が大家族のように机を並べ学んでいます。現在は31校(東京、神奈川、千葉、大阪、兵庫、京都、奈良、広島)のみ。しかし、基礎教育の場としての役割が再認識され、国や国会も全国での設置促進に動き始めたと聞きます。夜間中学を全国に作ろうという動きをさらに推し進めるために過去に製作された「夜間中学」を舞台にした映画4本を上映します。主催・企画は夜間中学映画祭実行委員会です。

2015年2月7日(土)−2月13日(金) 連日10:10より
ポレポレ東中野03-3371-0088 
当日一般1300円/大学・専門・シニア1100円/高校1000円/中学・小学は特別価格500円
前売券1000円劇場窓口にて発売中
前売券等などの問い合わせ:事務局 和島携帯080-3444-1964 wajichan1964@gmall.com
会場地図:http://www.mmjp.or.jp/pole2/(HP画面の一番下)
JR・東中野駅西口北側出口より徒歩1分、大江戸線A1出口より徒歩1分

●映画やイベント情報等はこちら http://yokohamayakan.blog118.fc2.com/blog-entry-108.html
https://www.facebook.com/yakaneiga

2/7(土)『夜間中学』1956年+『うどん学校』1976年
2/8(日)『こんばんは』2003年
2/9(月)『学校』1993年
2/10(火)『夜間中学』+『うどん学校』
2/11(水)『学校』
2/12(木)『こんばんは』
2/13(金)『夜間中学』+『うどん学校』

遠隔学習インフォメーション

遠隔学習課程コース紹介

日本語能力試験N2 受験準備コース


 今回ご紹介するのは、「日本語能力試験N2」レベルを目指すためのコースです。
 「日本語能力試験」は、日本語のレベルを、最も易しいN5レベルから最も難しいレベルのN1まで、5段階に分けて測るもので日本語能力を測る試験としては一番大規模なものです。この試験は、自分の日本語のレベルを確認することができるだけでなく、N2以上の合格であれば履歴書等にも書ける資格でもあります。 
 このコースで使用するテキストは、中国帰国者等、日本社会における「生活者」をターゲットに新しく作成しました。「生活者」というのは、海外からのビジネスパーソンや留学生等とは異なり、日本の地域社会で働きながら、あるいは家事・育児をしながら、あるいは高齢になって生涯学習の一環として日本語を学んでいる人々です。「語学テスト」とは離れた生活をしていて、「テストに慣れていない」という点が共通するでしょう。このコースでは、「試験」に苦手意識を持っている人でも挑戦できるように、実際の試験と同じ形式の問題を実際に解きながら、解法のコツや各ジャンルの試験の学習ポイントを学んでいきます。中国語で丁寧に解説してあるので、自分で学習を進めることができます。また、テキストでは、受験申込方法や受験の際に注意する点等、受験に際して知っておくべき内容も紹介しています。受講生の多くが不慣れであると考えられる4択形式でマークシートを利用した回答方法についても、遠隔学習の提出課題を通じて練習していき、コース修了時には実際の試験と同じ問題数の模擬テストで力試しもできます。
 もちろん、日本語能力試験の受験予定ではないけれど、中上級の日本語を学びたいという方にもお薦めです。漢字、語彙、文法、読解、聴解などを総合的に学習できます。

  使用教材:『挑戦!日本語能力試験N2―中国帰国者のためのN2対策−』 
   各課の内容は以下の通りです。
  〈上冊〉テスト解題編
   はじめに 〜試験対策を始める前にこれだけは知っておこう!
   第1課 テスト解題1(言語知識)
   第2課 テスト解題2(読解)
   第3課 テスト解題3(聴解)
    参考1 日本語能力試験N2受験対策に便利な参考書の紹介
    参考2 実際に日本語能力試験を受ける際に必要な情報
  〈下冊〉問題練習編
   第4課 文字問題の対策1   第5課 語彙問題の対策1
   第6課 文法問題の対策1   第7課 文字問題の対策2
   第8課 語彙問題の対策2   第9課 文法問題の対策2
   第10課 読解問題の対策    第11課 聴解問題の対策
※当センターホームページに教材のサンプルがあります。
http://www.kikokusha-center.or.jp/tokorozawa/enkaku/jp/1410course_jp.htm#25

お知らせ

★web版『同声・同気』は、情報掲載時に、その内容をメールにてお知らせすることができますので、ご希望の方は、以下の宛先まで、@お名前(団体窓口者の方は団体名も)とAご自身のメールアドレスをお送りください。
宛先:tongtong@kikokusha-center.or.jp
(お問い合わせは 電話04-2993-1660 FAX 04-2991-1689)