W.カリキュラムモデル例


 一次、二次センターの従来の研修では、いわば教師主導で作成されたカリキュラムが学習者に「与え」られているのに対し、再研修においては、カリキュラムは本来学習者のニーズに合わせて開発されるものであり、学習者は自分のニーズに合致したカリキュラムを提供しているコースに参加する、つまり学習者がカリキュラムを「選択する」ことにその特性があると言えます。したがって、再研修のコースカリキュラムには、「このようなコースタイプにはこのようなカリキュラムがふさわしい/このようなカリキュラムであるべきだ」というような、基準、標準、規範という意味でのモデルは存在しません。コースタイプのそれぞれに、多様なニーズに対応するいくつものモデルがあってよい、というよりも、ニーズに合わせて新たなモデルが次々に開発されるような状況こそ望ましいと考えられます。再研修では、〈特殊ニーズ〉はもちろんのこと、〈一般的日本語学習ニーズ〉においても、多様なニーズに応じた多様なモデルが必要とされるのです。したがって、ここに紹介するカリキュラムモデル例も、一つの雛形、原型、または見本例としてのモデルと考えていただきたいと思います。


 「再研修講座」のカリキュラムモデルとしてここに紹介するのは以下の4例です。



 
コースタイプ

ニーズタイプ

学習者タイプ

期 間

神奈川モデル T

ハイレベルコース

一般的日本語学習

タイプV

10か月

神奈川モデル U

レベルアップコース

一般的日本語学習

タイプU

10か月

大阪YWCAモデルT

ハイレベルコース

一般的日本語学習

タイプV

6か月

所沢モデル  T

目的別コース

特    殊

タイプU

3か月



 第1例から3例は、それぞれ神奈川自立研修センター大阪YWCAセンターで試行された再研修講座のコースカリキュラムをもとにそのモデル化を試みたものです。結果として、3例とも〈一般的日本語学習ニーズ〉に対応するカリキュラムとなりました。そこで、もう1例、〈特殊ニーズ〉に対応するカリキュラムとして例示を試みたものが第4例にあたります。本プロジェクト参加の二次センターが行った学習ニーズ調査では、自動車の運転免許取得を希望する帰国者が多かったことから、こうしたニーズに応えるコースを想定し、いわば架空の講座のカリキュラム設計を試みたわけです。したがって、第4例はいまだ試されていないモデルということになります。将来、こうした講座を開設するセンターがあれば、これをたたき台にぜひ実用にかなうモデルを作成していただきたいと思います。
 初めに説明しましたが、ここに提示したモデルはあくまでも一つの参考にすぎません。来年度から新たに再研修講座を開設する2次センターは、学習者や運営側の条件が近いモデルがあれば、それをもとに修整を加える、あるいは、複数のモデルから利用可能な部分を取り出して組み合わせる等の方法で、より学習者のニーズにそったカリキュラムを設計していっていただきたいと思います。もちろん、ここに紹介したモデルにとらわれることなく、新しいそしてユニークなカリキュラムがどんどん開発されていくことも期待したいと思います。